外国人材の活用が注目される現代において、技能実習制度は日本企業にとって貴重な労働力確保の手段となっています。
しかし、この制度を円滑に活用するためには、送り出し機関と監理団体という二つの重要な機関の役割を深く理解することが不可欠です。
特に人事担当者様においては、これらの団体がどのように連携し、貴社の技能実習生の受け入れをサポートするのかを正確に把握しておく必要があります。
本記事では、送り出し機関と監理団体それぞれの概要、役割、そして選び方について、人事担当者様が外国人技能実習機構の認定基準や関連法令なども踏まえ、技能実習制度を適切に運用するための実践的な情報を提供します。
外国人技能実習制度とは?その趣旨と目的

こちらでは、外国人技能実習制度の概要や趣旨・目的を解説します。
また、外国人技能実習制度の取り組みよって、母国での就労につなげ、どんな課題を解決できるのかも説明します。
外国人技能実習制度の基本的な仕組み
外国人技能実習制度は、日本の企業が海外の若者を技能実習生として受け入れ、OJT(On-the-Job Training)を通じて実践的な技能や知識を習得してもらう制度です。
この制度の目的は、日本で培われた優れた技能や知識を開発途上地域などに移転し、その国の経済発展を担う人材を育成することにあります。
同時に、日本国内の労働力不足を補完する側面も持ち合わせています。
技能実習生は、日本での実習期間中、労働関係法令に基づいて保護され、日本人労働者と同等以上の待遇を受けることが定められています。
在留資格としては「技能実習」が付与され、原則として1号(1年)、2号(2年)、3号(2年)と段階的に実習期間を延長することが可能で、最長で5年間日本に滞在することができます。
技能実習制度の趣旨と国際貢献
技能実習制度の趣旨は、あくまで国際貢献です。
技能実習生が日本で身につけた技能や知識を母国に持ち帰り、その国の産業発展に貢献することが期待されています。
そのため、実習は技能等の修得を目的とし、単純な労働力として利用することは制度の趣旨に反するとされています。
また、制度の透明性や実習生の保護を強化するため、2017年には「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」(技能実習法)が施行され、外国人技能実習機構が設立されました。
これにより、技能実習の実施計画の認定や監理団体の許可など、制度の運用がより厳格になりました。

送り出し機関とは?その役割と重要性

送り出し機関とは、どのような機関なのか、概要や役割を解説します。
また、優良送り出し機関を選ぶ際のポイントや満たすべき基準もこちらで説明していきます。
送り出し機関の概要と役割
送り出し機関とは、外国人技能実習生を日本へ送り出すために、各国の政府から許可を得て、技能実習生の募集、選抜、そして日本への送出に関わる一連の業務を行う機関のことです。
送り出し機関は、実習生の母国において、日本での技能実習を希望する候補者を募集し、日本の受け入れ企業が求める要件に合致する人材を選抜します。
その役割は多岐にわたります。
まず、日本の技能実習制度に関する情報を実習生に提供し、制度の趣旨を正確に理解させます。
次に、日本での生活や実習に必要な日本語教育や、日本の文化・習慣、さらには労働関係法令に関する事前講習を実施します。
これにより、実習生が日本でスムーズに実習を開始できるようサポートします。
また、日本への渡航手続き(書類作成、ビザ申請など)も送り出し機関の重要な業務です。
日本の受け入れ企業との間で、技能実習生の受け入れに関する契約を締結し、実習生が安心して日本へ送り出されるよう、橋渡し役を担います。
送り出し機関が果たす役割の重要性
送り出し機関の選定は、技能実習の成否を左右する極めて重要な要素です。
優良な送り出し機関は、質の高い候補者を選抜し、十分な事前教育を実施することで、日本での実習がスムーズに行われるように貢献します。
逆に、不適切な送り出し機関を選んでしまうと、実習生の質が低かったり、事前教育が不十分であったり、あるいは不当な金銭を徴収されるなどのトラブルに巻き込まれるリスクがあります。
特に、保証金や違約金など、技能実習法で禁止されている名目での金銭の徴収を行う送り出し機関は、絶対に避けるべきです。

