近年、高い英語力とホスピタリティ、そして学習意欲の高さから、フィリピン人を採用する日本企業が増加しています。介護、特定技能、高度人材など、多様な分野で彼らの活躍が期待されている状況です。
しかし、フィリピン人を正規に雇用するためには、日本の出入国在留管理庁への在留資格申請手続きとは別に、フィリピン共和国政府が定める独自の手続きをクリアする必要があります。その中心となるのが「MWO(Migrant Workers Office)」です。

・MWOとは?
・以前のPOLOと何が違うのか?
・申請の流れはどうなっている?
・手続きを怠るとどうなる?
この記事は、そうした疑問を持つ企業担当者様に向けて、フィリピン人採用における最重要機関であるMWOの概要から、具体的な申請手続き、必要書類、注意点までを網羅的に解説します。
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MWOとは?フィリピン人雇用における重要機関


MWOとは「Migrant Workers Office(移住労働者事務所)」の略称です。以前は「POLO(Philippine Overseas Labor Office:フィリピン海外労働事務所)」と呼ばれていましたが、フィリピン政府の組織再編に伴い、名称が変更されました。
現在でも「旧POLO」と呼ばれることがありますが、機能や役割は基本的に引き継がれており、日本で働くフィリピン人労働者(Overseas Filipino Workers, OFW)の権利と福祉を保護するための出先機関として機能しています。
MWOの主な業務は、フィリピン人労働者を受け入れる海外の企業が、フィリピン政府の定める労働基準や条件を満たしているかを審査し、認証することです。この認証なくして、フィリピン人は原則として海外で就労できません。
MWOを管轄する「DMW」とは?(旧POEA)
MWOを理解する上で欠かせないのが、フィリピン本国の「DMW(Department of Migrant Workers:移住労働者省)」という機関です。
DMWは、2022年に新設されたフィリピン政府の省で、それまで複数の機関に分散していた海外雇用関連の業務(労働者の保護、送り出しの管理、違法リクルートの取り締まり等)を一元管理するために組織されました。
以前の「POEA(Philippine Overseas Employment Administration:フィリピン海外雇用庁)」の機能の多くが、このDMWに統合されています。
つまり、DMWがフィリピン国内の政策と管理を統括し、MWOはその海外(日本国内)における実務的な窓口・出先機関である、と理解すると分かりやすいでしょう。
なぜMWOの申請・登録が「必須」なのか?
日本企業がフィリピン人を雇用する際、原則としてこのMWOへ申請を行い、雇用主(受入れ機関)としてフィリピン政府(DMW)のシステムに登録・承認される必要があります。
これは、フィリピンが国策として海外労働者の送り出しを行う一方で、不当な労働条件や人権侵害から自国民を強力に保護する姿勢をとっているためです。
MWOは、日本の受入れ企業が提示する雇用契約の内容や労働環境が、フィリピン政府の定める基準を満たしているかを審査する役割を担っています。この審査・承認プロセスを経ずにフィリピン人を雇用することは、フィリピンの法律上、原則として認められていません。
そのため、日本企業がフィリピン人を雇用する際には、MWOを窓口としてDMWへ登録しなければならないのです。
日本には「MWO東京」と「MWO大阪」の2拠点が存在し、それぞれが管轄地域内のフィリピン人労働者に関する行政サービスや保護活動の窓口となっています。
| MWO Tokyo(東京) | |
|---|---|
| 所在地 | 在東京フィリピン共和国大使館内に設置されています。 |
| 管轄地域 | 主に東日本(北海道、東北、関東、甲信越、静岡県など)を管轄しています。 |
| 公式サイト | MWO-Tokyo |
| MWO Osaka(大阪) | |
|---|---|
| 所在地 | 大阪府大阪市中央区淡路町4-3-5 アーバンセンター御堂筋7階 |
| 管轄地域 | 主に西日本(近畿、静岡を除く東海、北陸、中国、四国、九州・沖縄)を管轄しています。 |
| 公式サイト | MWO-OSAKA |
企業がMWOへ申請を行う際は、雇用するフィリピン人が就労する事業所の所在地(会社の本社所在地ではない点に注意)に基づいて、コンタクトを取る必要があります。
管轄が異なると申請が受理されないため、事前に自社の就労場所がどちらの管轄に含まれるかを正確に確認しておくことが重要です。
MWOの役割とフィリピン人採用における重要性


