【ビルクリーニング】特定技能フィリピン人採用&定着への完全ガイド

特定技能 ビルクリーニング

日本は今、構造的な人材クライシスに直面しています。公表されている調査によると労働力人口は2022年の約6,902万人から2030年に約6,556万人(約5.0%減)、2040年に約6,002万人(約13.0%減)へと減少する見込みです。特に高齢化が進む産業では需給のひっ迫が懸念されています。

実際にビルメンテナンス業では高齢従事者の割合が高く、65歳以上の就業者割合が業種平均より高いとも報告されています。こうした切迫した状況のなかで、労働力確保の柱として大きな期待を集めているのが、特定技能制度です。

なかでも、日本語能力が高く、労働意欲も旺盛とされるフィリピン人材の採用は、この人材不足を打開する重要な鍵となるでしょう。ただし、特定技能制度の運用は複雑であり、採用を成功させるためには、日本国内の出入国在留管理庁の要件に加え、フィリピン政府独自の制度や手続きを正確に把握し、遵守する必要があります。

本記事では、フィリピン人材の採用に焦点を当て、特定技能制度の概要から具体的な手続き、さらに定着を支援する企業の義務までを、詳細かつ網羅的に解説します

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目次

ビルクリーニング分野における特定技能制度の概要

モップで床を清掃する作業員。ビルクリーニングの現場で丁寧に床を磨く様子。特定技能フィリピン人採用記事用。

特定技能制度は、2019年に創設された日本の在留資格制度です。人手不足が深刻な産業において、即戦力となる外国人労働者を受け入れることを目的としています。

労働人口の減少が続いている日本においても、ビルクリーニング分野では特に高齢化が進んでおり、60歳以上の従事者割合が高水準で推移しています。そのため若年層の採用だけでは需給ギャップの解消が難しく、戦略的な受入れ施策が不可欠です。

特定技能制度はこの対応策の一つであり、ビルクリーニング分野では2024年からの5年間で上限3.7万人の受入れ見込みが示されています。とはいえ、この数値は分野全体の「上限見込み」であり、各企業が実際に確保できる人数というわけではありません。

特定技能制度には要件や在留資格などが異なる1号と2号の在留資格があります。2023年の2号の対象拡大で、ビルクリーニング分野でも現場管理や指導を担える熟練人材の受入れが可能になりました。2号では在留期限の在留がなくなるため、ビルクリーニング業界ではこの制度を活用しながら後継者を育てていくことが求められています

特定技能1号

特定技能1号は、特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格です

業務内容建築物内部の清掃業務に従事します。
これは、日常清掃から定期清掃等、清掃業における基本的な業務全般を指しています。
在留期間最長5年間の在留が可能です。家族帯同は原則不可となります。
支援義務受入れ企業または登録支援機関による10項目の支援計画の策定と実施が義務付けられます。
日本語要件原則として日本語能力の確認(JLPT N4相当やJFT-Basic等)が必要。
技能実習2号を良好に修了した者などには一部免除規定があります。

特定技能2号

特定技能2号は、特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格です。

業務内容建築物内部の清掃に加え、複数の作業員を指導しながら従事し、現場の管理、計画作成、進行管理その他のマネジメント業務も含まれます。
在留期間更新を継続することで、在留期間の制限がなくなり、実質的に無期限で日本に在留し就労することが可能となります。
家族帯同要件を満たせば、配偶者と子の家族帯同が可能です。
支援義務特定技能2号では、特定技能1号で必須であった支援計画の策定実施は不要となります。
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特定技能1号特定技能2号
技能水準相当程度の知識・経験を必要とする技能熟練技能(現場管理・指導を含む)
業務内容建築物内部の清掃(日常・定期清掃等)清掃に加え、管理、計画作成、マネジメント業務
在留期間最長5年更新を重ねることで無期限で在留可能
家族帯同原則不可要件を満たせば配偶者・子帯同可能
支援義務必須(10項目の支援計画策定・実施)不要
日本語要件必須(JLPT N4等)原則不要
活用目的即戦力として現場業務を担当後継者候補・管理者としての育成が可能