優良な送り出し機関を見極めるポイント
では、どのようにすれば優良な送り出し機関を見極めることができるのでしょうか。
以下にいくつかのポイントを挙げます。
- 政府の認定・許可を受けているか
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各国の政府が認定した公的機関や、政府から許可を得た機関であることを確認します。
ベトナム、フィリピン、インドネシアなどの主要な送出国では、政府が許可した送り出し機関の一覧を公表している場合があります。
- 過去の実績と評判
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日本の受け入れ企業との契約実績、送り出した実習生の定着率、帰国後の就職状況などの情報を収集し、信頼性を確認します。
監理団体やJITCO(公益財団法人国際人材協力機構)などの関係機関に相談するのも良い方法です。
- 事前教育の内容とレベル
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日本語教育のカリキュラムや期間、生活指導、労働関係法令の教育内容などを具体的に確認します。
可能であれば、現地を視察し、講習の様子を確認することも有効です。
- 不当な金銭の徴収がないか
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保証金、違約金、名目の如何を問わず、技能実習法で禁止されている金銭の徴収が一切ないことを契約書などで明確に確認します。
- サポート体制
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日本への送出後も、実習生や受け入れ企業からの相談に対応してくれる窓口があるか、緊急時の連絡体制が確立されているかなども重要なポイントです。

監理団体とは?その役割と企業にとっての重要性

監理団体とは何か、概要や役割についてを解説します。
また、実習生だけでなく受け入れ企業へのサポートの詳細について、優良な監理団体の選び方も説明します。
監理団体の概要と役割
監理団体とは、技能実習制度において、実習実施者(受け入れ企業)が技能実習を適切に実施しているかを監理し、実習生の保護を図ることを目的とした団体です。
監理団体は、外国人技能実習機構から許可を受けた非営利の団体であり、中小企業協同組合、商工会議所、商工会などがその多くを占めます。
監理団体の主な役割は以下の通りです。
主な役割 | 概要 |
---|---|
実習実施計画のチェックと認定申請 | 受け入れ企業が作成した技能実習計画が、技能実習法の要件を満たしているかを確認し、外国人技能実習機構への認定申請を支援します。 |
実習実施者への指導・助言 | 技能実習が適正に実施されるよう、定期的に実習実施者を訪問し、実習の状況を確認します。 必要に応じて改善指導や助言を行います。 |
実習生からの相談対応 | 実習生からの相談を受け付け、技能実習に関する問題や、日本での生活上のトラブルなどについて支援を行います。 |
関係法令の周知 | 技能実習法をはじめとする関係法令の改正情報などを実習実施者に周知し、法令遵守を促します。 |
定期的な報告 | 外国人技能実習機構に対し、監理の状況や実習の実施状況について定期的に報告を行います。 |
監理団体が企業にとって果たす役割
監理団体は、受け入れ企業にとって非常に心強い存在です。
技能実習制度は複雑な法令や手続きが多いため、自社だけで全てを適切に運用していくことは容易ではありません。
監理団体は、これらの制度を熟知しており、企業が法令を遵守しながら円滑に技能実習を実施できるよう、専門的な支援を提供してくれます。
また、万が一実習生との間でトラブルが発生した場合でも、監理団体が間に立って相談に乗ったり、解決に向けてサポートしたりしてくれます。
これにより、企業は技能実習に集中し、実習生も安心して実習に打ち込むことができる環境が整います。
優良な監理団体を見極めるポイント
優良な監理団体を選定することも、技能実習の成功には不可欠です。
- 許可の種類と実績
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外国人技能実習機構からの許可を受けているか、また「一般監理事業」の許可を受けているか(優良な監理団体の要件の一つ)を確認します。
過去の監理実績や、受け入れ企業の定着率なども参考になります。
- 実習実施者へのサポート体制
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定期的な訪問頻度、相談窓口の設置、緊急時の対応体制などを確認します。
具体的にどのような支援を行ってくれるのか、事前に説明を受けることが重要です。
- 実習生へのサポート体制
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実習生からの相談にどのように対応しているか、日本語能力向上のための支援、生活指導なども確認します。
実習生が安心して日本で生活できるようなサポートが十分に提供されているかが重要です。
- 費用
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監理費の内容や徴収方法が明確であるか確認します。
不透明な費用や、過剰な費用を徴収する団体は避けるべきです。
- 専門性とネットワーク
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技能実習に関する専門的な知識を有しているか、また送り出し機関や行政機関との連携が密であるかなども重要なポイントです。
- 地域性
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自社の所在地域に近く、迅速に対応してくれる監理団体を選ぶことも、日々の連絡や訪問においてスムーズな連携を可能にします。
送り出し機関と監理団体の連携:成功への鍵

