日本の造船・舶用工業分野では、高度な技能を要する作業者の人手不足が深刻化しており、産業全体の競争力に直接影響を及ぼしています。
この人手不足に対応するために創設された在留資格が「特定技能制度」です。特定技能制度は技能実習制度とは異なり、即戦力となる外国人材の就労と労働力確保を主目的とした制度として運用されています。
本記事では、フィリピン人材の採用を検討している企業採用担当者を対象に、制度の全体像から具体的な採用方法、採用後の定着を促進するまでの支援策まで、必要な情報を詳しく解説します。
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特定技能制度の概要と業務区分

特定技能制度は、少子高齢化に伴う労働力不足に対応するため、2019年4月に運用が始まった在留資格です。技能実習制度が技能移転や国際貢献を主目的とするのに対し、特定技能は即戦力の外国人を受け入れ、国内の産業活動を支えることを目的としています。企業の採用・人材戦略に直接関わる制度であり、手続きや要件の把握が不可欠です。
特定技能には1号と2号の二種類があります。
1号は業務遂行に必要な「相当程度の知識・経験」を有する者を対象としており、在留期間は通算で最長5年間です。
これに対して2号は「熟練した技能」を有する者を対象とし、在留期間の上限がない点が大きな特徴です。さらに2号は家族帯同が認められ、長期的な人材確保や技能継承の観点から重要な役割を果たします。
企業にとって、優秀な人材が短期間で帰国してしまうと技能継承や管理者育成に支障が出ます。したがって、特定技能1号から2号への移行を戦略的に支援することは、単なる在留資格の変更を超えた投資であると考えられます。
特定技能1号と2号の主な比較
| 特定技能1号 | 特定技能2号 | |
|---|---|---|
| 在留期間の上限 | 通算5年間まで | 上限なし (更新手続きが必要) |
| 家族帯同 | 原則不可 | 可能 (配偶者・子) |
| 日本語能力 | 必要 (JLPT N4相当またはJFT-Basic等) | 原則不要 (分野により要件がある場合あり) |
| 技能水準 | 相当程度の知識・経験 | 熟練した技能 |
| 監督者経験 | 不要 | 造船分野で2年以上の監督者経験が要 |
| 永住申請との関係 | 原則として永住の「就労年数」に含まれない | 在留年数として考慮され得る (個別審査あり) |
造船・舶用工業分野で認められる3つの業務区分
造船・舶用工業分野において特定技能外国人が従事できる業務は、国土交通省の管轄のもと、以下の3つの業務区分に大別されています。
| 1.造船区分 | |
|---|---|
| 業務概要 | 船舶の製造工程における作業全般。 |
| 主な作業内容 | 溶接、塗装、鉄工、とび、配管、船舶加工など。これらは船体構造物の製作や組み立てに直接関わる作業です。 |
| 2.舶用機械区分 | |
|---|---|
| 業務概要 | 船舶に使用される主機、発電機、ポンプなどの機械の製造・加工工程における作業全般。 |
| 主な作業内容 | 溶接、塗装、鉄工、仕上げ、機械加工、配管、鋳造、金属プレス加工、強化プラスチック成形、機械保全、船用機械加工など。 |
| 3.舶用電気電子機器区分 | |
|---|---|
| 業務概要 | 船舶の運航に必要な電気設備や通信機器、制御装置の製造・組み立て工程における作業全般。 |
| 主な作業内容 | 機械加工、電気機器組立て、金属プレス加工、電子機器組み立て、プリント配線板製造、配管、機器保全、船用電気電子機器加工など。 |
2号人材はこれらの作業内容に加え、複数の作業員を指揮・命令・管理しながら作業に従事し、工程を管理することが求められます。
熟練技能と管理能力を併せ持つ特定技能2号の人材は、日本の造船工業の技能継承において極めて重要な役割を果たすことになります。
参考:
特定技能1号の各分野の仕事内容(Job Description) | 出入国在留管理庁
特定技能2号の各分野の仕事内容(Job Description) | 出入国在留管理庁


