「人手不足の問題を解決したい…。ベトナム人材の採用をしたいけれど、何から始めたらいいのかわからない。」そうお悩みの人事担当者様はいらっしゃいませんか?
日本が直面する労働力不足を背景に、ベトナム人材の受け入れは不可欠であり、そのプロセスにおいて送り出し機関は募集から渡航前教育、そして日本での生活支援に至るまで多岐にわたる機能を提供しています。
しかしながら、高額な手数料を請求する、不正なブローカーが間に立つこと、さらに不十分な事前教育といった長年の課題が、ベトナム人材の多額の借金や失踪問題、さらには人権侵害に繋がるリスクを依然として抱えています。これらの問題に対処するため、ベトナム政府は新たな法律を施行し、業界団体は星評価システムを導入するなど、透明性と倫理的な慣行の向上に努めています。日本側も、JITCOやJICAといった機関を通じて情報提供や現地での改善プロジェクトを推進し、受入れ企業に対する監督を強化しています。
本記事は、これらの課題と改善努力を詳細に分析し、日本の受入れ企業が信頼できる送り出し機関を選定し、倫理的かつ持続可能な外国人材受入れを実現するための実践的な指針を提供します。特に、技能実習制度から「育成就労制度」への移行が控える中、送り出し機関との連携の質は、将来の外国人材戦略の成功を左右する決定的な要素となるでしょう。
日本における外国人材プログラムにおけるベトナムの送り出し機関の役割

日本の外国人材をめぐる状況や、ベトナムの送り出し機関の役割を解説します。
日本の外国人材をめぐる状況(技能実習・特定技能)
日本は深刻な人口減少と労働力不足に直面しており、様々な産業分野で外国人材の受入れが不可欠となっています。この課題に対応するため、日本政府は主に「技能実習制度」と「特定技能制度」という二つの枠組みを通じて外国人材の活用を進めてきました。技能実習制度は、開発途上国への技術移転を通じた国際貢献を目的としていますが、特定技能制度は、国内の特定産業分野における労働力不足を補うことを主眼としています。これらの制度は、日本の経済活動と社会基盤を維持する上で、極めて重要な役割を担っています。
近年、日本の外国人材政策は大きな転換期を迎えています。2019年に創設された特定技能制度は、労働力不足への対応を強化するため、熟練者が長期就労できる「2号」の対象分野を2024年6月にも拡大する方向で調整が進められています。これは、日本がより直接的に労働力確保を目指していることを示唆しています。
同時に、従来の技能実習制度は廃止され、新たに「育成就労制度」が導入される予定です。この制度改正案は2024年5月21日に衆議院を通過し、参議院に送付されました。これらの動きは、日本の外国人材受入れ政策が、単なる「技術移転」から、より「人材育成」と「労働力確保」に重点を置いた、持続可能で公平なシステムへと進化しようとしていることを示しています。過去の技能実習制度における問題点への認識が深まり、より安定した労働環境と、労働者の移動の自由を確保する方向への転換が図られていると考えられます。日本の受入れ企業は、これらの政策変更を注視し、採用プロセスや労働者の期待、コンプライアンス要件への影響を理解し、迅速に適応していく必要があります。
参考:
JITCO【外国人技能技能実習制度とは】
出入国在留管理庁【特定技能制度】
ベトナム送り出し機関の不可欠な役割
日本企業がベトナム人労働者を受け入れる際、ベトナム送り出し機関の利用は単なる選択肢ではなく、現在の二国間協定およびベトナムの国内規制によって義務付けられています。これらの機関は、ベトナムから日本への労働者の合法的かつ組織的な派遣において、主要な窓口としての機能を果たしているのです。
ベトナムの送り出し機関は、ベトナム労働・傷病兵・社会問題省(MOLISA)傘下の海外労働管理局(DOLAB)によって公式に認定されている必要があります。この認定は、彼らが合法的に事業を行い、人材派遣プロセスに参加するための前提条件です。送り出し機関の利用が義務付けられている背景には、日本とベトナム間の二国間協定が存在します。これらの協定は、悪質な仲介業者による搾取や賃金未払いといった過去に多発した問題から外国人労働者を保護し、安定した労働環境を構築することを目的としています。
この制度的な要件は、労働者保護のための重要なゲートキーパーとしての送り出し機関の役割を明確にしています。日本の受入れ企業は、ベトナム人労働者を採用する際に、これらの認定された送り出し機関を介さないことは許されず、重大な法的および倫理的リスクを伴うことを認識する必要があります。信頼できる送り出し機関の選定は、倫理的かつ合法的な採用プロセスを確保し、潜在的な法的責任や企業イメージの毀損を回避するための最初の、そして最も重要なステップとなります。
参考:在ベトナム日本国大使館【ベトナムの送出機関とベトナム労働者派遣協会】
ベトナムの送り出し機関:機能と責任について

ベトナムの送り出し機関にはどんな機能があるのかや、責任について解説します。
募集、選考、マッチングプロセス
ベトナムの送り出し機関は、海外での就労を希望する労働者にとって最初の接点であり、候補者の特定、評価、そして日本の具体的な求人要件とのマッチングという重要なプロセスを担っています。
送り出し機関は、「募集、選考、マッチング」という核となる機能を持っていて、その役割は、技能実習生の初期選考から渡航前教育、健康診断に至るまで多岐にわたります。特に、看護師や介護福祉士といった専門職の場合、ベトナムの規制により、送り出し機関は独自の育成施設を保有するか、看護・介護スキルおよび外国語能力を養成するための職業教育施設と連携することが条件付けられているのです。
送り出し機関が果たすこれらの包括的な責任、特に選考、マッチング、そして特定の専門職に対する専門的な訓練施設への重点は、ベトナム人材の質を管理する主要なメカニズムとして機能していることを示しています。これは、日本でのベトナム人財の成功が、彼らの渡航前の準備に大きく依存しているという認識に基づいていると考えられていて、日本の受入れ企業は、送り出し機関の募集・選考方法を徹底的に吟味することが不可欠です。強固な初期スクリーニング、スキル評価、語学力テストは重要であり、専門職の場合は、送り出し機関の訓練施設や提携先の質(に準拠)を確認することで、候補者が真に必要な能力を備えているかを保証できます。