MWOが存在するのは、上でも説明したように「海外で働くフィリピン人労働者の保護」のためです。
フィリピン政府は、自国民が海外で不当な労働条件や人権侵害に遭わないよう、非常に厳格な保護政策をとっています。その政策の実行機関がDMWであり、日本の窓口がMWOなのです。
具体的には、日本の受入れ企業がフィリピン人を雇用しようとする際、以下のような対応をMWOが行います。
- 雇用契約の審査・認証
- 企業が提示する雇用契約書や求人票の内容が、フィリピンの労働法規やDMWが定める基準(給与、労働時間、福利厚生など)を満たしているかを厳密に審査します。
- 受入れ企業の審査・認定
- 企業がフィリピン人労働者を雇用するにふさわしい、合法的な事業者であるかを審査します。承認された企業はDMWのシステムに「合法的な雇用主」として登録されます。
OEC(海外雇用許可証)との関係
MWOの審査・承認が必須なのは、「OEC(Overseas Employment Certificate:海外雇用許可証)」という書類の発行に直結するからです。
OECとは「Overseas Employment Certificate」の略で、「海外雇用許可証(または海外就労許可証)」と呼ばれる証明書です。 フィリピン人が海外へ就労目的で出国する際、空港の出入国審査でこのOECの提示を求められます。
そして、このOECは、DMW(MWO経由)に登録・承認された企業との正規の雇用契約がなければ発行されません。
つまり、企業側がMWOへの申請手続きを怠ると、
- 企業情報がDMWに登録されない
- 採用するフィリピン人がOECを取得できない
- 結果として、フィリピンから日本へ出国できない
という深刻な問題が発生するのです。
日本側で在留資格認定証明書(COE)が交付され、日本のビザ(査証)が発給されたとしても、OECがなければフィリピンを出国できないという点を、企業担当者は強く認識しておく必要があります。
参考:Overseas Employment Certificate (OEC)
MWO申請の基本的な流れ


