日本の食を支える飲食料品製造業は、長年にわたり労働力不足という構造的な課題に直面しています。特に生産現場では、若年層の確保が喫緊の経営課題となっています。こうした状況の中、即戦力となる外国人人材を受け入れるための在留資格として、「特定技能」制度が重要な役割を果たしています。
本記事は、特定技能外国人、なかでも優秀な働き手として定評のあるフィリピン人材の採用を検討している企業のご担当者様を対象に、飲食料品製造業分野における特定技能制度の基礎知識から受入れ企業が遵守すべき4つの基準、さらに外国人材の定着を促進するための10項目の義務的支援まで、実務に直結する内容を紹介かつ網羅的に解説します。
製造業の現場を支える優秀な人材を確保し、企業の持続的な成長を実現するための一歩を踏み出すための情報源として、ぜひご活用ください。
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飲食料品製造業分野における特定技能制度の概要

特定技能制度は、国内で進行する深刻な人手不足に対応するため、2019年4月に導入されました。中小企業を含む特定産業分野の現場に対し、即戦力となる外国人材を受け入れることを目的とした在留資格です。
従来の在留資格(技能実習など)では補いきれない、幅広い業務領域に対応するための仕組みと位置づけられています。飲食料品製造業分野においては、2024年12月末時点で約7万4000人の外国人が特定技能の在留資格で就労しています。
とはいえ、導入以降は適切な処遇や保護の確保も制度設計の重要な柱となっており、企業には法令順守と支援体制の整備が強く求められます。
特定技能1号と2号の基本的な違い
特定技能は「1号」と「2号」に分類され、それぞれ求められる技能水準や在留条件が異なります。
1号は主に基礎的な業務遂行能力を有する即戦力向け、2号はより高度で指導・管理を担える熟練者向けです。1号の在留期間は通算で最長5年と定められており、家族帯同は原則認められていません。一方、2号は在留期間に上限がなく更新が可能で、要件を満たせば家族帯同も認められます。
求められる水準 | 相当程度の知識・経験 (試験合格等) | 熟練した技能 (試験合格+指導・管理経験等) |
在留期間 | 通算5年まで | 期間更新可能 (上限なし) |
家族帯同 | 原則不可 | 要件を満たせば可能 |
主な狙い | 即戦力の確保 | 長期定着・高度技能の確保 |
飲食料品製造業で従事可能な業務範囲
飲食料品製造業分野で特定技能外国人が担える業務は、酒類を除く飲食料品の製造・加工、さらに職場の安全衛生確保に関わる範囲が中心です。
具体的には、原材料の受け入れ・検査、各種製造工程、包装・梱包、検品、工場内の清掃、品質管理や衛生管理の業務などが該当します。
特に食品安全に直結する「安全衛生の確保」が明確に業務範囲に含まれるため、受け入れ企業は衛生教育や作業手順の周知を外国人材が理解できる言語で実施する体制を整備する必要があります。
運用上は、まず1号で受け入れて戦力化を図り、将来的に2号相当の技能と経験を蓄積させるキャリア設計を描く企業が多く見られます。即戦力の人材として1号を受け入れつつ、2号への移行を見据えた人材育成計画(OJT、工程管理経験の付与、職務記録の整備など)を設けると中長期的な人材定着につながります。
とはいえ、制度の運用や数値は更新されるため、申請や運用にあたっては最新の公的情報を必ず確認してください。

