送り出し機関と特定技能制度:人事担当者が知るべき外国人材活用の全貌

送り出し機関 特定技能

近年、日本企業は深刻な人手不足に直面しており、特に介護、建設、農業などの分野でその傾向が顕著です。

このような状況下で、外国人材の受け入れは企業の持続的な成長を支える上で不可欠な要素となっています。

本記事では、外国人材の雇用を検討している人事担当者の皆様に向けて、外国人材受入れ・採用の重要なパートナーとなる「送り出し機関」の役割と、外国人材が日本で働くための主要な在留資格である「特定技能」制度について解説します

「特定技能」の概要から具体的な活用方法やメリット、注意点また、技能実習制度との違いまでを一つ一つ網羅し、解説します。

目次

送り出し機関とは? その役割と重要性

送り出し機関の職員

送り出し機関とは、外国で働くことを希望する自国民を、日本を含む海外の企業に紹介し、必要な支援を行う現地の機関です

特定技能外国人の受け入れ・採用を検討する企業にとって、信頼できる送り出し機関との連携は、円滑な人材確保と定着のために極めて重要です。

送り出し機関の概要と機能

送り出し機関は、以下の多岐にわたる業務を実施しています。

人材募集と選抜

多くの候補者の中から、企業の求めるスキルや経験、人物像に合致する人材を募集し、選抜します。

日本語教育

日本で働く上で不可欠な日本語能力の向上を目的とした教育を行っています。

特に、特定技能の在留資格取得には一定の日本語能力が求められます。

技能訓練

特定技能で求められる専門的な技能を習得させるための訓練を行います。

これにより、日本での就労がスムーズになります。

日本文化・習慣の指導

日本の文化や習慣、生活マナーなどに関する情報提供や指導を行い、日本での生活への適応を促します。

渡航手続き支援

査証(ビザ)の申請や航空券の手配など、日本への渡航に必要な各種手続きをサポートします。

トラブル発生時の対応

送り出した人材が日本で困ったことやトラブルが発生した場合、現地でサポートを行うこともあります。

主要な送り出し国とそれぞれの特徴

特定技能の外国人材の送り出し国は多岐にわたりますが、特にミャンマー、ベトナム、フィリピン、インドネシア、ネパール、カンボジアなどが挙げられます。

それぞれの国には以下のような特徴があります。

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特徴
ベトナム勤勉で親日的とされる人材が多く、日本語教育にも力を入れています。
フィリピン英語が公用語であり、コミュニケーション能力が高い人材が多い傾向があります。介護分野での技能実習生の実績も豊富です。
インドネシアイスラム教徒が多いですが、多様な文化を持つ国です。日本への関心も高く、日本語学習意欲の高い人材も多いです。
ミャンマー真面目で温厚な国民性が特徴です。近年、日本への送り出しが増加傾向にあります。
ネパール勤勉で、家族を大切にする国民性があり、日本で働くことに意欲的な人材が多く見られます。
カンボジア日本語教育にも力を入れ始めており、今後特定技能人材の送り出しが期待されます。


これらの国々以外にも、バングラデシュ、スリランカ、モンゴル、ウズベキスタン、インド、タイ、パキスタンといった国々も特定技能の送り出し国として協力体制を締結しています。

各国の情報を確認し、自社に最適な人材を検討することが必要です。

優良な送り出し機関の選び方

優良な送り出し機関を選択することは、外国人材受入れの成功を左右する重要な要素です。

以下の点に注意して検討しましょう。

注意点
注意点その
認定・登録状況

各国の政府によって正式に登録され、認定を受けている機関であるかを確認しましょう

日本と送り出し国との間で締結された覚書(MOC)に基づき、適切な送出を行う機関であることが必要です。

一覧を公表している国もあります。

注意点その
実績と評判

これまでの送り出し実績や、実際に利用した企業の評判を確認しましょう

注意点その
教育体制

日本語教育や技能訓練のカリキュラム、指導体制が充実しているか確認しましょう。

特に、特定技能の評価基準に合致した教育が実施されているか確認が必要です

注意点その
サポート体制

渡航後のフォローアップやトラブル発生時の対応について、どのようなサポートを行うか確認しましょう

注意点その
透明性

手数料や費用の内訳が明確で、不当な請求がないか確認しましょう

例)現地での事務所や関係団体との協力体制が整っているか。

参考:出入国在留管理庁:特定技能に関する二国間の協力覚書

特定技能制度の概要と活用

建設現場で働く特定技能外国人

特定技能制度は、2019年4月に施行された新たな在留資格で、深刻な人手不足に陥っている分野において、一定の専門性・技能を持つ外国人を受け入れることを目的としています。

特定技能制度とは?