渡航前教育と訓練(日本語教育、文化、技能)
送り出し機関の役割の根幹をなすのは、包括的な渡航前教育の提供です。この訓練は、労働者が日本での生活と仕事に必要な基礎知識とスキルを習得し、スムーズな移行と社会への統合を促進することを目的としています。
送り出し機関は「渡航前教育」を提供する責任があります。この教育は、日本語能力だけでなく、日本の文化、習慣、法律、そして実習や雇用の具体的な条件といった不可欠な側面も網羅しています。以前の規制では、最低520時間の日本語教育が義務付けられており、技能実習に必要な知識も教授されていました。これは、言語と実践的知識への相当な投資を示しています。
徹底した渡航前教育の重要性は、包括的な訓練を受けた実習生が、日本入国後の文化や言語のギャップが少なく、スムーズに技能実習を開始できるという事実によって強調されています。この詳細な教育要件は、潜在的な統合の課題に積極的に対処しようとする意図を明確に示しています。これは、両国政府が、外国人材プログラムの成功が、労働者が新しい環境に効果的に適応し、コミュニケーションを取る能力に大きく依存していると認識していることを意味します。これにより、誤解や不満が生じる可能性が低減されます。
日本の受入れ企業は、質の高い渡航前訓練に真摯に取り組む送り出し機関を優先すべきです。詳細なカリキュラムの要求、講師の資格の評価、さらには元研修生との対話を通じて、プログラムの有効性に関する貴重な情報を得ることができます。十分に準備された労働者は、生産性が高く、迅速に適応し、定着する可能性が高いため、最終的に受入れ企業に利益をもたらします。
行政・ビザサポート
送り出し機関は、海外での雇用に必要な複雑な行政・法的プロセスを円滑に進める上で不可欠な存在であり、ベトナムと日本の両国の法律に準拠して、必要な許可、契約、ビザがすべて確実に取得されるようにします。
送り出し機関は、「渡航前手続きのサポート」を重要な役割として提供します。ベトナム人が海外で働くためには、ベトナムのDOLABが発行する「推薦状(許可証)」が必須です。この推薦状には、公認された送り出し機関、日本の受入れ監理団体、日本の受入れ企業、そして個々の労働者の詳細が記載されており、公認された送り出し機関の存在は、この推薦状を入手するために不可欠です。また、在留資格認定証明書(COE)が発行された後、ベトナムの日本大使館または領事館でのビザ申請プロセスも支援します。
DOLABの推薦状や、複雑なビザ申請プロセスが必要とされることは、国際的な労働移動に伴う相当な行政的障壁が存在することを示しています。送り出し機関は、ベトナム人材と日本企業の両方に代わって、これらの法的および行政的複雑さを乗りこなす専門知識を持つ重要な仲介役として機能しているのです。これらの手続きにおける彼らの効率性と正確性は、遅延を回避し、法的コンプライアンスを確保するために極めて重要です。日本の受入れ企業は、送り出し機関の行政手続きにおける実績を評価すべきです。書類の遅延や誤りは、採用スケジュールを大幅に混乱させ、法的複雑さを引き起こす可能性があります。この分野で実績のある送り出し機関は、プロセス全体を合理化し、受入れ企業にとってより予測可能で負担の少ないものにすることができます。
入国後サポートと帰国支援
信頼できる送り出し機関の責任は、労働者がベトナムを出国した後も継続し、日本滞在中の継続的なサポートや、最終的な帰国時の支援まで含まれます。この包括的なアプローチは、労働者の福祉とプログラムの成功に貢献します。
送り出し機関は、「在日中のフォロー、帰国後の支援」を提供することが期待されています。INTRACO PLUSのような一部の積極的な送り出し機関は、日本の監理団体と積極的に連携し、「トラブル発生時の問題解決への迅速対応や、通訳者派遣、定期的に受け入れ企業を訪問し実習生を指導する」など、日本駐在中の管理をしっかり行っています。
入国後のサポートと帰国支援の提供は、より包括的な労働者福祉モデルへの移行を示しており、成功した人材配置には継続的なケアが必要であることを認めています。これはまた、受入れ企業にとって重要なリスク軽減戦略としても機能します。十分にサポートされた労働者は、深刻な問題に遭遇したり、失踪したり、法的または評判上の問題を引き起こしたりする可能性が低くなります。積極的なサポートは、小さな問題が大きな問題にエスカレートするのを防ぎ、労働者と企業の両方にとってより円滑な経験を保証します。日本の受入れ企業は、包括的な入国後サポートに真剣に取り組む送り出し機関を優先すべきです。これは倫理的な採用原則に合致するだけでなく、労働者の定着率向上、生産性向上、そしてより安定した労働力に直接貢献します。
役割分野 | 主な責任と業務内容 |
---|---|
募集・選考・マッチング | 候補者の発掘、初期スクリーニング、スキル評価、日本の求人要件とのマッチング。 |
この表は、日本の関係者にとって、ベトナム送り出し機関が担う広範な責任を明確かつ構造的に概観できる迅速な参照ガイドとして機能します。
法的・規制環境

ベトナムの法律や規制のほか、日本の規制機関やガイドラインについて解説します。
ベトナムの法律と規制(例:法律69/2020/QH14、DOLAB)
ベトナムは、自国労働者の海外派遣を管理するための洗練された、かつ進化し続ける法的枠組みを維持しており、これは労働力輸出の促進と国民の保護の両方を目的としています。海外労働管理局(DOLAB)は、この規制環境の中心的な機関です。