特定技能1号・2号の要件

飲食料品製造業の特定技能は、農林水産省が所管し、出入国在留管理庁と連携して運用されています。業務は製造・加工に加え、安全衛生の確保を含む点が特徴です。制度の分類は1号と2号に分かれ、求められる技能水準と在留条件が異なります。
1号技能水準
求められる技能水準 | 飲食料品製造業における基本的な作業を安全かつ適切に行える技能。 |
技能評価試験 | 「飲食料品製造業特定技能1号技能測定試験」に合格すること。 |
日本語能力要件 | 日本語能力試験(JLPT)N4以上、または国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)合格。 |
技能評価試験は、一般社団法人外国人食品産業技能評価機構(OTAFF )が実施します。詳しくは、公式サイトをご覧ください。
日本語試験は、現場での作業指示の理解や、日常生活に支障のない日本語力があるかを確認するために実施されます。
2号技能水準
求められる技能水準 | 現場を指導・管理できる「熟練技能」。 |
技能評価試験 | 「飲食料品製造業特定技能2号技能測定試験」に合格すること。 |
実務経験要件 | 複数の従業員を指導・監督した経験があること。 品質管理や工程管理など、現場リーダーとしての実務能力を有すること。 |
特定技能2号では、現場全体を管理し、生産効率・品質を維持するための高度な技能を有しているかが確認されます。すでに一定以上の日本語能力を有していると思われるため、日本語能力の要件はありません。しかし試験は全て日本語で行われるため、ある程度以上の日本語力は求められます。
特定技能1号 | 特定技能2号 | |
---|---|---|
求められる水準 | 相当程度の知識・経験 (分野別技能測定試験の合格等) | 熟練した技能 (試験合格+管理・指導の実務経験) |
主な試験 | 飲食料品製造業特定技能1号技能測定試験 | 飲食料品製造業特定技能2号技能測定試験 |
日本語要件 | JLPT N4相当 (JFT-Basicでの判定も可) | 日本語能力の要件はないが、現場の指導・監督・工程管理といった役割を担えるだけの日本語力(JLPT N3レベル相当)が必要 |
実務経験の扱い | 試験合格が基本条件 | 複数従業員の指導・工程管理等の実務経験が必要 (証明書類の提出) |
2号の実務経験要件と書類準備
2号申請では「複数の従業員を指導し工程を管理した」等の管理的実務経験が求められます。実務的には次のような書類の準備が一般的です。
- 実務経歴書(職務内容・在籍期間・担当業務を明記)
- 事業主または上長による在職証明(指導・管理の実績を明記した証明書)
- 現場の役割分担表や勤務記録(工程管理を行っていたことが分かるもの)
衛生管理(HACCP等)と日本語支援の実務設計
飲食料品製造業はHACCP等の衛生管理の遵守が強く求められます。したがって、義務的支援のうち日本語学習支援は日常会話だけでなく、「衛生管理用語」「作業手順」「品質トラブル時の報告手順」など業務特化型にカスタマイズする必要があります。
具体的には、来日前研修や入社直後の現場オリエンテーションに、次を組み込むと効果的です。
- 衛生管理・作業手順の日本語ミニテキスト(現場語彙集)作成
- 現場でのロールプレイ(不具合対応フロー等)による定着確認
- 定期的な理解度チェック(3ヶ月・6ヶ月)と記録管理
- 必要業務とポジションを明確化する(加工、検品、衛生管理など)。
- 候補者が持つ資格・在留状況(技能実習修了か、JLPT/JFTの結果等)を確認する。
- 1号で採用する場合は、試験合格の確認と支援計画(日本語・生活支援)を作成する。
- 2号を視野に入れるなら、管理経験を積ませるためのOJT/職務記録の仕組みを設ける。
- 管理等実務経験の証明書類は、早めに発行ルートを確保し、原本を保存する。
- 制度運用や要件は更新されるため、出入国在留管理庁・農林水産省の最新情報を定期確認する。
技能実習2号修了者の優遇
技能実習2号を良好に修了した者は、特定技能1号への移行で試験や日本語要件が免除される場合があります。採用時に技能実習の履歴がある候補者は、免除の可否をあらかじめ確認してください。
参考:
飲食料品製造業分野 | 出入国在留管理庁
食品産業特定技能協議会(飲食料品製造業分野・外食業分野)について:農林水産省

