外国人労働者の採用を検討する企業にとって、関連法律の正確な理解は不可欠です。出入国管理及び難民認定法や労働基準法など、複数の法令が複雑に関係するため、法務担当者が全体像を把握することは容易ではありません。
本記事では、外国人を雇用する際に企業が遵守すべき法律の基本を体系的に整理し、在留資格制度から届出義務まで、実務で必要となる情報を解説します。適法な雇用管理体制の構築に向けて、ぜひ参考にしてください。
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外国人雇用に関する法律の全体像

外国人労働者を雇用する際には、複数の法令が適用されます。入管法は在留資格や就労の可否を規定し、労働基準法や最低賃金法は労働条件の確保を義務付けています。さらに、雇用対策法に基づく届出制度も事業主の責務です。これらの法律を総合的に理解することが、適切な雇用管理の第一歩となります。
外国人雇用に関わる主要法律とその適用範囲
外国人の雇用に関わる主要な法令と、その目的・適用範囲を以下に一覧で整理します。
| 法律名 | 主な規制内容・目的 | 適用範囲 |
|---|---|---|
| 出入国管理及び難民認定法(入管法) | 在留資格の種類 就労可否の判断 不法就労の禁止 | 日本に在留するすべての外国人 |
| 労働基準法 | 労働時間、賃金、解雇制限など労働者の権利保護 | 国籍を問わずすべての労働者 |
| 最低賃金法 | 地域別・産業別の最低賃金額の保障 | 国籍を問わずすべての労働者 |
| 労働安全衛生法 | 職場の安全確保 健康管理措置による災害防止 | 事業場で働くすべての労働者 |
| 雇用対策法 | 外国人雇用状況の届出義務 雇用の安定 | 外国人を雇用するすべての事業主 |
| 雇用保険法、労働者災害補償保険法など | 健康保険、厚生年金、雇用保険、労災保険への加入 | 加入要件を満たす労働者 |
これらの法律は相互に関連しており、いずれかに違反すると罰則の対象となります。特に労働関係法令は国籍による差別を禁止しており、日本人と同等の保護が適用される点を正しく理解しておく必要があります。
法改正の動向と最新情報
外国人雇用に関する法制度は近年大きく変化しています。
| 年度 | 主な改正・制度変更 |
|---|---|
| 2019年 | 特定技能制度の創設(入管法改正) |
| 2022年 | 特定技能2号の対象分野拡大 |
| 2024年 | 技能実習制度の廃止と育成就労制度の創設法成立(施行2027年予定) |
| 2025年 | 改正入管法の施行(地方自治体連携義務化など) |
法改正の情報は厚生労働省や出入国在留管理庁のサイトで随時公開されています。最新の制度内容を確認し、自社の雇用管理へ反映させることが不可欠です。
在留資格制度の基礎知識