造船・舶用工業分野における特定技能1号・2号の要件

特定技能の在留資格を取得するためには、求められる要件を満たす必要があります。1号と2号ではその要件は異なりますが、企業はまずは1号人材を採用し、2号への移行を支援するというのが基本的な方針となるでしょう。
特定技能1号の要件
特定技能1号の在留資格を取得するには、現場で即戦力として業務に従事できる最低限の技能と日本語能力の証明が必要です。主な要件は次の2点です。
- 1. 技能試験の合格
-
外国人材は、造船・舶用工業分野の6つの作業分野(溶接、塗装、鉄工、仕上げ、機械加工、電気機器組立て)ごとに実施される特定技能1号評価試験(学科試験・実技試験)に合格する必要があります。試験は業務遂行に必要な知識と実務技能の水準を評価するものです。
- 2. 日本語能力の証明
-
業務上および日常生活での日本語能力として、国際交流基金日本語基礎テストまたは日本語能力試験N4相当以上の合格が求められます。これは、日常業務でのコミュニケーションや安全管理基準の理解に必須です。
なお、技能実習2号を良好に修了し、特定技能の業務と関連する職種で実習を行った者は、技能試験と日本語能力試験の免除が認められています。これは、既に経験を積んだ人材をスムーズに特定技能へ移行させる主要ルートであり、造船分野の採用で多く活用されています。
特定技能2号への移行要件
特定技能2号への移行は、単なる在留資格の更新ではなく、外国人が「熟練した技能」を持つ管理者候補として日本の産業に長期的に貢献する道を開くものです。企業が長期的な人材育成を行う上で、この2号への移行支援は非常に重要な戦略となります。
2号への移行には、次の2つの要件を満たさなければなりません。
- 1. 熟練技能の証明
-
特定技能2号技能試験に合格することが必須です。この試験は、1号で求められる水準を大幅に上回る、高度な実務技能を評価します。
- 2. 監督者としての経験
-
現場で指導力や管理能力を発揮できることが求められます。具体的には、複数の作業員を指揮・命令・管理しながら工程を管理できる経験が必要で、2年以上の監督経験が目安となります。
2号に移行すると、在留期間の上限(5年間)がなくなり、3年、1年、6か月ごとの更新を行うことで、日本で無期限に就労可能です。加えて、配偶者および子の帯同が認められるため、生活基盤を長期にわたり安定させられます。
企業側にとっては、優秀な人材を長期的に確保し、現場のリーダーや技能継承者として育成できることから、人手不足の解消と技術力向上の両立に資する制度です。