受け入れ企業が満たすべき「4つの基準」

特定技能外国人を受け入れるには、出入国在留管理庁が定める4つの基準を満たすことが前提です。
飲食料品製造業では農林水産省所管の分野要領に基づき、特に「安全衛生」「支援体制」「支援計画」の実効性が重視されます。
基準1:雇用契約の適正性(待遇・労働条件)
特定技能外国人と結ぶ雇用契約は、日本の労働関係法令に適合していることが前提です。賃金や手当、残業代、休日などを含む待遇は、日本人従業員と同等以上である必要があります。契約内容は外国人が理解できる言語で説明し、その記録を残すことも義務付けられています。
基準2:機関の適格性(欠格事由の非該当)
受入れ企業自身が適格であることも重要です。過去5年以内に出入国関係や労働関係で重大な法令違反(過去5年以内の重大な法令違反、保証金徴収の禁止、行方不明者の発生等)がないことが求められます。労働基準法や社会保険、税務関連法令の遵守状況も評価対象となり、違反がある場合は長期にわたり外国人材の受け入れが制限されます。
基準3:支援体制の確立(理解可能な言語での支援体制)
外国人が安心して働ける環境を整備することも必須です。業務や生活に関する情報、安全衛生指示などを、外国人が理解できる言語で伝えられる体制を構築する必要があります。現場で使う専門用語の翻訳や母語対応窓口の設置は、実務上有効な支援策です。
基準4:支援計画の適正性(10項目の義務的支援を含む計画)
企業は、特定技能外国人が安定して生活し業務に専念できるよう、支援計画を策定し、出入国在留管理庁に説明できる状態であることが必要です。この計画には義務的支援の内容や責任者、具体的な実施方法を明確に盛り込む必要があります。計画の全部または一部を登録支援機関に委託することは可能ですが、受入れ企業が法的義務から免除されるわけではなく、委託先の適格性確認も必須です。
10項目の義務的支援
特定技能1号人材に関しては、以下で一覧にした10項目の支援を行うことが義務付けられています。
支援項目 | 実務のポイント | |
---|---|---|
1 | 事前ガイダンスの実施 | 雇用契約締結後に業務内容・労働条件・給与・保証金の有無を対面またはオンラインで説明。 記録(説明資料・受領サイン)を残すこと。 |
2 | 入出国時の送迎 | 入国時・帰国時の空港送迎(保安検査場付近まで)や同行を実施。 移動スケジュールは余裕を持って設定する。 |
3 | 住居確保・生活支援 | 住居探しのサポート、連帯保証人の手配、賃貸契約の説明、銀行口座・携帯電話契約の補助。 初期費用や敷金の扱いは明示する。 |
4 | 生活オリエンテーション | 日本の基本ルール、公共機関の利用、交通マナー、災害時の避難等を説明。 目安は合計8時間程度(在留変更等の場合は最低4時間)。 |
5 | 公的手続等への同行 | 住民票、健康保険、年金、税関連の手続きに同行し、書類作成を補助。 手続きの期限と必要書類リストを事前に準備する。 |
6 | 日本語学習の機会提供 | JLPT N4/JFT-Basic 相当の語彙と業務表現をカバーする研修を用意する。 職場内OJTと併用した継続学習計画が有効。 |
7 | 相談・苦情対応 | 職場や生活に関する相談窓口を設置(母語対応が望ましい)。 苦情は記録化し、対応の経過を管理する。 |
8 | 日本人との交流促進 | 地域行事や職場イベントへの参加支援。 孤立防止と相互理解が目的。 参加は任意だが案内は積極的に行う。 |
9 | 転職支援 (企業都合時) | 企業側都合で雇用終了する場合、転職先紹介や面接調整、必要な書類発行を支援する。 離職時の給与処理や有給消化の扱いも明確に。 |
10 | 定期面談・行政通報 | 少なくとも3か月に1回は上司と面談し、労働条件や健康、ハラスメント等の問題を確認する。 重大な違反があれば行政機関へ報告。 |
支援項目のうち、住居確保と日本語学習の提供はQOL(生活の質)に直結します。生活基盤が整えば仕事への意欲が高まり、特定技能2号への移行を目指す動機づけになります。したがって、これらは単なる「義務」ではなく、長期的な人材投資の中核と捉えてください。
登録支援機関の選定ポイント
支援は自社で行う他、登録支援機関に一部または全部を委託することも可能です。ただし、登録支援機関へ委託した場合でも、受入れ企業は支援が適切に行われているかを確認する責任を負います。
受入れ企業が登録支援機関を選ぶ際は、以下の点を確認することが重要です。
分野知見の有無 | 飲食料品製造業特有の衛生管理や安全衛生教育、生活支援の知識・経験があるか。 |
対象言語での対応能力 | 受入れ外国人が理解できる言語で指導や相談対応が可能か。 |
支援費用の適正性 | 費用が適正で、継続的に委託可能か。費用の一部を外国人に負担させることは原則禁止です。 |
過去の支援実績と信頼性 | 安定した支援実績があり、法令遵守の観点からも信頼できるか。 |
登録状況の確認 | 出入国在留管理庁が公開する登録支援機関名簿で、登録の有無や担当者の配置状況を確認する。 |
- 企業の負担軽減
- 日常的な支援業務や届出を専門家に委託することで、社内リソースの節約が可能。
- 法令遵守の確実性向上
- 支援計画や届出の漏れを防ぎ、欠格事由の発生リスクを低減。
- 外国人材の定着支援
- 生活基盤や日本語学習支援が専門的に行われることで、安定した就労につながる。
- 活用にあたっての注意点
- 登録支援機関に委託しても、最終的な責任は受入れ企業にあることを理解する。
- 住居確保支援で企業が連帯保証人になる場合は、法務・財務リスクを事前に確認し、必要に応じて保証会社を活用する。
- 支援契約書に委託範囲、費用負担、報告頻度、責任者、解約条件を明示しておく。
中小企業にとっては登録支援機関を活用することで、法令遵守と安定した就労環境の両立を実現できるでしょう。
参考:特定技能外国人を受け入れる際のポイント|出入国在留管理庁

