【自動車運送業】特定技能フィリピン人採用完全ガイド

特定技能 自動車運送業

日本の自動車運送業は、慢性的な人手不足と「2024年問題」に起因する構造的な課題に直面しています。特に、長距離トラックやバス、タクシーといった事業では、深刻な労働力不足が経営上の喫緊の課題となっています。

こうした状況の中で注目されているのが、「特定技能」制度を活用した外国人材の採用です。特定技能制度は、即戦力となる外国人材を確保し、運送業界の持続可能性を支える重要な制度的手段として位置づけられています。

本ガイドでは、運送業の経営層や人事責任者を対象に、特定技能外国人ドライバーの受入れに関する制度の全体像を網羅的に解説します。制度概要に留まらず、運送業固有の在留資格戦略や複雑な申請フロー、法令順守を確保しながら人材の定着率を高めるための実務対応策についても詳述します。

さらにフィリピン人材を自動車運送業で雇用するメリットや、特有の採用フローについても詳しく説明します。ぜひ、参考になさってください。

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目次

特定技能 自動車運送業分野の制度概要

都市の高架道路を走る多くの車とバス。自動車運送業や交通量の多い都市部の物流を象徴する風景。

特定技能制度は、深刻な人手不足が続く産業分野において、即戦力となる外国人材を受け入れるために設けられた在留資格制度です。2019年4月1日から運用が開始されたこの制度の目的は、産業の生産性維持と人材確保にあり、運送業分野も対象となっています。

特定技能1号と2号の違い

特定技能制度には1号と2号という、異なる在留資格が存在します。

特定技能1号特定技能2号
対象者特定の産業における相当程度の知識または経験を必要とする技能を持つ外国人より高度な技能と専門性を有する人材
在留期間通算5年が上限上限なし
家族帯同原則不可配偶者や子の帯同が可能
目的即戦力として短期的な人材確保に適する長期的な就労・キャリア形成の選択肢を提供する

しかし現時点では、自動車運送業分野は特定技能2号への移行対象外です。したがって、運送業においては特定技能1号の在留期間(通算5年)を前提とした人材確保・育成計画が必要です。

業務区分と具体的な業務内容

特定技能制度における自動車運送業分野は、その業務内容に応じて三つの区分に明確に分かれています。受入れ企業は、自社の事業形態に合わせて適切な区分を選定し、外国人材の業務内容を確認する必要があります。

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区分対応する自動車運送事業の種類従事する主な業務内容
バス運転者区分一般乗合旅客自動車運送事業
一般貸切旅客自動車運送事業
特定旅客自動車運送事業
運行業務(車両点検、安全な旅客の輸送、乗務記録の作成等)
接遇業務(乗客対応等)
タクシー運転者区分一般乗用旅客自動車運送事業運行業務(車両点検、安全な旅客の輸送、乗務記録の作成等)
接遇業務(乗客対応等)
トラック運転者区分貨物自動車運送事業
第二種貨物利用運送事業
運行業務(車両点検、安全な貨物の輸送、乗務記録の作成等)
接遇業務(荷主対応等)

外国人材が行う主たる業務は、安全運転を伴う運行業務と、顧客や関係者への対応である接遇業務に大別されます。これらに加え、車内や営業所内の清掃作業、運賃精算・管理、その他、主たる業務に付随して行う軽微な関連業務への従事も許容されています。しかし、関連業務のみに従事させることは許されていません。

在留資格取得に向けた試験と要件

特定技能外国人として採用されるためには、在留資格の申請前に、以下の二つの主要な要件を満たす必要があります。

1. 特定技能評価試験の合格

各業務区分に対応した特定技能評価試験に合格し、技能水準を証明することが求められます。この試験は、自動車運送業分野に特化した内容であり、運行業務や接遇業務に関する専門知識が問われます。

