国内の自動車整備業界は、深刻な人材不足に直面しています。そもそもの労働人口が減る中、いわゆる「若者の自動車離れ」を背景に、自動車整備を目指す若者が急速に減ってきているのです。
その解決策となるのが、外国人材の活用です。 すでに多くの企業が「特定技能1号」や「技能実習」の制度を利用し、外国人材の受入れを行っています。しかし、特定技能1号には通算5年という在留期間の上限があるため、将来的に現場の中核を担う人材として期待していたとしても、5年で帰国せざるを得ないのは、企業にとって大きな損失です。
そこで注目されているのが、「特定技能2号」の在留資格です。
特定技能2号は、熟練した技能を持つ外国人材が、在留期間の更新に上限なく日本で働くことができる在留資格です。制度改正を経て、自動車整備業も特定技能2号の対象となりました。
とはいえ、特定技能2号の受け入れは、1号とは異なる要件や手続きが求められます。

・どのような業務を任せられるのか?
・どんな人材が2号に移行できるのか、試験は?
・受け入れ企業として何を準備すべきか?
といった疑問をお持ちの企業担当者の方も多いでしょう。
この記事では、自動車整備分野における特定技能2号に焦点を当て、その概要、対象業務、評価試験の内容、そして企業が受け入れを行う際のポイントについて、最新の情報を基に詳細に解説します。優秀な人材を確保するために、ぜひ参考になさってください。
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特定技能制度とは?自動車整備分野における位置づけ


まず、特定技能制度そのものの概要と、自動車整備分野がどのように位置づけられているかを整理します。
特定技能制度の基本概要:1号と2号の違い
特定技能制度は、日本の深刻な人手不足に対応するため、特定の産業分野において即戦力となる外国人材を受け入れる目的で創設された在留資格です。この制度は「特定技能1号」と「特定技能2号」の二つの区分に分かれています。
特定の産業分野において「相当程度の知識又は経験を必要とする技能」を有する外国人向けの資格です。在留期間は通算で上限5年と定められており、原則として家族の帯同は認められていません。
特定技能1号よりも熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの資格です。「長年の実務経験等により培われた熟練した技能」が求められます。最大の利点は、在留期間の更新に上限がなく、要件を満たせば家族(配偶者、子)の帯同も可能になる点です。
この2号の対象分野は当初、建設と造船・舶用工業の2分野のみでしたが、2023年6月の閣議決定により、自動車整備分野を含む多くの分野が追加されることとなりました。


自動車整備分野が特定技能の対象となった背景
自動車の安全性を確保し、国民の生活を支える自動車整備業は、社会インフラとして不可欠な存在です。しかし、若年層の車離れや職業選択の多様化により、整備士の人材不足と高齢化が深刻な問題となっています。
実際に日本国内の自動車整備士の数は減少傾向にあり、有効求人倍率も高い水準で推移しています。このような状況下で、国土交通省は、自動車整備業の持続可能性を確保するため、外国人材の活用を推進してきました。
その受け皿として、技能実習制度に加え、より実践的な即戦力として期待される特定技能制度が導入されたわけです。自動車整備分野は、制度開始当初(2019年)から特定技能1号の対象分野とされています。
特定技能2号が注目される理由
特定技能1号の導入から数年が経過し、多くの企業が1号人材の受け入れを進めてきました。彼らの中には、日本での実務経験を積み、高い技能と日本語能力を身につけた優秀な人材が数多く存在します。
しかし、1号の在留期間上限(5年)が近づくにつれ、企業側からは「せっかく育てた優秀な人材が帰国してしまうのは大きな損失だ」という声が上がっていました。また、外国人材本人にとっても、キャリアパスが閉ざされることは大きな不安材料でした。
2023年に自動車整備分野が特定技能2号の対象となったことで、これらの問題が解消される道筋ができました。企業は、熟練した技能を持つ人材を長期的に雇用し、工場の「核」となる人材として育成することが可能になります。外国人材にとっては、日本で安定した生活を築き、キャリアアップを目指せる環境が整うことになります。
特に、フィリピンをはじめとする諸外国から優秀な整備人材の採用を考えている企業にとって、特定技能2号は、長期的な事業計画に基づいた人材戦略を立てる上で、非常に重要な選択肢となるでしょう。


