グローバル化と人手不足が加速する日本において、外国人労働者は多くの企業にとって欠かせない戦力となりつつあります。とくに、優れたスキルと勤勉さを兼ね備えた人材が多いフィリピンからの採用を検討する企業担当者も増えています。
しかし、外国人労働者を雇用する際には、日本人を採用する場合とは異なる法的なルールや手続きが存在します。これらを十分に理解せずに採用を進めると、結果的に法律違反となり、企業が行政処分や罰則を受けるおそれがあります。
たとえば、「在留資格」という言葉を耳にしたことはあっても、その種類や、資格ごとに認められる就労範囲を正確に把握している担当者は多くありません。また、外国人労働者を雇用した際に企業が負う義務を明確に理解していないケースも少なくないでしょう。
本記事では、フィリピン人をはじめとする外国人労働者の採用を検討する企業担当者に向けて、外国人雇用に関わる主要な法律の基礎知識、とくに「出入国管理及び難民認定法(入管法)」と「雇用対策法」の重要ポイント、さらに採用手続きの流れや企業の遵守義務について体系的に解説します。
安心して外国人材が活躍できる環境を整えるためにも、まずは雇用主として日本の法制度を正確に理解することから始めましょう。
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外国人労働者雇用に関わる主要な法律

外国人労働者を日本で雇用する際に、企業がまず押さえておくべき法律は大きく二つあります。ひとつは「出入国管理及び難民認定法(入管法)」。もうひとつは「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(労働施策総合推進法、旧:雇用対策法)」です。
とはいえ、これらだけが全てではありません。労働基準法や最低賃金法、労働安全衛生法、社会保険関連の法令も、外国人であっても原則として日本人と同様に適用されます。
つまり、入管法が「入口」の管理を担う一方で、雇用にかかわる実務は日本の労働法制全体が支えていると理解してください。
入管法の役割と企業の実務ポイント
入管法は、在留資格制度を通じて、外国人が日本でどのような活動を、どの程度の期間行えるかを定める法律です。
企業が外国人を雇用する際は、応募者が持つ在留資格が、予定している業務の範囲を法的に許容するかを必ず確認しなければなりません。
たとえば、通訳や翻訳の業務は「技術・人文知識・国際業務(技人国)」等の就労可能な在留資格が前提ですし、留学生に対しては資格外活動許可の範囲(原則として「週28時間以内」)を超える勤務は認められません。
実務上は在留カードで「在留資格」「在留期間」「就労制限の有無」を確認し、そのコピーを採用記録として保管することが重要です。こうした確認は不法就労助長のリスク回避にも直結します。
雇用管理面での法的枠組み:労働施策総合推進法
労働施策総合推進法(旧・雇用対策法)は、主に企業の雇用管理に関するルールを定めています。なかでも実務に直結するのが「外国人雇用状況届出制度」です。
企業は外国人労働者を雇い入れた際、または離職した際に、氏名や在留資格、在留期間などの必要事項をハローワークへ届け出なければなりません。
届出方法や期限(例:被保険者か否かで扱いが変わる点)には細かな規定がありますので、届出手続きは事前に運用フローを整備しておくことを推奨します。
届出を怠ったり虚偽の届出を行ったりすると罰則が科される可能性があるため、注意が必要です。
日本人と同様に適用される労働関連法規と均等待遇
重要な前提として、外国人労働者であっても労働基準法や最低賃金法、労働安全衛生法、労働者災害補償保険法(労災保険)、雇用保険、健康保険、厚生年金といった労働・社会保険の適用は原則同じです。
国籍を理由に不当に低い賃金を設定したり、必要な保険に加入させないといった扱いは法律違反に該当します。
労働基準法などは国籍による差別的取扱いを禁止しており、企業は日本人従業員と均等な待遇を確保する責任を負います。したがって、採用・労務管理・報酬体系・福利厚生の設計は、法令に照らして公平性を担保する視点で行ってください。
企業が取るべき対応
短く整理すると、企業がまず実行すべきことは次の三点です。
- 採用候補者の在留資格が業務に適合するかを採用前に確認すること。
- 雇用の開始・終了時に必要なハローワークへの届出を適切に行うこと。
- 労働基準法等の労働法規に基づき、日本人と同等の労働条件・社会保険の適用を徹底すること。
これらを運用面で確実に回せるよう、担当者の役割分担やチェックリストを整備しておくと実務上のリスクを大幅に下げられます。
入管法を深く知る:在留資格の複雑な世界

外国人雇用を成功させる鍵は、入管法、特に「在留資格」制度の正しい理解にあります。在留資格は、外国人が日本で行える活動の範囲を規定するものであり、企業の採用判断における大前提です。