2. 日本語能力要件

日本語能力要件は、業務の性質に応じて異なります。

トラック運転者区分

日本語能力試験(JLPT)N4以上、または国際交流基金日本語基礎テストで判定基準点以上の成績が求められます。

タクシー・バス運転者区分

日本語能力試験(JLPT)N3以上、または国際交流基金日本語基礎テストで判定基準点以上の成績が求められます。

参考:自動車運送業分野 | 出入国在留管理庁

自動車運送業固有の「免許の壁」と特定活動ビザの活用

木製の車の前に置かれた運転免許証の見本。自動車運送業やドライバー採用、免許取得を象徴するイメージ。

自動車運送業分野で外国人ドライバーを受け入れる際、最大のハードルは日本の運転免許の取得です。母国での運転経験や試験合格があり、かつ特定技能評価試験と日本語テストに合格していたとしても、日本の免許がなければ運転業務に就けず、特定技能ビザ申請が拒否されることがほとんどだからです。

そのため、自動車運送業においては日本の運転免許取得が特定技能1号取得の前提条件である、という点を銘記してください

とはいえ、在留資格がない外国人が日本の運転免許を取得することは簡単ではありませんし、実務上でも困難を極めます。

そのため、活用したいのが在留資格「特定活動(特定自動車運送業準備)」です。

特定活動ビザ活用による特定技能ビザ移行へのフロー

在留資格「特定活動(特定自動車運送業準備)」とは、自動車運送業分野の特定技能1号資格を取得するために、日本の運転免許取得や新任運転者研修の受講など、必要な準備活動を行うための在留資格です

このビザを持つ外国人は、来日後に運転免許取得や新任運転者研修を集中的に行うことが認められます。

そのため自動車運送業分野で特定技能外国人を海外から雇用する場合、まずは「特定活動」のビザを取得して来日し、必要な日本の運転免許取得、そして特定技能ビザへの切り替えという手順を踏むのが一般的です。

特定ビザ取得から特定技能1号への移行フロー
STEP
準備のための在留資格「特定活動(特定自動車運送業準備)」の申請

特定技能1号の業務を開始する前の準備活動を行うために、まず「特定活動(特定自動車運送業準備)」の在留資格を申請します。

  • 申請要件の確認:この特定活動を申請する外国人本人と、受け入れを予定している企業は、特定技能1号の申請を行う際と同様の要件を満たす必要があります(日本の運転免許取得や新任運転者研修の修了という要件を除く)。
STEP
ステップ2:特定活動期間中に必要な準備を行う

在留資格「特定活動」が許可されると、以下の活動を行うことができます。

  • 日本の運転免許取得手続き(自動車教習所での講習を含む)
  • 新任運転者研修受講(タクシー・バスの場合)
  • 車両清掃などの関連業務

※注意点:この特定活動の在留期間は、トラック運転者の場合は6ヶ月、タクシー運転者及びバス運転者の場合は1年であり、在留期間の更新はできません。

つまりこの期間中に、対象者は受入企業の支援を受けながら、日本の公道で業務として運転するために必要な運転資格を取得することになります。

さらに企業は必要に応じて、試験や業務に必要なだけの日本語を習得できるように支援することも求められます。

STEP
準備完了後、速やかに「特定技能1号」へ移行

運転免許の取得および新任運転者研修(タクシー運送業及びバス運送業の場合)を修了した場合は、速やかに「特定技能1号」への在留資格変更許可申請を行えます。

※注意点: この「特定活動(特定自動車運送業準備)」で在留した期間は、特定技能1号の通算在留期間には含まれません。

参考:自動車運送業分野の「特定技能1号」になるための準備活動(日本の運転免許取得又は新任運転者研修の修了)を希望する場合(「特定活動」(特定自動車運送業準備)) | 出入国在留管理庁