海外雇用を規定する主要な法律は、2022年1月1日に施行された「契約に基づいて外国で働くベトナム人労働者に関する法律」(法律69/2020/QH14)です。この法律は、具体的な施行ガイドラインを定める詳細な政令(例:112/2021/ND-CP)や通達(例:21/2021/TT-BLDTBXH)によって補完されています。これらの法改正は、ベトナムが労働力輸出政策を現代化しようとする継続的な努力を反映しています。
労働・傷病兵・社会問題省(MOLISA)傘下のDOLABは、すべての送り出し機関の認定、許認可、監督を担当する主要な政府機関です。また、ベトナム国民が海外で働くために必要な推薦状(許可証)を発行する権限も有しています。特筆すべきは、2022年3月3日付のDOLABの通知により、日本の受入れ機関と契約できるベトナム送り出し機関の数に対する以前の制限が撤廃されたことです。この政策変更は、ベトナムの労働者派遣市場におけるさらなる自由化と、競争の激化を示唆している可能性があります。
新しい包括的な法律の制定と、日本のパートナー送り出し機関の数に関する特定の政策変更は、ベトナムの規制環境がダイナミックかつ適応的であることを明確に示しています。これは、ベトナムが労働力輸出へのアプローチを積極的に洗練しており、プロセスを合理化し、効率を高め、市場の需要に対応しようとしていることを意味します。パートナー数の制限撤廃は、送り出し機関間の競争を促進し、サービスの質と価格に多様性をもたらす可能性があります。
日本の受入れ企業は、ベトナムにおけるこれらの法的・政策的動向を認識しておく必要があります。新しい規制は透明性と保護を目的としていますが、競争の激化はパートナー選定においてさらに厳格な企業価値の評価を必要とするかもしれません。これらの変更を理解することは、継続的なコンプライアンスを確保し、採用戦略を最適化するために不可欠です。
日本とベトナム間の二国間協定と協力覚書
日本とベトナム間の外国人材に関する関係は、二国間協定と協力覚書によって公式化されており、これらは労働者派遣と保護のための包括的な枠組みを確立しています。これらの協定は、プログラムの誠実性と倫理的実施を確保するために不可欠です。
日本とベトナム間の二国間協定は、送り出し機関の関与を明確に義務付けており、その主要な目的は外国人労働者の保護にあります。これらの協定は、悪質な仲介業者による搾取や賃金未払いといった過去の問題に対処し、ベトナム人労働者が日本でより安定した安全な労働環境を享受できるようにするために策定されました。
国際人材協力機構(JITCO)は、この二国間協力において重要な役割を担っています。JITCOは、ベトナムのDOLABを含む送り出し国の政府機関と討議議事録(R/D)を締結し、定期的な協議を実施しています。この継続的な対話は、両国間の外国人材プログラムを管理し、改善するために機能しています。
正式な二国間協定と継続的な協議の存在は、日本とベトナム両政府が、倫理的で秩序ある労働力移動を確保することに、高いレベルで共通のコミットメントを持っていることを示しています。この構造化された協力は、個々の企業や労働者が単独では持ちえない、監視と説明責任の基礎的な層を提供します。これは、両国が規制された労働移動の相互利益を認識しつつ、不正行為を積極的に防止しようと努めていることを示唆しています。
日本の受入れ企業は、これらの二国間枠組みの存在を活用することができます。送り出し機関による重大な不遵守や労働者搾取の事例が発生した場合、これらの協定を通じて確立された公式チャネル(例えば、OTITやベトナム大使館労働管理部への報告、そこからDOLABへの連携)は、是正と解決のための道筋を提供します。これはまた、労働者保護を優先するこれらの協定の精神への遵守が、単なる法的要件ではなく、長期的に持続可能な採用のための戦略的要件であることを意味します。
日本の規制機関とガイドライン(OTIT、出入国在留管理庁)
日本では、いくつかの政府機関および準政府機関が外国人材プログラムの監督、重要なガイダンスの提供、そして日本の受入れ機関への情報発信を担っています。これらの機関は、制度内のコンプライアンスと透明性を確保する上で不可欠な役割を果たしています。
外国人技能実習機構(OTIT)は、技能実習制度に特化した外国政府認定送り出し機関のリストを提供する主要な機関です。OTITはさらに、以前認定されていたが後に削除または停止された機関のリストも公開しており、問題のある機関に関する貴重な過去の記録を提供しています。
同様に、出入国在留管理庁(ISA)は、特定技能制度におけるベトナムの認定送り出し機関のリストを維持・公開しています。これらのリストは頻繁に更新されており、2024年7月9日時点のExcel形式のリストも利用可能です。ISAはまた、認定を失った、または一時停止されたベトナムの送り出し機関のPDF文書も提供しています。
国際人材協力機構(JITCO)は、技能実習制度と特定技能制度の両方に対する総合的な支援機関として機能しています。JITCOは、「送り出し機関情報提供サービス」を提供し、各国政府が適格と認めた送り出し機関の概要を提供しています。
複数の日本の機関(OTIT、ISA、JITCO)が、認定、停止、および削除された送り出し機関のリストを積極的に作成し、公開していることは、堅牢で多層的な監督メカニズムを示しています。「削除済み」または「停止済み」リストの提供は特に重要であり、問題のある機関を特定し、フラグを立てる積極的なアプローチを示しています。これは単なる認定を超えて、パフォーマンスとコンプライアンスの記録を含んでいます。
頻繁な更新は、この監督の動的な性質をさらに強調しています。日本の受入れ企業は、ベトナム送り出し機関の正当性と実績を確認するための複数の公式情報源にアクセスできます。この情報は、徹底的なデューデリジェンスを実施し、リスクを軽減するために非常に貴重です。企業は、OTITとISAの両方からのこれらの更新されたリストを参照し、JITCOのサービスを活用して、コンプライアンスを遵守し信頼できる機関と提携し、問題のある過去を持つ機関を避けることを標準的な慣行とすべきです。
財務側面:手数料、透明性、コンプライアンス

受け入れ企業側にとって、大切な財務側面について、説明します。