自動車整備分野における特定技能人材の対象業務


特定技能制度においては、外国人材が行える業務内容が明確に定められています。
特定技能1号の対象業務
特定技能1号の外国人は、自動車の日常点検整備、定期点検整備、特定整備、特定整備に付随する業務にあたることができます。
| 主な業務内容 | 自動車の日常点検整備 定期点検整備 特定整備 特定整備に付随する業務(電子制御装置の整備や鈑金塗装など)の基礎的な業務 |
| 関連業務 | 整備内容の説明及び関連部品の販売 部品番号検索・部内発注作業 ナビ・ETC等の電装品の取付作業 洗車作業 下廻り塗装作業 車内清掃作業 構内清掃作業 部品等運搬作業 設備機器等清掃作業 |
これらは自動車の安全性に直結する基幹的な作業であり、1号人材にはすでに一定レベルの技能が求められます。
参考:特定技能1号の各分野の仕事内容(Job Description) | 出入国在留管理庁
特定技能2号で可能となる業務範囲
特定技能2号の人材も、基本的には1号と同じ業務内容にあたりますが、より「熟練した技能を要する業務」の遂行能力が求められます。さらに、他スタッフへの指導も行えるようになります。
| 主な業務内容 | 自動車の日常点検 定期点検整備 特定整備 特定整備に付随する業務(電子制御装置の整備や鈑金塗装など)の一般的な業務 他の要員への指導を行う業務 |
| 関連業務 | 整備内容の説明及び関連部品の販売 部品番号検索・部内発注作業 ナビ・ETC等の電装品の取付作業 洗車作業 下廻り塗装作業 車内清掃作業 構内清掃作業 部品等運搬作業 設備機器等清掃作業 |
つまり、特定技能2号の人材は、単なる作業者としてではなく、現場のリーダーや指導者としての役割を担うことが期待されているのです。これは、工場の生産性向上や、後進の育成という観点からも、企業にとって大きなメリットと言えます。
参考:特定技能2号の各分野の仕事内容(Job Description) | 出入国在留管理庁
対象となる事業場
特定技能(1号・2号共通)の外国人材を受け入れることができる事業場(企業)は、一定の基準を満たしていなければなりません。
自動車整備分野においては、道路運送車両法第78条第1項に基づき、地方運輸局長の「認証」を受けた自動車整備工場(いわゆる「認証工場」)であることが必須要件です。これには、特定整備(電子制御装置の整備等)の認証を含みます。
この認証を受けていない工場(例えば、ガソリンスタンドでの洗車やオイル交換のみを行う事業場)では、特定技能外国人を受け入れることはできません。これは、特定技能人材が従事する業務が、専門的な知識と技能を必要とする法律に基づいた整備作業であるためです。
受け入れを検討する企業は、自社がこの基準を満たしているか、改めて確認する必要があります。