企業に求められる要件

造船・舶用工業分野で特定技能外国人を受け入れるためには、国土交通省、出入国在留管理庁等が定める手続きと要件を満たすことが必須です。
企業側は事業者としての確認を受け、協議会への加入や定期報告など運用上の義務を果たす必要があります。ここでは、実務担当者が押さえるべきポイントを整理します。
造船・舶用工業事業者としての確認
受入れ事業者は、国土交通省に対して「造船・舶用工業分野に係る事業を営む者であること」の確認申請を行い、確認通知書の交付を受ける必要があります。
確認は、法令(造船法、船舶安全法など)に基づく届出・登録・認定の有無や、実際の事業実態をもとに行われます。確認通知書は交付後に有効期間が設定されるため、更新や変更の際は早めの手続きが望ましいでしょう。
確認申請に添付する主な書類
以下は実務で求められることが多い書類の例です。正式な提出書類は最新の様式を必ず確認してください。
- 会社概要・登記事項証明書:事業者の法人情報の確認
- 事業許認可・届出書類:造船法・小型船造船業法等の登録証明
- 業務委託契約書等:委託を受けて行う業務がある場合の根拠
- 事業実績・工程表:受入れ予定業務の具体的内容証明
直接雇用の原則
特定技能外国人の受入れは、原則として直接雇用が求められます。したがって、雇用契約や労働条件の整備、社会保険の適用など、直接雇用に伴う義務を前提に受入れ体制を構築してください。
協議会への加入義務と報告義務
造船・舶用工業分野で特定技能外国人を受け入れる事業者は、国土交通省が所管する当該分野の協議会に加入することが義務付けられています。協議会は制度運用と情報共有を目的としており、加入事業者には受入れ状況の定期報告等が求められます。
具体的には、受入れ開始月から終了月まで「毎月末時点の受入れ状況」を翌月15日までに所定の様式で提出する運用になっています。報告の遅延や未提出は行政からの指導対象となるため、社内の報告フローを整備しておきましょう。
10項目の義務的支援
特定技能1号外国人の安定的な就労と生活をサポートするため、受入れ企業には10項目にわたる必須の支援業務が課されています。これらの支援は、単なる義務の履行ではなく、人材の就労意欲と定着率を左右する極めて重要なポイントであると捉えるべきです。
| 支援項目 | 実務のポイント | |
|---|---|---|
| 1 | 事前ガイダンスの実施 | 雇用契約締結後に業務内容・労働条件・給与・保証金の有無を対面またはオンラインで説明。 記録(説明資料・受領サイン)を残すこと。 |
| 2 | 入出国時の送迎 | 入国時・帰国時の空港送迎(保安検査場付近まで)や同行を実施。 移動スケジュールは余裕を持って設定する。 |
| 3 | 住居確保・生活支援 | 住居探しのサポート、連帯保証人の手配、賃貸契約の説明、銀行口座・携帯電話契約の補助。 初期費用や敷金の扱いは明示する。 |
| 4 | 生活オリエンテーション | 日本の基本ルール、公共機関の利用、交通マナー、災害時の避難等を説明する。 |
| 5 | 公的手続等への同行 | 住民票、健康保険、年金、税関連の手続きに同行し、書類作成を補助。 手続きの期限と必要書類リストを事前に準備する。 |
| 6 | 日本語学習の機会提供 | JLPT N4/JFT-Basic 相当の語彙と業務表現をカバーする研修を用意する。 職場内OJTと併用した継続学習計画が有効。 |
| 7 | 相談・苦情対応 | 職場や生活に関する相談窓口を設置(母語対応が望ましい)。 苦情は記録化し、対応の経過を管理する。 |
| 8 | 日本人との交流促進 | 地域行事や職場イベントへの参加支援。 孤立防止と相互理解が目的。 参加は任意だが案内は積極的に行う。 |
| 9 | 転職支援(企業都合時) | 企業側都合で雇用終了する場合、転職先紹介や面接調整、必要な書類発行を支援する。 離職時の給与処理や有給消化の扱いも明確に。 |
| 10 | 定期面談・行政通報 | 少なくとも3か月に1回は上司と面談し、労働条件や健康、ハラスメント等の問題を確認する。 重大な違反があれば行政機関へ報告。 |
支援項目のうち、住居確保と日本語学習の提供はQOL(生活の質)に直結します。生活基盤が整えば仕事への意欲が高まり、特定技能2号への移行を目指す動機づけになります。したがって、これらは単なる「義務」ではなく、長期的な人材投資の中核と捉えてください。
支援機関の活用
受入れ機関が自社で上記の義務的支援を全て行う体制を確保することが困難な場合は、国の認定を受けた登録支援機関に支援業務の全部または一部を委託することが認められています。
登録支援機関は専門的なサービスを提供しているため、複数の外国人材を受入れる際や、管理業務の負担を軽減したい場合には、委託が有効な選択肢となります。
ただし、委託を行う場合であっても、受入れ企業が外国人材の生活をサポートする最終的な責任を負う点に変わりはありません。
造船・舶用工業分野で特定技能人材を受け入れるには、これらの要件を確実に満たすことが前提となります。実務担当者は、書類提出だけでなく、雇用形態の適正化、支援体制の実効性、社内の報告体制整備に注力してください。
参考:造船・舶用工業分野における新たな外国人材の受入れ(在留資格「特定技能」) – 国土交通省
造船工業における特定技能人材採用フロー