許容される手数料と費用の内訳
ベトナム人労働者は通常、募集、訓練、行政サービスをカバーするために、送り出し機関に様々な手数料を支払います。これらの手数料は、労働者への過度な経済的負担を防ぐために規制されています。
ベトナムの改正「契約に基づいて外国で働くベトナム人労働者に関する法律」(法律69/2020/QH14)に基づき、送り出し機関が労働者から徴収できるサービス料には上限が設けられています。契約期間12ヶ月ごとに賃金1ヶ月分を超えてはならず、36ヶ月以上の契約の場合でも、合計で賃金3ヶ月分を超えてはなりません。
歴史的に、技能実習制度においては、3年契約で最大3,600米ドル、1年契約で最大1,200米ドルの手数料が許容されていました。これらの手数料の一部はベトナム政府に納付され、国家政策の一環としての側面を持っています。サービス料の他に、労働者は渡航前教育費(6ヶ月の訓練で約15万円)や航空運賃(約5万円)を支払うのが一般的です。
新しい法律の重要な規定として、日本の受入れ側が送り出し機関に管理費(例:1人当たり月額最低5,000円)を支払う場合、この金額はサービス料の一部とみなされます。したがって、労働者が支払うことを許可される金額は、日本側からのこれらの支払い総額によって減額されます。
手数料に関する詳細な規制、明確な上限、および日本側からの支払いが労働者の負担を軽減するメカニズムは、ベトナム政府が労働者の経済的負担を管理し、軽減しようとする明確で進化する政策努力を示しています。これは、高額な手数料が労働者の借金と搾取につながるという長年の問題への直接的な対応です。この変化は、採用費用における労働者と受入れ機関間の責任の共有が進むことを示唆しています。
日本の受入れ企業は、これらの手数料規制を完全に認識しておく必要があります。送り出し機関に管理費を支払うことで、企業は労働者の経済的負担を直接軽減し、倫理的な採用慣行に貢献できます。これは労働者の福祉を向上させるだけでなく、失踪などの問題の既知の原因である過度な借金を労働者が抱えるリスクを減らすことにも繋がります。企業は、これらの上限を超えるか、明確な根拠を欠く手数料体系を厳しく評価すべきです。
手数料に関する規制上限とガイドライン
ベトナムと日本の両国の規制枠組みは、手数料に上限を設け、透明性を義務付けることで、外国人材採用プロセスにおける経済的搾取に対する重要な保護措置として機能しています。
ベトナム政府は、送り出し機関が労働者から徴収できる手数料に明確な上限を設定しています。新しい法律で定義されているこれらのサービス料は、市場開拓、交渉、海外就労期間中の労働者管理といった正当な費用を賄うことを目的としています。
在留資格認定証明書(COE)が発行される前に、技能実習生からいかなる費用も徴収することは厳しく禁止されています。この措置は、採用が確定する前に労働者が経済的コミットメントを負うことから保護するために設計されています。
日本側では、技能実習法第28条により、監理団体が送り出し機関やその他の関係者から、正当な監理費以外の金銭や報酬を受け取ることは明確に禁止されています。この規定に違反した場合、監理団体の許可取消しや、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金といった重い罰則が科される可能性があります。
ベトナムと日本の両国の法的枠組みにおける特定の手数料上限と禁止事項の存在は、搾取的な金融慣行と戦うための協調的で二重のアプローチを示しています。COE発行前の手数料徴収禁止は、労働者を早期の経済的リスクから保護するための重要な予防措置です。日本の監理団体に対する厳しい罰則は、採用チェーンにおける倫理的行動について日本自身の機関に責任を負わせるという日本のコミットメントを強調しています。
日本の受入れ企業は、選択したベトナムの送り出し機関と日本の監理団体の両方が、これらの手数料規制を厳格に遵守していることを確認する必要があります。上限を超える手数料、時期尚早な徴収、または送り出し機関と監理団体間の不法な支払いを示すいかなる兆候も、危険信号と見なすべきです。すべての金融取引を積極的に質問し、検証することは、コンプライアンスを維持し、非倫理的な慣行への共謀を避けるために不可欠です。
受入れ企業にとっての手数料透明性の重要性
外国人労働者の採用に関連するすべての金融取引における透明性は、単なる規制上の理想ではなく、倫理的な慣行の基本的な要件であり、日本の受入れ企業が意図せず搾取的なスキームを支援することを避けるためにも不可欠です。
送り出し機関は、手数料の算出基準を明確に定め、公表することが法的に義務付けられています。さらに、技能実習生がこれらの基準とすべての費用の内訳を十分に理解していることを確認する必要があります。これは、労働者への明確な開示を義務付けるものです。
一般的な目安として、ベトナムの送り出し機関の手数料相場は20万円から60万円とされています。日本の受入れ企業は、過度に高額な、または異常に低額な手数料を請求する送り出し機関には注意を払い、厳しく精査することが推奨されます。これらの極端なケースは、問題のある慣行の兆候である可能性があるためです。
手数料算出基準の明確な公開と労働者への理解の徹底は、搾取を助長してきた歴史的な不透明性に対する直接的な対抗策です。手数料が透明であれば、悪質な業者が隠れたり過度な金額を請求したりすることが著しく困難になります。「高すぎる」または「安すぎる」手数料に関する警告は、これらの相場からの逸脱が、搾取(高額手数料)または不適切なサービス/違法な近道(低額手数料)のいずれかを示す可能性があることを意味します。
日本の受入れ企業は、送り出し機関が請求するすべての手数料について、完全かつ項目別の透明性を要求すべきです。これには、詳細な内訳を要求し、公式ガイドラインや業界平均(20万円〜60万円の範囲など)と比較し、労働者自身がすべての費用を完全に理解していることを確認することが含まれます。この手数料透明性への積極的なアプローチは、倫理的な採用基準を維持し、労働者を借金から保護し、受入れ企業にとっての法的および評判上のリスクを軽減するために不可欠です。