特定技能2号人材の要件


特定技能1号から2号へ移行するため、あるいは直接2号の資格を取得するためには、以下の要件を満たしていなければなりません。
- 技能水準:「自動車整備分野特定技能2号評価試験」又は、「自動車整備士技能検定試験2級」に合格すること。
- 認証工場における一定以上の実務経験を有していること。
それぞれの要件について、詳しく見ていきます。
必要な「技能」レベル:特定技能2号評価試験
特定技能2号の在留資格申請において、その技能水準を証明する最も一般的な方法は、「特定技能2号評価試験(自動車整備分野)」に合格することです。
あるいは、別のルートとして、日本の国家資格である「自動車整備士技能検定試験の2級」に合格している者も、特定技能2号の技能要件を満たすと判断されます。
とはいえ、日本国内で自動車整備士の国家資格を取得するのは難易度が高いため、多くの外国人材は「特定技能2号評価試験」の合格を目指すことになります。
(試験の詳細については「自動車整備分野の特定技能2号評価試験の詳細」で後述します。)
2号移行に必要な「実務経験」とは?
特定技能2号の在留資格を取得するためには、技能水準に加えて、一定以上の実務経験が求められます。
自動車整備分野では、原則として「認証工場等での実務経験が3年以上」であることが求められます(二級自動車整備士に合格している場合は、実務経験要件の代替となることがあります)。
実務経験を証明するためには、受け入れ企業が発行する「実務経験証明書」などの書類が必要です。
企業担当者は、外国人材が従事した業務内容や出勤日数などの記録を正確に管理し、必要時に速やかに証明書を作成・発行できるよう整備しておくことが重要でしょう。
参考:自動車整備分野「特定技能外国人」受入れのためのガイドブック|国土交通省
必要な「日本語能力」レベル
特定技能1号では、日本語能力試験(JLPT)N4相当以上の日本語能力が求められます。
その一方で、特定技能2号(自動車整備)については、日本語能力は要件に含まれていません。これは、1号としての実務経験を積む中で、一定レベルの日本語能力を有していると見なされるからです。
しかし、要件ではないからと言って、日本語能力が求められないわけではありません。
特定技能2号評価試験は、全て日本語で行われます。その試験問題(学科試験・実技試験)を理解し解答するには、かなりの日本語能力(JLPT N3相当以上が目安)が必要です。
そのため制度上は日本語試験が免除されるとしても、企業には対象人材に対して継続的な日本語学習の機会を提供し、現場の指導者としてふさわしい日本語コミュニケーション能力を持てるようなサポートが求められています。
技能実習からの移行ルート
技能実習制度(技能実習2号または3号)を良好に修了した外国人は、技能実習で習得した技能と、特定技能1号で求められる技能に関連性が認められれば、特定技能1号の試験(学科・実技)を免除され、移行することが可能です。
自動車整備分野においても、技能実習(自動車整備職種)から特定技能1号への移行は一般的なルートの一つです。
そして、特定技能1号として実務経験を積み、先述の要件(2号評価試験の合格等)を満たせば、特定技能2号への在留資格変更申請が可能となります。技能実習生として受け入れた人材を、長期的に2号人材として育成するキャリアパスを描くことも、企業にとっては有効な戦略です。
育成就労制度への移行
現行の「技能実習制度」は廃止され、新たに創設された「育成就労制度」に移行されることになります(2027年頃までを予定)。
この新制度は、従来の技能実習が抱えていた課題を解消し、「人材育成」と「人材確保」を両立させることを目的としています。 主なポイントは以下の通りです。
- 育成と確保の明確化
-
育成就労の期間(原則3年)で、外国人材を特定技能1号のレベルまで育成することが制度の目的となります。
- 特定技能へのスムーズな移行
-
育成就労を修了した者は、特定技能1号へスムーズに移行することが前提の設計となります。
- 転籍の緩和
-
技能実習では原則不可能だった転籍(転職)が、同一業務区分内であれば、一定の要件(例:1年以上の就労、日本語能力、技能試験の合格状況など)を満たせば可能になります。
自動車整備分野も、この育成就労制度の対象分野となる見込みです。 将来的には、「育成就労(3年)→ 特定技能1号(最長5年)→ 特定技能2号(無期限)」という流れが、外国人材のキャリアパスの主流となることが期待されています。
自社で技能実習生を受入れている企業は、現行制度での1号移行を進めつつ、今後は育成就労制度へどのように対応し、育成した人材を確実に特定技能1号、そして2号へとステップアップさせていくか、長期的な人事戦略を練ることが、優秀な人材の長期確保に直結すると言えるでしょう。