特定技能2号の管理業務への拡大と在留期間の無制限化は、ビルクリーニング分野の人材育成戦略を大きく変える要素です。企業は特定技能1号で即戦力となる人材を確保しつつ、管理職への登用も見込みながら2号移行への支援・教育投資を行う支援戦略的判断が求められるでしょう

参考:ビルクリーニング分野 | 出入国在留管理庁

特定技能1号の評価試験

試験会場で答案を書く外国人。特定技能評価試験や日本語試験に取り組む外国人候補者の学習風景。

特定技能1号として日本で就労する外国人は、ビルクリーニング業務に必要な技能を有することを証明するため、公益社団法人 全国ビルメンテナンス協会(J-BMA)などが実施する技能評価試験に合格しなければなりません

この試験内容への理解が、採用後の教育計画や職場配属の設計に役立つでしょう。

特定技能1号評価試験の内容

特定技能1号評価試験は、ビルクリーニング作業の基本動作を中心とした内容で構成されています。試験は学科試験(20分)と実技試験(30分)で行い、実務に直結した能力が確認されます。

機械の使用能力真空掃除機、吸水バキューム、ポリッシャー、自動床洗浄機、エクストラクター、高圧洗浄機、送風機等、ビルメンテナンスの現場で使用される主要な機械を安全かつ適切に手際よく使用できる能力が求められます。
資材の知識洗剤、水石けん、床維持剤、衛生消耗品等の資材について、安全かつ適切に扱える知識も必要とされます。
作業対象と環境清掃の作業内容は、玄関ホール、事務室、会議室、客室(ベッドメイク等を含む)、トイレ(日常清掃に限る)、湯沸室等の建築物の内の多岐にわたる部位や環境での日常清掃、および定期清掃の作業内容が問われます。
日本語能力の確認特定技能1号の取得には、基本的な日常会話や文章を理解できるJLPT N4レベルの能力が必要とされます。
この日本語能力は、業務中に必要なコミュニケーションを十分に取れることを担保するために求められています。

教育戦略への活用

特定技能1号評価試験は、ビルクリーニング業務の専門性の高さを示す指標でもあります。企業はこの試験内容を参考に、採用後の教育プログラムを設計することが望まれます。特に機械操作や資材の取り扱いは安全管理と直結するため、訓練動画やマニュアルを活用した体系的な指導が有効です。

また、特定技能2号への移行を見据える場合は、より高度な学科(60分)や実技(90分)に対応できる教育計画を立てることが重要です。こうした教育戦略により、採用した外国人が長期的に戦力として定着し、現場管理者候補として成長する環境を整えることができます。

参考:ビルクリーニング分野特定技能評価試験について|厚生労働省

ビルメンテナンス分野における特定技能2号への移行要件

青空の下に立つ「NEXT LEVEL」と書かれた矢印看板。スキルアップや次の段階への成長を象徴。

特定技能1号で採用した人材を、在留期間上限に縛られない永続的戦力へと育てるには、特定技能2号への移行ルートをあらかじめ設計することが重要です。

移行は本人の定着意欲を高めるだけでなく、企業側にとっても採用・育成投資の回収や中核人材の確保につながります。とはいえ、移行には試験合格や実務証明など、制度的・事務的な準備が必要です。

2号移行がもたらす主なメリット

  • 長期雇用の実現
    • 在留期間の上限が事実上撤廃され、安定的な人材確保が可能になります。
  • 家族帯同の可否
    • 要件を満たせば家族帯同が認められるため、定着促進に寄与します。
  • 投資回収の容易化
    • 採用・教育コストを長期で回収しやすくなります。
  • 中核人材化
    • 現場での指導や管理を担える熟練者を育てられます。