ここでは、企業が採用に関わることが多い主要な在留資格群の特徴と、実務上の注意点を分かりやすく整理します。
在留資格とビザ(査証)の違い
まず用語の整理からです。
ビザ(査証)は在外の日本大使館・領事館が発行する「入国のための許可書」に相当します。
一方、在留資格は国内でどのような活動が法的に許されるかを示す「日本国内での活動許可証」です。
入国時にビザがあっても、採用時に企業が確認すべきなのは在留資格です。採用時には在留カードで在留資格と在留期間、就労制限の有無を必ず確認してください。
就労可能な主な在留資格
以下は企業が採用で関わる頻度が高い在留資格の要点です。業務の範囲や必要要件に差があるため、応募者の職務内容と照らし合わせて判断します。
- 技術・人文知識・国際業務(技人国)
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専門的・知識集約型の業務で使われる代表的な在留資格です。原則として大学等の卒業が求められますが、学歴がない場合は関連実務経験での代替が認められることがあります。実務経験の目安は一般に約10年、国際業務の一部では約3年とされていますが、最終的には在留審査で個別判断されます。採用時には学歴証明や職務経歴書のほか、業務内容が在留資格に見合うかの説明書類を準備してください。
- 特定技能
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深刻な人手不足が認められる特定の産業分野に従事する外国人を受け入れるための在留資格です。代表例は介護、建設、外食、製造などです。制度には特定技能1号(通算在留上限があり、原則として家族帯同不可)と、より熟練を対象とする特定技能2号(在留更新に上限がなく、所要要件を満たせば家族帯同が可能)があります。分野ごとの受入れ手順や試験制度が定められているため、採用前に分野の要件を確認してください。
- 技能実習(育成就労制度)
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技能実習は技能・知識の移転を目的とする在留資格ですが、制度改正・移行により新たな枠組みである「育成就労制度」の導入が予定されています。制度変更が運用に与える影響は大きく、現状の扱いと今後の移行スケジュールを必ず最新の公的情報で確認してください。
- 企業内転勤、経営・管理等
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海外拠点からの転勤者や、国内での経営・管理者を対象とする在留資格もあります。業務内容が在留資格の範囲に収まっているかを確認するのは当然として、転勤の根拠となる企業書類(人事配置計画等)を整備しておくと審査がスムーズです。
原則として就労が認められない在留資格
留学や家族滞在など、本来就労目的でない在留資格を持つ者は、資格外活動許可がない限り原則として雇用できません。
留学生等は原則週28時間以内、長期休暇中は1日8時間以内の資格外活動が許可される例が一般的です。
採用時は在留カード裏面の資格外活動記載を必ず確認し、違反行為は企業側も不法就労助長のリスクに問われる可能性があることを説明してください。
実務チェックリスト
採用担当者が最低限行うべき確認事項をチェックリスト化しました。実務運用に組み込んでください。
- 在留カード(表裏)の提示とコピーの取得
- 氏名、生年月日、国籍、在留資格、在留期間、就労制限の有無を確認。
- 業務内容と在留資格の整合性を文書で記録
- 職務記述書(雇用契約書)を在留資格に照らして説明できるようにする。
- 学歴・職歴の証明書類の保管
- 技人国等で学歴を要件とする場合は卒業証明書を、代替の実務経歴を用いる場合は職務経歴書や在職証明を用意。
- 資格外活動の時間管理
- 留学生等を雇う場合は労働時間管理を徹底し、週28時間超の就労とならないよう運用を設計する。
- COE(在留資格認定証明書)やビザの有無の確認(海外採用の場合)
- 採用→渡航→在留カード交付までのフローを把握。
- 制度改正の監視
- 技能実習制度の移行等、法改正情報を定期的に収集する担当者を決める。
- 技能実習制度の移行等、法改正情報を定期的に収集する担当者を決める。
在留資格の判断は細部で運用が変わり得ます。したがって、個別ケースで不明点がある場合は出入国在留管理庁や専門の行政書士に早めに相談するのが安全です。


外国人を雇用する手続きの具体的な流れ

外国人労働者を採用する際、手続きの流れは「海外から呼ぶか」「日本国内にいるか」で大きく変わります。さらに、既に日本に在留している場合も、現在の在留資格によって必要な申請が異なります。
どのケースでも最終的に出入国在留管理庁(入管)への申請が関わるため、企業側は事前に書類準備とスケジュール設計を行ってください。
海外在住者を雇用する場合