造船工業分野での特定技能人材の受入れには、大きく分けて「国内移行ルート」と「海外招致ルート」の二つの流れがあります。
前者は国内で技能実習2号を良好に修了した人材を特定技能に移す方法、後者は海外で試験に合格した人材をCOE(在留資格認定証明書)経由で招へいする方法です。
国内人材の採用:技能実習から特定技能への移行フロー
造船分野では、実務経験と日本語力を備えた国内移行が最も一般的で、即戦力確保の観点から効率的とされています。
技能実習から特定技能1号への移行には、次の要件を満たす必要があります。
- 技能実習2号を「良好に修了」していること(修了証等で証明)。
- 技能実習の「職種・作業内容」と、特定技能1号で従事させる業務との関連性が認められること。
これらの要件を満たした技能実習生は日本国内で実務経験と日本語能力を有しているため、即戦力としての活用が見込めます。さらに技能試験と日本語能力試験も免除されているため、自社の技能実習生を特定技能1号へと移行させることが企業の基本的な戦略となるでしょう。
技能実習から特定技能1号への移行フローは、以下のとおりです。
社内の技能実習2号修了者を確認し、受入れ意向を確認する。
日本人と同等以上の待遇で直接雇用契約を結ぶことが前提となります。
受入れ企業は支援計画(義務的支援10項目)を整備し、渡航前または在留資格変更前に事前ガイダンスを行います。
雇用契約書、支援計画書、国土交通省の確認書類等を整えて出入国在留管理庁へ申請します。許可が下りた時点で、就労が可能となります。
技能実習生が特定技能(1号)に移行すると、在留資格も変更になります。そのため、出入国在留管理庁へ在留資格変更申請を行う必要があります。
海外からの採用
海外からの採用は、基本的に技能試験の日本語テストをパスした人材を現地の送り出し機関などを介して採用することになります。
海外の送り出し機関や試験実施機関を通じ、特定技能1号評価試験と日本語試験に合格した者を選びます。
事前ガイダンスを実施して雇用条件と支援内容を確定し、支援計画書を作成します。
日本側の所属機関が出入国在留管理庁へ「在留資格認定証明書(COE)」を申請します。
COE交付後、在外公館で査証を取得して入国。到着時の送迎や生活立ち上げ支援を実施して就労を開始します。
COEは、来日する外国人の活動が在留資格の条件に適合しているかを事前に審査したことの証明となる書類です。この証明書があることによって、在外公館でのビザ申請や日本の空港での審査が円滑に進みます。
海外招致の場合は、試験日程や査証手続き、在外公館の処理時間などにより採用までのリードタイムが長くなりがちです。採用計画には余裕を持たせることを推奨します。
造船工業分野では、技能実習からの国内移行が主流となってはいますが、現時点で技能実習生を受入れていない企業ならば、海外から特定技能1号人材を直接採用した方が即戦力の人材確保という観点からするとメリットがあるでしょう。
参考:特定技能関係の申請・届出様式一覧 | 出入国在留管理庁

造船・舶用工業分野でフィリピン人材が選ばれる理由

造船工業分野においては、フィリピン人材の受入れ圧倒的に多いことが数字で示されています。この背景には、彼らの国民性や歴史的な産業連携、技能実習制度などが深く関連しています。
データが示す現状
出入国在留管理庁の報告によると、2023年末時点での造船・舶用工業分野の特定技能1号外国人数は7,514人でしたが、このうちフィリピン人が4,098人を占めており、全体の半数以上いう圧倒的な数字となっています。
この数字の背景として、特定技能制度が始まる前から、主に技能実習制度を通じて多くのフィリピン人が日本の造船業で受入れられていたということが考えられます。
さらにフィリピンは中国・韓国・日本に次ぐ世界第4位の造船産業を誇る国であり、高い技能を持つ人が多く存在していることも直接的な要因となっています。また、日本の造船企業がフィリピン国内に造船関連施設を建造する等、協力関係が長期にわたり築かれてきたという歴史的な背景も見逃せません。
フィリピン人の国民性と日本の職場への適合性
フィリピン人の国民性として、明るく親しみやすい、家族を大切にする、礼儀正しく目上を敬う、献身的な姿勢があるという点が広く知られています。これは、日本の文化とも相容れるものであり、日本企業がフィリピン人を受け入れやすいベースになっているものと思われます。
特に日本の職場で求められる協調性や上下関係を重んじる文化、集団での作業や高い安全管理基準の遵守が必須となる造船工業の現場において、フィリピン人材はその力を発揮しやすい人材と言えるでしょう。
現場の声から学ぶ!フィリピン人材のメリットと企業が行うべき取り組みとは