対象者

基本的には、ビルクリーニング分野で所定の実務経験を有する者や、同分野の評価試験・技能検定で求められる水準を満たす者が対象です

現在日本に在留し、特定技能1号等の在留資格で就労している者が主な対象になります。採用時に「2号取得を目指す意思」があるかを確認しておくと後工程がスムーズです。

移行要件

以下の要件を満たすと、特定技能1号から2号に移行できます。

  1. 現場管理に関する実務経験2年以上
    • 清掃業務に加え、スタッフのシフト管理、品質管理、顧客対応などの管理業務に従事していること。
  2. 特定技能2号評価試験への合格
    • ビルクリーニング分野の技能評価試験に合格することが必要です。

単なる職歴ではなく、管理者としての実務経験が必要になります。そのため企業は特定技能1号の在留期間5年の間に、必要な職歴とスキルを身に付けられるよう、対象者を支援することが求められます。

採用段階からの設計

2号移行を成功させるには、採用時から長期就労意欲や2号取得希望を確認し、雇用契約や育成計画に移行支援の方針を明示することが推奨されます

具体的には以下を整備してください。

  • 労働時間内に学習・研修枠を設定し、定期的な学習時間を確保する。
  • 専門教材、模擬試験、社内・外部講師による指導体制を整備する。
  • 実務経験要件を満たすため、業務日誌やOJT記録を活用して経験を体系化する。
  • 評価試験受験や在留資格変更で必要となる実務証明書や推薦状の作成ルールを整備する。

参考:ビルクリーニング分野の特定技能制度|厚生労働省

ビルクリーニング分野における特定技能1号獲得戦略と雇用フロー

青い人型アイコンの列を虫眼鏡で拡大。採用選考や人材スクリーニングをイメージした人材選定のコンセプト画像。

特定技能人材の採用は、国内在留者を登用するか海外から呼び寄せるかで、手続きや所要時間、コスト負担が大きく変わります。戦略的な人材確保には、各ルートの特徴と必要手順を正確に把握することが重要です。

国内在留者ルート

技能実習修了者や在留中に評価試験に合格した人を活用する方法です。手続きが比較的早く、渡航費が不要。来日前の生活定着工数が少ないため、初期負担が小さいのが利点です

海外からの新規採用ルート

試験合格者ルート現地で製造分野の特定技能評価試験と日本語要件に合格した候補者を採用する方法です。
来日前に技能・日本語の基準を満たすため、入国後の即戦力化が期待できます。
元技能実習生ルート過去に日本の技能実習を修了した者を再採用するケースです。
送り出し機関や現地窓口との契約・調整が必要になります。
国ごとの送り出し規制(例:フィリピンのDMW/POEA 等)を遵守してください。

実務上の注意点:海外採用では、現地での面接や事前試験の実施、労働条件の明示、費用負担の明確化が重要です。送り出し機関との契約書に手数料・負担範囲を明記してください。