それでは、具体的にMWOへの申請はどのような流れで進むのでしょうか。 ここでは、フィリピン本国に在住している人材を新規で雇用する場合の、一般的な申請手続きの流れをステップごとに解説します。
DMW認定の「送出し機関」との契約締結
フィリピン政府は、原則としてフィリピン国外の企業がフィリピン人を直接雇用することを認めておらず、DMWが認定したフィリピン国内の「送出し機関(PRA: Philippine Recruitment Agency)」を経由することを義務付けています。
そのため、企業が最初に行うべきことは、信頼できるDMW認定の送出し機関を選定し、「募集取決め(Recruitment Agreement)」等の契約を締結することです。
この送出し機関が、後のMWO申請やDMWへの登録、現地での人材募集、OEC発行サポート等、フィリピン側での手続きのパートナーとなります。
この送出し機関との契約書は、後のMWO申請で提出する重要な書類の一つとなります。
MWOへの申請書類の準備と提出
次に、MWO(東京または大阪)へ提出するための一式の申請書類を作成・準備します。 必要書類は多岐にわたりますが、主に以下のようなものが含まれます。
- MWO所定の申請書
- 雇用契約書(Master Employment Contract)の雛形
- 送出し機関との募集取決め(Recruitment Agreement)
- 求人票(Manpower Request)
- 日本企業の会社関連書類(登記簿謄本、営業許可証のコピー等)
- 代表者等のパスポートコピー
これらの書類の多くは英語での作成が求められ、内容の整合性が厳しく審査されます。 また、契約書等の重要書類には、日本の公証役場での公証や、外務省のアポスティーユ認証(日本で発行された公文書が外国でも有効であることを証明するもの)を求められる場合があります。
書類一式が準備できたら、管轄のMWO事務所(東京または大阪)へ郵送等で提出します。
書類審査とMWO担当官による面接
MWOに書類が受理されると、書類審査が行われます。審査には通常、数週間程度の時間がかかります。 書類に不備や記載漏れ、内容の矛盾等があれば、修正や追加書類の提出を求められ、手続きが遅延する原因となります。
書類審査を通過すると、次のステップは「MWO担当官による面接」です。 この面接は、原則として企業の代表者、または雇用管理の責任者が受ける必要があります。正式な委任状と代理人の身分証明があれば、代理人による手続きや書類提出を受け付けるケースもあります。具体的な要件は、MWOの各事務所ごとの案内に従ってください。
面接は、MWO事務所(東京または大阪)で行われるか、オンラインで実施される場合があります。面接では、会社の事業概要、フィリピン人を雇用する理由、業務内容、労働条件、労働者の保護体制などについて質問されます。 面接は英語で行われるのが一般的です。 英語での回答が難しい場合は、通訳者を同席させることが認められるケースもありますが、事前にMWOへ確認が必要です。
MWOの承認とDMWシステムへの登録
面接を無事に通過し、雇用条件や労働環境がフィリピン政府の基準を満たしていると判断されると、MWOは提出された書類(雇用契約書や協定書など)に認証印を押印し、企業へ返送します。 これが「MWOの承認が下りた」状態です。
次に、企業はこのMWO認証済みの書類一式を、契約しているフィリピンの送出し機関へ国際郵便等で送付します。 送出し機関は、これらの書類に基づき、フィリピン本国のDMWのシステムに、日本の受入れ企業の情報を登録する申請手続きを行います。
DMWでの審査・承認を経て、ようやく企業は「フィリピン政府(DMW)認定の雇用主」として正式に登録されます。
人材募集・採用と日本の在留資格認定証明書 (COE) 申請
DMWへの登録が完了して初めて、送出し機関はフィリピン国内で正規の募集活動を開始できます。 送出し機関は候補者を集め、企業は書類選考やオンライン等での面接を実施し、採用する人材を決定します。
採用者が決まったら、企業(または申請取次を行う行政書士等)は、日本の出入国在留管理庁に対して、採用者の「在留資格認定証明書(COE)」の交付申請を行います。 この手続きは、特定技能や技能実習、技術・人文知識・国際業務など、取得する在留資格の種類に応じた書類を準備し、日本の法律に基づいて審査されます。
ビザ申請とOECの発行
出入国在留管理庁の審査を通過し、COEが交付されたら、企業は速やかにその原本をフィリピンの採用者または送出し機関へ送付します。
採用者は、COE、パスポート、MWO認証済みの雇用契約書などを持って、フィリピンにある日本大使館(または総領事館)でビザの発給申請を行います。
並行して、送出し機関または採用者本人は、DMWのシステムを通じてOECの発行申請を行います。この時、MWOの承認とDMWへの登録が完了していることが前提となります。 OECが発行されて、初めてフィリピンからの出国準備が整います。
フィリピン人労働者の入国と就労開始
ビザが発給され、OECも取得できたフィリピン人労働者は、日本行きの航空券を手配します。 フィリピンの空港での出国審査時にOECを提示し、無事に出国許可が下ります。
日本に到着後、空港での入国審査を経て「在留カード」が交付され、ようやく受入れ企業での就労を開始することが可能となります。




MWO申請が必要な「フィリピン人」とは?


注意が必要なのは、MWOの手続きが「フィリピン国籍者全員」に必要なわけではない、という点です。
MWOの手続きが原則として必要となるのは、以下のような方々です。
| 就労を目的とする在留資格で働くフィリピン人 | 「特定技能」、「技能実習」、「技術・人文知識・国際業務(技人国)」、「介護」など。 新規にフィリピンから来日して就労を開始する方。 |
| すでに日本に在住しているが、在留資格を変更して新たに就労を開始する方 | 「留学」から「技人国」への変更など。 |
| 転職により、雇用主を変更する方 | 同一在留資格内の転職であっても、雇用主と雇用契約が変わるため、MWO申請が必要。 |
一方で、MWOの手続きが不要となるのは、主に以下のような方々です。
| 「身分系」の在留資格を持つフィリピン人 | 「永住者」 「日本人の配偶者等」 「永住者の配偶者等」 「定住者」 |
これらの在留資格は、日本での就労活動に制限がないため、フィリピン政府の労働者保護の枠組みの対象外となります。日本人を雇用するのと同様の手続き(雇用契約の締結)のみで採用が可能です。
したがって、企業が採用を検討しているフィリピン人の方が、どの在留資格を既に持っているのか、あるいはこれからどの在留資格を取得しようとしているのかを正確に確認することが、採用活動の第一歩として非常に重要です。
MWO手続きと並行する「在留資格」の申請