受入れ企業が負う「4つの義務」

企業には特定技能人材を受入れたあとも、継続的に履行すべき義務を負います。これらは外国人の安定した就労と制度の適正運用に直結するため、導入前に社内体制を整えておくことが不可欠です。
義務1:雇用契約の確実な履行と人権への配慮
事業者は、雇用契約に定めた労働条件を確実に履行しなければなりません。具体的には、賃金(基本給・手当・残業代等)や労働時間、休日といった待遇を日本人従業員と同等以上に維持することが求められます。
加えて、職場におけるハラスメントや差別を未然に防止し、人権が守られる労働環境を継続的に確保する責任があります。契約内容は外国人本人に理解可能な言語で説明し、その説明記録を保存してください。
義務2:支援計画の適正な実施とその管理体制
受入れは支援計画(10項目の義務的支援を含む)に基づいて行われます。企業は計画どおりに支援を実施し、その実効性を確認する管理体制を整備する必要があります。
実務上は、受入れ直後の生活・職場オリエンテーション、住居や手続きの支援、日本語教育、相談窓口の設置などを定期的に見直すことが重要です。
支援が適切に行われているか確認するため、本人と上司(責任者)との定期面談(目安:3か月に1回)を実施し、面談記録を保存してください。
なお、これら支援義務は主に特定技能1号に関連する点がありますので、1号と2号の適用範囲を社内で整理しておくことを推奨します。
義務3:出入国在留管理庁への各種届出(活動状況報告、支援状況報告)
所属機関は、特定技能外国人の活動状況や支援の実施状況について所定の様式で届出・報告する義務を負います。
従来は四半期ごとの報告が中心でしたが、運用や様式は改訂されることがあります。したがって、報告の頻度・様式・提出先は最新の公的情報を確認し、社内の届出フローと担当者を明確に定めてください。
重大な事案(未払、行方不明、重大な労働安全違反等)を把握した場合は、所定の手順で速やかに行政へ通報する必要があります。
実務チェック(導入前・運用中に必ず確認する項目) | |
---|---|
雇用契約(日本語+母語説明)と記録の準備。 | |
賃金・勤務条件が日本人と同等であることの確認。 | |
支援計画(10項目)と責任者の明確化。 | |
定期面談の実施スケジュールと記録保管の運用。 | |
届出・報告の様式・提出期限を常に最新化し、担当を固定化。 | |
登録支援機関に委託する場合は委託範囲と責任分担を契約書で明確化し、委託先の適格性を確認。 |
特定技能制度は「単なる人材確保」の手段ではありません。雇用契約の履行、支援体制の実効性、そして届出・記録の整備が組織の信頼性を左右します。初期整備に時間を掛けることが、長期的な定着とリスク低減につながります。
義務4:特定技能協議会への加入
飲食料製造業においては上記3つの義務に加え、「食品産業特定技能協議会」に加入することがが義務付けられています。在留資格申請に先立ち、加入手続きを完了しておくことが実務上の必須事項となっています
- 法令遵守の促進
- 制度運用が適正に行われるよう、法令や運用ルールの周知・指導を行います。違反防止に関する情報共有も重要な役目です。
- 人材需給の調整
- 分野ごとの労働需給を把握し、特定地域や特定企業へ人材が偏在しないよう調整や提言を行います。
- 情報提供と問題共有
- 受入れ・定着に関するノウハウや課題を構成員企業間で共有し、改善策の検討や施策提案を行います。
- 研修・会合の実施
- 関係者向けの説明会や研修、相談会を開催し、企業側の運用支援を行うことがあります。
企業は加入後、協議会が実施する各種会合や研修に参加し、必要な情報提供や運営への協力を求められます。協議会への加入及び協力義務は、特定技能制度の根幹を支えるものであり、未加入や非協力は受入れ基準の不適合と見なされる可能性があるため、注意なさってください。
参考:食品産業特定技能協議会(飲食料品製造業分野・外食業分野)について:農林水産省
特定技能1号の獲得戦略と採用フロー

