外国人技能実習制度は、開発途上国等への技能移転を通じて国際貢献を行うことを目的とした制度です。この制度において、日本で技能実習生を受け入れる企業(実習実施者)と、技能実習生を送り出す国側の機関(送出機関)は、制度を円滑に運用するために不可欠な存在です。特に、送出機関は技能実習生の募集、選抜、日本語教育、日本の文化や習慣に関する事前講習など、多岐にわたる重要な役割を担っています。
優良な送出機関を選定することは、技能実習制度の成功を左右すると言っても過言ではありません。なぜなら、質の高い実習生を安定的に確保するためには、送出機関の協力が不可欠だからです。また、送出機関の体制や対応が不十分な場合、実習生との間にトラブルが生じる可能性も高まり、結果として実習実施者側の負担が増大するリスクもあります。
この記事では、送出機関が技能実習制度においてどのような位置づけであり、なぜその選定が重要なのかについて、人事担当者様の視点から掘り下げて解説します。
信頼できる送出機関の選定:人事担当者のためのチェックリスト

送出機関を選定する際に、人事担当者様が確認すべきポイントは多岐にわたります。ここでは、信頼できる送出機関を見極めるための具体的なチェックリストをご紹介します。
- JITCO(国際人材協力機構)からの認定
-
JITCOは、外国人技能実習制度を円滑に実施するための支援を行う機関です。JITCOから適正な送出機関として認定されているかを確認することは、信頼性を判断する上で重要な要素です。JITCOのウェブサイト等で認定送出機関の一覧が公開されている場合がありますので、参考にすると良いでしょう。
- 過去の実績と受入れ企業からの評判
-
過去にどの程度の技能実習生を送り出し、どのような企業と取引実績があるのかを確認しましょう。可能であれば、実際にその送出機関を利用した企業から話を聞くことも有効です。
- 送出機関の所在地国の政府による認定
-
送出機関が所在する国の政府によって、正式に送出業務を行うことが許可されているかどうかも重要なポイントです。不正な送出機関を避けるためにも、この点は必ず確認してください。
- 日本語教育の質
-
日本語能力は、技能実習生が日本での生活や業務に順応し、円滑に実習を行う上で非常に重要です。送出機関がどのような日本語教育プログラムを提供しているか、修了時の日本語能力試験(JLPT)の合格率なども確認すると良いでしょう。
- 技能・職種に関する事前教育
-
技能実習は、特定の職種において技能を習得することを目的としています。送出機関が、受入れ企業が求める職種に関連する基本的な知識や技能について、事前にどの程度の教育を行っているかを確認することは、実習の円滑な開始に繋がります。
- 健康状態の確認体制
-
技能実習生の健康は、安定した実習を行う上で不可欠です。送出機関が、技能実習生の健康診断を適切に実施しているか、過去に健康上の問題で実習が困難になったケースがないかなども確認しましょう。
- 規律・意識付け教育
-
日本での生活や職場のルール、文化の違いを理解し、円滑な人間関係を築くための意識付け教育も重要です。実習生が日本の社会にスムーズに溶け込めるよう、どのような教育が行われているかを確認してください。
- 緊急時の連絡体制
-
技能実習生が日本に来日した後も、予期せぬトラブルが発生する可能性があります。送出機関が緊急時に迅速に対応できる連絡体制を確立しているか、日本語での対応が可能かどうかも確認が必要です。
- 実習生へのフォローアップ体制
-
実習期間中に技能実習生が抱える悩みや問題に対し、送出機関がどのようなサポートを提供しているかを確認しましょう。定期的な面談の実施や、相談窓口の設置など、具体的なフォローアップ体制が整っていることが望ましいです。
- 監理団体との連携
-
技能実習制度では、実習実施者は監理団体を通じて技能実習生を受け入れるのが一般的です。送出機関と監理団体との連携が密に取れているか、情報共有が円滑に行われているかどうかも、制度の適正な運用に繋がります。
特定技能制度と技能実習制度:外国人材受入れの概要と違い