ここまで解説してきたMWOの手続きは、あくまで「フィリピン政府側」に対する手続きです。フィリピン人を日本に受け入れ、雇用するためには、当然ながら「日本政府側」の手続きも必要になります。
それが、出入国在留管理庁に対する「在留資格」の申請です。この手続きは、対象者が日本国外にいるか、日本に既に在留しているかによって異なります。
| 日本国外のフィリピン人の場合 | 在留資格認定証明書(COE)の申請 |
| 日本に在留中のフィリピン人の場合 | 留資格変更許可申請 |
フィリピン人採用においては、MWOへの申請手続きと、上のような日本側との手続きを並行して進める必要があります。
MWOの承認を得たからといって、必ずしも日本の在留資格が許可されるわけではありません。逆もまた然り。それぞれが独立した審査基準に基づいて審査を行うことを理解しておいてください。
外国人雇用に関連する主な在留資格
フィリピン人に限らず、外国人材を雇用する際には、日本で働くための「在留資格」(就労ビザ)の制度を理解することが不可欠です。MWOの手続きが必要となることが多い、代表的な就労系の在留資格をいくつか紹介します。
特定技能
「特定技能」は、国内の深刻な人手不足に対応するため、特定の産業分野において、即戦力となる外国人材を受け入れるために創設された在留資格です。
- 特徴
-
「特定技能1号」と「特定技能2号」の異なる在留資格がある。1号は通算で最長5年間、日本での就労が可能で、原則として家族の帯同は認められない。2号は、熟練した技能を持つと認められた場合に移行でき、在留期間の更新に上限がなく、家族帯同も可能になる。
- 必要な要件
-
該当する分野の「技能試験」と、「日本語能力試験(1号の場合)」の両方への合格。2号への移行には技能試験の合格と、一定以上の就労経験が求められる。
- 企業の義務
-
特定技能1号外国人を雇用する受入れ企業には、「支援計画」の作成と実行が義務付けられています。これらの支援業務は、国に登録された「登録支援機関」に全て委託することも可能です。
技術・人文知識・国際業務(技人国)
「技人国」は、いわゆる「ホワイトカラー」職種に従事する外国人のための代表的な在留資格です。
- 概要と対象業務
-
技術 理工系(ITエンジニア、設計開発、システムエンジニアなど)の専門知識を要する業務。 人文知識 文系(経理、財務、人事、法務、マーケティング、企画など)の専門知識を要する業務。 国際業務 翻訳、通訳、語学指導、海外取引、広報・宣伝など、外国の文化に基盤を有する思考や感受性を必要とする業務。 - 特徴
-
在留期間(5年、3年、1年など)を更新し続けることで、長期的な就労が可能。また一定の要件を満たせば、配偶者や子供を呼び寄せる「家族滞在」ビザの申請も可能。
- 必要な要件
-
「学歴または実務経験」と「従事する業務内容」の関連性。原則として、関連する専門分野を大学(短大含む)で専攻して卒業しているか、日本の専門学校を卒業していること(専門士の称号が必要)。または、従事しようとする業務について、10年以上の実務経験(国際業務の場合は3年以上)を有すること。
技能実習
「技能実習」制度は、日本の企業で働きながら、技能、技術、または知識を学び、それを母国の経済発展に役立ててもらうことを目的とした在留資格です。
- 特徴
-
実習期間は最長5年。原則として、一度帰国しなければ、同じ「技能実習」の資格で再入国することはできません。
技能実習制度は技能移転を目的として運用されてきましたが、その運用実態との乖離を理由に、制度の見直しが進行しています。
新たに導入が進められている「育成就労制度」は、国内の人材確保と育成を主目的とする方向へと転換するものです。主な方向性としては、在留期間や転籍の扱い、日本語要件などにおける見直しが行われる予定です。なお、施行日や詳細な運用ルールは今後の省令・告示で確定していくため、最新情報の確認を欠かさないでください。
参考:
外国人技能実習制度について |厚生労働省
育成就労制度 | 出入国在留管理庁