採用フロー:実務ステップと留意点

以下は受け入れ企業が実務で進める標準的な流れです。各ステップで必要書類や注意点を確認してください。

STEP
採用計画の策定
  • 目標人数・受入時期・育成計画を設計します。
  • 事前に求人票の職務記述や賃金条件を確定しておくと、現地窓口との調整がスムーズです。
STEP
支援体制の確立
  • 生活オリエンテーション、住居手配、通勤ルート整備などを検討します。自社で実施困難な場合は登録支援機関へ委託することを想定してください。
  • 支援責任者を選任し、支援計画書の作成・管理体制を整えます。
STEP
候補者の選定と面接
  • 海外採用:認定送り出し機関や現地試験合格者を通じて選定し、オンラインまたは現地面接を行います。
  • 国内採用:人材紹介会社、実習機関、専門学校等から候補者を募ります。
  • 面接では業務理解・安全教育の理解度、日本語能力、長期就労意欲を確認してください。
STEP
雇用契約・書類準備
  • 雇用契約書(日本語および候補者母語による重要事項説明書)を用意し、文書で同意を得ます。
  • 在留資格申請に必要な書類(雇用契約書、受入計画書、必要な登録・届出書類、賃金台帳、求人票等)を準備します。分野特有の所定様式がある場合は事前に確認してください。
STEP
在留資格申請と入国手続き
  • 海外採用:在留資格認定証明書(COE)を申請・取得後、査証(ビザ)申請と入国手続きに進みます。
  • 国内採用:在留資格変更許可申請を行い、許可後に従事させます。
  • 各国の在外公館や送り出し機関の処理速度により、所要日数は変動します。
STEP
来日後の手続きと支援
  • 入国後は入管への受入報告等の法定手続きを行い、安全衛生教育や業務別オリエンテーションを実施します。
  • 長期的な技能評価制度、昇給・キャリアアップ支援を運用し、2号移行等のキャリア設計と連動させます。

採用戦略のポイント

  • スピード重視:国内在留者の移行が最も速い傾向です。
  • コスト重視:既在留の人材を活用すると渡航費等を抑えられます。
  • 即戦力重視:海外で評価試験合格者を採用すると、来日後すぐに実務投入しやすいです。
  • 長期定着重視:技能実習からの移行者は日本生活経験があり、定着傾向が高い点を評価できます。

実務的な追加留意事項

  • 技能実習からの試験免除等は実習職種と予定業務の関連性に依存します。免除の可否は個別事例で判断されるので、事前確認を徹底してください。
  • 送り出し国(例:フィリピン)の政府手続きや認証は必須です。費用負担や契約内容は明確にし、契約書で保護してください。
  • 補助的な支援や届出を登録支援機関へ委託する場合は、委託範囲と責任分担を明確にします。
  • 業界団体や分野別の運用要領は更新されるため、関係省庁・公式サイトで最新情報を必ず確認してください。

参考:「ビルクリーニング分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」に係る運用要領|法務省

特定技能外国人の定着を促進するための支援策

特定技能1号外国人を安定的に受け入れ、長期的に戦力化するためには、受入れ企業による体系的な支援が不可欠です。

受入れ企業は「1号特定技能外国人支援計画」を作成し、計画に沿って支援を実施するとともに、実施状況を出入国在留管理庁へ報告する義務を負います。言い換えれば、支援はコンプライアンス要件であると同時に、人材定着のための投資でもあるわけです。

特定技能1号人材に関しては、以下の10項目の支援を行うことが義務付けられています。自社で行う他、登録支援機関に一部または全部を委託することも可能です。ただし、登録支援機関へ委託した場合でも、受入れ企業は支援が適切に行われているかを確認する責任を負います。

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支援項目実務のポイント
1事前ガイダンスの実施雇用契約締結後に業務内容・労働条件・給与・保証金の有無を対面またはオンラインで説明。
記録(説明資料・受領サイン)を残すこと。
2入出国時の送迎入国時・帰国時の空港送迎(保安検査場付近まで)や同行を実施。
移動スケジュールは余裕を持って設定する。
3住居確保・生活支援住居探しのサポート、連帯保証人の手配、賃貸契約の説明、銀行口座・携帯電話契約の補助。
初期費用や敷金の扱いは明示する。
4生活オリエンテーション日本の基本ルール、公共機関の利用、交通マナー、災害時の避難等を説明。
目安は合計8時間程度(在留変更等の場合は最低4時間)。
5公的手続等への同行住民票、健康保険、年金、税関連の手続きに同行し、書類作成を補助。
手続きの期限と必要書類リストを事前に準備する。
6日本語学習の機会提供JLPT N4/JFT-Basic 相当の語彙と業務表現をカバーする研修を用意。
職場内OJTと併用した継続学習計画が有効。
7相談・苦情対応職場や生活に関する相談窓口を設置(母語対応が望ましい)。
苦情は記録化し、対応の経過を管理する。
8日本人との交流促進地域行事や職場イベントへの参加支援。
孤立防止と相互理解が目的。
参加は任意だが案内は積極的に行う。
9転職支援(企業都合時)企業側都合で雇用終了する場合、転職先紹介や面接調整、必要な書類発行を支援。
離職時の給与処理や有給消化の扱いも明確に。
10定期面談・行政通報少なくとも3か月に1回は上司と面談し、労働条件や健康、ハラスメント等の問題を確認。
重大な違反があれば行政機関へ報告。

