深刻な人手不足に直面している日本企業にとって、外国人採用は重要な解決策の一つとなっています。少子高齢化による労働力人口の減少が進む中、優秀な外国人材の雇用は、単なる人員補充を超えた組織活性化の機会となります。しかし、在留資格の種類や申請手続き、文化的な違いへの対応など、外国人採用には特有の知識が必要です。
本記事では、初めて外国人採用を検討する経営者様向けに、基礎知識から具体的な採用の流れまで、実務で役立つ情報をわかりやすく解説していきます。
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外国人採用とは

外国人採用とは、日本国籍を持たない人材を企業が雇用することを指します。2024年10月末現在、日本で働く外国人労働者は約230万人に達し、製造業、サービス業、IT業界など幅広い分野で活躍しています。政府も外国人材の受け入れ拡大を推進しており、特定技能制度の創設や在留資格の整備など、企業が外国人を採用しやすい環境整備が進展中です。
外国人採用の定義と概要
外国人採用における基本的な定義と法的枠組みを以下に整理します。
| 項目 | 内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 外国人労働者の定義 | 日本国籍を有しない者で、日本国内で就労する者 | 在留資格による就労制限あり |
| 雇用可能な外国人 | 適法な在留資格を持ち、就労が認められている者 | 不法就労は罰則対象 |
| 雇用形態 | 正社員、契約社員、パート・アルバイト、インターンシップ等 | 在留資格により制限あり |
| 必要な手続き | 在留資格確認、雇用契約締結、外国人雇用状況届出 | ハローワークへの届出必須 |
企業様は外国人を採用する際、必ず在留カードで就労可能かを確認する必要があります。
日本の外国人労働者の現状
日本における外国人労働者の現状と推移について、最新データを基に解説します。
| 分類 | 人数・割合 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| 外国人労働者総数 | 約230万人(2024年10月末現在) | 過去最高を更新 |
| 国籍別上位 | ベトナム、中国、フィリピン | アジア圏が中心 |
| 在留資格別 | 技能実習、専門的・技術的分野、特定技能 | 多様な資格で就労 |
| 産業別分布 | 製造業、サービス業、卸売・小売業、医療・福祉 | 幅広い業種で活躍 |
| 地域別分布 | 東京都、大阪府、愛知県が上位 | 都市部に集中傾向 |
今後も外国人労働者数は増加が見込まれ、人手不足解消の重要な選択肢となっています。
参考:厚生労働省 「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(平成26年10月末時点)
外国人採用が注目される背景
企業が外国人採用に注目する背景には、複数の社会的・経済的要因が存在します。
日本の生産年齢人口は2025年5月時点で7,352万人となっており、今後さらなる減少が予想されています。特に若年層の労働力確保が困難になる一方で、アジア諸国では日本での就職を希望する優秀な人材が増加中です。技術習得や日本語能力の向上に意欲的で、豊富な経験を持つ人材も多く、グローバル化の進展により、海外展開を視野に入れる中小企業も増えています。
外国人材の言語能力や現地ネットワークは貴重な経営資源となり、政府も2019年に特定技能制度を創設し、16分野での外国人材受け入れを拡大するなど、制度面での支援も充実してきました。
参考:総務省統計局 人口推計(2025年(令和7年)4月確定値、2025年(令和7年)9月概算値) (2025年9月19日公表)