特定技能制度と技能実習制度の概要と違いについて解説します。
技能実習制度の概要と目的
技能実習制度は、日本で培われた技能、技術または知識を開発途上地域等へ移転することにより、当該開発途上地域等の経済発展を担う「人づくり」に協力することを目的とした制度です。企業は、技能実習生を受け入れることで、国際貢献に寄与するとともに、日本の産業界における人手不足の解消にも繋がる可能性があります。
実習期間は最長5年間で、技能実習計画に基づき、OJT(On-the-Job Training)を通じて実践的な技能を習得します。受入れ職種は、農業、漁業、建設、食品製造など多岐にわたります。
特定技能制度の概要と目的
一方、特定技能制度は、国内の深刻な人手不足に対応するため、一定の専門性・技能を有する外国人材を受け入れることを目的として2019年4月に創設された在留資格です。特定技能には1号と2号があり、それぞれ対象となる分野や在留期間が異なります。
特定技能1号 | 特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を要する技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格です。在留期間は通算で最長5年。 |
特定技能2号 | 特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格です。在留期間に上限がなく、家族の帯同も可能です。 |
両制度の主な違いと連携
項目 | 技能実習制度 | 特定技能制度 |
---|---|---|
目的 | 国際貢献(人づくり) | 国内の人手不足解消 |
在留期間 | 最長5年 | 特定技能1号:最長5年 特定技能2号:上限なし |
対象分野 | 職種・作業が限定 | 12分野(2024年6月現在) |
転職の可否 | 原則不可 | 同一分野内での転職は可能 |
家族帯同 | 原則不可 | 特定技能2号は可能 |
日本語能力 | 日常会話レベル以上が望ましい | 特定技能1号:生活に支障がないレベル 特定技能2号:業務遂行に支障がないレベル |
これらの制度は目的が異なりますが、技能実習を修了した外国人材が、特定技能へ移行することも可能です。これにより、日本の産業界で長期的に活躍する道が開かれています。人事担当者様は、自社のニーズに合わせて最適な制度を選択することが重要です。
外国人技能実習生の受入れに必要な書類と申請手続き一覧

外国人技能実習生の受入れには、多くの書類の提出と複雑な申請手続きが伴います。ここでは、人事担当者様がスムーズに手続きを進めるために、必要な書類と申請手続きの概要を一覧でご紹介します。
技能実習計画の認定申請
技能実習計画は、技能実習の期間、内容、目標などを具体的に定めた計画書です。これは、実習実施者(受入れ企業)が作成し、機構(外国人技能実習機構)に提出し、認定を受ける必要があります。
- 技能実習計画認定申請書
- 実習実施者の概要に関する書類(登記事項証明書、会社のパンフレット等)
- 技能実習生に関する情報(パスポートの写し等)
- 宿泊施設に関する情報
- その他、技能実習の内容に応じた必要書類
在留資格認定証明書交付申請
技能実習計画の認定後、技能実習生が日本に入国するために必要となるのが在留資格認定証明書です。これは、出入国在留管理庁に申請します。
- 在留資格認定証明書交付申請書
- 技能実習計画認定書の写し
- 雇用契約書の写し
- 技能実習生の履歴書、学歴証明書等
- 健康診断書
- その他、審査に必要な書類
入国後の手続き
技能実習生が日本に入国した後も、いくつかの手続きが必要となります。
項目 | 概要 |
---|---|
住民登録 | 入国後14日以内に、居住地の市区町村役場で住民登録を行います。 |
国民健康保険への加入 | 医療費の負担軽減のため、国民健康保険への加入が義務付けられています。 |
銀行口座の開設 | 給与の振込みのために銀行口座を開設します。 |
労働基準監督署への届出 | 技能実習を開始するにあたり、労働基準監督署への届出が必要となる場合があります。 |
- 書類の不備
- 提出書類に不備があると、審査が遅延したり、不許可となる場合があります。事前に一覧を確認し、抜け漏れなく準備しましょう。
- 期日厳守
- 各申請には提出期限が設けられています。計画的に手続きを進めることが重要です。
- 変更事項の届出
- 技能実習計画の内容や実習生に関する情報に変更があった場合は、速やかに機構や出入国在留管理庁に届出を行う必要があります。
- 専門家への相談
- 複雑な申請手続きに不安がある場合は、行政書士や弁護士などの専門家に相談することも有効です。
- 監理団体と送出機関の連携
- 技能実習制度の円滑な実施のために技能実習制度を円滑に実施するためには、監理団体と送出機関の密接な連携が不可欠です。人事担当者様は、この二つの機関がどのように協力し、技能実習をサポートしているかを理解しておくことが重要です。
監理団体の役割と連携の重要性