外国人ドライバー受入れのロードマップ

矢印から目標地点へ続くステップを示す3Dイラスト。取得プロセスやキャリアロードマップの流れを表現。

海外から外国人ドライバーを採用し、単独乗務を開始するまでのプロセスは複数の省庁や関係機関の手続きが絡むため、工程管理が重要です。

国のモデルケースでは、採用検討の開始から在留資格の取得、現場研修を経て単独乗務開始に至るまで、概ね5〜6か月を目安としています。

しかし、これはあくまでモデルケースであり、個別案件では大きく前後します。とはいえ、工程を逆算して準備を進めれば、実務上のトラブルを大幅に減らせるでしょう。

全体フロー(フェーズ別・目安期間)

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フェーズ主なステップ目安期間実務上の留意点
I. 採用準備・選考人材要件定義
人材紹介・RSO相談
募集
内定・雇用契約
1〜2週間〜1か月求人要件に免許要件を明記。
住居確保は早めに。
II. 在留資格取得COE申請・査証手続/特定活動申請(免許取得が必要な場合)1〜3か月(国別に差)国や時期で処理日数が変動。
書類不備で遅延が発生。
III. 現場導入・研修来日後の免許取得
教習・筆記・実技
新任研修
日本語研修
社内OJT
1〜3か月教習所の予約・学習時間・日本語力が所要時間に影響。
IV. 最終認可・単独乗務在留資格変更(特定活動→特定技能1号)申請・許可後、単独乗務開始数週間〜1か月在留資格が許可されて初めて単独乗務可。

※上表の「目安期間」は国交省等のモデルを基にした参考値です。実務では在外公館の査証発給日数、COE処理時間、教習所の空き状況、日本語能力などで大きく変動します。

主要工程ごとの実務チェックポイント

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I. 採用準備・選考
求人票に「在留資格の種類」「免許区分(第一種/第二種)」「寮・生活支援の有無」などを明記する。
送り出し機関や登録支援機関(RSO)と早期に連携する。
候補者の既往免許・運転歴証明を入手し、翻訳・公証の必要性を確認する。
II. 在留資格取得(COE / 特定活動)COE(在留資格認定証明書)や特定活動の申請書類を整える。
在外公館での査証発給日数は国によって大きく異なるため、余裕を持ってスケジュールする。
「特定活動(特定自動車運送業準備)」で来日する場合は、在留期間(トラック:最長6か月、タクシー・バス:最長1年)や就労範囲の制約を雇用契約に明記する。
III. 来日後の免許取得・研修外免切替が可能か(学科・実技の免除有無)を日本の運転免許センター等で事前確認する。
教習所の手配と受講スケジュールを確保する。学科試験は日本語で行われることが多いので、日本語支援をセットで用意する。
タクシー・バスは第二種免許に加え、新任運転者研修の受講が必要になる点に注意する。
研修は座学→構内訓練→路上訓練→見極めの流れで実施し、評価基準を明示する。
IV. 在留資格変更と単独乗務開始免許・研修修了後、速やかに在留資格変更(特定活動→特定技能1号)を申請する。
在留資格の許可が出るまで、単独乗務や本務としての業務は不可であることを運用上徹底する。
許可後も定期的なフォロー(研修・面談)を行い、定着支援を続ける。

必要書類

採用から在留申請までに必要な、代表的な書類は以下のとおりです。

  • パスポート(有効期限確認)
  • 母国での運転免許証(原本)および運転歴証明書(必要に応じ翻訳・公証)
  • 無犯罪証明書(国により要否が変動)
  • 学歴・職歴証明(職務経歴書)
  • 雇用契約書(日本語/現地語)と住居手配に関する資料
  • 健康診断書(日本での受診または在外での証明)
  • 送出機関・登録支援機関との契約書類(必要な場合)
  • その他:在留資格用の申請書類一式(COE関連資料等)

※ただし、国別・対象者によっても必要な書類は異なる場合があります。必ず、事前に確認なさってください。

リスク管理と想定対応

  • 在留期間内に免許取得が完了しない場合の対応(早期帰国、追加支援、再申請の可否)を雇用契約で明確にする。
  • 書類不備や査証遅延に備え、申請は余裕をもって実行する。
  • 外免切替不可であると判明した場合、候補者の選定を見直すか、来日後に新規教習で対応する計画を用意する。
  • 行政手続きや申請書類に不安がある場合は、行政書士や登録支援機関と連携する。