海外に住んでいる人を日本に呼んで雇用する場合の、主な流れは以下の通りです。
- 内定時に雇用条件を確定し、雇用契約案を作成する。
- 渡航・就労開始時期はCOEと査証の処理を見込んで余裕を持たせる(目安:2〜3か月)。
| 申請主体 | 企業(または申請取次を行う行政書士等)。 |
| 主な提出書類 (代表例/在留資格別に追加あり) | 申請書 本人写真 雇用契約書 学歴・職歴証明 登記事項証明書 直近決算書 会社案内 雇用理由書 |
| 注意点 | 入管から追加資料を求められることがある。 早めに企業側の証憑を揃える。 処理期間は案件により数週間〜数か月。 |
- COE交付後、本人が在外公館でビザ申請を行う。
- 企業はCOE原本(または電子COE)を本人に送付。
- 本人は在外公館で査証を申請し、発給されたら渡航準備。
- 入国・在留カード交付 → 就労開始手続き。
- 空港で在留カードを受領したら、表裏を企業へ提示・コピーを保管。
- 社会保険・雇用保険の加入手続き等を開始する。
海外に在住する外国人を新たに日本で雇用する場合は、「在留資格認定証明書(COE:Certificate of Eligibility)」の取得が必要です。
COEは、出入国在留管理庁が発行する「この外国人は、特定の在留資格で日本に入国する要件を満たしている」という証明書であり、外国人本人が日本大使館・領事館でビザを申請する際に提出します。
企業側は、まずこのCOEを日本国内で申請・取得し、その後、本人がビザを取得して入国するという流れになります。
- COEや査証が想定より遅延・不交付となるケースがあるため、採用スケジュールは余裕を持つこと。
- フィリピンなど送り出し国側の手続き(OEC等)が別途必要な国では、出国前に現地手続きの完了を確認する。
- 書類不備は審査遅延の主要因。企業側でチェックリストを整備すること。
日本国内在住者を雇用する場合
すでに日本国内に住んでいる人を雇用する場合の流れは、以下のようになります。
- 在留カード(表裏)を提示させ、在留資格・在留期間・就労制限の有無を確認する。
- コピーを採用記録として保管。
永住者や配偶者等は原則就労可。留学や家族滞在などは原則就労不可(資格外活動許可が必要)または時間制限あり(留学生は原則週28時間)。
- もし可能なら、雇用契約締結→雇入れ手続き(ハローワーク届出等)へ進む。
- 就労不可/業務内容が現資格の範囲外なら、在留資格変更が必要。
| 申請主体 | 本人または企業(代理)。 管轄は本人の住所地の地方出入国在留管理局。 |
| 必要書類 | COE申請と類似(申請書、雇用契約書、学歴・職歴証明、会社資料、雇用理由書等)に加え本人の在留カード・パスポート。 特定技能等は分野別の追加書類(試験合格証、支援計画等)が必要。 |
| 注意点 | 審査中に在留期間が満了するリスクがあるため、必要に応じ在留期間更新申請を同時に検討する。 |
許可が下りたら、新しい在留カードのコピーを保管し、人事・社会保険手続きを完了する。
既に日本に留学、技能実習、家族滞在などの在留資格で滞在している外国人を雇用する場合は、「在留資格変更許可申請」が必要です。
これは、現在持っている在留資格(例:留学)から、就労が認められる資格(例:技術・人文知識・国際業務など)に変更する手続きで、原則として本人が地方出入国在留管理局に申請します。
企業は、雇用予定の職務内容が希望する在留資格の活動範囲に該当するかを確認し、必要書類を用意して本人を支援する必要があります。
- 在留資格変更が不許可となる場合もある。採用内定段階で「不許可時の対応(採用取り止め、帰国支援等)」を明確化しておく。
- 留学生等をアルバイトで採用する場合は、週28時間等の時間管理が企業側で遵守されていることを確認する(超過は不法就労助長のリスク)。
在留期間の更新許可申請(継続雇用の場合)
在留資格には、それぞれ「在留期間」(例:5年、3年、1年、6ヶ月など)が定められています。雇用している外国人労働者が、この在留期間を超えて引き続き日本で就労することを希望する場合、在留期間が満了する前(通常は満了日の3ヶ月前から)に「在留期間更新許可申請」を入管に行う必要があります。
企業は、雇用している外国人労働者の在留期間を把握・管理し、更新手続きをサポートすることが求められます。更新が許可されなければ、その外国人は日本に滞在し続けることができなくなり、企業も雇用を継続できません。
雇用対策法と企業の義務
入管法が在留に関するルールを規定するのに対し、労働施策総合推進法(旧・雇用対策法)は、企業の雇用管理に関する義務を定めています。
外国人を雇用する際、事業主はこの法律上の届出義務や雇用管理上の配慮を確実に履行しなければなりません。
違反は罰則の対象となる可能性があるため、特に届出手続きについては運用を社内で整備しておく必要があります。
外国人雇用状況届出(ハローワーク)―何を、いつ、どこへ出すか