スムーズに人材を受け入れるには、制度の要件を踏まえた採用計画と、社内での実務フローの整備が欠かせません。以下では、採用前の準備から就労開始までのプロセスを、実務担当者の視点で整理して解説します。
1.採用前の準備:人材ニーズの特定と受入れ基準の確認
採用前に現場が本当に必要とする能力を明確にし、制度上の受入れ基準を満たす体制を整えておくことが成功の鍵です。業務範囲と支援体制を社内で合意してから募集活動に進みましょう。
目的の明確化 | 欠員補充か増員か、短期戦力か中長期育成かを定める。 |
業務要件の洗い出し | 担当工程、必須スキル、作業精度、想定シフトを列挙する。 |
衛生・安全条件 | HACCP等の基礎知識の有無や保護具・教育の要否を確認する。 |
賃金・待遇の検証 | 報酬が日本人と同等以上であるか、手当・残業支払方法を明記する。 |
法令遵守の確認 | 社会保険・労働基準・税務の整備状況をチェックする。 |
支援体制の設計 | 生活支援・相談窓口・日本語支援の担当者と実施頻度を決める。 |
支援計画の骨子作成 | 出入国在留管理庁が求める支援(10項目)を反映した案を用意する。 |
内部承認と予算化 | 人事・現場・総務で役割分担を決め、必要コストを見積もる。 |
2.人材の募集と選考:試験合格者または技能実習修了者のルート
採用ルートは主に「試験合格者」と「技能実習2号修了者」の二つです。各ルートの利点・注意点を理解して、選考基準を事前に定めておくことが実務上重要です。
試験合格者ルート(主に国外在住者)
特定技能1号技能測定試験と日本語試験に合格した人材を採用する方法です。スキルの可視化が容易で、採用後すぐに現場戦力となりやすいのが特徴です。
対象者 | 飲食料品製造業分野の特定技能1号技能測定試験合格者+日本語能力試験(JLPT N4またはJFT-Basic A2相当)合格者。 |
主な利点 | 業務理解が早く、採用時点で技能水準が客観的に確認できる。 |
実務上の注意 | 試験合格証の真偽や有効期限、受験国による条件差を確認する。 |
採用時のポイント | 試験合格者の中でも、日本での就労経験やコミュニケーション力に差があるため、面接で現場適性を見極める。 |
面接方法 | オンライン面接を併用し、実技・日本語の両面から評価する。 |
技能実習2号修了者ルート(主に国内在住者)
技能実習制度の2号を良好に修了した外国人を採用する方法です。既に日本での生活・労働経験があるため、早期定着が期待できます。
対象者 | 技能実習2号を良好に修了した外国人(該当分野が飲食料品製造業など特定技能1号の対象分野であること)。 |
主な利点 | 条件により技能測定試験および日本語試験が免除される可能性がある。 |
免除の注意 | 免除の可否は分野ごと・実習内容ごとに異なるため、出入国在留管理庁や関係省庁の公式情報で個別確認が必要。 |
実務上のポイント | 技能実習中の評価書・監理団体からの推薦・日本語能力の継続レベルを確認する。 |
書類チェック項目 | 技能実習修了証明書、監理団体発行の評価書、在職証明書、健康診断書など。 |
面接時の工夫 | 実習経験をどう現職務に生かせるか、チームとの協調性、リーダーシップ適性を確認する。 |
共通の選考基準
採用ルートにかかわらず、評価基準を統一しておくと公正かつ実務的な選考が可能になります。
評価軸 | 業務理解度、衛生意識、安全遵守、日本語運用力、協調性、勤勉性。 |
書類整備 | 本人確認書類・試験合格証・修了証・在留カード(更新時)などを体系的に管理する。 |
採用スケジュール設計 | 海外・国内いずれの場合も、ビザ申請や書類発行のリードタイムを踏まえた工程表を作成する。 |
3.雇用契約の締結と支援計画の作成
採用候補者を選定した後は、雇用条件の確定と支援体制の整備を同時並行で進めます。契約内容の透明性と支援計画の実行性が、申請審査と定着率の双方を左右します。
契約条件の確認 | 報酬・労働時間・休日・手当を日本人と同等以上に設定する。 |
外国語対応 | 契約内容を本人が理解できる言語で説明・翻訳し、書面を交付する。 |
労働関連法令の遵守 | 労働基準法・社会保険・雇用保険などの加入を確認する。 |
契約書の整備 | 雇用契約書と労働条件通知書を別途作成し、署名・押印を確実に行う。 |
支援計画の策定 | 出入国在留管理庁が定める10項目の義務的支援をすべて網羅する。 |
支援内容の例 | 住居確保、生活オリエンテーション、日本語学習機会、相談窓口の設置など。 |
実施体制の決定 | 支援業務を自社で行うか、登録支援機関に委託するかを明確にする。 |
委託時の留意点 | 契約書に委託範囲・費用負担・報告義務を明示する。 |
内部管理体制 | 支援責任者・人事・現場監督者の役割分担を決め、実施記録の様式を準備する。 |
4.在留資格認定証明書交付申請と就労開始までの流れ
海外からの招致の際には、出入国在留管理庁への在留資格認定証明書(COE)の申請が必要です。COEとは、日本に滞在する外国人の活動が在留資格の条件に適合しているか、事前に審査し法務大臣が証明する書類です。この証明書があることによって、在外公館でのビザ申請や日本の空港での審査が円滑に進みます。
申請から就労開始までの流れも、事前に把握しておいてください。
申請先 | 出入国在留管理庁または地方出入国在留管理局。 |
提出書類 | 在留資格認定証明書交付申請書、雇用契約書、支援計画書、法人登記事項証明書、納税・社会保険関連証明書など。 |
審査期間 | 通常1〜3か月程度。内容に不備があれば追加書類を求められることがある。 |
COE交付後の流れ | 本国の日本大使館・領事館で査証(ビザ)申請・発給後に入国。 注意点:COE交付=査証発給ではない。査証審査は在外公館が独自に行う。 スケジュール管理:入国予定日から逆算し、COEの有効期限(原則3か月)内に手続きを完了する。 |
入国後(国内在住者の場合は採用通知後)の対応 | 住居・生活支援の実施、各種届出(住民登録・社会保険等)を速やかに行う。 |
就労開始時 | 初期オリエンテーションを実施し、職場ルール・安全衛生・相談経路を説明する。 |
定着支援 | 支援計画に基づき、定期面談・日本語学習・生活相談などを継続的に記録・報告する。 |
採用は「手続き」だけで完結するものではありません。支援計画の精度が定着率を左右します。まずは上記チェックリストを元に社内でギャップ分析を行い、必要なら登録支援機関や専門家へ相談してください。短期的には人手不足の解消、長期的には2号への移行を見据えた人材育成が企業競争力に直結します。