サービス料(労働者から送り出し機関へ) | |
新法(法律69/2020/QH14) | 契約期間12ヶ月ごとに賃金1ヶ月分を超えない。36ヶ月以上の契約では賃金3ヶ月分が上限。 |
旧技能実習制度の上限 | 3年契約で最大3,600米ドル。1年契約で最大1,200米ドル。 |
日本側からの支払いによる減額 | 日本の受入れ側が支払う管理費(例:労働者1人あたり月額最低5,000円)は、労働者が支払うサービス料から直接減額される。 |
教育費 | 渡航前訓練(6ヶ月)で約15万円。 |
航空運賃 | 約5万円。 |
禁止されている手数料・慣行 | |
COE発行前の費用徴収 | 在留資格認定証明書(COE)が発行される前に、労働者からいかなる費用も徴収することは厳禁。 |
保証金・同様の預かり金 | 「保証金」や同様の預かり金の徴収は禁止。 |
無許可ブローカーの介在 | 無許可の個人ブローカーの介在および関連する手数料は禁止。 |
送り出し機関手数料の一般的な推奨範囲 | 全体で20万円から60万円 。 |
日本の受入れ企業にとって重要な表となっております。外国人労働者採用における最も一般的で問題のある側面である手数料に直接言及しているためです。新しいベトナム法と以前の技能実習制度のガイドラインからの具体的な規制上限を統合することで、料金の正当性を評価するための明確なベンチマークを提供します。禁止されている慣行を強調することは、危険信号を特定するための実用的なチェックリストとして機能します。この構造化された提示は、企業が財務の透明性と倫理的コンプライアンスを確保し、労働者が過度な借金を抱えるリスクを軽減する力を与え、それが搾取や失踪の主要な原因となっています。
参考:
契約によるベトナム人海外労働者派遣法改正の概要|OTIT 外国人技能実習機構
「技能実習」ベトナムの送出し機関で不正横行|Need
技能実習生を迎える /ベトナム編 |中村国際行政書士事務所
技能実習制度の改正点とは? 悪質なブローカーの問題、管理体制が不十分である点など、いちから解説!|ガイダブルジョブス
技能実習制度の現状。ブローカー仲介料と制度の実態について解説|特定技能 ビザカレッジ
特定技能の送り出し機関とは?役割や選ぶ際のポイントを解説|かるける
根深い課題とリスク

ベトナム人材採用において、根深い課題とリスクを説明します。
高額な手数料と搾取的な慣行(ブローカー、保証金)
強固な規制枠組みが存在するにもかかわらず、ベトナム人材に課される過度な手数料の問題は、非公式なブローカーや違法な「保証金」の関与によって悪化し、依然として深刻かつ広範な課題として残っています。これは労働者に多額の借金負担を負わせ、脆弱性を生み出しています。
送り出し機関による技能実習生への高額な手数料徴収の問題は、長年にわたる根深い問題です。外国人技能実習機構(OTIT)が、高額な手数料を含む不適切な慣行に関する79件の事例をベトナム政府に通報したにもかかわらず、最終的にライセンスが取り消されたのはわずか2件でした。これは、規制の有効な執行における重大な課題を浮き彫りにしています。
労働者を契約に縛り付ける「保証金」の徴収(没収の脅威のもとで)や、無許可の個人ブローカーの介在は明確に禁止されていますが、依然として広く行われていると疑われる慣行です。懸念される統計として、日本に派遣される外国人技能実習生の約60%が「個人の仲介」またはブローカーを介して募集されていることが明らかになっています。これらのブローカーは、送り出し機関自体から1人あたり最大14万円程度の高額な仲介料を要求することが多く、これが最終的に労働者が支払う手数料全体の高騰に寄与しています。
これらの高額な手数料によって生じる多額の借金は、労働者にとって精神的・経済的プレッシャーの主要な原因となり、しばしば絶望感と指定された雇用先からの失踪傾向を高めます。さらに、一部の送り出し機関は、日本の制度要件に適合させるために労働者の履歴書を偽造していることが判明しており、採用プロセスの完全性を損なっています。
明確な規制にもかかわらず、高額な手数料とブローカーの介在が継続していること、そして日本からの公式報告にもかかわらずベトナム政府によるライセンス取消率が著しく低いことは、根深い制度的脆弱性を示しています。ベトナム政府が「証拠不足」を理由とするか、腐敗の潜在的な影響があることは、彼らの内部執行メカニズムに「ブラックボックス」が存在することを示唆しています。政府系機関さえも関与している可能性があるという事実は、説明責任をさらに複雑にしています。高額な手数料、借金、そして労働者の失踪との直接的な因果関係は、経済的搾取がいかに外国人材プログラムの安定性と目的を直接的に損なうかを強調しています。履歴書偽造の問題は、日本企業が対処しなければならないもう一つの欺瞞の層を追加します。
日本の受け入れ企業は、倫理的慣行の保証として公式認定だけに頼ることはできません。彼らは、過度な手数料やブローカーの介在の兆候を検出するために、直接的で機密性の高い労働者とのコミュニケーション(適切かつ安全な場合)を含む、非常に厳格で多層的な企業価値の評価を実施する必要があります。ベトナムにおける重大な執行上の課題は、無意識の共謀であっても、深刻な法的および評判上の結果につながる可能性があるため、問題のあるパートナーを特定し避けるというより大きな責任が日本企業に課されることを意味します。
渡航前教育・訓練における質の懸念
外国人労働者の渡航前教育・訓練、特に日本語能力に関する質のばらつきは、重要なリスク要因です。これらの分野での準備不足は、コミュニケーションの大きな障壁となり、文化や職場への統合を困難にする可能性があります。
多くの技能実習生は、不十分な日本語能力で日本に到着し、職場や日常生活で重大なコミュニケーションの困難を抱えています。この効果的なコミュニケーションの欠如は、孤立感やフラストレーションを引き起こし、不満や指定された雇用先からの失踪リスクを高める要因となります。