外国人を雇い入れたとき、あるいは離職したとき、事業主はハローワークへ「外国人雇用状況」の届出を行う義務があります。対象者や提出期限は雇用形態によって異なりますので、下記を必ず運用ルールに落とし込んでください。
| 対象者 | 日本国籍を有しない全ての労働者(ただし、特別永住者および在留資格が「外交」「公用」の者は除く)。 |
| 提出期限(重要) | 雇用保険の被保険者となる場合:事業主は「雇用保険被保険者資格取得届」を、被保険者となった日の属する月の翌月10日までに提出します。 被保険者とならない場合(短期のアルバイト等):別途「外国人雇用状況届出書(様式第3号)」を、雇入れの翌月末日までに提出してください。 |
| 離職時 | 被保険者であれば「雇用保険被保険者資格喪失届」で届出を兼ねます。 被保険者でない場合は「様式第3号」を、離職の翌月末日までに提出します。 |
| 提出方法 | ハローワーク窓口、郵送、または「外国人雇用状況届出システム」によるオンライン提出が可能です。 運用上はオンラインでの一括管理を検討すると便利でしょう。 |
| 届出項目の代表例 | 氏名 国籍 在留資格 在留期間 在留カード番号 雇入日・離職日 資格外活動許可の有無 など。 |
届出を怠ったり、虚偽の届出をしたりした場合は、30万円以下の罰金が科される可能性があります。企業は届出の担当者とチェック体制を明確にし、提出期限を厳守してください。
雇用管理の改善と事業主の努力義務
法律は、事業主に対して外国人労働者の雇用管理の改善に努めることを求めています。これは法的な「努力義務」であり、以下のような具体的施策の実施が期待されています。
| 労働条件の確保 | 賃金、労働時間、休日などについて日本人と同等の水準を確保すること。国籍を理由とする不合理な差別は認められません。 |
| 安全衛生教育 | 作業手順書や安全標識を母国語や図解で示す、理解しやすい方法で安全教育を行う等の措置を講じること。 |
| 生活支援 | 住居手配、銀行口座開設支援、日本語教育の提供など、生活面での支援を実施することが望ましい。 |
| 再就職支援 | 離職時における職業紹介や情報提供など、再就職支援に努めること。 |
募集・採用における国籍による差別の禁止
労働施策総合推進法は、募集および採用において均等な機会を確保するよう事業主に求めています。
したがって、合理的な理由なく国籍を理由に募集・採用を制限したり、「日本人歓迎」など一方的に特定国籍を排除する表現を求人に用いることは避けなければなりません。
求人票や採用基準は公平性の観点から社内チェックを行ってください。
雇用管理担当者の選任
外国人労働者を常時10人以上雇用する事業所については、雇用管理担当者(例:人事課長等)を選任することが求められています。これは法律上の「努力義務」に位置づけられますが、実務上は以下のような役割を期待します。
- ハローワーク等との届出・相談窓口となること。
- 在留期間・届出の管理(満了日管理、届出期限の遵守)を行うこと。
- 安全衛生・生活支援・日本語教育等の実施計画を策定・管理すること。
- 雇用条件の把握と均等待遇の監査を実施すること。
担当者が定まっていると、届出漏れや不備の早期発見が可能になり、結果として法的リスクを低減できます。
- 実務上の注意点
- 雇用保険の適用判定(被保険者となるか)は、労働時間や雇用見込み期間等に基づき行われます。適用判断を誤ると届出期限が変わるため、労務担当は基準を確認してください。
- 派遣・請負・業務委託など複数の雇用形態が混在する場合は、それぞれの形態ごとに届出の要否・方法が異なる可能性があります。外部労務の扱いも含めてルール化しましょう。
- 届出は社内のワークフローに組み込み、担当者・代替者・確認プロセスを明示しておくこと。これが「知らなかった」を避ける最も現実的な対策です。


知らなかったでは済まされない「不法就労助長罪」

外国人を雇用する企業が最も留意すべき法的リスクの一つが「不法就労助長罪」です。これは出入国管理及び難民認定法に定められる刑事罰であり、事業主や実務担当者に重大な損失をもたらす可能性があります。
ここでは何が違法なのか、企業が取るべき具体的な確認手順、万一疑義が生じた場合の初動を整理します。
何が不法就労か(代表的ケース)
典型的には次の3類型が不法就労と判断されやすいです。
- 不法滞在者(オーバーステイ)の雇用
- 在留期間が切れたまま就労させるケース。
- 在留資格の範囲外業務
- 持っている在留資格では認められない業務に就かせること(例:技人国の者に本来別資格向けの単純作業を主務として行わせるなど)。
- 資格外活動の超過
- 留学生等の「資格外活動」で定められた時間(原則週28時間、長期休業中は1日8時間)を超えて働かせること。
法的リスク