ここからは、実際の造船業の現場でフィリピン人材を採用している企業の事例から、フィリピン人材を受け入れるメリットや、彼らがその力を発揮するために企業が取るべき施策などについて考えてみましょう。
新来島サノヤス造船の事例
新来島サノヤス造船株式会社は、特定技能2号に移行したフィリピン出身のDHIZONさんを、社内の中核メンバーとして育てています。従来の社宅ではプライベートな空間が不足している懸念があったため、全ての寮利用者を民間の賃貸物件に移し、生活の質を向上させました。これによって仕事への集中度や定着率が改善したと報告されています。
また同社は、2号合格者を単なる作業者として扱わず、リーダー候補として早期に重要な責務を与えています。コミュニケーション管理を円滑化するとともに、人材の評価と責任感を醸成しています。さらに資格取得を目標として設定することで、長期的なキャリア計画の提示とサポートを行っており、意欲の高い人が日本で成長し続ける可能性を確保しています。
参考:特定技能2号受け入れ事例|G.A.コンサルタンツ株式会社
北辰機工の事例
北辰機工株式会社でも、特定技能2号に移行したフィリピン人のEMELIOさんの長期定着に成功しています。EMELIO氏は、家族のため、より良い生活を求めて日本に来たという強い動機から、入社後の5年間で玉掛けなど複数の資格を取得しました。現在では日本人新人への指導も行うほど現場で不可欠な存在となっています。
企業側の支援として特に特徴的なのは、社長が直接相談に乗る体制を作った点が挙げられます。トップダウンで相談窓口を明示することで、現場の不安を迅速に吸い上げて解消しています。
資格取得のためにも受験費用の補助に加え、英語で受験可能なコースの手配など様々な支援を行っています。さらに職場外では同国籍コミュニティ形成を促し、レクリエーション等を通じた居場所作りも実施。2号移行後に家族を呼び寄せる場面を見据え、運転免許や住居確保の支援も検討している点が長期定着を後押ししています。
参考:特定技能2号受け入れ事例紹介|G.A.コンサルタンツ株式会社
企業が学べる教訓:フィリピン人材の活躍を支える企業の取り組み
こうした事例から、造船工業分野でフィリピン人材の定着と活躍を確保するために企業が行うべき取り組みについて次のような点が挙げられるでしょう。
- 生活環境の整備
- 社宅や賃貸のプライバシー確保、生活導線の改善など、生活の質を優先的に整備すること。生活が安定すると業務への集中と定着率が明確に向上します。
- キャリア設計の可視化
- 特定技能2号や資格取得を含む昇進ルートを明文化して示してください。将来像が見えると、意欲ある人材の定着と能動的な学習が促されます。
- 相談窓口の設置とコミュニティの醸成
- 外国人材が気軽に相談できる窓口を設置することが、問題が生じたときの早期解決の鍵となるでしょう。また多文化の交流を支援する場を用意すること。職場外のつながりが孤立を防ぎ、早期離職の抑止に寄与します。
- 言語・教育支援
- 業務マニュアルの図解化や日本語・英語の継続教育を実施してください。言語障壁を下げることが資格取得や業務習熟の近道になります。
- 長期的なキャリアパスの明確な提示
- 特定技能2号への移行を積極的に支援し、昇給や職種拡大(上位資格取得)を具体的に示し、人材を育成する計画を持つことが必要です。
- 家族支援の整備
- 家族帯同に備えた住居・学校・運転免許支援等を計画すること。家族の生活基盤を支える施策は、長期定着の投資効果が高いでしょう。
労働人口の現象が進む日本において、これからは優秀な外国人材の取り合いが激化すると考えられます。フィリピン人が重視する家族の生活サポートやキャリアアップへの対応を強化することが、人材の長期定着と企業の継続的な成長に直結するという点を銘記してください。
フィリピン人材受入れに必要なDMWと送り出し機関

特定技能フィリピン人材の採用には、日本側の要件・手続きだけではなく、フィリピン政府側の組織(DMW/旧POEA)への手続き、さらに現地の送り出し機関についての理解が不可欠です。
DMWと送り出しルールの要点
フィリピンは国民の多くが海外で働いているという現状があり、労働者を保護するため、DMW(海外労働者省)という行政機関が海外への送出を厳格に管理・監督しています。そのDMWの窓口として各国に設置されているのが、MWO(移住労働者事務所)です。MWOは企業が作成した雇用契約や求人票がフィリピンの労働基準に合致しているかを認証(Verification)します。MWOの認証を経ることで、フィリピン政府から正式に採用計画が承認されます。
フィリピンではエージェントを介さない企業による直接雇用は原則禁止されており、DMW認定の送り出し機関を通じた手続きが必要となります。
そのため日本の企業がフィリピンから特定技能人材を直接雇用しようとする場合、まずはDMW認定の送り出し機関と人材募集・雇用に関する取り決めを締結し、その上でMWOへの申請手続きを行い、認証を得る必要があります。
またDMWは不当な手数料徴収を禁じる通達を出しており、紹介料や手数料の取り扱いには法的なルールが適用されます。とはいえ、実務上は運用に差が出ており、企業側が想定外の費用負担や説明不足に直面するケースが散見されます。企業側は契約時に費用負担の明細を契約書で明確化してください。
送り出し機関選定の重要性
フィリピン人採用における最大の実務リスクの一つは、送り出し機関の選択です。なぜなら、一部には不当な費用請求や書類偽造、質の低い日本語教育といった悪質な運営を行う機関が存在するからです。
そうした事案は、労働者本人に深刻な被害をもたらすだけでなく、受け入れ企業にも失踪・不法就労・労務トラブルといった重大な負担を引き起こします。
したがって、送り出し機関の選定は「人が来るかどうか」だけで判断してはいけません。倫理性・透明性・法令順守を含めた総合的な適性評価が不可欠です。
採用ステップ
DMWに認定された現地の送り出し機関を通じて契約を締結します。
送り出し機関を通じて、求人票(Job Order)および雇用契約案をMWOに提出し、フィリピン側の基準に沿うか確認を受けます。必要があれば契約内容の修正や追加書類の提出を求められます。
MWOの認証で必要条件が満たされたことを確認したうえで、候補者と正式な雇用契約を最終確定(署名)します。実務上はこの確定をもって日本側の在留手続きを進めるのが安全です。
日本側での在留資格申請に必要な書類を揃え、出入国在留管理庁に申請します。COE の有効期限に注意し、フィリピン側手続きを完了させた上で申請することが望ましいです。
OECはフィリピン出国時に提示が求められる証明書です。これを取得することで、合法的に出国・入国が可能となります。日本在住者でも、場合によっては OEC 取得が必要になることがあります。
日本在住のフィリピン人材を雇用する場合の注意点
すでに日本国内に在留しているフィリピン人材(技能実習生等)を特定技能として雇用する場合でも、フィリピン政府の規定に基づき、MWOによる認証手続きが原則として必要となります。
これは、たとえ日本国内で在留資格の変更を行うケースでも、フィリピン政府の視点からは「海外就労扱い」となるためです。MWOを通じた認証手続きとOECの取得を怠り、外国人が一時的にフィリピンへ帰国した場合、出国時にOECの提示を求められて提示できなければ、日本への再入国が不可能になるという深刻な事態が発生する可能性があります。
受入れ企業は、この重大なリスクを理解し、日本在住者であっても、DMW認定の人材紹介会社を経由した認証手続きを確実に行う必要があります。
参考:DMW
送り出しカフェの活用