特定技能制度は、従来の技能実習制度とは異なり、即戦力となる外国人を雇用できる点が大きな特徴です

対象となる職種は、介護、建設、農業、漁業、飲食料品製造業など、計12分野(2025年6月現在、12分野から14分野に拡大予定)が指定されており、今後も拡大される可能性があります。

特定技能の在留資格は、特定技能1号特定技能2号の2種類があります。

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項目特定技能1号特定技能2号
在留期間最長5年 更新可能(事実上永住可能)
家族の帯同原則不可可能
対象分野12分野(2025年6月現在)2分野(建設、造船・舶用工業)※今後拡大予定
求められる技能水準特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする技能特定産業分野に属する熟練した技能
日本語能力水準日常生活や業務に必要な日本語能力(日本語能力試験N4相当以上)

参考:出入国在留管理庁:特定技能制度

特定技能人材を受け入れるメリット

企業が特定技能人材を雇用するメリットは多岐にわたります。

人手不足の解消

深刻な労働力不足に直面している分野において、即戦力となる人材を確保できます。

即戦力となる人材の確保

特定技能人材は、技能試験や日本語試験に合格しているため、一定レベルの技能と日本語能力を保有しています。

コスト削減

技能実習制度と比較して、受入れにかかる費用が抑えられる場合があります。

多様な人材の活用

さまざまな国籍の外国人材を受入れることで、社内の多様性が増し、新たな視点や価値観が生まれる可能性があります。

国際競争力の強化

グローバルな視点を持つ人材を雇用することで、企業の国際競争力を高めることができます。

特定技能人材受け入れのプロセス

特定技能人材を受け入れるためのプロセスは、以下のステップで進められます。

ステップ
STEP
求人募集・選考

送り出し機関を通じて、または自社で募集を行います。

STEP
雇用契約の締結

候補者と雇用契約を締結します。

この際、日本の労働基準法に則った契約内容であるか確認が必要です

STEP
在留資格認定証明書交付の申請

地方出入国在留管理局に在留資格認定証明書の申請を行います。

この申請には、必要な書類を多数提出する必要があります。

STEP
ビザの取得

認定証明書が交付されたら、外国人は現地の大使館・領事館でビザの申請を行います。

STEP
入国・就労開始

ビザが発給されたら、外国人は日本に入国し、就労を開始します。

STEP
支援計画の実施

 特定技能の外国人を受け入れる企業は、登録支援機関に委託するか自社で、外国人に対する生活支援(住居確保、日本語学習の機会提供、相談対応など)を実施する必要があります

特定技能制度と技能実習制度の違い

特定技能制度と技能実習制度は、どちらも外国人を日本で受け入れる制度ですが、目的や制度設計に大きな違いがあります。

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項目特定技能制度技能実習制度
目的人手不足の解消、即戦力の確保開発途上国への技能移転、国際貢献
在留資格特定技能1号・2号技能実習1号・2号・3号
雇用形態直接雇用直接雇用
転籍原則可能(同一分野内)原則不可
家族帯同2号は可能、1号は原則不可原則不可
受入れ機関特定技能所属機関(企業)監理団体(企業)または企業単独型実習実施者
日本語能力一定の日本語能力が必要日本語学習の努力義務
支援義務企業または登録支援機関による支援が義務付け監理団体による監理・支援