外国人技能実習制度においては、送り出し機関だけでなく、「監理団体」も制度を支える重要な存在です。ここでは、監理団体の基本的な役割や、送り出し機関選定との関係について解説していきます。
監理団体とは
監理団体は、技能実習生を受け入れる企業(実習実施者)に代わり、技能実習計画の作成支援や指導、実習の進捗管理、生活指導などを行う、国の認可を受けた非営利法人です。
制度本来の趣旨に則り、技能実習が適正かつ公正に運用されるよう支援・監督を行う、中間支援機関としての役割を担っています。
主な役割
監理団体の主な役割には、以下のようなものがあります。
- 技能実習計画の作成支援・指導
- 実習実施者への定期訪問と助言
- 技能実習生の相談対応・生活指導
- 実習状況の確認と報告
- 不正行為の早期発見と是正措置
これらの業務を通じて、監理団体は技能実習制度の適正な実施を支えています。 そのため、監理団体を選ぶ際には、支援体制や提案力、対応の丁寧さなどにも注目し、信頼できる団体を見極めるようにしましょう。
送出機関との連携の重要性
監理団体と送出機関が密接に連携することで、技能実習制度の運用はより安定したものになります。両者が協力体制を築くことで、以下のような具体的な効果が期待できます。
- 情報の共有と認識の統一
-
技能実習生に関する情報(日本語能力、性格、健康状態等)や、実習実施者のニーズに関する情報を共有することで、最適な技能実習生の選抜や、実習計画の立案がより正確に行われます。
- トラブル発生時の迅速な対応
-
実習期間中に問題が発生した場合、監理団体と送出機関が連携することで、原因究明や解決策の検討が迅速に行われ、実習生や実習実施者への負担を最小限に抑えることができます。
- 制度の適正な運用
-
両機関がそれぞれの役割を適切に果たし、協力することで、不正行為の防止や、技能実習制度全体の信頼性向上に貢献します。
その監理団体が、どの送出機関と提携しているかにも目を向けてみてください。過去の連携状況や対応の丁寧さ・的確さから、実際にどれだけ安心して運用できそうかが見えてきます。
外国人技能実習生の雇用における要件と注意点

外国人技能実習生を雇用するにあたり、人事担当者様はいくつかの要件と注意点を理解しておく必要があります。これらは、技能実習制度を適正に運用し、実習生との良好な関係を築く上で非常に重要です。
実習実施者の要件
技能実習生を受け入れる実習実施者(企業)には、法令で定められた要件があります。以下、企業側で技能実習生に対して配慮する要件です。
- 適正な労働条件
- 技能実習生は日本人労働者と同等以上の賃金、労働時間、その他の労働条件で雇用する。
- 適切な環境の整備
- 技能実習生の宿泊施設、作業環境等が安全で衛生的であること。
- 指導員の配置
- 技能実習指導員と生活指導員を配置し、実習の指導や生活サポートを行う。
- 事業の継続性
- 技能実習計画を最後まで遂行できる安定した事業基盤があること。
雇用契約と労働法規の遵守
技能実習生との雇用契約を結ぶ際の、契約書や労働法規の遵守について解説します。
- 書面による雇用契約
-
技能実習生との雇用契約は、必ず書面で締結し、内容を明確にする必要があります。契約書には、賃金、労働時間、業務内容、契約期間等を具体的に記載します。
- 労働基準法等の適用
-
技能実習生にも日本の労働基準法や最低賃金法等の労働関係法令が適用されます。これらの法令を遵守することはもちろん、実習生の権利を尊重する意識が重要です。
- 残業代、休日手当の支払い
-
法定労働時間を超える残業や休日労働については、所定の割増賃金を支払う必要があります。
実習内容の変更と届出
技能実習計画の実習内容変更は可能なのか、もしやむを得ない理由で技能実習計画の変更が必要となった際の届け出について解説します。
- 技能実習計画の遵守
-
技能実習は、認定された技能実習計画に基づいて実施される必要があります。計画外の作業や、実習内容と異なる業務を行わせることは認められません。
- 変更時の届出
-
やむを得ない理由で技能実習計画の変更が必要となった場合は、事前に機構へ変更届出を提出し、認定を受ける必要があります。無断での変更は不正行為と見なされる可能性があります。
実習生の管理とサポート
技能実習生のサポート面で、配慮すべき点について解説します。
- コミュニケーションの確保
-
言葉や文化の壁があるため、実習生との円滑なコミュニケーションを確保することが重要です。日本語学習の機会を提供したり、通訳者を介したりする等、工夫が必要です。
- 相談体制の確立
-
実習生が安心して相談できる体制を整えることが重要です。生活や仕事上の悩み、ハラスメント等の相談を気軽にできる窓口を設け、適切に対応しましょう。
- 人権への配慮
-
技能実習生は外国人であると同時に、一人の人間として尊重されるべきです。人種、国籍、性別等による差別や、ハラスメント行為は絶対に許されません。
技能実習制度の更新と追加職種・作業について