在留資格の申請プロセスと企業側の準備


外国人材を採用する際、企業は出入国在留管理庁への申請手続きにおいて、中心的な役割を担うことになります。
海外から新規に雇用する場合:在留資格認定証明書交付申請
海外に在住している外国人を、日本に呼んで雇用する際の手続きです。申請の主な流れは以下の通りです。
- 受入れ企業が、日本国内の(企業の所在地を管轄する)地方出入国在留管理庁に対して、「在留資格認定証明書(COE)」の交付申請を行います。
- 出入国在留管理庁が審査を行います。(審査期間は、特定技能や技人国の場合、通常1ヶ月~3ヶ月程度かかります)
- 審査が通過し、COEが交付されます。
- 企業は、交付されたCOEの原本を、海外にいる外国人本人に国際郵便などで送付します。
- 本人は、そのCOEとパスポート等を、自国にある日本大使館または総領事館に持参し、ビザの発給を申請します。
- ビザが発給されたパスポートを持って日本へ渡航し、空港の入国審査でCOEとビザを提示して上陸許可を受け、在留カードが交付されます。(この時点で正式に就労が可能となります)
| 企業が準備する主な書類 | 在留資格認定証明書交付申請書 雇用契約書、労働条件通知書(給与、業務内容、労働時間等を明記) 雇用理由書(なぜその外国人を採用する必要があるのかを説明) 会社の登記簿謄本(履歴事項全部証明書) 直近年度の決算報告書(損益計算書、貸借対照表の写しなど) 会社案内(事業内容がわかるパンフレットやウェブサイトの写し) (特定技能の場合)支援計画書、各種誓約書、分野ごとの必要書類 等 |
| 本人が準備する主な書類 | 証明写真 パスポートのコピー 学歴証明書(卒業証書の写しなど)※技人国の場合 職歴証明書(在職証明書など)※実務経験を要件とする場合 (特定技能の場合)試験の合格証明書 等 |
日本在住の外国人を雇用する場合:在留資格変更許可申請
すでに日本に滞在している外国人を、自社で雇用する際の手続きです。例えば留学ビザで滞在しているフィリピン人を自社で雇用する場合には、「技人国」などのビザに切り替えなければなりません。これを、在留資格変更許可申請と言います。主な流れは以下の通りです。
- 内定・雇用契約の締結を行います。
- 外国人本人が、現在の在留資格の期限が切れる前に、出入国在留管理庁に「在留資格変更許可申請」を行います(企業や行政書士が申請の取次ぎを行うことも可能)。
- 審査が行われます。審査期間は、通常2週間~2ヶ月程度。
- 許可されると、新しい在留資格と在留期間が記載された在留カードが交付されます。この許可が下りてから、初めて自社での就労が可能となります。
- 許可の場合は、理由が通知されます。
注意点
- 許可が下りる前に、新しい会社で(変更後の在留資格に該当する)業務を開始することは、資格外活動となり違法です。
- 転職者の場合、前職の会社で発行された「源泉徴収票」や「退職証明書」が必要になります。
- 企業は、申請がスムーズに進むよう、新しい雇用契約書や会社の資料(登記簿謄本、決算書等)を速やかに本人に提供するサポートが必要です。