不法就労助長罪が成立すると、事業主などは刑事罰の対象となり得ます。現行法での法定刑は重く、かつ「知らなかった」ことを免罪とするのは容易ではありません。
採用・雇用管理においては、過失(確認を怠ったなど)が認められると処罰対象となる可能性があることを踏まえて運用してください。
採用時に必ず行うべき在留カードによる本人確認
企業が不法就労助長罪のリスクを回避するために、採用時に必ず行わなければならないのが、「在留カード」による本人確認と就労可否の確認です。
在留カードは、日本に中長期滞在する外国人に交付される身分証明書であり、外国人雇用における「パスポート」とも言える重要な書類です。
採用時には、必ず次の点を確認してください。
| 在留カードの原本を提示してもらい、表面の「就労制限の有無」欄と裏面の「資格外活動許可」欄を確認する。 | |
| 原本で顔写真と目の前の本人が一致するか確認する。 | |
| 在留資格(名称)と在留期間(満了日)を確認する。 | |
| 「就労制限の有無」欄と、留学生等は裏面の「資格外活動許可」欄を確認する。 | |
| 在留カードの番号を記録し、企業の採用記録として表裏のコピーを保管する(少なくとも雇用期間中は保管することを推奨)。 |
採用時にこれらの確認を徹底し、在留カードのコピー(表裏両面)を保管しておくことは、企業が「不法就労とは知らなかった(過失もなかった)」ことを証明する上で、非常に重要なプロセスとなります。
業務配分・就業時間の実務管理
- 応募者の在留資格で許される業務範囲を職務記述書で明確にし、実際の業務指示がその範囲を逸脱しないよう管理する。
- 留学生等を雇う場合はシフト管理で週28時間ルールを越えない運用を実施する。超過が発覚すると企業側も処罰対象になり得ます。
疑義が生じたときの初動
- 一時的に雇用手続きを停止または就労開始を保留する。
- 在留カード・パスポートを再確認し、番号照会を実施。
- 速やかに入管相談窓口または信頼できる行政書士・弁護士に連絡し、事実確認と対応方針を仰ぐ。
- 必要に応じてハローワークや労働局にも相談する(就労条件の適合性等)。
この初動対応の記録(日時・担当者・相談先・指示内容等)を残しておくことが、後の行政対応で重要になります。
企業の予防措置
- 採用時の本人確認手順を作成し、面接官・人事に教育する。
- 在留期間管理表を運用し、満了3か月前に更新手続きを促す。
- 就業規則や雇用契約書に在留資格遵守に関する条項を入れる。
- 不審事案に即対応できるよう、入管や専門家との連絡ルートを予め確立しておく。
外国人労働者雇用後の管理と継続的な注意点

外国人を採用し、入管手続きやハローワークへの届出が完了した後も、企業の責任は続きます。
雇用後の管理を怠ると、在留資格の問題や不法就労助長のリスク、社会保険・税務上の不備といった重大な事態を招きます。
ここでは、法律上の必須対応と運用上の留意点を実務目線で整理します。
労働条件・社会保険・税務は日本人と同等に適用される
前述の通り、労働基準法や最低賃金法、社会保険(健康保険、厚生年金)、労働保険(雇用保険、労災保険)は、外国人労働者にも日本人と同様に適用されます。
| 労働関係法令 | 労働基準法・最低賃金法・労働安全衛生法が適用されます。 賃金、労働時間、休日、割増賃金などは日本人と同等の基準で設定・支払う必要があります。 |
| 社会保険 | 健康保険・厚生年金は、事業所で「常時使用される」従業員に対して国籍を問わず適用されます。 将来の帰国予定に関係なく、基準に該当すれば加入手続きを行ってください。 |
| 税務 | 所得税・住民税の源泉徴収・特別徴収も外国人に適用されます。 居住者・非居住者の区分により計算方法や手続きが異なるため、採用・退職時に税務処理を確認してください。 |
労働条件の明示と理解確保
雇用契約書または労働条件通知書を必ず交付してください。書面交付は義務です。
外国人が内容を正確に理解できるよう、必要に応じて母国語併記や平易な日本語、口頭説明を併用すると良いでしょう。
雇用条件の誤解が労務トラブルにつながるため、受領確認(署名・押印)を取得してください。
在留期間の管理と更新手続きのサポート
外国人労働者(永住者を除く)には、必ず「在留期間」が設定されています。この在留期間の管理は、基本的には外国人本人と雇用企業の双方で行うべき重要な管理項目です。
| 期限の把握 | 企業は、雇用している外国人全員の在留カードのコピーを保管し、在留期間の満了日を一覧で管理する体制を整えるべきです。 |
| 更新のアナウンス | 在留期間の満了日が近づいてきたら(例:3〜4ヶ月前)、本人に更新手続きが必要であることを通知し、準備を促します。 |
| 必要書類の提供 | 在留期間の更新許可申請には、企業側が発行する書類(在職証明書、源泉徴収票など)が必要です。 本人の申請スケジュールに合わせて、速やかにこれらの書類を準備し、交付する体制を整えておくことが重要です。 |