受入れ企業は、出入国在留管理庁や国土交通省の最新の資料に基づき、すべての申請や手続きを遺漏なく行う必要があります。特に、雇用契約書の締結においては、労働条件が日本人と同等以上であることの確認が必須となります

URL:自動車運送業分野 トラック区分における特定技能外国人受け入れの手引き|全日本トラック協会

支援実施による外国人材の定着戦略

黒板にチョークで書かれたSUPPORTの文字

特定技能1号外国人を受け入れる企業には、入管法に基づき「支援計画」を作成し、計画に沿った支援を実施する義務があります。これは単に手続き上の要件ではなく、職業生活・日常生活・社会生活を支えることで外国人の定着を高め、事業の継続性を確保するための実務的な戦略と言えるでしょう。

支援は「義務的支援」と呼ばれ、10項目で構成されています。企業が自社で対応できない場合は、国の登録を受けた登録支援機関に全部または一部を委託できます。委託にあたっては、支援の質(外国人が理解できる言語で対応できるか等)を厳しく確認することが重要です。

義務的支援10項目一覧
1. 事前ガイダンス労働条件や活動内容、入国手続き等を理解できる言語で説明します。
雇用契約締結後から在留資格申請前に実施するのが実務上の流れです。
2. 出入国時の送迎入国時および帰国時に空港等から事業所または住居までの送り迎えを行います。
3. 住居確保・生活契約支援住居の手配、銀行口座開設やライフライン契約の補助等を行います。
居室の基準は運用上の原則があり、原則として居室は1人当たり7.5㎡以上を基準とします(技能実習から移行する等の例外規定が関係する場合があります)。
なお、社宅や住居に関して企業が不当に利益を得ることや、過度に高い家賃を設定することは避ける必要があります。
4. 生活オリエンテーションゴミ分別や公共マナー、交通ルールなど、日本での生活に必要な基礎情報を提供します。
5. 公的手続き等への同行住民票登録、健康保険・年金等の手続きへの同行や書類作成の支援を行います。
6. 日本語学習の機会提供日本語教室の案内や教材情報の提供など、日本語能力向上の支援を実施します。
7. 相談・苦情対応職場や生活上の相談・苦情を外国人が理解できる言語で受け、解決に向けて対応します。
8. 地域交流の促進地域行事や自治会参加の支援等を通じ、孤立防止と地域社会への定着を図ります。
9. 転職支援(解雇等の場合)受入側の事情で雇用契約を解除する際は、求職活動のための有給休暇付与や必要な行政手続きの案内を行います。
10. 定期面談と通報支援責任者等が原則3か月に1回以上、外国人本人や上司と面談を行い、問題があれば適切に対応・必要時は関係行政機関へ通報します。
これらの面談や支援の実施記録は保存・届出の対象となります。

登録支援機関を活用するポイント

企業が自社で10項目すべての支援を行うことが困難な場合、国の登録を受けた登録支援機関に支援業務の全部または一部を委託できます

委託先を選ぶ際は、以下の点を重視してください。

チェックポイント
  • 外国人が理解できる言語で対応できる能力があること
  • 公的手続きへの同行や医療機関との連携実績があること
  • 林業現場は地方が多いため、診療所や役所のサポートを現地で提供できること
  • 委託契約で業務範囲・成果指標・報告頻度を明確に定めること
  • 定期的に業務の実施状況をモニタリングすること

雇用契約解除時のリスク管理と対応

特定技能制度では、外国人材の転職が認められています。そのため、受入れ企業の都合で雇用契約が解除された場合には、転職支援を含む支援義務が発生します。具体的には、次の受入れ先の確保や必要な行政手続きに関する情報提供が求められます。離職時には、国民健康保険や国民年金の手続きに関する案内も必要です。