飲食料品製造業でフィリピン人が選ばれる理由

多くのフィリピン人材が日本のビルクリーニング業界で活躍しています。その背景にあるのは、彼らの国民性と文化的な特徴ではないでしょうか。
豊富な若年・生産年齢人口という構造的優位性
フィリピンでは人口の大多数が15~64歳の生産年齢層に属しており、全体の約67%を占めるという統計があります。この構造は、日本が直面する生産年齢人口の減少とは対照的であり、人的リソースを「量」の面から確保可能な点が、飲食料品製造業界における採用戦略上の強みとなります。
高い協調性と勤勉さ
フィリピンでは大家族が多く、年長者への敬意や組織への協調性が自然と備わっています。この特性は、チームで作業を行う製造業のライン作業において、極めて大きなメリットとなるでしょう。同僚との連携や協力を積極的に行うため、食品製造や加工の現場で見られるような連携作業が多い業務にも向いていると言えます。
また、日本の企業文化に対する順応性も高く、指示を忠実に守り、業務に対する責任感が強いという特徴も、品質管理が必要な飲食料品製造業にとっては理想的な人材と評価される理由です。高い能力を持ちながらも、現場の方針を理解し、組織ごとに求められる役割を忠実に果たす姿勢は、企業側にとって採用における大きな魅力となるでしょう。
ホスピタリティ精神と明るい国民性
フィリピンでは国民の約9割がキリスト教徒であり、その教えに基づいた「フィリピーノ・ホスピタリティ」と呼ばれる、優しさやおもてなし精神を強く持っています。
彼らは初対面の人に対しても明るくフレンドリーに接し、常に笑顔を絶やさない国民性があるため、顧客や日本人社員との円滑なコミュニケーションを図りやすいという大きなメリットがあります。これは外食業や食料品製造業の現場においても、生産性とチームワークの向上に寄与します。特にライン作業や衛生管理など、複数人での協働が求められる工程では、明るい性格と協調的な姿勢が職場全体の雰囲気を良くし、離職率の低下にもつながることが期待できます。
強い就労意欲と家族を支える責任感
フィリピン人の約1割が海外で就労している出稼ぎ労働者であり、彼らの多くは母国の家族を経済的に支えるという強い責任感と目的を持っています。
この「家族への思いやり」が、そのまま高い就業意欲と長期的な定着へのモチベーションに繋がります。企業が安定した雇用と適切な労働環境を提供すれば、彼らは非常に勤勉で信頼できる人材となることが期待できるのです。
企業担当者が、このようなフィリピン人の国民性や文化的背景を理解しておけば、採用時のみにならず、継続的な支援にも活かせることでしょう。
現場の声から学ぶ!フィリピン人材のメリットと企業が行うべき取り組みとは