外国人を合法的に雇用するためには、在留資格制度の理解が欠かせません。在留資格とは、外国人が日本に滞在し活動するための法的な資格であり、入管法によって定められています。
就労が認められる資格、認められない資格、条件付きで認められる資格があり、採用時には必ず確認が必要です。在留資格に適合しない業務に従事させた場合、企業側も不法就労助長罪に問われる可能性があります。
参考:厚生労働省 外国人の雇用
就労が認められる在留資格の種類
就労可能な在留資格は、活動内容によって複数のカテゴリに分類されます。
| 在留資格の分類 | 主な在留資格 | 就労の範囲 |
|---|---|---|
| 専門的・技術的分野 | 技術・人文知識・国際業務 高度専門職 経営・管理 | 資格に定められた業務のみ |
| 特定産業分野 | 特定技能1号 特定技能2号 | 指定された16分野の業務 |
| 技能移転目的 | 技能実習1号・2号・3号 | 実習計画に基づく業務のみ |
| 身分に基づく在留 | 永住者 日本人の配偶者等 定住者 | 就労制限なし |
身分に基づく在留資格を持つ外国人は、業務内容に制限がありません。一方、就労系の在留資格は活動範囲が限定されるため、採用前の確認が不可欠です。
特定技能と技能実習の違い
特定技能と技能実習は混同されやすい制度ですが、目的や条件が異なります。
| 比較項目 | 特定技能 | 技能実習 |
|---|---|---|
| 制度の目的 | 人材確保(労働力としての受入れ) | 技能移転による国際貢献 |
| 在留期間 | 1号は通算最大5年 2号は更新制限なく長期滞在可能 | 最長5年(1号・2号・3号の合計) |
| 転職の可否 | 同一分野内で可能 | 原則不可 |
| 受入れ機関の要件 | 登録支援機関による支援体制 | 監理団体を通じた受入れ |
| 家族帯同 | 1号は不可 2号は可能 | 原則不可 |
特定技能は介護や建設など即戦力が求められる分野での就労を想定し、技能実習は教育実習として技能移転を目的としています。制度の目的と対象者が異なるため、採用目的に応じた制度選択が重要です。
在留資格の確認方法と注意点
採用時には在留カードによる資格確認が必須となります。
| 確認項目 | 確認内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 在留カードの有効性 | 在留期間の満了日 | 期限切れは不法滞在に該当 |
| 在留資格の種類 | 就労可否と活動範囲 | 資格外の業務は違反 |
| 就労制限の有無 | カード裏面の記載 | 「就労不可」の記載に注意 |
| 資格外活動許可 | 許可の有無と条件 | 週28時間以内等の制限確認 |
出入国在留管理庁のサイトでは、在留カード番号の有効性をオンラインで照会できます。偽造カードによる不法就労を防止するため、必ず確認を行ってください。
参考:出入国在留管理庁 在留カード等読取アプリケーション サポートページ
資格外活動許可の仕組み
留学生や家族滞在者を雇用する際は、資格外活動許可の確認が必要です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象者 | 留学、家族滞在、文化活動など就労が認められない在留資格の保持者 |
| 許可の種類 | 包括許可(業種を問わない)と個別許可(特定の活動のみ) |
| 労働時間の制限 | 週28時間以内(留学生の長期休暇中は週40時間まで) |
| 禁止業種 | 風俗営業等に該当する業務 |
| 確認方法 | 在留カード裏面の「資格外活動許可欄」 |
許可を得ずに就労させた場合、雇用主にも罰則が科される可能性があります。アルバイトやパートタイムでの採用時も、必ず許可の有無と条件を確認することが求められます。



外国人労働者に適用される労働法規

外国人労働者にも日本の労働関係法令が全面的に適用されます。労働基準法をはじめとする各種法令は、国籍を理由とした差別的取扱いを禁止しており、日本人と同等の労働条件を確保しなければなりません。
企業は賃金、労働時間、安全衛生などすべての面で法令遵守が求められます。適切な雇用管理を怠った場合、行政指導や罰則の対象となる可能性があります。
労働基準法の適用と留意点
労働基準法は外国人労働者にも全面的に適用されます。
| 適用項目 | 具体的内容 | 留意点 |
|---|---|---|
| 労働条件の明示 | 賃金、労働時間、業務内容等を書面で交付 | 母国語での説明が望ましい |
| 労働時間 | 1日8時間、週40時間が上限 | 36協定なしの時間外労働は違反 |
| 賃金支払い | 通貨払い、直接払い、全額払い、毎月払い | 不当な控除は禁止 |
| 解雇制限 | 30日前の予告または解雇予告手当の支払い | 国籍を理由とした解雇は無効 |
| 有給休暇 | 6ヶ月継続勤務で10日付与 | 在留資格の種類に関係なく適用 |
雇用契約を締結する際は、労働条件通知書を日本語だけでなく、労働者が理解できる言語で作成することが厚生労働省の指針で推奨されています。
社会保険・労働保険の加入義務
外国人労働者も要件を満たせば、雇用保険法や労働者災害補償保険法などに基づき、社会保険・労働保険への加入が義務付けられます。
| 保険の種類 | 加入要件 | 対象となる外国人 |
|---|---|---|
| 健康保険・厚生年金 | 常時雇用される労働者(週30時間以上等) | 在留資格を問わず適用 |
| 雇用保険 | 週20時間以上勤務、31日以上の雇用見込み | 留学生も資格外活動許可下で条件満たせば対象 |
| 労災保険 | すべての労働者 | 不法就労者にも適用 |
労災保険は在留資格の有無にかかわらず、すべての労働者に適用される点が特徴です。業務中の事故や疾病に対する補償は、国籍や在留状況を問いません。社会保険の適用逃れは法令違反となるため、適正な手続きを行う必要があります。
均等待遇の原則と差別禁止
外国人労働者に対する差別的取扱いは法律で明確に禁止されています。
| 禁止される差別 | 根拠法令 | 具体例 |
|---|---|---|
| 国籍を理由とした労働条件の差別 | 労働基準法第3条 | 外国人のみ賃金を低く設定 |
| 募集・採用における差別 | 職業安定法、雇用対策法 | 国籍を理由に応募を拒否 |
| ハラスメント | 労働施策総合推進法 | 国籍や文化を理由とした嫌がらせ |
| 不利益な配置転換 | 労働契約法 | 外国人のみ不当な部署異動 |
日本での生活や職場への適応を支援し、能力を最大限に発揮できるよう配慮しつつ、公正な処遇を実現することが事業主の責務です。
企業に課される届出・報告義務