また、企業側の事情で自社による支援が困難な場合には、外部の登録支援機関や専門機関との連携を事前に検討しておくことが望ましいでしょう。これらの対応は、外国人材の円滑な就労継続と個人情報保護の両立のため、慎重に実施する必要があります。

参考:登録支援機関について 在留資格 特定技能 | 外務省

自動車運送業でフィリピン人が選ばれる理由

フィリピン国旗デザインのハートを胸に持つ人の写真|特定技能ビザでのフィリピン人採用のメリットのイメージ

特定技能外国人を雇用する際において、「どこの国から人材を採用するか」は非常に重要なポイントです。

フィリピン人材は日本国内の様々な業種で実際に活躍していますが、自動車運送業界における採用のメリットを、その国民性や免許システムの面から考えてみましょう。

文化的背景と国民性がもたらすメリット

フィリピンは特定技能外国人材の主要な送り出し国の一つとなっていますが、それは彼らの国民性や文化的背景とも関連があるようです。

メリット
高いホスピタリティ精神と接遇能力

フィリピンの人々は、家族やコミュニティを大切にする文化を持ち、ホスピタリティ精神に富んでいることで知られています。これは、バスやタクシーといった旅客運送業における接遇業務において、顧客に対して質の高いサービスを提供できる素養となります。

コミュニケーション能力の高さ

フィリピンでは公用語のタガログ語と英語、そして現地語(セブアノ語やイロカノ語など)というふうに、複数言語を操るのが普通です。そのため多言語の習得も早い傾向が見られ、日本で働く多くのフィリピン人も日本語を上手に操ります。この点は、日本語による接客や安全確認が必須となる自動車運送業においても、非常に重要なポイントとなるでしょう。

勤勉な労働観

出稼ぎで家族を養うという一般的な労働観から、多くのフィリピン人が海外での就労に高いモチベーションと責任感を持ち、真面目に仕事に取り組む傾向があります。これは、安全運転が何よりも求められる自動車運送業において、高い安全意識と業務遂行能力を維持するために不可欠な要素と言えるでしょう。

運転免許切替の優位性

フィリピンで取得した運転免許は、日本の道路交通法上も有効な免許制度として認められており、一定の条件を満たせば「外免切替(外国免許切替)」の手続きを通じて日本の運転免許に変更することが可能です。これは、フィリピン人ドライバーを採用する際の大きなアドバンテージの一つです。

外免切替制度を活用すれば、日本国内での新規免許取得に比べて手続きが大幅に簡略化されます。通常の日本の運転免許取得では、例えば自動車教習所で約2〜3か月の講習を受け、25〜30万円前後の費用が発生します。一方、外免切替では教習課程が不要で、運転免許試験場での学科・実技試験のみで取得が可能です。費用は5,000円前後、期間も2〜4週間程度と、時間・コストの双方で負担を大きく軽減できます。

試験内容も確認的な性格が強く、学科は日本の交通法規や標識などを問う10〜20問程度の簡略版、実技は「安全確認・右左折・S字・クランク」などの基本操作を評価する形式です。とはいえ、合格率は30〜40%程度とされ、日本の運転マナーや安全確認手順に慣れる必要があります。そのため、企業としては入国後の「特定活動」期間を活用し、教習所での実技練習や法令理解をサポートする仕組みづくりが重要です。

こうした外免切替の仕組みを前提に、企業は現地送り出し機関と連携し、「すでにフィリピン国内で免許を保有し、一定期間運転経験を有する人材」を優先的に採用する戦略をとることで、入国後の免許取得プロセスを効率化できます。結果として、採用から単独乗務までのリードタイム短縮が実現し、即戦力化が進みやすくなります。