自動車整備分野の特定技能2号評価試験の詳細


特定技能2号への移行を目指す上で、最大の関門となるのが「特定技能2号評価試験(自動車整備分野)」です。この試験は、日本の国家資格である自動車整備士2級に匹敵する、非常に高度な知識と技能を問うものです。
試験の実施機関
自動車整備分野の特定技能評価試験(1号・2号ともに)は、国土交通省長官が適当と認める機関として、一般社団法人 日本自動車整備振興会連合会(日整連)が実施しています。試験に関する最新の情報や詳細な資料は、日整連の公式ウェブサイトで確認するのが最も確実です。
試験内容:学科試験と実技試験
特定技能2号評価試験は、学科試験と実技試験で構成されています。試験はすべて日本語で実施されます。
1. 学科試験
学科試験は、コンピュータを使用して解答するCBT(Computer Based Testing)方式で実施されます。試験時間は分野によって異なりますが、高度な専門知識が問われます。
- 自動車の構造、機能及び取扱方法に関する基礎的な知識
- 自動車の点検、修理及び調整に関する基礎的な知識
- 自動車整備(定期点検、分解整備等)に関する知識
- 安全衛生、関連する法律(道路運送車両法等)
2. 実技試験
実技試験は、実際の作業を模した形で行われます。受験者が、自動車(またはシミュレーター、部品等)を用いて、指示された作業(点検、測定、調整、分解、組立等)を時間内に行えるかを評価します。
- 作業の正確性、迅速性
- 工具の適切な使用
- 安全確認の実施
- 作業後の報告・記載能力
この試験は、単に作業ができるだけでなく、「なぜこの作業が必要か」「基準値は何か」を理解した上で、正確かつ安全に業務を遂行できるかを判断する内容となっています。
試験は原則として日本国内で開催されます。申し込み方法についても、日整連のウェブサイト上で発表される募集要項に基づき、電子申請(オンライン)で行うのが一般的です。
試験の難易度と合格基準
前述の通り、特定技能2号評価試験は「自動車整備士2級(ガソリンまたはディーゼル)と同等以上」のレベルと設定されています。
日本の自動車整備士2級国家試験は、整備士養成学校の卒業生でも一定の勉強時間が必要な難易度であり、合格率は決して高くありません。したがって、特定技能2号評価試験も、相応の難易度であると予想されます。
合格基準は、学科試験・実技試験ともに、定められた点数(60%以上等)を取得することとなります。
企業担当者としては、日整連や国土交通省から発表される最新情報を定期的に確認し、自社で育成中の1号人材に情報提供を行うことが重要です。試験の開催が開始されれば、合格に向けた支援(勉強時間の確保、教材の提供など)も必要となるでしょう。
参考:自動車整備分野特定技能2号評価試験実施要領|国土交通省
特定技能2号人材を受け入れる企業のメリットと注意点


特定技能2号の人材を受け入れることは、企業にとって大きなメリットをもたらす一方で、相応の準備と責任が伴います。制度を最大限に活用するために、メリットと注意点の両方を正しく理解しておきましょう。
メリット①:長期的な人材確保
特定技能2号の最大のメリットは、在留期間の更新に上限がないことです。3年、1年、または6ヶ月ごとの在留期間の更新を続ければ、実質的に無期限での雇用が可能となります。
これは、企業にとって「長期的な事業計画に基づいた人材の確保」を意味します。特定技能1号の5年という期限に縛られることなく、熟練した技能を持つ人材に、工場の中心的な役割(現場リーダー、技術指導者など)を安心して任せることができます。
メリット②:家族帯同による人材の定着が期待できる
特定技能2号は、一定の要件を満たせば、家族(配偶者と子)を日本に呼び寄せて一緒に生活することができるようになります。
外国人材にとって、母国に家族を残して単身で長期間働くことは、精神的にも大きな負担となります。家族帯同が認められることで、生活基盤が安定し、日本での就労意欲や所属企業への定着率が大幅に向上することが期待できるでしょう。
安心して長く働いてもらう環境を提供することは、結果として企業の利益にも繋がります。


注意点①:受入れ企業が満たすべき基準
特定技能外国人(1号・2号)を受け入れる企業(所属機関)は、外国人材が安定して働ける環境を提供するため、以下の基準を満たしていなければなりません。
- 労働、社会保険、租税に関する法令を遵守していること。
- 外国人を支援する体制(支援責任者、支援担当者の選任)を有していること。
- 外国人材の住居確保の支援、生活オリエンテーションの実施等、定められた支援計画を適切に実施すること。
- 自動車整備分野においては、地方運輸局長の認証を受けた整備工場であること。
これらの基準を満たしていないと判断された場合、受け入れが認められないだけでなく、既に受け入れている場合は指導や受け入れ停止の対象となる可能性もあります。
支援計画について
特定技能1号については、日本で安定的かつ円滑に活動できるように「支援計画」を策定・実施することが義務付けられています。
一方で特定技能2号については、支援はあくまでも「任意」です。これは、2号人材は既に日本での生活や業務に十分慣れており、1号のような手厚い支援は不要である、という考え方に基づいています。
とはいえ、これはあくまで「法律上の義務がない」という話です。 例えば、2号になって初めて家族を日本に呼び寄せる場合、住居の確保や行政手続き(住民登録、国民健康保険)、子どもの学校探しなど、1号の時とは異なる形の支援が必要となります。
さらに、在留資格の更新手続き自体は、1号であろうと2号であろうと定期的に発生します。 企業としては、法律上の義務はなくても、こうした生活上・手続き上のサポートを必要に応じて提供する体制を整えておくことによって外国人材の信頼を勝ち取り、長期雇用という結果につながるに違いありません。
上記の支援計画の策定・実施を自社だけで行うのが難しい場合、企業は、出入国在留管理庁長官の登録を受けた「登録支援機関」に、支援計画の全部または一部の実施を委託することが可能です。
登録支援機関は、外国人支援に関する専門知識とノウハウを有しており、企業に代わってきめ細やかなサポートを提供します。信頼できる登録支援機関の利用を検討するのも有効な方法です。