送り出し機関と監理団体の連携はどうあるべきかを解説します。
また、QA形式で人事担当者様が知っておいた方が良い点などもお伝えします。
両者の協力関係の重要性
送り出し機関と監理団体は、技能実習制度において、車の両輪のような存在です。
両者が密接に連携し、協力し合うことで、技能実習は円滑に実施され、実習生の日本での生活と実習が充実したものになります。
送り出し機関は、日本の受け入れ企業の要件を正確に理解し、それに合致する人材を選抜し、事前教育を行います。
一方、監理団体は、送り出し機関から送り出された実習生を日本で受け入れ、実習実施者への指導や実習生のサポートを行います。
この連携がうまくいかない場合、例えば、送り出し機関が実習生に不十分な事前教育しか行わなかったり、監理団体が実習実施者への指導を怠ったりすると、トラブルが発生しやすくなります。
実習生が日本での生活に馴染めなかったり、技能実習の目的が達成されなかったりする原因となる可能性も十分に考えられます。
円滑な連携のためのポイント
- 情報共有
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送り出し機関と監理団体が、実習生の情報、実習計画、トラブルの発生状況など、必要な情報を密に共有し、連絡を取り合うことが重要です。
- 定期的な協議
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定期的にオンライン会議や訪問などを通じて、技能実習の進捗状況や課題について協議し、協力体制を強化することが望ましいです。
- 問題発生時の共同対応
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万が一トラブルが発生した際には、両者が連携して迅速に対応し、解決に努めることが必要です。
実習生の安全と安心を最優先に考え、適切な支援を行います。
- 二国間取り決め(MOC)の理解
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日本と送り出し国との間で締結されている二国間の覚書(MOC: Memorandum of Cooperation)の内容を両者が理解し、それに従って業務を行います。
MOCには、送り出し機関の要件や、保証金などの金銭徴収の禁止事項などが定められていることが多く、遵守が求められます。
- 技能実習生の受け入れから帰国まで
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技能実習生の受け入れから帰国まで、送り出し機関と監理団体では連絡を密に取り合い、外国人実習生の各フェーズでのサポートを行います。
例えば、入国手続きや健康面・生活面など実習中のサポート、帰国手続きも連携し行います。
受け入れ前の準備と選考
技能実習生の受け入れを検討する際、まず、自社でどのような職種で技能実習生を受け入れたいか、人数、期間などを明確にします。
次に、信頼できる監理団体を選定し、相談します。
監理団体は、受け入れ企業の要望をヒアリングし、適切な送り出し機関を紹介してくれる場合があります。
送り出し機関は、日本の企業が求める要件を満たす候補者を募集し、選抜します。
この段階で、候補者の日本語能力、技能レベル、学習意欲などを十分に確認することが重要です。
オンライン面接などを実施し、候補者と直接コミュニケーションを行うことも有効です。
入国から実習開始まで
実習生の日本への入国後、監理団体は実習生の空港出迎え、日本での生活に関するオリエンテーション、住民登録などの手続きを支援します。
また、実習実施者への引き渡し前に、日本の労働関係法令や生活ルール、技能実習制度の趣旨などを改めて説明する講習を行うこともあります。
実習実施者は、実習生を受け入れた後、実習計画に基づき、技能実習を実施します。
監理団体は、実習が適切に行われているか、定期的に訪問し、実習生や実習指導員からのヒアリングなどを通じて確認します。
実習中のサポートとトラブル対応
実習中は、実習生が日本の環境に慣れないことや、言葉の壁、文化の違いなどからトラブルや悩みを抱えることもあります。
監理団体は、実習生からの相談窓口となり、問題解決に向けて支援を行います。
病気や怪我の場合の病院受診のサポート、生活相談、人間関係の問題など、多岐にわたる支援が求められます。
実習実施者も、実習生が安心して実習に打ち込めるよう、良好な職場環境を提供し、実習指導員や生活指導員が実習生に寄り添った支援を行います。
帰国とフォローアップ
技能実習期間が修了すると、実習生は母国へ帰国します。
監理団体は、実習生の帰国手続きを支援します。
送り出し機関は、帰国した実習生の就職を支援したり、日本で培った技能を活かせるようサポートしたりする役割も担っています。
技能実習制度は、単なる人材の受け入れで終わるものではありません。
日本と送り出し国との間の国際協力関係を築き、帰国後の実習生が母国の発展に貢献できるようなフォローアップまで含めて考えることが重要です。
よくある質問と注意点:人事担当者が知っておくべきこと
まとめ:外国人技能実習制度活用の成功に向けて

外国人技能実習制度は、日本企業にとっての人材確保だけでなく、送り出し国の発展にも貢献する、意義深い制度です。
しかし、その運用には、送り出し機関と監理団体という二つの重要な機関との密接な連携が不可欠であり、法令遵守と実習生保護の観点から細心の注意が必要です。
人事担当者様には、本記事で解説した送り出し機関と監理団体の役割や、優良な機関・団体を見極めるポイントを参考に、貴社の技能実習制度の運用が成功することを心から願っています。
外国人技能実習機構のウェブサイトや、JITCOなどの関係機関の資料も参考にしながら、制度に関する最新の情報を常に確認し、適切な対応を行いましょう。
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