技能実習制度の更新プロセスや追加の職種について解説します。外国人技能実習制度でよくある質問やご相談についてもご紹介します。
技能実習制度の更新プロセス
技能実習制度は、最長で5年間の実習が可能です。実習期間が満了に近づくにつれて、更新に関する手続きが必要となる場合があります。
- 1号技能実習から2号技能実習への移行
-
1年目の1号技能実習を修了した後、一定の技能評価試験に合格し、2号技能実習へ移行します。これには、新たな技能実習計画の認定申請が必要となります。
- 2号技能実習から3号技能実習への移行
-
2号技能実習を修了した後、さらに高度な技能を習得するために3号技能実習へ移行することも可能です。これも同様に、新たな技能実習計画の認定申請と、一定の技能評価試験の合格等が必要となります。
- 在留期間の更新申請
-
各技能実習の期間に応じて、在留資格の更新申請を適宜行う必要があります。
追加される職種・作業の情報源
技能実習制度の対象となる職種や作業は、社会情勢や産業構造の変化に合わせて見直しが行われ、追加されることがあります。人事担当者様は、常に最新の情報を把握しておくことが重要です。
外国人技能実習機構(JITCO)のウェブサイト | 機構のウェブサイトでは、技能実習制度に関する最新の情報、追加された職種や作業に関する情報が掲載されています。定期的に確認することをお勧めします。 |
厚生労働省・法務省のウェブサイト | 技能実習制度は、厚生労働省と法務省が管轄しています。両省のウェブサイトでも、制度に関する重要な発表や変更点に関する情報が提供されています。 |
監理団体からの情報提供 | 契約している監理団体からも、追加された職種や作業に関する情報が提供されることがあります。 |
職種・作業の変更に関する注意点
すでに技能実習生を受け入れている企業で、実習内容を変更し、新たな職種や作業を追加したい場合は、原則として新たな技能実習計画の認定申請が必要となります。安易な変更は、不法就労と見なされるリスクもありますので、必ず機構や監理団体に相談し、適切な手続きを踏むようにしてください。
【Q&A】外国人技能実習制度に関するよくある相談と回答
人事担当者様から寄せられる、外国人技能実習制度に関するよくある相談とその回答をまとめました。
まとめ:優良な送り出し機関を選び、外国人技能実習を成功させよう!

本記事では、人事担当者様が外国人技能実習制度における送出機関の選定から、実習生の受入れ、雇用、そして制度の更新まで、幅広い情報を網羅的に解説しました。
技能実習制度を成功させる鍵は、何よりも優良な送出機関を見極め、適切な監理団体と連携することにあります。送出機関の認定状況、技能実習生の選抜・教育体制、そして監理体制とアフターフォローは、選定における重要なチェックポイントです。
外国人技能実習生は、日本の産業を支える貴重な人材であり、国際貢献の担い手でもあります。人事担当者様が本記事で得た情報を参考に、適正な技能実習を実施し、実習生と企業双方にとって実りある関係を築かれることを心より願っています。
必要な書類や申請手続きは多岐にわたりますが、一つひとつ丁寧に対応し、不明な点があれば、機構や監理団体、専門家に積極的に相談するようにしてください。
送り出しカフェでは、貴重な外国人財をお探しの人事担当者様、日本に働きに来られた外国人が、安心できる環境で末永く働けるよう、下記3点をお約束します。
- スムーズなお手続きや人材の確保
- 全て日本語での対応
- フィリピンと日本両国の法律、コンプライアンスを遵守
スムーズな人財探しのお手伝いが出来たらとの思いです。送り出しカフェをぜひ、ご活用ください。