不十分な日本語教育と、その後のコミュニケーション問題、孤立感、さらには失踪との直接的な因果関係は、重要でありながらしばしば見過ごされてきた制度的欠陥を明らかにしています。これは、渡航前訓練における一見小さな問題が、労働者の福祉、生産性、そして外国人材プログラム全体の成功と安定に大きな波及効果をもたらす可能性があることを示唆しています。質の低い訓練の「コスト」は、金銭的なものだけでなく、人的、運用的なものでもあります。
日本の受入れ企業は、渡航前訓練の質を当然のことと考えてはなりません。労働者が適切に準備されていることを確認するために、独自の検証方法(例えば、日本語能力テストの実施や詳細な訓練カリキュラムの確認)を実施すべきです。補足的な日本語訓練への投資や、入国後の現場での強力なコミュニケーションサポートの提供は、これらのリスクを軽減し、より円滑な統合と高い定着率を確保するために必要な措置となる可能性があります。
労働者の失踪と不遵守に寄与する要因
労働者の失踪(無断欠勤)や雇用条件の不遵守は、金銭的負担だけでなく、劣悪な労働条件、不十分な支援体制、文化適応に関する課題など、複数の要因が複雑に絡み合って発生する問題です。
労働者の失踪の主な原因は、送り出し機関に支払った高額な手数料によって生じる多額の借金です。しかし、その他の重要な要因としては、過剰な残業、低賃金、ハラスメントの事例など、過酷な労働条件が挙げられます。これらの条件は、不満と絶望感の環境を作り出します。文化の違いや言語の壁は、コミュニケーションの困難や日本社会・職場への適応の課題に大きく寄与し、孤立感や失踪傾向を高めます。
送り出し機関は、不人気な職種や低賃金の仕事(例:建設業、農業、へき地)の募集に苦労することが多く、これが彼らの募集コストを増加させる可能性があります。これは、労働者が絶望からあまり望ましくない職を受け入れる可能性があり、彼らの不満と失踪のリスクを高めることを意味します。特に懸念される問題は、失踪した労働者、特に借金を抱えている労働者が、日本で活動する悪質なブローカーによって違法な「闇バイト」に誘い込まれる脆弱性が高いことです。これは危険な搾取のサイクルを生み出します。
データは、「プッシュ」要因(高額な初期借金、劣悪な労働条件、文化的・言語的障壁)が労働者を失踪に追い込み、「プル」要因(ブローカーによって助長される違法な「闇バイト」の存在)が彼らの脆弱性を搾取するという、複雑な相互作用を明らかにしています。これは、失踪問題が労働者や送り出し機関のみに起因するものではなく、移動プロセスの様々な段階で複数の利害関係者と脆弱性が関与するシステム的な問題であることを示しています。
日本の受け入れ企業は、失踪のリスクを軽減するために、労働者の福祉に対して包括的なアプローチを採用する必要があります。これには、借金返済を可能にする公正な賃金、合理的な労働時間、安全で敬意ある職場環境、そして文化的・言語的統合のための強固な支援システムの確保が含まれます。企業はまた、失踪した労働者を陥れる可能性のあるより広範な搾取のエコシステムを認識し、違法な労働慣行と戦うための全体的な努力に貢献するために、疑わしい活動を報告する責任を負っています。
規制執行と説明責任における課題
規制や二国間協定が存在するにもかかわらず、これらの規則の効果的な執行と問題のある送り出し機関の説明責任の追及は、依然として大きな課題であり、不遵守のサイクルを永続させています。
前述のとおり、送り出し機関による不適切な慣行に関する79件の報告事例のうち、ベトナム政府がライセンスを取り消したのはわずか2件であり、多くの場合、さらなる措置を講じない理由として「証拠不足」を挙げています。これは、証拠のハードルが高いか、執行におけるその他の根本的な問題を示唆しています。送り出し機関によるライセンス取得やその後の規制執行に、潜在的な腐敗が影響しているとの懸念が提起されています。これは、効果的な監督に対する制度的な障壁を生み出しています。
日本の当局者は、「悪質なブローカー」や問題のある機関の蔓延を認識しつつも、直接介入したり制裁を課したりするのではなく、主にベトナム政府に情報を提供する形で対応しています。これは、日本の域外規制権限の限界を浮き彫りにしています。特定技能制度(および間もなく導入される育成就労制度)への移行は、監査と規制の強化をもたらしています。これはコンプライアンスの向上を意図していますが、同時に送り出し機関のコンプライアンスコストも増加させており、これが中小規模の、潜在的に倫理的な機関に不均衡な負担をかける可能性があります。
報告された不正行為と実際の執行措置との間の著しい不一致は、腐敗の疑惑と日本の直接介入の限界と相まって、ベトナムの内部執行メカニズムに重大な「ブラックボックス」が存在することを示唆しています。この堅固な説明責任の欠如は、問題のある機関が最小限の制裁で運営を継続することを可能にするモラルハザードを生み出します。新しい制度下でのコンプライアンスコストの増加は、注意深く管理されない場合、市場の統合を意図せず促進し、より大規模で、より既得権益を持つ、そしておそらく倫理的ではないプレーヤーを有利にする可能性があります。
日本の受入れ企業は、ベトナム送り出し機関の公式認定を倫理的慣行の保証としてのみ信頼することはできません。彼らは、現在の執行の限界を理解し、独自の厳格で継続的なデューデリジェンスを実施する必要があります。この状況はまた、日本とベトナムの間で執行メカニズムを強化し、真の透明性を促進し、労働者派遣エコシステム内の腐敗と戦うための外交的圧力と協力努力の継続的な重要性を強調しています。
改善に向けた取り組みとベストプラクティス

ベトナム人財採用における課題改善にむけた取り組みについて解説します。
ベトナム政府および業界の取り組み(DOLAB、VAMAS星評価)
課題を認識し、ベトナム政府および業界団体は、労働者派遣システムの完全性と透明性を高めるために、改革を積極的に実施し、品質ベンチマークを確立しています。