注意点②:1号から2号への在留資格変更申請の手続き
特定技能1号の人材が2号の要件を満たしたからといって、自動的に2号になるわけではありません。本人(または企業の支援)が、出入国在留管理庁に対して「在留資格変更許可申請」を行う必要があります。
この申請には、2号の試験の合格証明書、実務経験を証明する書面、企業の体制に関する資料など、多くの必要書類が求められます。申請から許可が下りるまでの時間も考慮し、1号の在留期限が切れる前に、余裕を持ったスケジュールで手続きを進めることが不可欠です。
注意点③:地方運輸局への確認や登録整備工場の認証
自動車整備分野の特殊性として、国土交通省(地方運輸局)との連携が挙げられます。受入れ機関は、特定技能外国人材の受け入れ状況や、道路運送車両法に基づく認証工場としての基準を遵守しているかについて、地方運輸局の指導・監督を受けることになります。
法令遵守の体制を維持し、必要な届出や確認を怠らないよう、日頃からの管理が重要です。
注意点④:自動車整備分野特定技能協議会への加入
特定技能制度では、分野ごとに「協議会」が設置されています。自動車整備分野においても、国土交通省が中心となり「自動車整備分野特定技能協議会」が組織されています。
受入れ機関は、初めて特定技能外国人を受け入れた時から4ヶ月以内に、この協議会に入会する義務があります。
協議会は、制度の適正な運用、地域ごとの人材不足の状況把握、受け入れ企業間の情報共有、法令遵守の啓発などを行います。企業は協議会に参加し、必要な情報の提供や指導・助言を受けることで、制度の趣旨に沿った適切な受け入れを継続していくことになります。
参考:自動車整備分野における「特定技能」の受入れ|国土交通省


自動車整備分野で特定技能フィリピン人を採用するメリット


特定技能制度においてどの国の人材を採用するかは重要な経営判断ですが、特に自動車整備分野においては、フィリピン人材の採用には多くのメリットが期待できます。これは、彼らの国民性や文化的背景に由来するものです。
高い学習意欲と英語能力
フィリピンでは英語が公用語の一つとして広く使われており、多くの国民が高い英語能力を持っています。基本的なコミュニケーションが英語で取れることは、受け入れ企業にとって大きな利点です。
また、フィリピン人は総じて学習意欲が旺盛です。特に、自動車整備のような専門技術の習得や、日本語能力の向上に対しても非常に熱心です。実際に、自動車整備分野の特定技能試験において、フィリピン人受験者は高い合格率を示しています。
これは、フィリピン国内の職業訓練学校における自動車整備に関する基礎教育が充実していることや、既に技能実習で日本での経験を積んでいる人材が多いことの証明と言えます。
日本の高度な整備技術を学びたいという強い動機が、彼らの成長を加速させます。
参考:令和5年度自動車整備分野特定技能評価試験実施状況報告書|国土交通省
陽気な国民性と高いホスピタリティ
フィリピン人は「ホスピタリティ・ネイション」と呼ばれるほど、おもてなしの精神が豊かで、非常に陽気で明るい国民性を持っています。
整備工場というチームワークが求められる職場において、彼らの明るさは職場の雰囲気を和ませ、コミュニケーションを活性化させる効果が期待できます。また、顧客と直接接する機会は少ないかもしれませんが、仲間意識を持って業務に取り組む姿勢は、組織全体の士気を高めることにも繋がるでしょう。
家族を支える強い責任感と就労意欲
フィリピン文化において「家族」は最も重要なものです。多くのフィリピン人にとって、働くことの第一の目的は「家族の生活を支えること」です。
この「家族のために」という強い思いは、仕事に対する非常に高い責任感と、困難な業務にも耐えうる忍耐力、そして長期的に安定して働こうとする高い就労意欲の源泉となります。特定技能2号への移行も視野に入れ、日本で長くキャリアを築きたいと考える人材が多いのも特徴です。
手先の器用さと日本車への関心
一般的にフィリピン人は手先が器用であるとされています。自動車整備には、点検、分解、修理など、繊細かつ正確な作業が数多く含まれます。この特性は、整備士としてのスキルを習得する上で大きな強みとなります。
また、フィリピン国内では日本車が圧倒的なシェアを占めており、日本の自動車やその高い技術力に対する憧れや関心を持つ若者が多いことも、この分野での活躍を後押しする要因となっています。