支援項目のうち、住居確保と日本語学習の提供はQOL(生活の質)に直結します。生活基盤が整えば仕事への意欲が高まり、特定技能2号への移行を目指す動機づけになります。したがって、これらは単なる「義務」ではなく、長期的な人材投資の中核と捉えてください。

実務上の留意点

  • 報告頻度と様式
    • 支援の実施状況は所定の様式で届出する必要があります。届出のタイミングやフォーマットは最新の運用要領を確認してください。
  • 委託時の監督責任
    • 登録支援機関に委託しても、企業側の確認義務は消えません。委託範囲、連絡フロー、検証方法を契約書で明確化しましょう。
  • 実施時間の見積り
    • 生活オリエンテーションや同行手続き、住居手配にはまとまった工数がかかります。初月のサポート工数を見積もり、採用コストに織り込んでください。
  • 例外・簡略化のケース
    • 既に日本国内に居住している者や同一業務の継続雇用など、支援の一部が省略可能な運用例があります。ただし個別の要件確認は必須です。

支援策の設計・実施によって定着率は改善し、生産性向上と採用コストの回収に繋がります。短期的な手間を惜しまないことが、長期的な安定と競争力の源泉になります

参考:1号特定技能外国人支援・登録支援機関について | 出入国在留管理庁

ビルクリーニング業界でフィリピン人が選ばれる理由

清掃スタッフがモップで床を磨く様子。清掃カートを使い、オフィスビルの床面を丁寧に清掃する女性作業員。

多くのフィリピン人材が日本のビルクリーニング業界で活躍しています。その背景にあるのは、彼らの国民性と文化的な特徴ではないでしょうか。

豊富な若年・生産年齢人口という構造的優位性

フィリピンでは人口の大多数が15~64歳の生産年齢層に属しており、全体の約67%を占めるという統計があります。この構造は、日本が直面する生産年齢人口の減少とは対照的であり、人的リソースを「量」の面から確保可能な点が、ビルクリーニング業界における採用戦略上の強みとなります

ホスピタリティ精神と明るい国民性

フィリピンでは国民の約9割がキリスト教徒であり、その教えに基づいた「フィリピーノ・ホスピタリティ」と呼ばれる、優しさやおもてなし精神を強く持っています。

彼らは初対面の人に対しても明るくフレンドリーに接し、常に笑顔を絶やさない国民性があるため、顧客や日本人社員との円滑なコミュニケーションを図りやすいという大きなメリットがあります。これはビルクリーニングの現場においても、サービスの質を高める上で重要な要素となります。

高い適応能力と言語力

フィリピンはスペインやアメリカなど、異なる国の支配下に置かれた歴史的背景から、異なる文化や環境に対する適応能力が高く、国際色豊かな職場でもスムーズに馴染みやすい傾向があります

また、英語が公用語の一つであるため、国民のほとんどが英語を話せます。現場での日本語教育を補完する形で、英語による指示やコミュニケーションが可能になるため、初期のスキル習得を効率的に進められることも、採用企業にとって大きな利点となるでしょう。さらに、フィリピンでは幼い時から複数言語の中で育つため、多言語の習得も早い傾向が見られます。実際に、日本で働くフィリピン人の多くが上手に日本語を操っています。