外国人を雇用する事業主には、法令に基づく届出義務が課されています。労働施策総合推進法により、外国人労働者の雇入れ・離職時にはハローワークへの届出が必須です。
届出を怠った場合や虚偽の届出を行った場合には罰則が科されます。適正な届出手続きを理解し、コンプライアンス体制を整備することが企業の責務となります。
外国人雇用状況届出の手続き
外国人労働者の雇入れ・離職時には、ハローワークへの届出が義務付けられています。
| 届出項目 | 届出内容 | 届出期限 |
|---|---|---|
| 届出対象者 | 特別永住者を除くすべての外国人労働者 | ― |
| 届出事項 | 氏名、在留資格、在留期間、生年月日、性別、国籍、資格外活動許可の有無 | ― |
| 雇入れ時(被保険者) | 資格取得届 | 翌月10日まで |
| 雇入れ時(非被保険者) | 雇入れ届出書 | 翌月末日まで |
| 離職時(被保険者) | 資格喪失届 | 離職翌日10日以内 |
| 離職時(非被保険者) | 離職届出書 | 翌月末日まで |
| 届出方法 | ハローワーク窓口、電子申請(e-Gov) | ― |
ハローワークの職業紹介による採用かどうかにかかわらず、届出内容は在留カードに記載された情報に基づいて正確に記入する必要があります。
届出を怠った場合の罰則
届出義務違反には明確な罰則が定められています。
| 違反内容 | 罰則 | 根拠法令 |
|---|---|---|
| 届出を怠った場合 | 30万円以下の罰金 | 労働施策総合推進法第40条 |
| 虚偽の届出を行った場合 | 30万円以下の罰金 | 労働施策総合推進法第40条 |
| 不法就労者を雇用した場合 | 3年以下の懲役または300万円以下の罰金 | 入管法第73条の2 |
| 不法就労を助長した場合 | 3年以下の懲役または300万円以下の罰金 | 入管法第73条の2 |
不法就労助長罪は、在留資格の確認を怠った場合にも適用される可能性があります。「知らなかった」という理由は免責事由になりません。採用時の確認体制を整備し、リスクを未然に防止するための対策を講じることが求められます。
適正な労務管理のチェックポイント
外国人雇用における労務管理の要点を整理します。
| 管理項目 | 確認内容 | 実施頻度 |
|---|---|---|
| 在留資格の確認 | 在留カードの有効性、就労可否 | 採用時・更新時 |
| 在留期間の管理 | 期間満了日の把握、更新手続きの支援 | 定期的(月次推奨) |
| 届出状況の確認 | 雇入れ・離職の実施状況 | 雇入れ・離職の都度 |
| 労働条件の整備 | 労働条件通知書の交付、母国語対応 | 採用時・条件変更時 |
| 相談体制の構築 | 日本語能力に配慮した相談窓口 | 常時 |
厚生労働省では外国人雇用管理に関する資料やサイトマップを公開しており、最新の情報を確認できます。不明点がある場合は、ハローワークや専門家への相談を活用することが望ましいでしょう。

まとめ|外国人労働者の雇用と法律遵守のポイント

外国人労働者の雇用には、入管法や労働基準法をはじめとする複数の法令が関係します。在留資格の確認、労働条件の適正な設定、届出義務の履行など、法務担当者が押さえるべきポイントは多岐にわたります。国籍を問わず均等な待遇を確保し、適法な雇用管理体制を構築することが企業の責務です。
法改正や制度変更も頻繁に行われるため、厚生労働省や出入国在留管理庁の最新情報を定期的に確認してください。不明点がある場合は、専門家の援助を受けることも有効です。対応に不安なら、ハローワークや社会保険労務士等への相談を活用し、リスクを未然に防止することが望ましいでしょう。
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