新たな「契約に基づいて外国で働くベトナム人労働者に関する法律」(法律69/2020/QH14)とその付随する政令および通達の制定は、ベトナム政府による海外労働者派遣の法的枠組みを現代化し、改善するための重要な立法努力を表しています 。DOLABは、引き続き、すべての送り出し機関の認定、許認可、および継続的な監督を担当する中心的な規制機関として機能しています。
主要な業界団体であるベトナム海外労働者派遣協会(VAMAS)は、送り出し機関の星評価システムを導入しています。このシステムは、行動規範に基づいて機関を評価し、高評価の機関(例:3つ星、4つ星、5つ星、6つ星機関)のリストを公開しています。これは、品質と信頼性の透明で業界主導の尺度を提供します。例えば、ベト国際人材株式会社(VILACO)は、2023年にVAMASから5つ星評価を獲得し、新たなパートナーシップの確立と成長において著しい進展を示しました。これは、このような評価システムがもたらす具体的な影響を強調しています。
VAMAS星評価の策定と公開は、政府規制と並行して、基本的な法的コンプライアンスを超えた業界の自主規制と階層的な品質保証システムへの移行を示しています。これは、ベトナムの業界自体が基準を改善するインセンティブを持っていることを示唆しており、より高い評価はより評判の良い日本のパートナーを引き付ける可能性があります。VILACOのような成功事例は、これらの評価が送り出し機関の倫理基準、運用上の卓越性、および継続的な改善へのコミットメントの貴重な指標となり得ることを示しています。
日本の受入れ企業は、デューデリジェンスの追加的かつ実用的な層としてVAMAS星評価を活用すべきです。直接的な精査の代替にはなりませんが、認知された業界団体からの高い評価は、送り出し機関が倫理的基準、運用上の卓越性、および継続的な改善への献身を示していることを示し、問題のある機関と提携するリスクを軽減します。
日本政府および支援機関の対策(JITCO、OTIT、JICA)
日本の政府機関および準政府機関は、外国人材プログラムを支援し、透明性を高め、労働者の倫理的な採用と福祉を確保するために、多面的な取り組みに積極的に関与しています。
国際人材協力機構(JITCO)は、「送り出し機関情報提供サービス」を提供し、送り出し国の政府が認めた機関の包括的な概要を提供しています。JITCOはまた、ベトナムのDOLABを含む送り出し国政府機関と正式な討議議事録(R/D)を維持し、定期的な協議を実施しており、継続的な対話と問題解決を促進しています。
国際協力機構(JICA)は、ベトナムにおける海外雇用プログラムの透明性と完全性を向上させることを目的としたプロジェクトに深く関与しています。これには、正確な求人情報を確保するための新しい募集システムの開発、ブローカーを介さない直接応募の促進、そして最終的に高額な手数料や搾取の排除が含まれます。JICAのより広範な取り組みは、送り出し国政府の人権保護能力の強化、労働者の専門スキルと日本語能力の習得・向上支援、そして日本企業による責任ある労働者受入れ慣行の促進を網羅しています。
日本政府は、外国人労働者の経済的負担を軽減するための措置を積極的に議論・提案しており、これにはブローカー手数料の透明化や、採用費用の一部を日本の受入れ企業が負担する仕組みの導入が含まれます。さらに、日本の職場における暴力や人権侵害を防止するための厳格な措置が実施されています。このような不正行為が認められた場合、技能実習生の受け入れができなくなるという警告が発されており、労働者保護へのコミットメントを強調しています。
日本の機関(JITCO、OTIT、JICA)による広範かつ多面的な関与は、情報提供からベトナムでの直接的なプロジェクト実施まで、堅牢な協調的ガバナンスアプローチを示しています。JICAが新しい募集システムの構築とベトナム政府の能力強化に焦点を当てていることは、高額な手数料や搾取といった問題の根本原因に対処することを目的とした、長期的で体系的な介入を示しています。手数料負担を日本企業に転嫁する議論や、人権侵害に対する厳しい罰則の導入は、採用チェーン全体における倫理的採用を確保する上で、日本が共有する責任を認識していることを反映しています。
日本の受け入れ企業は、ますます精査され、改革が進む環境で事業を行っています。これらの改革努力に積極的に合致する送り出し機関と提携し、倫理的慣行に積極的に参加すること(例えば、採用費用への貢献、公正な労働条件の確保など)は、単なる良い慣行の問題ではなく、基本的なコンプライアンスの義務となる可能性が高いです。これらの取り組みは、透明性、労働者保護、および共有された責任が最も重要となる未来を示唆しており、日本企業はそれに応じて戦略を適応させる必要があります。
透明性、倫理的採用、労働者保護の促進
日本とベトナムはともに、外国人労働者採用のあらゆる側面における透明性の向上、監督メカニズムの強化、そして搾取の積極的な防止と労働者権利の保護のための措置の実施に、ますます重点を置いています。
改善の主要な焦点は、契約の詳細と関連するすべての手数料における透明性の向上です。これは、隠れた費用を排除し、労働者が自身の経済的義務を完全に認識していることを保証することを目的としています。監査と規制監督は、虚偽の申告や経験の偽造といった詐欺行為を防止し、人身売買のような凶悪な犯罪と戦うために強化されています。
JICAのプロジェクトは、ベトナム人労働者が正確な求人情報にアクセスできるようにし、仲介業者を介さない直接応募チャネルを促進し、それによって高額な手数料や搾取的な慣行を排除することを具体的に目指しています。また、ベトナム政府の海外労働者派遣政策は、その国家的な貧困削減戦略と本質的に結びついています。この政策は、貧しい地域に居住する国民の海外での就労機会を積極的に支援し、それを生計向上と社会発展への貢献の手段とみなしています。