| 結果の確認 | 更新申請の結果(許可・不許可)が出たら、必ず本人から報告を受け、新しい在留カードのコピー(在留期間が更新されたもの)を再度提出してもらい、管理情報を最新化します。 |
業務内容の変更に伴う注意点
配置転換や昇進で業務内容が変わる場合、変更後の業務が現行の在留資格で認められるか事前に確認してください。重大な変更(業務の主たる性格が変わる等)は在留資格の変更申請を要することがあります。
例えば、「技人国」で採用した通訳担当者に、工場でのライン作業を主たる業務として行わせることは、在留資格の範囲を逸脱し、不法就労とみなされるリスクがあります。
事前確認を欠くと不法就労該当のリスクがあります。業務内容に大きな変更がある場合は、事前に出入国在留管理庁や行政書士などの専門家に相談し、場合によっては在留資格の変更許可申請が必要かどうかを確認してください。
退職時の手続き
外国人労働者が退職する際も、日本人と同様の手続きに加え、外国人特有の手続きが発生します。
| 雇用保険の喪失手続き | 被保険者であった場合、ハローワークで資格喪失届を提出します。 |
| 離職票の交付 | 本人が希望する場合は、離職票を交付します。 |
| 外国人雇用状況届出書 | 雇用保険の被保険者でなかった場合、ハローワークへ離職の届出を行います(様式第3号)。 |
| 転職先への情報提供 (本人の同意がある場合) | 転職先企業から、在留資格の更新などに必要な前職での勤務状況についての証明を求められるケースがあります。 |
就労系の在留資格(技人国や特定技能など)を持つ外国人は、退職後に正当な理由なく数か月以上その資格に対応する活動(就労)を行わない場合、入管が個別事情を勘案したうえで在留資格の取消しを検討することがあります。
退職者には、速やかに転職活動や必要な手続き(帰国準備のための短期滞在への変更など)を案内することが、企業の責務となります。
実際の事例から学ぶ!外国人雇用で法律を守ることの大切さと企業が取るべき対策とは

ここまでで外国人雇用に関わる法律や制度を解説しましたが、知識として知っていることと、現場で実践することの間には大きな隔たりがあります。
法律遵守の重要性は、企業の失敗事例と成功事例を対比して学ぶことで、より深く理解できます。以下に、法律違反が招いたケースと、課題を乗り越えて雇用を成功させた事例を示します。
失敗事例:デーバー加工サービス株式会社のケース
技能実習生を受け入れていたデーバー加工サービス株式会社では、法律の理解不足が原因で問題が顕在化しました。
同社では、技能実習生用の寮費控除が日本人従業員の控除よりも不合理に高く設定されていました。寮費は福利厚生の一部ですが、国籍や在留資格を理由に控除額に差を設けることは、均等待遇の原則に反します。
労働基準法第3条は、国籍などを理由に賃金や労働時間などの労働条件で差別することを禁じています。寮費の扱いが不合理だと判断され、同社は法的問題に直面しました。
この事件は業界内で広く知られるようになり、以降、外国人であることを理由に手当を支給しない、寮費控除に不合理な差をつける等の運用は明確な違反であるとの認識が広まりました。多くの企業が実務の見直しを行う契機となっています。
参考:企業が外国人を雇用する際に守るべき法律とは?弁護士が徹底解説|弁護士法人ALG&Associates
成功事例:株式会社倉川製作所の取り組み
埼玉県の金属プレス加工業、株式会社倉川製作所は、外国人雇用の課題を真摯に解決し、成果を挙げている好事例です。初期はベトナム人従業員とのコミュニケーションや文化の違いに課題を抱えていましたが、次のような対策を講じました。
| コミュニケーション支援 | 社長自らが日本語教育を行い、業務に必要な日本語や日本の習慣を粘り強く指導しました。 作業指示は言葉だけに頼らず、図面や実物、ジェスチャーを多用して理解を助けました。 |
| 手続き面の連携 | 在留資格や入管手続きの煩雑さを自社だけで抱え込まず、行政書士など専門家と連携して対応しました。 |
| 相互理解の促進 | 定期的な食事会など業務外の交流を設け、日本人従業員と外国人従業員が互いの文化を理解する場を作りました。 |
これらの取り組みの結果、外国人従業員の定着が進み、リーダーとして後輩指導や通訳を担うまで成長する人材も現れました。日本人従業員も指導を通じてスキルを磨き、社内コミュニケーション全体が活性化する相乗効果が生まれています。
企業が学ぶべき教訓
これら2つの対照的な事例から、外国人雇用を検討する企業が学ぶべき教訓は明確です。
- 労働法の適用は国籍を問わず等しく適用されることを徹底する。
- 「外国人だから」として賃金、控除、手当、福利厚生に不合理な差を設けてはならない。均等待遇義務違反は重大な法的リスクである。
- コミュニケーションと文化的配慮は必ず発生する課題と想定し、やさしい日本語や図解、交流の場など具体的な施策を講じる。