強い就労意欲と家族を支える責任感

フィリピン人の約1割が海外で就労している出稼ぎ労働者であり、彼らの多くは母国の家族を経済的に支えるという強い責任感と目的を持っています。

この「家族への思いやり」が、そのまま高い就業意欲と長期的な定着へのモチベーションに繋がります。企業が安定した雇用と適切な労働環境を提供すれば、彼らは非常に勤勉で信頼できる人材となることが期待できるのです。

企業担当者がフィリピン人の国民性や文化的背景を理解しておけば、採用時のみにならず、継続的な支援にも活かせることでしょう。

現場の声から学ぶ!フィリピン人材のメリットと企業が行うべき取り組みとは

清掃スタッフが洗剤やスプレー入りのバケツを持つ様子。ビルクリーニングに必要な清掃用具を準備している場面。

ここではより具体的に、実際にビルクリーニング分野で特定技能のフィリピン人材を雇用している企業の事例から、彼らを採用するメリット、活躍と定着を促すために必要な企業の取り組みについて考えていきましょう。

株式会社ザイマックスサラの事例

株式会社ザイマックスサラは、特定技能外国人を積極的に受け入れています。その一人であるRobert氏は、フィリピンでの低賃金への危機感から来日を決め、アルバイトとしてザイマックスサラで働き始めました。

来日当初は清掃業に就くつもりはなかったと語っていますが、現場で顧客から感謝される体験や、汚れが落ちたときの手応えに魅力を感じ、仕事に意欲を持つようになったと述べています。特に上司や先輩のプロとしての振る舞いに触発され、「長くここで働きたい」と決意を固めたそうです。

同社の人事担当は、Robert氏について「いつも笑顔で、場を明るくする」と評し、顧客評価の高さも採用・育成の成功要因だと説明します。一方で多国籍スタッフ間のコミュニケーションに課題があったため、上司が相談に乗れる体制を整備したと述べています。

具体的支援としては、協会や社内情報をもとにした週次の模擬問題作成、教育スタッフによるマンツーマン指導、漢字学習を兼ねた手書き回答練習など、時間とコストを投じた個別支援を実施しました。

その結果、Robert氏は2023年秋ごろから現場管理業務(シフト管理・顧客対応・資材管理等)を経験し、特定技能2号評価試験に合格しています。企業側は、こうした個別支援が本人のモチベーションと定着につながったと評価しています。

教訓:企業が学べる実践的ポイント

  • 長期的なキャリアパスの明示
    • 5年で制限のある特定技能1号から、無期限の在留が可能な2号への移行を明示することで、定着意欲を高められます。
  • 管理職候補としての計画的育成
    • 2号取得に必要な現場管理業務(シフト管理、顧客対応、マネジメント)を1号期間中に段階的に経験させ、将来の管理者を育成します。
  • 個別化された熱意ある試験対策と支援
    • 協会教材に加え、企業独自の模擬問題作成や手書き漢字練習、本番想定の模擬試験など、手間をかけた個別指導が合格と定着を後押しします。
  • 異文化チームの人間関係サポート
    • 多国籍スタッフ間の摩擦は管理職昇進時の大きな課題です。上司がすぐ相談に乗れる体制と、コミュニケーション方法の教育が鍵となります。
  • 労働環境の質的向上とフルタイム化
    • 特定技能の労働条件を日本人と同等以上に整え、低賃金構造からの脱却を図ることが、生活安定と長期定着に直結します。
  • 発注者理解の促進
    • 一部発注者が外国人就労を認めないケースがあるため、特定技能による技能水準と管理体制を説明し、顧客理解を得る啓発活動も重要です。

この事例は、特定技能を活用したフィリピン人材の受入れが短期的な労働力補充にとどまらず、長期的な人材投資になり得ることを示しています。企業は1号段階での生活支援と個別教育を手厚く行い、現場管理業務の経験付与や2号への試験対策を計画的に進めることが重要です