透明性と倫理的採用への明確かつ協調的な焦点は、単なる法的コンプライアンスを超えたものです。それは、国際労働移動における高まる倫理的要請を反映しています。ベトナムの海外労働政策が国家の貧困削減戦略と統合されていることは、社会的な責任の重要な層を追加しており、このプログラムが単なる経済的ツールではなく、国家開発と社会向上を促進する手段でもあることを示しています。このより広範な文脈は、倫理的行動の重要性を高めます。
ベトナムの送り出し機関と関わる日本企業は、このより広範な社会的・倫理的アジェンダに間接的に参加しています。これらの原則に真にコミットするパートナーを選択することは、法的および評判上のリスクを軽減するだけでなく、企業の社会的責任(CSR)プロファイルを向上させます。倫理的および開発目標とのこの整合性は、ベトナム人労働力とのより前向きで持続可能な関係を育むこともできます。
「育成就労制度」への移行がもたらす影響
技能実習制度に代わる「育成就労制度」は、外国人材の受入れにおいて、より人材育成と確保を目的とし、原則として認めていなかった転職をより容易にする方針が示されています。この制度変更は、労働者の自律性を高め、より安定した長期的な雇用モデルへの移行を意味します。これにより、送り出し機関は、単なる人材派遣業者としてではなく、労働者のキャリア形成と満足度に対して、これまで以上に責任を負うことになります。
特定技能制度への移行に伴い、送り出し機関を取り巻く状況は厳しさを増しており、監査や規制が強化され、コンプライアンスコストが増加しています。この傾向は、育成就労制度においても継続またはさらに強化される可能性が高いです。これは、不正行為を行う送り出し機関を排除し、より質の高い機関が残ることを促す一方で、中小規模の送り出し機関にとっては大きな負担となる可能性があります。
結果として、送り出し機関は、質の高い人材を確保し、適切な事前教育を提供し、労働者の日本での生活を包括的に支援することで、自らの魅力を高める必要に迫られます。労働者が転職しやすくなるため、受入れ企業もまた、労働条件の改善、適切な賃金の支払い、そして良好な職場環境の提供を通じて、労働者の定着に一層注力することが求められます。送り出し機関と受入れ企業双方にとって、労働者の権利保護と福祉が、制度運用の中心的な要素となるでしょう。
ベトナムの送り出し機関|まとめ

ベトナム送り出し機関は、日本の外国人材受入れプログラムにおいて、その法的義務と多岐にわたる機能から、不可欠な存在です。彼らは、労働者の募集、選考、渡航前教育、行政手続き、そして入国後の支援に至るまで、外国人材の日本への円滑な移動と定着を支える重要な役割を担っています。
しかしながら、本報告書で詳述したように、高額な手数料、ブローカーの介在、不十分な事前教育、そして規制執行の課題といった根深い問題が依然として存在し、これらが労働者の借金、失踪、そして搾取のリスクを高めています。これらの課題は、送り出し機関単独の問題ではなく、ベトナムと日本の両国における制度的、運用的な脆弱性が複雑に絡み合って生じています。
このような状況に対し、ベトナム政府は新たな法律の施行や業界団体による星評価システムの導入を通じて、透明性と倫理的慣行の向上に努めています。日本側も、JITCOやJICAが情報提供、現地での能力強化プロジェクト、そして受入れ企業への監督強化を通じて、問題の解決に向けた協調的な取り組みを進めています。特に、技能実習制度から「育成就労制度」への移行は、労働者の転職の自由を拡大し、より人材育成と確保に焦点を当てることで、送り出し機関と受入れ企業双方に、一層の倫理的採用と労働者福祉へのコミットメントを求めるものです。
日本の受入れ企業は、外国人材受入れの成功と持続可能性を確保するために、以下の点を考慮することが不可欠です。
- 徹底したデューデリジェンスの実施
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公式リスト(OTIT、ISA)やVAMASの星評価を活用し、送り出し機関の許認可、実績、財務の透明性、教育プログラムの質を厳格に確認すべきです。
- 手数料の透明性と適正化の要求
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労働者への不当な経済的負担を避けるため、すべての手数料の内訳を明確にし、ベトナムおよび日本の規制上限を遵守していることを確認すべきです。日本側からの管理費支払いが労働者の負担を軽減する仕組みを積極的に活用することも推奨されます。
- 労働者福祉の優先
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公正な労働条件、適切な賃金、過度な残業の回避、そして文化・言語適応のための十分なサポートを提供することで、労働者の定着と満足度を高めるべきです。
- 継続的な情報収集と適応
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ベトナムおよび日本の外国人材政策の動向、特に「育成就労制度」への移行に伴う変更を常に把握し、採用戦略と運用を適応させていく必要があります。
最終的に、ベトナム送り出し機関との関係は、単なるビジネスパートナーシップを超え、国際的な労働移動における倫理的責任と社会貢献の側面を強く持ちます。透明性、コンプライアンス、そして労働者中心のアプローチを重視した協力関係を築くことが、日本の労働力不足を解消し、外国人材との共生社会を構築するための鍵となるでしょう。
送り出しカフェでは、貴重な外国人財をお探しの人事担当者様、日本に働きに来られた外国人が、安心できる環境で末永く働けるよう、下記3点をお約束します。
- スムーズなお手続きや人材の確保
- 全て日本語での対応
- フィリピンと日本両国の法律、コンプライアンスを遵守
スムーズな人材探しのお手伝いが出来たらとの思いです。
送り出しカフェをぜひ、ご活用ください。
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