DMWへの申請、送り出し機関の選定などの手続きが必要なフィリピン人材の採用を成功させるには、専門のサポート機関を利用するのが最も効率的かつ効果的です。
送り出しカフェは、フィリピン人労働者の採用を検討している日本企業を対象に、フィリピン現地の送り出し機関の紹介・仲介を行っています。
フィリピン政府のライセンスを持つ正規の送り出し機関と提携しており、年間2,000人を海外に送り出す実績を有するパートナーなど、実績豊富な機関と連携しているのが大きな特徴です。
送り出しカフェ活用のメリット
- 信頼性のある送り出し機関の紹介
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フィリピン政府公認のライセンスを持つ送り出し機関と提携しているため、違法・不透明な業者を避けられる。
- 人材の母集団が大きい
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提携大学・職業訓練校から約7,000人規模の候補者がいるため、必要な職種に合った人材を探しやすい。
- 特定技能16分野に対応
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介護・外食・建設など幅広い業種の求人に対応できる。
- 安心の日本語対応
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日本人スタッフが窓口となるため、言語や文化の違いによる誤解・トラブルを減らせる。
- 採用から入国後までワンストップ支援
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求人票作成、面接調整、ビザ・MWO申請、入国後の定着支援までトータルサポート。
- 手続きの負担軽減
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フィリピン側で必要な複雑な申請書類や手続きを代行・支援してくれる。
- 日本語教育サポート
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採用前から就労後まで継続的に日本語教育を行う体制があり、現場でのミスや離職リスクを軽減できる。
- 費用や採用リスクの低減
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信頼性の低い送り出し機関を選んで失敗するリスクを減らし、スムーズな採用につながる。
送り出しカフェを活用することによって、DMWのルール確認、信頼できる送り出し機関の選定、明確な契約とスケジュール管理などを円滑に行うことができるでしょう。
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まとめ

造船工業分野における特定技能制度は、慢性的な人手不足と技術の継承という難問に直面している日本の造船・船用工業分野における直接的な解決策となります。
特に、しっかりとした技術を持ち、日本の企業文化にも溶け込みやすいフィリピン人材は、企業にとっても大きな力となるでしょう。
とはいえ、特定技能人材を受け入れるための手続きは複雑で、特に中小企業にとっては自社だけで行うのは非常に困難でしょう。採用、ビザ手続き、そして定着支援の課題解決まで、専門家によるサポートが不可欠です。
私たち送り出しカフェは、信頼できる送り出し機関の紹介からビザ申請・入国手続き、日本語教育に至るまで、企業向けに一貫したサポートを提供しています。
フィリピン人材の採用を検討しているのであれば、まずは一度、お気軽にご相談ください。
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