外国人材の採用後に企業が行うこと


外国人材の採用は、内定を出し、在留資格の手続きが完了したら終わりではありません。入社後も、企業には日本人従業員とは異なるいくつかの義務や、行うべきサポートがあります。
1. 入社時の手続き
- 社会保険・労働保険への加入
- 国籍を問わず、加入要件(労働時間、日数など)を満たす場合は、日本人従業員と同様に、労働保険(雇用保険・労災保険)および社会保険(健康保険・厚生年金保険)への加入手続きが必須です。
- ハローワークへの届出
- 企業は、外国人(「特別永住者」および在留資格「外交」「公用」を除く)を雇用した場合、またはその外国人が離職した場合には、その都度、氏名、在留資格、在留期間などをハローワークに届け出る義務があります。
2. 在留カードの確認
企業には、採用する外国人が不法就労でないことを確認する義務があります。採用時には必ず「在留カード」の原本を提示してもらい、以下の点を確認してください。
- 在留資格の種類
- 就労制限の有無。「留学」や「家族滞在」でアルバイト雇用する場合は、「資格外活動許可」の有無と許可時間(週28時間以内)の確認が必須。
- 在留期間の満了日
3. 在留期間の更新管理
就労系の在留資格には必ず「在留期間」が定められています。企業は、雇用している外国人従業員の在留期間がいつまでかを把握し、期限が切れる前に(通常、期限の3ヶ月前から)「在留期間更新許可申請」を行えるよう、本人にリマインドする体制を整えることが重要です。
更新申請時には、企業が発行する「在職証明書」や、市区町村が発行する「住民税の課税証明書・納税証明書」などが必要となるため、これらの書類発行のサポートも行います。
4. 生活支援
前述の通り、「特定技能(1号)」の在留資格で外国人を受け入れる企業には、広範な支援を行う義務が法律で定められています。下は、その一例です。
- 入国前・入国時のオリエンテーション
- 住居の確保(社宅の提供、賃貸契約の連帯保証人など)
- 銀行口座の開設、携帯電話の契約、電気・ガス・水道などのライフライン契約のサポート
- 役所での公的手続き(住民登録、社会保険、税金など)への同行
- 日本語学習の機会の提供
- 日本人従業員や地域住民との交流の促進
- 相談・苦情への対応(母国語で対応できる体制の確保)
これらの支援は、特定技能2号や技人国などの在留資格者に対しては法律上の義務ではありません。しかし、日本での生活に不慣れな外国人材が早期に職場や生活に馴染み、定着して活躍してもらうためには、企業による初期の生活立ち上げサポートが極めて重要です。
参考:1号特定技能外国人支援・登録支援機関について | 出入国在留管理庁
送り出しカフェの活用・事例紹介