- 在留資格の申請や更新など専門性の高い手続きは、自社だけで完結させず、行政書士などの専門家と連携して確実に対応する。
- 法令遵守は守りの姿勢にとどめず、外国人材が能力を発揮できる環境を「攻めの施策」として整備することが、企業の成長や社内活性化につながる。
外国人雇用は法令遵守と実務運用の両輪で成り立ちます。入管法や労働施策総合推進法に基づく在留資格の確認、在留期間管理、ハローワークへの届出などの必須手続きは企業の義務です。
一方で、労働条件の均等待遇や安全衛生・生活支援は実務上の重要な対応であり、現場の定着につながります。
社内フローを明文化し、チェックリスト化、必要に応じて行政書士や税理士と連携することでリスクを低減し、外国人材の活躍を安定させてください。
フィリピン人受入れに必須のDMW申請と送り出し機関

フィリピン人材を採用するには、日本側の法律だけではなく、フィリピン政府側の組織(DMW/旧POEA)と、現地の送り出し機関についての理解が不可欠です。
DMWと送り出しルールの要点
フィリピンは国民の多くが海外で働いているという現状があり、労働者を保護するため、DMW(海外労働者省)という行政機関が海外への送出を厳格に管理・監督しています。そのDMWの窓口として各国に設置されているのが、MWO(移住労働者事務所)です。
MWOは企業が作成した雇用契約や求人票がフィリピンの労働基準に合致しているかを認証(Verification)します。MWOの認証を経ることで、フィリピン政府から正式に採用計画が承認されます。
フィリピンではエージェントを介さない企業による直接雇用は原則禁止されており、DMW認定の送り出し機関を通じた手続きが必要となります。
そのため日本の企業がフィリピンから人材を雇用する場合、まずはDMW認定の送り出し機関と人材募集・雇用に関する取り決めを締結し、その上でMWOへの申請手続きを行い、認証を得なければなりません。
また送り出し機関に関してDMWは不当な手数料徴収を禁じる通達を出しており、紹介料や手数料の取り扱いには法的なルールが適用されます。とはいえ、実務上は運用に差が出ており、企業側が想定外の費用負担や説明不足に直面するケースが散見されます。企業側は送り出し機関との契約時に費用負担の明細を契約書で明確化してください。
海外雇用許可証の取得
海外雇用許可証(OEC :Overseas Employment Certificate)は、フィリピン人が就労目的で日本へ渡航するために必須の証明書であり、フィリピンを出国する際の空港で提出が求められます。
このOECの申請には、日本側で取得した在留資格認定証明書(COE)や、正式な雇用契約書、技能証明書等の書類が必要となり、DMW/MWOによる厳格な審査を経て発行されます。
ここで重要な点は、日本のビザが発行された後であっても、フィリピン側でOECが取得されていなければ、フィリピン人は出国できないということです。これは、日本側の手続きが完了した後に、渡航直前で採用予定が頓挫する最大のリスク要因となり得ます。企業担当者は、日本の入国管理手続きに注力する中で、送り出し機関やフィリピン人本人に対してOEC取得の進捗情報を常に確認し、管理名簿を作成しておく必要があります。
送り出し機関選定の重要性
フィリピン人採用における最大の実務リスクの一つは、送り出し機関の選択です。なぜなら、一部には不当な費用請求や書類偽造、質の低い日本語教育といった悪質な運営を行う機関が存在するからです。
そうした事案は、労働者本人に深刻な被害をもたらすだけでなく、受け入れ企業にも失踪・不法就労・労務トラブルといった重大な負担を引き起こします。
したがって、送り出し機関の選定は「人が来るかどうか」だけで判断してはいけません。倫理性・透明性・法令順守を含めた総合的な適性評価が不可欠です。
採用ステップ
DMWに認定された現地の送り出し機関を通じて契約を締結します。
送り出し機関を通じて、求人票(Job Order)および雇用契約案をMWOに提出し、フィリピン側の基準に沿うか確認を受けます。必要があれば契約内容の修正や追加書類の提出を求められます。
MWOの認証で必要条件が満たされたことを確認したうえで、候補者と正式な雇用契約を最終確定(署名)します。実務上はこの確定をもって日本側の在留手続きを進めるのが安全です。
日本側での在留資格申請に必要な書類を揃え、出入国在留管理庁に申請します。COE の有効期限に注意し、フィリピン側手続きを完了させた上で申請することが望ましいです。
OECはフィリピン出国時に提示が求められる証明書です。これを取得することで、合法的に出国・入国が可能となります。日本在住者でも、場合によっては OEC 取得が必要になることがあります。
日本在住のフィリピン人材を雇用する場合の注意点
すでに日本国内に在留しているフィリピン人材を雇用する場合でも、フィリピン政府の規定に基づき、MWOによる認証手続きが原則として必要となります。