参考:外国で取得した運転免許証を日本の運転免許証に切り替えるには|警視庁

現場の声から学ぶ!フィリピン人材のメリットと企業が行うべき取り組みとは

車内から見た路線バスの座席と運転席。公共交通やバス運転手の仕事、乗務環境をイメージさせる写真。

ここからは、実際に特定技能フィリピン人ドライバーを受け入れている企業の実例から、彼らを採用するメリットや企業が取るべき施策などについて考えてみましょう。

東京バスの事例

東京バスはドライバー不足解消のために、フィリピンから9人のバス運転士候補生を受け入れました。候補生たちは、採用段階で日本語能力試験N3以上の資格を有し、特定技能評価試験に合格済みでした。

彼らは入国後、運行業務に必須である大型二種免許の取得を目的として特定活動ビザを取得し、登録支援機関の協力を得て、集中的な免許取得期間を過ごしました。この特定活動ビザを活用した戦略により、入国から特定技能1号への資格変更、そして単独乗務開始までのリードタイムを最短化することが目指されました。

フィリピン人材の採用は、運送業の厳しい労働環境と、高い接遇の質を維持したいという企業の要望に対応する一つの答えと言えるでしょう。

参考:東京バス、外国人運転士候補者をフィリピンから9人受け入れへ 今秋デビュー目指す|日刊自動車新聞電子版

豊栄交通の事例

豊栄交通でバスドライバーとして勤務するフィリピン人A氏の経験は、外国人材が現場で直面する具体的な課題と、企業が行うべき支援の重要性を浮き彫りにしています。

A氏が日本で直面した最初の大きな課題は、日本の運転免許取得プロセス、特に運転学校の卒業試験前の「効果測定(筆記試験)」でした。この試験は全て日本語で行われるため、合格するためには集中的な日本語学習が必要であったとA氏は述べています。

しかし、A氏は同僚が非常に親切で友好的であること、社長や会長が親切なことから安心して働けていると述べています。また、会社が強力なサポート体制を敷いており、困った時に相談しやすく、会社へ要望も伝えやすい環境が整っている点を評価しています。

さらに、A氏は、運転学校で学んだことと、実際の乗務で教わったことには大きな違いがあり、入社後も継続的な学習が必須であるとも述べています。運行業務における日本の特有な接遇文化、ローカルルール、緊急時の対応プロトコルなど、現場でのみ習得可能な知識を体系的に教え込むことが企業には不可欠である、という重要な教訓を示しています。

URL:【外国人ドライバー】「運転席から広がる未来」フィリピン出身〜Aさんの体験談|外国人キャリアナビ

事例から学べる教訓

これらの事例から、企業が学べる教訓は以下の通りです。

現場特化の日本語教育

東京バスでは採用段階で特定技能の要件である日本語能力N4ではなく、N3以上を有する候補を選定し、入国後の免許取得や試験対策を速やかに進めていました。この事例から学べるのは、教習所や筆記試験での合格率を高めるための日本語教育、さらに現場で使う語彙・表現に特化した教育の重要性でしょう。

OJT(現任研修)の体系化

豊栄交通のA氏の事例は、運転学校で学ぶ内容と実際の乗務で求められる知識に差があることを示しています。したがって、初任運転者研修や社内OJTは「座学→構内訓練→路上訓練→見極め」という段階を明確にし、接遇マナーや緊急対応手順を含めた評価基準を設定すべきです。現場で教わる暗黙知を形式知化し、教育計画に落とし込むことが定着と安全に直結します。

強力な支援体制の構築

A氏が「会社の強力なサポート体制」を評価している点は重要です。住居手配や手続き同行、日常の相談対応を手厚くすることで、外国人ドライバーは業務に専念しやすくなります。義務的支援を単なるチェックボックス扱いにせず、定期面談やフォローアップを組み入れた運用にすると、早期離職の抑制と安全運行の維持に効果があります。

フィリピン人材を採用する実務的メリット

東京バスのケースでは、候補者にN3相当の日本語能力を求めたことで、来日後の免許取得や試験対策のリードタイムを短縮できました。これを踏まえると、フィリピン人材は「接遇力+一定の日本語力(あるいは英語を介した初期対応が可能)」が揃えば、企業にとって即戦力化しやすい人材となり得ます。したがって、現地での選考段階から日本語能力や運転経験の有無を重視することが、「採用→単独乗務」までの期間短縮に直結します。