特定技能人材受け入れにおける注意点と対策

求人募集のサイン

特定技能人材の受け入れは、企業にとって大きなメリットがある一方で、いくつか注意すべき点があります。

適切な送り出し機関の選択と連携

前述の通り、信頼できる送り出し機関の選択は非常に重要です。

不適切な機関との連携は、トラブルの原因となり、企業の評判にも影響を与えかねません。複数の機関から情報を収集し、慎重に検討しましょう。

登録支援機関の活用

特定技能の外国人材を受け入れる企業は、外国人に対する支援計画を策定し、実施する義務があります。

この支援業務を自社で行うことが難しい場合、登録支援機関に委託することが可能です。

登録支援機関は、出入国在留管理庁に登録された機関で、外国人の日本での生活をサポートします

労働環境と生活環境の整備

外国人材が安心して日本で働くためには、適切な労働環境と生活環境を整備することが必要です。

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労働条件日本の労働基準法を遵守し、賃金、労働時間、休日などを明確に提示しましょう。
住居適切な住居の確保を支援しましょう。現地での情報収集や、不動産業者との連携も可能です。
日本語学習の機会業務上必要な日本語能力の向上をサポートするため、日本語学習の機会を提供しましょう。
相談体制困りごとや不安を相談できる体制を整えましょう。

文化・習慣の違いへの理解と配慮

外国人材は、日本とは異なる文化や習慣を持っています。

彼らの文化背景を理解し、尊重する姿勢が重要です

食事、宗教、休暇の習慣など、細やかな配慮が円滑なコミュニケーションと良好な関係構築につながります。

費用に関する情報の透明性

送り出し機関や登録支援機関から提示される費用について、その内訳をしっかりと確認し、不透明な費用がないか確認しましょう

不当な手数料や借金を負わせる機関には注意が必要です。

法改正や制度変更への対応

特定技能制度は、今後も社会情勢に合わせて法改正や制度変更が行われる可能性があります。

常に最新の情報を収集し、適切な対応ができるよう準備しておくことが必要です

特定技能と技能実習からの移行:人材活用の新たな方法

キャリアアップと書かれた文字

技能実習生として日本に在留している外国人材が、特定技能の在留資格に移行するケースが増えています。

これは、企業にとって経験豊富な人材を確保できるメリットがあります。

技能実習生から特定技能への移行プロセス

技能実習生が特定技能に移行するためには、以下の要件を満たす必要があります。

要件
  • 技能実習2号を良好に修了していること
  • 特定技能試験に合格していること(一部職種は免除)
  • 日本語能力試験N4相当以上の日本語能力を有していること(一部職種は免除)

企業は、移行を希望する技能実習生に対して、特定技能の在留資格への変更申請をサポートし、必要な書類を準備する必要があります。

移行のメリットと注意点

技能実習生からの移行は、企業にとって以下のようなメリットがあります。

即戦力

すでに日本の生活や業務に慣れており、教育コストを削減できます。

信頼関係

既存の実習生であるため、すでに信頼関係が構築されています。

定着率

日本での就労経験があるため、早期退職のリスクが低い傾向にあります。

一方で、移行に際しては、技能実習生の意向を尊重し、適切な手続きを行うことが重要です。

不適切な方法で移行を促すことは、法令違反につながる可能性があります。

まとめ:外国人材活用で企業の未来を切り拓く

雇用契約の成立をイメージした場面

特定技能制度は、日本企業の人手不足を解消し、国際競争力を高めるための重要なツールです。

そして、その活用において、信頼できる送り出し機関との連携は成功の鍵となります。

人事担当者の皆様には、本記事で解説した送り出し機関の役割、特定技能制度の概要、そして受け入れにおける注意点と対策を理解し、適切な方法で外国人材の雇用を進めていただくことをお勧めします。

外国人材を単なる労働力としてではなく、企業の新たな価値創造に貢献するパートナーとして迎え入れることで、企業の持続的な成長と発展を可能にすることができます

送り出しカフェでは、外国人財をお探しの人事担当者様や、日本に働きに来られた外国人が安心できる環境で末永く働けるよう、下記3点をお約束します。

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スムーズな人財探しのお手続きができたらとの思いです。

ぜひ、送り出しカフェをご活用ください。

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この記事を書いた人

三木 雅史(Masafumi Miki) 株式会社E-MAN会長
1973年兵庫県生まれ / 慶応義塾大学法学部法学科卒
・25歳で起業 / デジタルガレージ / 電通の孫請でシステム開発
・web通販事業を手掛ける
・2006年にオンライン英会話を日本で初めて事業化
・2019年外国人の日本語教育を簡単、安価にするため
 日本語eラーニングシステムを開発、1万人超の外国人が日々学習中

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