外国人採用のメリット

外国人採用は単なる人手不足の解消だけでなく、企業に多様な価値をもたらします。優秀な人材の確保、組織の活性化、海外展開への足がかりなど、外国人材の活用は企業の競争力強化に直結します。ここでは、外国人採用がもたらす具体的なメリットを人材確保、組織活性化、グローバル展開、コスト面の4つの観点から詳しく見ていきましょう。
人材確保の観点からのメリット
深刻な人手不足に直面する日本企業にとって、外国人採用は人材確保の有効な手段です。
- 若年層の労働力を安定的に確保
- 特定技能や技能実習による長期雇用の実現
- 日本人が集まりにくい職種での人材獲得
- 留学生の新卒採用や内定者の確保
- 専門的知識と経験を持つ高度人材の獲得
- インターンシップを通じた優秀人材の発掘
特に製造業、介護、建設などの分野では、外国人材なしでは事業継続が困難な企業も増えています。意欲的で真面目な外国人労働者は、職場の中核的な戦力として働き、活躍するケースも多く見られます。
組織活性化のメリット
外国人材の採用は、組織全体にポジティブな変化をもたらす効果があります。
- 多様な価値観による新たな発想の創出
- 日本人社員の国際感覚とレベルの向上
- 職場のコミュニケーション活性化
- 業務プロセスの見直し機会の増加
- 企業文化の多様性向上
- 各種イノベーションの促進
異なる文化背景を持つ外国人材との協働は、日本人社員にとっても成長の機会となります。言語や文化の違いを乗り越えて協力する過程で、チーム全体の結束力が高まることも珍しくありません。
グローバル展開のメリット
海外事業を検討する企業にとって、外国人材は重要な戦略的資源となります。
| メリット | 具体的な効果 | 活用例 |
|---|---|---|
| 言語能力の活用 | 英語、中国語、韓国語等での業務対応 | 海外取引先との交渉 |
| 現地市場の理解 | 出身国の商習慣・文化の知識 | 市場調査、商品開発 |
| ネットワーク構築 | 現地企業との関係構築 | 販路開拓、提携先探す |
| ブリッジ人材 | 本社と現地法人の橋渡し | 海外拠点の管理 |
外国人材の採用により、海外展開のハードルが大きく下がる可能性があります。
コスト面でのメリット
外国人採用には、適切に実施すれば中長期的なコストメリットも期待できます。
- 採用難による機会損失の回避
- 人材紹介会社への依存度低減
- 定着率向上による採用コスト削減
- 生産性向上による収益改善
- 無料セミナーや公的支援の活用
初期投資として在留資格申請や研修費用は発生しますが、長期的な雇用が実現すれば、頻繁な採用活動が不要となります。特定技能制度では最長5年間の雇用が可能であり、技能実習から特定技能への移行により、実質8年間の長期雇用も実現可能です。

外国人採用のデメリットと対策

外国人採用には多くのメリットがある一方で、課題も存在します。しかし、これらのデメリットは適切な対策により対処可能です。ここでは、コミュニケーション、文化・習慣の違い、法的手続き、採用・教育コストの4つの観点から、具体的な課題と解決策を提示していきます。
コミュニケーションの課題
言語の壁は外国人採用における最も一般的な課題ですが、様々な対策により克服できます。
| 課題 | 影響 | 対策 |
|---|---|---|
| 日本語能力の不足 | 業務指示の誤解、ミスの発生 | 日本語研修の実施、やさしい日本語の使用 |
| 専門用語の理解困難 | 技術的な業務の遂行困難 | 用語集の作成、図解マニュアルの整備 |
| 文書作成能力 | 報告書・メールの書き方が不明 | テンプレートの提供、添削サポート |
| 会議での発言困難 | 意見交換の不活発化 | 事前資料の配布、通訳の活用 |
定期的な日本語教育の機会提供や、視覚的なコミュニケーションツールの活用が効果的です。
文化・習慣の違いによる課題
文化的な違いは相互理解により、むしろ組織の強みに転換できる要素です。
| 文化的課題 | 具体的な問題 | 対応策 |
|---|---|---|
| 時間感覚の違い | 遅刻や締切の認識差 | 就業規則・利用規約の丁寧な説明 |
| 宗教的配慮 | 礼拝や食事制限 | 礼拝室の設置、食事への配慮 |
| 仕事観の相違 | キャリア観の違い | キャリアパスの明確化 |
| 人間関係の構築 | コミュニケーション不足 | 交流イベントの開催 |
| 評価基準の認識 | 成果の捉え方の差 | 明確な評価制度の構築 |
異文化理解研修を日本人社員にも実施することで、双方向の理解が深まります。
法的手続きの複雑さ
在留資格の申請や管理は複雑ですが、適切な知識と体制があれば対応可能です。
| 手続き項目 | 必要な対応 | サポート方法 |
|---|---|---|
| 在留資格申請 | 書類作成、入管への申請 | 行政書士への委託 |
| 在留期間更新 | 定期的な更新手続き | 管理システムの導入 |
| 資格変更申請 | 転職・昇進時の手続き | 専門家との顧問契約 |
| 外国人雇用状況届出 | ハローワークへの報告 | チェックリストの作成 |
| 労働条件通知書 | 母国語での作成 | 翻訳サービスの活用 |
初回は専門家に相談し、社内にノウハウを蓄積していくことが重要です。
採用・教育コストの課題
初期投資は必要ですが、長期的視点では十分に回収可能な投資となります。
| コスト項目 | 金額目安 | 削減方法 |
|---|---|---|
| 在留資格申請費用 | 10〜30万円 | 自社申請によるコスト削減 |
| 日本語教育費用 | 月3〜5万円 | オンライン教材の活用 |
| 住居準備費用 | 20〜50万円 | 社宅制度の整備 |
| 生活サポート費用 | 月1〜3万円 | 先輩外国人社員による支援 |
| 研修・セミナー費用 | 5〜10万円 | 無料セミナーの活用 |
技能実習生以外にも、特定技能への移行により監理団体費用が不要となるため、長期的なコスト削減も可能です。
在留資格の種類と特徴