フィリピン人ドライバー受入れに必要なDMWと送り出し機関

夜の街で光るタクシーの屋根灯。交通サービスやタクシードライバーの仕事を象徴するイメージ写真。

特定技能フィリピン人材の採用には、日本側の要件・手続きだけではなく、フィリピン政府側の組織(DMW/旧POEA)と、現地の送り出し機関についての理解が不可欠です。

DMWと送り出しルールの要点

フィリピンは国民の多くが海外で働いているという現状があり、労働者を保護するため、DMW(海外労働者省)という行政機関が海外への送出を厳格に管理・監督しています。そのDMWの窓口として各国に設置されているのが、MWO(移住労働者事務所)です。MWOは企業が作成した雇用契約や求人票がフィリピンの労働基準に合致しているかを認証(Verification)します。MWOの認証を経ることで、フィリピン政府から正式に採用計画が承認されます。

フィリピンではエージェントを介さない企業による直接雇用は原則禁止されており、DMW認定の送り出し機関を通じた手続きが必要となります。

そのため日本の企業がフィリピンから特定技能人材を直接雇用しようとする場合、まずはDMW認定の送り出し機関と人材募集・雇用に関する取り決めを締結し、その上でMWOへの申請手続きを行い、認証を得る必要があります

またDMWは不当な手数料徴収を禁じる通達を出しており、紹介料や手数料の取り扱いには法的なルールが適用されます。とはいえ、実務上は運用に差が出ており、企業側が想定外の費用負担や説明不足に直面するケースが散見されます。企業側は契約時に費用負担の明細を契約書で明確化してください。

送り出し機関選定の重要性

フィリピン人採用における最大の実務リスクの一つは、送り出し機関の選択です。なぜなら、一部には不当な費用請求や書類偽造、質の低い日本語教育といった悪質な運営を行う機関が存在するからです

そうした事案は、労働者本人に深刻な被害をもたらすだけでなく、受け入れ企業にも失踪・不法就労・労務トラブルといった重大な負担を引き起こします。

したがって、送り出し機関の選定は「人が来るかどうか」だけで判断してはいけません。倫理性・透明性・法令順守を含めた総合的な適性評価が不可欠です。

採用ステップ

STEP
送り出し機関と契約

DMWに認定された現地の送り出し機関を通じて契約を締結します。

STEP
MWO による認証(Verification)

送り出し機関を通じて、求人票(Job Order)および雇用契約案をMWOに提出し、フィリピン側の基準に沿うか確認を受けます。必要があれば契約内容の修正や追加書類の提出を求められます。

STEP
候補者との雇用契約締結

MWOの認証で必要条件が満たされたことを確認したうえで、候補者と正式な雇用契約を最終確定(署名)します。実務上はこの確定をもって日本側の在留手続きを進めるのが安全です。

STEP
COE(在留資格認定証明書)の申請

日本側での在留資格申請に必要な書類を揃え、出入国在留管理庁に申請します。COE の有効期限に注意し、フィリピン側手続きを完了させた上で申請することが望ましいです。

STEP
OEC(海外就労認定証)の取得

OECはフィリピン出国時に提示が求められる証明書です。これを取得することで、合法的に出国・入国が可能となります。日本在住者でも、場合によっては OEC 取得が必要になることがあります。

日本在住のフィリピン人材を雇用する場合の注意点

すでに日本国内に在留しているフィリピン人材を特定技能として雇用する場合でも、フィリピン政府の規定に基づき、MWOによる認証手続きが原則として必要となります

これは、たとえ日本国内で在留資格の変更を行うケースでも、フィリピン政府の視点からは「海外就労扱い」となるためです。MWOを通じた認証手続きとOECの取得を怠り、外国人が一時的にフィリピンへ帰国した場合、出国時にOECの提示を求められて提示できなければ、日本への再入国が不可能になるという深刻な事態が発生する可能性があります。