これは、たとえ日本国内で在留資格の変更を行うケースでも、フィリピン政府の視点からは「海外就労扱い」となるためです。MWOを通じた認証手続きを取得を怠り、外国人が一時的にフィリピンへ帰国した場合、出国時にOECの提示を求められて提示できなければ、日本への再入国が不可能になるという深刻な事態が発生する可能性があります。
受入れ企業は、この重大なリスクを理解し、日本在住者であっても、DMW認定の人材紹介会社を経由した認証手続きを確実に行う必要があります。
参考:DMW


送り出しカフェの活用

DMWへの申請、送り出し機関の選定などの手続きが必要なフィリピン人材の採用を成功させるには、専門のサポート機関を利用するのが最も効率的かつ効果的です。
送り出しカフェは、フィリピン人労働者の採用を検討している日本企業を対象に、フィリピン現地の送り出し機関の紹介・仲介を行っています。
フィリピン政府のライセンスを持つ正規の送り出し機関と提携しており、年間2,000人を海外に送り出す実績を有するパートナーなど、実績豊富な機関と連携しているのが大きな特徴です。
送り出しカフェ活用のメリット
- 信頼性のある送り出し機関の紹介
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フィリピン政府公認のライセンスを持つ送り出し機関と提携しているため、違法・不透明な業者を避けられる。
- 人材の母集団が大きい
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提携大学・職業訓練校から約7,000人規模の候補者がいるため、必要な職種に合った人材を探しやすい。
- 特定技能16分野に対応
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介護・外食・建設など幅広い業種の求人に対応できる。
- 安心の日本語対応
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日本人スタッフが窓口となるため、言語や文化の違いによる誤解・トラブルを減らせる。
- 採用から入国後までワンストップ支援
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求人票作成、面接調整、ビザ・MWO申請、入国後の定着支援までトータルサポート。
- 手続きの負担軽減
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フィリピン側で必要な複雑な申請書類や手続きを代行・支援してくれる。
- 日本語教育サポート
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採用前から就労後まで継続的に日本語教育を行う体制があり、現場でのミスや離職リスクを軽減できる。
- 費用や採用リスクの低減
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信頼性の低い送り出し機関を選んで失敗するリスクを減らし、スムーズな採用につながる。
送り出しカフェを活用することによって、DMWのルール確認、信頼できる送り出し機関の選定、明確な契約とスケジュール管理などを円滑に行うことができるでしょう。
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まとめ

外国人労働者を雇用する際に企業が遵守すべき法律、特に「入管法」と「雇用対策法」について、その概要から具体的な手続き、注意点までを網羅的に解説してきました。
これらの法律やルールは、外国人労働者を不当な労働から守ると同時に、日本の労働市場の秩序を維持し、さらには法律を守る企業自身をリスクから守るためにも存在することを忘れてはなりません。
フィリピン人材をはじめとする優秀な外国人労働者に日本で活躍してもらうためには、企業側がこれらの法律を正しく理解し、誠実に遵守する姿勢が不可欠です。
とはいえ外国人の雇用には在留資格の種類、雇用契約、行政手続きの届出など、専門的な法律知識と適切な管理体制が必須です。加えてフィリピン人採用のためには、DMWへの申請や送り出し機関の活用など、さらなるハードルが待ち構えています。そのため、特に中小企業においては専門家の支援を得ることが、採用を成功させるための一番の近道と言えるでしょう。
私たち「送り出しカフェ」は、フィリピン人材採用のために、信頼できる送り出し機関との連携体制を構築し、採用・在留資格手続き、日本語教育、生活支援までを一貫してサポートしています。
フィリピン人材の採用を具体的に検討されている企業様は、まずはお気軽にご相談ください。
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