外国人を雇用する際には、在留資格の正確な理解が不可欠です。在留資格によって就労可能な業務内容や雇用期間が異なるため、企業は自社のニーズに合った資格を持つ人材を採用する必要があります。ここでは、就労可能な在留資格の種類、技能実習と特定技能の違い、高度人材の在留資格、そして資格別の雇用期間と条件について詳しく解説していきます。
就労可能な在留資格一覧
日本で就労が認められている主な在留資格を体系的に整理しました。
| 在留資格カテゴリ | 主な資格名 | 就労可能な業務 |
|---|---|---|
| 専門的・技術的分野 | 技術・人文知識・国際業務、企業内転勤、技能 | 専門知識を要する業務全般 |
| 特定産業分野 | 特定技能1号・2号 | 16分野の特定産業 |
| 技能実習 | 技能実習1号・2号・3号 | 技能移転を目的とした実習 |
| 身分に基づく資格 | 永住者、日本人の配偶者等、定住者 | 制限なし |
| 留学生関連 | 留学(資格外活動許可) | 週28時間以内のアルバイト |
| その他 | ワーキングホリデー | 各種就労可能 |
企業は採用前に必ず在留カードで就労制限の有無を確認し、注意点を知っておくことが法的義務となっています。
技能実習と特定技能の違い
技能実習と特定技能は混同されやすいですが、制度の目的や条件が大きく異なります。
| 比較項目 | 技能実習 | 特定技能 |
|---|---|---|
| 制度の目的 | 国際貢献(技能移転) | 人手不足解消 |
| 在留期間 | 最長5年(1号1年、2号2年、3号2年) | 1号は通算5年、2号は更新可能 |
| 転職の可否 | 原則不可 | 同一分野内で可能 |
| 日本語要件 | なし(入国後講習あり) | 日本語試験合格必須 |
| 受入れ方法 | 監理団体経由 | 直接雇用または登録支援機関利用 |
| 対象職種 | 91職種168作業 | 16分野 |
| 次の在留資格 | 特定技能への移行可能 | 2号への移行可能 |
特定技能は2019年に創設された比較的新しい制度で、より柔軟な雇用が可能です。
高度人材の在留資格
高度な専門性を持つ外国人材には、優遇措置のある在留資格が用意されています。
| 在留資格 | 対象者 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| 高度専門職1号・2号 | ポイント制で認定された高度人材 | 永住許可要件緩和、配偶者就労可 |
| 技術・人文知識・国際業務 | 大卒以上の専門職 | IT、貿易、通訳等の専門業務 |
| 経営・管理 | 経営者、管理者、株式会社役員 | 事業の経営や管理業務 |
| 研究 | 研究者 | 大学や研究機関での研究活動 |
| 教授 | 大学教員等 | 大学での教育・研究活動 |
| 医療 | 医師、看護師等 | 医療機関での医療業務 |
高度人材ポイント制では、学歴、職歴、年収等でポイントを計算し、70点以上で優遇措置を受けられます。
資格別の雇用期間と条件
在留資格ごとに雇用期間や更新条件が異なるため、長期的な人材計画が重要です。
| 在留資格 | 初回期間 | 更新可能期間 | 永住申請要件 |
|---|---|---|---|
| 技能実習 | 1年 | 最長5年まで | 申請不可 |
| 特定技能1号 | 1年、6ヶ月、4ヶ月 | 通算5年まで | 申請不可 |
| 特定技能2号 | 3年、1年、6ヶ月 | 制限なし | 10年以上の在留で可能 |
| 技術・人文知識・国際業務 | 5年、3年、1年、3ヶ月 | 制限なし | 10年以上の在留で可能 |
| 高度専門職 | 5年 | 無期限(2号) | 1号は3年、2号は1年で可能 |
企業は在留期間の管理を徹底し、期限の3ヶ月前から更新手続きを開始する予定を立てることが推奨されます。