加えて、多国籍チームのコミュニケーション支援や発注者への説明、そして労働条件の改善(フルタイム化や賃金見直し)は定着率に直結します。制度への理解と現場での支援体制ーこの両輪を回せる企業が、持続的な戦力確保を実現できるでしょう。

参考:ビルクリーニング特定技能2号合格者インタビュー FILE 1|ビルメンWEB

フィリピン人材受入れに必要なDMWと送り出し機関

国旗・フィリピンと日本

特定技能フィリピン人材の採用には、日本側の要件・手続きだけではなく、フィリピン政府側の組織(DMW/旧POEA)と、現地の送り出し機関についての理解が不可欠です。

DMWと送り出しルールの要点

フィリピンは国民の多くが海外で働いているという現状があり、労働者を保護するため、DMW(海外労働者省)という行政機関が海外への送出を厳格に管理・監督しています。そのDMWの窓口として各国に設置されているのが、MWO(移住労働者事務所)です。MWOは企業が作成した雇用契約や求人票がフィリピンの労働基準に合致しているかを認証(Verification)します。MWOの認証を経ることで、フィリピン政府から正式に採用計画が承認されます。

フィリピンではエージェントを介さない企業による直接雇用は原則禁止されており、DMW認定の送り出し機関を通じた手続きが必要となります。

そのため日本の企業がフィリピンから特定技能人材を直接雇用しようとする場合、まずはDMW認定の送り出し機関と人材募集・雇用に関する取り決めを締結し、その上でMWOへの申請手続きを行い、認証を得る必要があります

またDMWは不当な手数料徴収を禁じる通達を出しており、紹介料や手数料の取り扱いには法的なルールが適用されます。とはいえ、実務上は運用に差が出ており、企業側が想定外の費用負担や説明不足に直面するケースが散見されます。企業側は契約時に費用負担の明細を契約書で明確化してください。

送り出し機関選定の重要性

フィリピン人採用における最大の実務リスクの一つは、送り出し機関の選択です。なぜなら、一部には不当な費用請求や書類偽造、質の低い日本語教育といった悪質な運営を行う機関が存在するからです

そうした事案は、労働者本人に深刻な被害をもたらすだけでなく、受け入れ企業にも失踪・不法就労・労務トラブルといった重大な負担を引き起こします。

したがって、送り出し機関の選定は「人が来るかどうか」だけで判断してはいけません。倫理性・透明性・法令順守を含めた総合的な適性評価が不可欠です。

採用ステップ

STEP
送り出し機関と契約

DMWに認定された現地の送り出し機関を通じて契約を締結します。

STEP
MWO による認証(Verification)

送り出し機関を通じて、求人票(Job Order)および雇用契約案をMWOに提出し、フィリピン側の基準に沿うか確認を受けます。必要があれば契約内容の修正や追加書類の提出を求められます。

STEP
候補者との雇用契約締結

MWOの認証で必要条件が満たされたことを確認したうえで、候補者と正式な雇用契約を最終確定(署名)します。実務上はこの確定をもって日本側の在留手続きを進めるのが安全です。

STEP
COE(在留資格認定証明書)の申請

日本側での在留資格申請に必要な書類を揃え、出入国在留管理庁に申請します。COE の有効期限に注意し、フィリピン側手続きを完了させた上で申請することが望ましいです。

STEP
OEC(海外就労認定証)の取得

OECはフィリピン出国時に提示が求められる証明書です。これを取得することで、合法的に出国・入国が可能となります。日本在住者でも、場合によっては OEC 取得が必要になることがあります。