DMW申請・送り出し機関の選定などが必要なフィリピン人材の採用を成功させるには、専門のサポート機関を利用するのが最も効率的かつ効果的です。
送り出しカフェは、フィリピン人労働者の採用を検討している日本企業を対象に、フィリピン現地の送り出し機関の紹介・仲介からMWOへの申請まで、一括したサポート業務を行っています。
フィリピン政府のライセンスを持つ正規の送り出し機関と提携しており、年間2,000人を海外に送り出す実績を有するパートナーなど、実績豊富な機関と連携しているのが大きな特徴です。
送り出しカフェ活用のメリット一覧
- 信頼性のある送り出し機関の紹介
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フィリピン政府公認のライセンスを持つ送り出し機関と提携しているため、違法・不透明な業者を避けられる。
- 人材の母集団が大きい
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提携大学・職業訓練校から約7,000人規模の候補者がいるため、必要な職種に合った人材を探しやすい。
- 特定技能16分野に対応
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介護・外食・建設など幅広い業種の求人に対応できる。
- 安心の日本語対応
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日本人スタッフが窓口となるため、言語や文化の違いによる誤解・トラブルを減らせる。
- 採用から入国後までワンストップ支援
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求人票作成、面接調整、ビザ・MWO申請、入国後の定着支援までトータルサポート。
- 手続きの負担軽減
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フィリピン側で必要な複雑な申請書類や手続きを代行・支援してくれる。
- 日本語教育サポート
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採用前から就労後まで継続的に日本語教育を行う体制があり、現場でのミスや離職リスクを軽減できる。
- 費用や採用リスクの低減
-
信頼性の低い送り出し機関を選んで失敗するリスクを減らし、スムーズな採用につながる。
送り出しカフェを活用することによって、DMWのルール確認、信頼できる送り出し機関の選定、明確な契約とスケジュール管理などを円滑に行うことができるでしょう。
送り出しカフェ(E-MAN)の事例紹介
送り出しカフェを運営している株式会社E-MANは、フィリピンの大学とも連携し、企業が必要とする優秀な人材の送り出しをサポートしています。そのいくつかの事例を紹介しましょう。
衆議院の山本有二議員とJR四国がアクラン州立大学を視察
2024年3月、衆議院議員であった山本有二氏と、四国旅客鉄道株式会社(JR四国)の担当者が、送り出しカフェが連携するフィリピンのアクラン州率大学を視察しました。
この視察の目的は、単なる表敬訪問ではなく、フィリピンの高等教育機関が日本市場のニーズに応じた人材をどのように育成しているのか、その実態を直接確認することにありました。JR四国は多岐にわたる事業を抱えており、特に鉄道整備や観光分野での労働力確保が課題となっています。
視察団は、大学のキャンパス環境、提供されている日本語教育のレベル、そして日本の技術者や特定技能人材として必要な専門スキル(例:機械整備、IT、サービス業)のカリキュラムを検証しました。
この視察は、アクラン州率大学の高い教育水準と、日本企業が安心して質の高い人材を選定できる環境が整っていることを示唆しています。
参考:四国の人材不足を解消≫衆議院の山本有二議員とJR四国らが、7/16に株式会社E-MANの提携するアクラン州立大学(フィリピン)を視察。アクラン州知事とも面会|PRTIMES
浜松市の人材不足解消へ浜松市産業部長による視察
2024年6月には、静岡県浜松市産業部の部長をはじめとする関係者が、同市が抱える人材不足解消に向けた取り組みの一環として、フィリピンの職業訓練学校を視察しました。
浜松市は製造業が盛んな地域であり、技能実習生や特定技能外国人材の需要が特に高い傾向にあります。この視察では、送り出しカフェの現地パートナーが連携している訓練校で、特に建設分野や機械加工分野における技能教育の現状が詳細に確認されました。
自治体の幹部が直接現地を訪問し、教育機関のコンプライアンス体制や実践的な職業訓練の質を評価することは、浜松市内の企業が「MWOの認証を得た適正なルート」を通じて、即戦力となり得る人材を安定的に確保するための第一歩となります。
地方自治体の具体的な産業課題の解決にも、フィリピン人材は有効な解決策となりうることを示しています。
参考:浜松市の人材不足解消へ。浜松市産業部長らが、フィリピンのアクラン州を視察。株式会社E-MANが提携する現地の大学も訪問|PRTIMES
北海道茅部郡森町がフィリピンのアクラン州と外国人材雇用への調印式を実施
2024年4月、北海道茅部郡森町は、アクラン州率大学を含むフィリピンのアクラン州と、外国人材の雇用に関する調印式を実施しました。これは、森町という地方自治体が、一州というフィリピン政府の行政単位と直接連携協定を結ぶという、非常に先進的な取り組みです。
森町では、特に介護や観光、水産加工分野で深刻な人手不足に直面しています。この調印によって、森町はアクラン州と公的な人材交流の枠組みを確立しました。
この公的なルートを活用することで、MWOの審査プロセスにおいても透明性と信頼性が高まり、町の事業者は高い安心感を持ってフィリピン人労働者を受け入れることが可能になります。
参考:北海道茅部郡森町がフィリピンのアクラン州と外国人材雇用への調印式を実施。株式会社E-MANが提携する大学にて日本での就労についての説明会も開催|PRTIMES
これらの事例にあるように、送り出しカフェ(E-MAN)は、フィリピン現地の大学や送り出し機関と密接に協力しながら、日本企業が求める最適な人材の斡旋・MWO申請などのサポートを行っています。
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まとめ:MWOと在留資格を理解して適切な採用活動を


本記事では、フィリピン人採用に特有のMWOの役割と、それに並行して必要な日本の在留資格に関する一般的な知識について解説しました。
フィリピン人採用が他国籍の人材採用と大きく異なる点は、MWOというフィリピン政府の機関が、労働者保護の観点から雇用契約の審査・認証に深く関与する点です。
このMWOの承認と、それがなければ発行されないOECの存在。そして、それとは別に必要となる日本側の出入国在留管理庁による在留資格の審査。フィリピン人採用を成功させるためには、この「フィリピン政府側」と「日本政府側」の二重の手続きを、どちらも遺漏なく、適切なタイミングで進めていく必要があります。
特にMWOへの申請手続きは必要書類が膨大であることや、英語での対応や公証手続きが求められることなどから、非常に複雑で時間と労力がかかるものとなっています。
私たち「送り出しカフェ」は、フィリピン人材採用のために、信頼できる送り出し機関との連携体制を構築し、MWO申請、採用・在留資格手続き、日本語教育、生活支援までを一貫してサポートしています。
フィリピン人材の採用を具体的に検討されている企業様は、ぜひお気軽にご相談ください。
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