日本の食品加工工場の多くで、フィリピン人材が活躍しています。しかし彼らがその力を発揮するには、受け入れる企業の支援も欠かせません。ここでは、実際にフィリピン人材を採用している企業の事例から、採用のメリットや企業が取るべき施策などについて考察していきましょう。
食品工場での事例
例えば「大阪王将」を運営するイートアンド株式会社は、冷凍餃子の皮や具材、冷凍水餃子等の製造加工を行う関東工場で、フィリピン人を含む外国人材の受入れを積極的に行っています。
受入れ時にはコミュニケーション研修を実施するほか、入社後も定期的に面談を行って仕事面・生活面の課題を把握しケアしています。
言葉や職場慣習の違いへの対策としては、入社後に店長やスタッフと日々対話しつつ、人事部門に多言語対応の「ダイバーシティ相談窓口」を設置。店舗だけに負担を偏らせず、各国語で相談できる体制を整えています。
また別の製造業の企業からは、フィリピン人従業員たちは「一緒に生活をして、一緒にご飯を作って食べたりしながらとても仲が良い」という声が寄せられています。こうした共同生活を重視する文化は、協調性が求められる飲食料品製造業の現場において、チームワークを円滑にするポジティブな要因となるでしょう。
さらに、在留資格の申請や住居手配などを登録支援機関に委託することで、業務負担が大幅に軽減されたという報告も挙げられています。事務申請や住居確保といった業務のトータルサポートを受けることで、業務負担が丸2日分ほど軽減されたという具体的な声も上がっています。
現場の声から得られる教訓
こうした現場の声や事例から、企業が教訓として取り入れられるのは次のような点ではないでしょうか。
- 協調性の高さと定着
- フィリピン人材に見られる共同生活やチームワークを重視する特性は、連携作業が多い飲食料品製造の現場において、良好な人間関係と定着につながるメリットとなります。
- 文化・生活面の配慮
- フィリピン人材はチーム志向で明るい半面、日本の職場慣習や時間感覚の違いに戸惑うことがあります。孤立しないよう配属先に配慮したり、社内メンター制度を導入したりする工夫が初期トラブルの防止につながります。
- 業務負担の軽減
- 受け入れ初期は在留手続きや住居手配、生活指導など支援業務が増大します。可能であれば登録支援機関への委託や外部サポートを活用し、社内リソースの負担を軽減することが望ましいでしょう。
参考:
大阪王将の餃子製造工場が2回目の外国人技能実習生を受入れ|PRTIMES
食肉事業(工場勤務) | ONODERA USER RUN
フィリピン人材受入れに必要なDMWと送り出し機関

特定技能フィリピン人材の採用には、日本側の要件・手続きだけではなく、フィリピン政府側の組織(DMW/旧POEA)と、現地の送り出し機関についての理解が不可欠です。
DMWと送り出しルールの要点
フィリピンは国民の多くが海外で働いているという現状があり、労働者を保護するため、DMW(海外労働者省)という行政機関が海外への送出を厳格に管理・監督しています。そのDMWの窓口として各国に設置されているのが、MWO(移住労働者事務所)です。MWOは企業が作成した雇用契約や求人票がフィリピンの労働基準に合致しているかを認証(Verification)します。MWOの認証を経ることで、フィリピン政府から正式に採用計画が承認されます。
フィリピンではエージェントを介さない企業による直接雇用は原則禁止されており、DMW認定の送り出し機関を通じた手続きが必要となります。
そのため日本の企業がフィリピンから特定技能人材を直接雇用しようとする場合、まずはDMW認定の送り出し機関と人材募集・雇用に関する取り決めを締結し、その上でMWOへの申請手続きを行い、認証を得る必要があります。
またDMWは不当な手数料徴収を禁じる通達を出しており、紹介料や手数料の取り扱いには法的なルールが適用されます。とはいえ、実務上は運用に差が出ており、企業側が想定外の費用負担や説明不足に直面するケースが散見されます。企業側は契約時に費用負担の明細を契約書で明確化してください。
送り出し機関選定の重要性
フィリピン人採用における最大の実務リスクの一つは、送り出し機関の選択です。なぜなら、一部には不当な費用請求や書類偽造、質の低い日本語教育といった悪質な運営を行う機関が存在するからです。
そうした事案は、労働者本人に深刻な被害をもたらすだけでなく、受け入れ企業にも失踪・不法就労・労務トラブルといった重大な負担を引き起こします。
したがって、送り出し機関の選定は「人が来るかどうか」だけで判断してはいけません。倫理性・透明性・法令順守を含めた総合的な適性評価が不可欠です。
採用ステップ
DMWに認定された現地の送り出し機関を通じて契約を締結します。
送り出し機関を通じて、求人票(Job Order)および雇用契約案をMWOに提出し、フィリピン側の基準に沿うか確認を受けます。必要があれば契約内容の修正や追加書類の提出を求められます。
MWOの認証で必要条件が満たされたことを確認したうえで、候補者と正式な雇用契約を最終確定(署名)します。実務上はこの確定をもって日本側の在留手続きを進めるのが安全です。
日本側での在留資格申請に必要な書類を揃え、出入国在留管理庁に申請します。COE の有効期限に注意し、フィリピン側手続きを完了させた上で申請することが望ましいです。
OECはフィリピン出国時に提示が求められる証明書です。これを取得することで、合法的に出国・入国が可能となります。日本在住者でも、場合によっては OEC 取得が必要になることがあります。
日本在住のフィリピン人材を雇用する場合の注意点
すでに日本国内に在留しているフィリピン人材を特定技能として雇用する場合でも、フィリピン政府の規定に基づき、MWOによる認証手続きが原則として必要となります。
これは、たとえ日本国内で在留資格の変更を行うケースでも、フィリピン政府の視点からは「海外就労扱い」となるためです。MWOを通じた認証手続きとOECの取得を怠り、外国人が一時的にフィリピンへ帰国した場合、出国時にOECの提示を求められて提示できなければ、日本への再入国が不可能になるという深刻な事態が発生する可能性があります。
受入れ企業は、この重大なリスクを理解し、日本在住者であっても、DMW認定の人材紹介会社を経由した認証手続きを確実に行う必要があります。
参考:DMW