日本在住のフィリピン人材を雇用する場合の注意点

すでに日本国内に在留しているフィリピン人材を特定技能として雇用する場合でも、フィリピン政府の規定に基づき、MWOによる認証手続きが原則として必要となります

これは、たとえ日本国内で在留資格の変更を行うケースでも、フィリピン政府の視点からは「海外就労扱い」となるためです。MWOを通じた認証手続きとOECの取得を怠り、外国人が一時的にフィリピンへ帰国した場合、出国時にOECの提示を求められて提示できなければ、日本への再入国が不可能になるという深刻な事態が発生する可能性があります。

受入れ企業は、この重大なリスクを理解し、日本在住者であっても、DMW認定の人材紹介会社を経由した認証手続きを確実に行う必要があります。

参考:DMW

送り出しカフェの活用

送り出しカフェ公式サイトトップ画面

DMWへの申請、送り出し機関の選定などの手続きが必要なフィリピン人材の採用を成功させるには、専門のサポート機関を利用するのが最も効率的かつ効果的です。

送り出しカフェは、フィリピン人労働者の採用を検討している日本企業を対象に、フィリピン現地の送り出し機関の紹介・仲介を行っています。

フィリピン政府のライセンスを持つ正規の送り出し機関と提携しており、年間2,000人を海外に送り出す実績を有するパートナーなど、実績豊富な機関と連携しているのが大きな特徴です

送り出しカフェ活用のメリット

メリット
信頼性のある送り出し機関の紹介

フィリピン政府公認のライセンスを持つ送り出し機関と提携しているため、違法・不透明な業者を避けられる。

人材の母集団が大きい

提携大学・職業訓練校から約7,000人規模の候補者がいるため、必要な職種に合った人材を探しやすい。

特定技能16分野に対応

介護・外食・建設など幅広い業種の求人に対応できる。

安心の日本語対応

日本人スタッフが窓口となるため、言語や文化の違いによる誤解・トラブルを減らせる。

採用から入国後までワンストップ支援

求人票作成、面接調整、ビザ・MWO申請、入国後の定着支援までトータルサポート。

手続きの負担軽減

フィリピン側で必要な複雑な申請書類や手続きを代行・支援してくれる。

日本語教育サポート

採用前から就労後まで継続的に日本語教育を行う体制があり、現場でのミスや離職リスクを軽減できる。

費用や採用リスクの低減

信頼性の低い送り出し機関を選んで失敗するリスクを減らし、スムーズな採用につながる。

送り出しカフェを活用することによって、DMWのルール確認、信頼できる送り出し機関の選定、明確な契約とスケジュール管理などを円滑に行うことができるでしょう。

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まとめ:ビルクリーニング業界の未来を担う特定技能採用戦略

高層ビルの外壁で窓ガラス清掃を行う作業員。ロープに吊るされ安全装備でビルクリーニングを実施。

特定技能制度は、ビルクリーニング分野の人材不足という構造的課題に対する、最も強力な解決策を提供します。特にフィリピン人材は、仕事意識の高さから、日本の労働市場に貢献する可能性を秘めています。

採用を成功させるには、第一に日本側の厳格な手続きや義務的支援、加えてフィリピン側の複雑なプロセスを完全に理解して手続きを行わなければなりません。中小企業にとってはこの手続きを単独で行うのは困難であるため、外部の専門機関のサポートを得ることが一番の近道と言えます。

私たち送り出しカフェは、信頼できる送り出し機関の紹介からビザ申請・入国手続き、日本語教育に至るまで、企業向けに一貫したサポートを提供しています

フィリピン人材の採用を検討しているのであれば、まずは一度、お気軽にお問い合わせください。

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この記事を書いた人

三木 雅史(Masafumi Miki) 株式会社E-MAN会長
1973年兵庫県生まれ / 慶応義塾大学法学部法学科卒
・25歳で起業 / デジタルガレージ / 電通の孫請でシステム開発
・web通販事業を手掛ける
・2006年にオンライン英会話を日本で初めて事業化
・2019年外国人の日本語教育を簡単、安価にするため
 日本語eラーニングシステムを開発、1万人超の外国人が日々学習中

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