現場の声から学ぶ!自動車整備業で特定技能フィリピン人を受入れるメリットと企業が取るべき対策とは


では実際に、自動車整備分野で特定技能フィリピン人を受け入れている企業の事例から、彼らを採用するメリットと、企業として行うべき取り組みなどについて考えてみましょう。
オートバックスの事例
オートバックスグループでは、2006年からフィリピンの大学と提携し、技能実習生の受け入れを本格化させました。現在は、年間3回の採用選考と研修を通じて、常時200名以上のフィリピン人材が整備技術を学んでいます。2019年には、日本で初となる自動車整備分野の特定技能1号資格取得者が誕生し、以降も継続的に有資格者を輩出しています。
彼らの来日後には、1ヶ月間の合宿形式の研修を実施。日本語だけでなく、日本の生活習慣やマナーに関する教育も行われており、実践的な準備が進められています。とくに日本語教育には注力しており、JLPT水準に基づいたカリキュラムで基礎力を底上げしてきました。
実際に現場では、彼らの存在が良い刺激となっており、社員間のコミュニケーションのあり方にも変化が見られるように。言葉の壁を乗り越えるためには「伝えようとする力」と「理解しようとする姿勢」が必要です。そうした意識が社内全体に浸透し、お客様への対応力まで引き上げられるという副次的効果も生まれました。
また、店舗によっては彼らのプロフィールを店頭に掲示し、来店客との距離感を縮める工夫も行われています。外国人材を「働かせる」のではなく、「共に働く」意識が企業文化として根づきつつあるのが印象的です。
参考:オートバックス、フィリピン大と日本の整備人材育成で合意 | NEXT MOBILITY
横山モータースの事例
岐阜県にある横山モータースでも、2名のフィリピン人技能実習生を受け入れています。社長と専務が自らマニラで現地面接を行い、「夢を持っているか」「人柄はどうか」といった軸で選考を進めたとのこと。形式的なスキルチェックだけでなく、「一緒に働きたいと思えるか」が重要だったと語られています。
来日後、初日から全社員の前で紹介し、早期の信頼関係構築を意識したそうです。実際、2人は整備経験があり即戦力としての期待も高く、さらに既にベトナム人アルバイトを受け入れた経験が社内にあったため、現場の受け入れもスムーズでした。
「彼らは誰よりも早く出社し、掃除も進んで行う。素直で、仕事に対してとても前向き」と専務は評しています。勤勉さや協調性の高さが周囲の評価に直結し、同時に日本人スタッフの姿勢にも良い影響を与えているとのことです。
住環境についても、会社が2LDKのアパートを用意し、社長・専務が時折夕食に招くなど、私生活でも積極的に関わっています。夏には一緒に浴衣を着て花火大会に参加するなど、文化体験を通じた交流の機会も設けられており、単なる雇用関係を超えた信頼構築が行われているのです。
参考:【外国人活用事例】整備業界(16) 株式会社横山モータース|アセアンカービジネスキャリア
教訓
これらの事例から共通して、企業が学べる教訓は以下のようなものではないでしょうか。
- 明確なキャリアパスの提示
-
フィリピン人材は「日本で技術を学びたい」「家族を支えたい」という強い動機を持っています。企業側も、特定技能1号の5年間だけでなく、その先(特定技能2号への移行や幹部登用など)のキャリアパスを明確に示すことが、彼らのモチベーションと定着率を向上させます。
- 「教育」への先行投資
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オートバックスの事例のように入国前に専門教育を行うのが理想ですが、横山モータースのように、入国後のOJTや日本語教育のサポートを手厚く行うことも可能です。「コスト」ではなく「未来への投資」として、教育体制を整備することが重要です。
- 生活面での手厚いサポート
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異国の地での生活は、本人が想像する以上にストレスがかかります。住居の確保、行政手続きの同行、銀行口座の開設など、業務以外の生活面でのサポートを企業(または登録支援機関)が手厚く行うことで、安心して業務に集中できる環境を整える必要があります。
- 日本語教育の重要性
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来日前後の語学研修を徹底すれば、現場でのミスや誤解も減らせます。2号への移行を見据えて、継続的な日本語教育のサポートが非常に重要です。
- 現場の「受け入れ意識」の醸成
-
最も重要なのは、現場の日本人スタッフの意識です。単なる「労働力」や「助っ人」としてではなく、共に働く「同僚」として受け入れる文化が必要です。積極的な声がけ、やさしい日本語を用いるといった小さな配慮が、彼らの不安を取り除き、能力を最大限に発揮させる土壌となります。
オートバックスと横山モータースの両社は、制度の活用にとどまらず、現場の創意工夫によってフィリピン人材の強みを引き出しています。受け入れる側の準備と関わり方次第で、大きな相乗効果を生むことができるのです。