外国人採用の具体的なステップ

外国人採用を成功させるには、計画的な準備と適切な手順の実行が不可欠です。採用計画の立案から入社後のフォローまで、各段階で押さえるべきポイントがあります。ここでは、外国人採用の全プロセスを4つのステップに分けて、実務で活用できる具体的な方法を解説していきます。
参考:厚生労働省 外国人の雇用
採用計画の立案
効果的な外国人採用は、明確な計画立案から始まります。
| 検討項目 | 確認内容 | 決定事項例 |
|---|---|---|
| 採用目的の明確化 | なぜ外国人を採用するのか | 人手不足解消、海外展開準備 |
| 必要人数と時期 | いつまでに何名必要か | 2025年4月までに5名 |
| 在留資格の選定 | どの資格で採用するか | 特定技能1号、技術・人文知識・国際業務 |
| 予算の設定 | 採用・教育にかける費用 | 1人あたり50万円 |
| 受入体制の構築 | 社内体制の整備 | 担当者の任命、住居の準備 |
採用計画は経営層の承認を得て、全社的な取り組みとして進める予定を立てることが重要です。
募集・選考プロセス
外国人材の募集には、日本人採用とは異なるアプローチが必要です。
- 外国人専門の求人サイトで検索・掲載
- 日本語学校や専門学校との連携
- 監理団体や登録支援機関の活用
- SNSを使った情報発信
- 海外の大学との提携
- 外国人材紹介会社の利用
- 無料セミナーでの人材発掘
選考では、日本語能力だけでなく、技術力、適応力、就労意欲、過去の経験を総合的に評価します。履歴書の書き方が異なる場合もあるため、柔軟な対応が必要です。オンライン面接の実施により、海外在住者の採用も可能です。
在留資格の申請手続き
在留資格の申請は、外国人採用における最も重要な手続きです。
| 申請種類 | 必要書類 | 申請先・期間 |
|---|---|---|
| 在留資格認定証明書交付申請 | 雇用契約書、会社案内、理由書等 | 入国管理局、1〜3ヶ月 |
| 在留資格変更許可申請 | 申請書、契約書、卒業証明書等 | 入国管理局、2週間〜1ヶ月 |
| 在留期間更新許可申請 | 申請書、納税証明書、在職証明書等 | 入国管理局、2週間〜1ヶ月 |
| 資格外活動許可申請 | 申請書、雇用契約書 | 入国管理局、2週間 |
申請書類は正確に作成し、不備がないよう複数回のチェックを行い、必要に応じて専門家に相談することが大切です。書類のダウンロードは法務省のウェブサイトから可能です。
受入れ準備と入社後フォロー
外国人材の定着には、充実した受入れ体制と継続的なサポートが欠かせません。
- 住居の確保と生活環境の整備
- 銀行口座開設のサポート
- 携帯電話契約の支援
- 役所での各種手続き支援
- 社内オリエンテーションの準備
- 労働条件通知書の母国語版作成
入社後は定期的な面談を実施し、仕事や生活の悩みを早期に把握することが大切です。日本語学習の支援、メンター制度の導入、母国料理が食べられる環境づくりなど、外国人材が安心して働ける職場環境を整備します。内定から入社までの流れをやすく説明し、長期的な定着を実現するには、キャリアパスの明示と公平な評価制度の構築が重要となるでしょう。


まとめ|外国人採用で人材不足を解決へ

外国人採用は、人手不足に悩む日本企業にとって有効な解決策となります。本記事では、初めて外国人採用を検討する企業様向けに、基礎知識から具体的な採用の流れまで体系的に解説してきました。在留資格の選択、計画的な採用プロセスの実行、そして適切な受入れ体制の構築により、外国人材は企業の重要な戦力となります。初期投資や言語・文化の課題はありますが、長期的な視点で見れば、組織の多様性向上と持続的な成長につながる価値ある投資です。次のステップとして、まずは無料セミナーへの参加や専門家への相談から始め、自社のニーズを明確にし、小規模から外国人採用を始めてみることをお勧めします。
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