受入れ企業は、この重大なリスクを理解し、日本在住者であっても、DMW認定の人材紹介会社を経由した認証手続きを確実に行う必要があります。

参考:DMW

送り出しカフェの活用

送り出しカフェ公式サイトトップ画面

DMWへの申請、送り出し機関の選定などの手続きが必要なフィリピン人材の採用を成功させるには、専門のサポート機関を利用するのが最も効率的かつ効果的です。

送り出しカフェは、フィリピン人労働者の採用を検討している日本企業を対象に、フィリピン現地の送り出し機関の紹介・仲介を行っています。

フィリピン政府のライセンスを持つ正規の送り出し機関と提携しており、年間2,000人を海外に送り出す実績を有するパートナーなど、実績豊富な機関と連携しているのが大きな特徴です

送り出しカフェ活用のメリット

メリット
信頼性のある送り出し機関の紹介

フィリピン政府公認のライセンスを持つ送り出し機関と提携しているため、違法・不透明な業者を避けられる。

人材の母集団が大きい

提携大学・職業訓練校から約7,000人規模の候補者がいるため、必要な職種に合った人材を探しやすい。

特定技能16分野に対応

介護・外食・建設など幅広い業種の求人に対応できる。

安心の日本語対応

日本人スタッフが窓口となるため、言語や文化の違いによる誤解・トラブルを減らせる。

採用から入国後までワンストップ支援

求人票作成、面接調整、ビザ・MWO申請、入国後の定着支援までトータルサポート。

手続きの負担軽減

フィリピン側で必要な複雑な申請書類や手続きを代行・支援してくれる。

日本語教育サポート

採用前から就労後まで継続的に日本語教育を行う体制があり、現場でのミスや離職リスクを軽減できる。

費用や採用リスクの低減

信頼性の低い送り出し機関を選んで失敗するリスクを減らし、スムーズな採用につながる。

送り出しカフェを活用することによって、DMWのルール確認、信頼できる送り出し機関の選定、明確な契約とスケジュール管理などを円滑に行うことができるでしょう。

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まとめ

夕陽の中を走る大型トラック。物流や長距離輸送を象徴し、自動車運送業やドライバー採用のイメージに最適。

特定技能制度は、自動車運送業が抱える慢性的なドライバー不足に対し、持続的な人材確保を可能にする実効的な仕組みです。制度を円滑に活用し、受け入れた人材を定着・戦力化するためには、単なる在留資格の取得や書類手続きにとどまらず、採用戦略・教育設計・支援体制を含めた総合的な取り組みが欠かせません。

特定技能制度を単なる人手不足対策としてではなく、日本の運送業の未来を担う人材を確保し、業界の構造的な課題を乗り越えるための戦略的な投資であると捉える必要があります。とりわけ自動車運送業においては、安全・接遇・言語の三要素を体系的に整備することが、外国人ドライバーの成功と企業の持続的成長に直結します。

一方で、採用からビザ申請、教育、定着支援に至るまでの各プロセスは複雑であり、特に中小事業者が単独で対応するのは容易ではありません。制度理解と実務運用の両面で、専門家による伴走支援が実務上のリスクを最小化します。

私たち「送り出しカフェ」は、フィリピン人材採用のために、信頼できる送り出し機関との連携体制を構築し、採用・在留資格手続き・日本語教育・生活支援までを一気通貫でサポートしています

フィリピン人材の採用を具体的に検討されている企業様は、まずはお気軽にご相談ください。

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この記事を書いた人

三木 雅史(Masafumi Miki) 株式会社E-MAN会長
1973年兵庫県生まれ / 慶応義塾大学法学部法学科卒
・25歳で起業 / デジタルガレージ / 電通の孫請でシステム開発
・web通販事業を手掛ける
・2006年にオンライン英会話を日本で初めて事業化
・2019年外国人の日本語教育を簡単、安価にするため
 日本語eラーニングシステムを開発、1万人超の外国人が日々学習中

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