フィリピン人受入れに必須のDMW申請と送り出し機関


フィリピン人材を採用するには、日本側の法律だけではなく、フィリピン政府側の組織(DMW/旧POEA)と、現地の送り出し機関についての理解が不可欠です。
DMWと送り出しルールの要点
フィリピンは国民の多くが海外で働いているという現状があり、労働者を保護するため、DMW(海外労働者省)という行政機関が海外への送出を厳格に管理・監督しています。そのDMWの窓口として各国に設置されているのが、MWO(移住労働者事務所)です。
MWOは企業が作成した雇用契約や求人票がフィリピンの労働基準に合致しているかを認証(Verification)します。MWOの認証を経ることで、フィリピン政府から正式に採用計画が承認されます。
フィリピンではエージェントを介さない企業による直接雇用は原則禁止されており、DMW認定の送り出し機関を通じた手続きが必要となります。
そのため日本の企業がフィリピンから人材を雇用する場合、まずはDMW認定の送り出し機関と人材募集・雇用に関する取り決めを締結し、その上でMWOへの申請手続きを行い、認証を得なければなりません。
また送り出し機関に関してDMWは不当な手数料徴収を禁じる通達を出しており、紹介料や手数料の取り扱いには法的なルールが適用されます。とはいえ、実務上は運用に差が出ており、企業側が想定外の費用負担や説明不足に直面するケースが散見されます。企業側は送り出し機関との契約時に費用負担の明細を契約書で明確化してください。
海外雇用許可証の取得
海外雇用許可証(OEC :Overseas Employment Certificate)は、フィリピン人が就労目的で日本へ渡航するために必須の証明書であり、フィリピンを出国する際の空港で提出が求められます。
このOECの申請には、日本側で取得した在留資格認定証明書(COE)や、正式な雇用契約書、技能証明書等の書類が必要となり、DMW/MWOによる厳格な審査を経て発行されます。
ここで重要な点は、日本のビザが発行された後であっても、フィリピン側でOECが取得されていなければ、フィリピン人は出国できないということです。これは、日本側の手続きが完了した後に、渡航直前で採用予定が頓挫する最大のリスク要因となり得ます。企業担当者は、日本の入国管理手続きに注力する中で、送り出し機関やフィリピン人本人に対してOEC取得の進捗情報を常に確認し、管理名簿を作成しておく必要があります。
送り出し機関選定の重要性
フィリピン人採用における最大の実務リスクの一つは、送り出し機関の選択です。なぜなら、一部には不当な費用請求や書類偽造、質の低い日本語教育といった悪質な運営を行う機関が存在するからです。
そうした事案は、労働者本人に深刻な被害をもたらすだけでなく、受け入れ企業にも失踪・不法就労・労務トラブルといった重大な負担を引き起こします。
したがって、送り出し機関の選定は「人が来るかどうか」だけで判断してはいけません。倫理性・透明性・法令順守を含めた総合的な適性評価が不可欠です。
採用ステップ
DMWに認定された現地の送り出し機関を通じて契約を締結します。
送り出し機関を通じて、求人票(Job Order)および雇用契約案をMWOに提出し、フィリピン側の基準に沿うか確認を受けます。必要があれば契約内容の修正や追加書類の提出を求められます。
MWOの認証で必要条件が満たされたことを確認したうえで、候補者と正式な雇用契約を最終確定(署名)します。実務上はこの確定をもって日本側の在留手続きを進めるのが安全です。
日本側での在留資格申請に必要な書類を揃え、出入国在留管理庁に申請します。COE の有効期限に注意し、フィリピン側手続きを完了させた上で申請することが望ましいです。
OECはフィリピン出国時に提示が求められる証明書です。これを取得することで、合法的に出国・入国が可能となります。日本在住者でも、場合によっては OEC 取得が必要になることがあります。
日本在住フィリピン人を雇用する場合:1号から2号移行時の注意点
すでに日本国内に在留している特定技能1号のフィリピン人材を2号に移行して継続雇用する場合でも、MWOによる認証手続きが原則として必要となります。
これは、たとえ日本国内で在留資格の変更(1号→2号)を行うケースでも、フィリピン政府の視点からは「海外就労扱い」となるためです。MWOを通じた認証手続きを取得を怠り、外国人が一時的にフィリピンへ帰国した場合、出国時にOECの提示を求められて提示できなければ、日本への再入国が不可能になるという深刻な事態が発生する可能性があります。
受入れ企業は、この重大なリスクを理解し、日本在住者であっても、DMW認定の人材紹介会社を経由した認証手続きを確実に行う必要があります。
参考:DMW