送り出しカフェの活用

DMWへの申請、送り出し機関の選定などの手続きが必要なフィリピン人材の採用を成功させるには、専門のサポート機関を利用するのが最も効率的かつ効果的です。
送り出しカフェは、フィリピン人労働者の採用を検討している日本企業を対象に、フィリピン現地の送り出し機関の紹介・仲介を行っています。
フィリピン政府のライセンスを持つ正規の送り出し機関と提携しており、年間2,000人を海外に送り出す実績を有するパートナーなど、実績豊富な機関と連携しているのが大きな特徴です。
送り出しカフェ活用のメリット
- 信頼性のある送り出し機関の紹介
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フィリピン政府公認のライセンスを持つ送り出し機関と提携しているため、違法・不透明な業者を避けられる。
- 人材の母集団が大きい
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提携大学・職業訓練校から約7,000人規模の候補者がいるため、必要な職種に合った人材を探しやすい。
- 特定技能16分野に対応
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介護・外食・建設など幅広い業種の求人に対応できる。
- 安心の日本語対応
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日本人スタッフが窓口となるため、言語や文化の違いによる誤解・トラブルを減らせる。
- 採用から入国後までワンストップ支援
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求人票作成、面接調整、ビザ・MWO申請、入国後の定着支援までトータルサポート。
- 手続きの負担軽減
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フィリピン側で必要な複雑な申請書類や手続きを代行・支援してくれる。
- 日本語教育サポート
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採用前から就労後まで継続的に日本語教育を行う体制があり、現場でのミスや離職リスクを軽減できる。
- 費用や採用リスクの低減
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信頼性の低い送り出し機関を選んで失敗するリスクを減らし、スムーズな採用につながる。
送り出しカフェを活用することによって、DMWのルール確認、信頼できる送り出し機関の選定、明確な契約とスケジュール管理などを円滑に行うことができるでしょう。
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まとめ:外国人材採用の次の一歩

特定技能制度は、飲食料品製造業の構造的な人手不足を解消するための強力なツールである一方で、受入れ企業に対しては極めて高いレベルの法令遵守と外国人材保護を要求するものです。特に飲食料品製造業においては、適切な支援を通じて、現場の工程管理や安全衛生のプロフェッショナルを育成することが、企業の競争力向上に直結するでしょう。
特定技能制度の複雑な要件や実務的な支援体制の構築は、専門知識なくして完遂することは困難です。信頼できる外国人材の採用、複雑なビザ手続き、そして定着支援の課題解決まで、専門家によるサポートが不可欠となります。
私たち送り出しカフェは、信頼できる送り出し機関の紹介からビザ申請・入国手続き、日本語教育に至るまで、企業向けに一貫したサポートを提供しています。
フィリピン人材の採用を検討しているのであれば、まずは一度、お気軽にお問い合わせください。
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