送り出しカフェの活用


DMWへの申請、送り出し機関の選定などの手続きが必要なフィリピン人材の採用を成功させるには、専門のサポート機関を利用するのが最も効率的かつ効果的です。
送り出しカフェは、フィリピン人労働者の採用を検討している日本企業を対象に、フィリピン現地の送り出し機関の紹介・仲介を行っています。
フィリピン政府のライセンスを持つ正規の送り出し機関と提携しており、年間2,000人を海外に送り出す実績を有するパートナーなど、実績豊富な機関と連携しているのが大きな特徴です。
送り出しカフェ活用のメリット一覧
- 信頼性のある送り出し機関の紹介
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フィリピン政府公認のライセンスを持つ送り出し機関と提携しているため、違法・不透明な業者を避けられる。
- 人材の母集団が大きい
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提携大学・職業訓練校から約7,000人規模の候補者がいるため、必要な職種に合った人材を探しやすい。
- 特定技能16分野に対応
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介護・外食・建設など幅広い業種の求人に対応できる。
- 安心の日本語対応
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日本人スタッフが窓口となるため、言語や文化の違いによる誤解・トラブルを減らせる。
- 採用から入国後までワンストップ支援
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求人票作成、面接調整、ビザ・MWO申請、入国後の定着支援までトータルサポート。
- 手続きの負担軽減
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フィリピン側で必要な複雑な申請書類や手続きを代行・支援してくれる。
- 日本語教育サポート
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採用前から就労後まで継続的に日本語教育を行う体制があり、現場でのミスや離職リスクを軽減できる。
- 費用や採用リスクの低減
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信頼性の低い送り出し機関を選んで失敗するリスクを減らし、スムーズな採用につながる。
送り出しカフェを活用することによって、DMWのルール確認、信頼できる送り出し機関の選定、明確な契約とスケジュール管理などを円滑に行うことができるでしょう。
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まとめ:特定技能2号が拓く自動車整備業界の未来


自動車整備分野における特定技能2号の導入は、深刻な人材不足に悩む業界にとって、まさに待望の制度改正と言えます。
特定技能1号の「5年」という期限が撤廃され、熟練した技能を持つ人材を長期的に雇用できる道が開かれたことは、企業の安定的な事業運営に大きく寄与するでしょう。また、家族帯同が可能になることで、外国人材にとっても日本で腰を据えて働くインセンティブが高まり、人材の定着が期待されます。
特定技能2号人材を、企業の継続的な成長に欠かせない重要なピースと捉える。そして自社の特定技能1号あるいは技能実習生の将来的なキャリアとして、特定技能2号への移行を計画的に支援・設計することは、これからの時代を勝ち抜くための極めて重要な人事戦略となるでしょう。
とはいえ、自社だけでそうした支援の枠組みを作り、実行するのは簡単なことではありません。登録支援機関などの適切なサポートを得ることが、一番の近道と言えます。
さらに特定技能1号のフィリピン人材の採用、また1号から2号への移行の際には、日本側の手続きに加えてフィリピン側のDMW・MWO申請が必要となります。
私たち「送り出しカフェ」は、フィリピン人材採用のために、信頼できる送り出し機関との連携体制を構築し、採用・在留資格手続き、日本語教育、生活支援までを一貫してサポートしています。
フィリピン人材の採用を具体的に検討されている企業様は、ぜひお気軽にご相談ください。
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