特定技能「鉄道」分野でフィリピン人材を採用する戦略と制度解説

特定技能 鉄道

日本の運輸産業、特に鉄道分野は、少子高齢化に伴う構造的な人手不足という課題に直面しています。安全で高品質な鉄道運行を将来にわたり維持するためには、新たな人材戦略の構築が急務です。

熟練技術の継承が重要な課題となる中、この問題への具体的な解決策の一つとして導入・運用が進められているのが、「特定技能制度」です。

特定技能制度は、深刻な人手不足にある特定の産業分野において、即戦力となり得る技能と日本語能力を持つ外国人材の就労を認める在留資格制度です。

本記事では、特定技能「鉄道」分野の制度概要から、戦略的な外国人材受入れ計画、さらにフィリピン人材の採用戦略等について、企業担当者向けに詳細な情報を提供します。制度を正しく理解し、コンプライアンスを遵守した対応を講じるための参考になさってください。

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目次

特定技能「鉄道」の制度概要:業務区分と業務内容

鉄道工事現場で作業員が線路上を点検中。特定技能「鉄道」分野の安全管理と人材活用の現場。

特定技能制度は、深刻な人手不足に直面する産業分野において、即戦力となる技能と一定の日本語能力を有する外国人材の就労を認める在留資格制度です。

特定技能1号と2号の違い

特定技能制度には1号と2号という、異なる在留資格が存在します。

特定技能1号特定技能2号
対象者特定の産業における相当程度の知識または経験を必要とする技能を持つ外国人より高度な技能と専門性を有する人材
在留期間通算5年が上限上限なし
家族帯同原則不可配偶者や子の帯同が可能
目的即戦力として短期的な人材確保に適する長期的な就労・キャリア形成の選択肢を提供する

しかし現時点では、鉄道分野は特定技能2号への移行対象外です。したがって、運送業においては特定技能1号の在留期間(通算5年)を前提とした人材確保・育成計画が必要です。

特定技能「鉄道」分野の業務区分

鉄道分野は、国土交通省が所管し、主に車両整備、軌道整備、電気設備整備、運輸係員、車両製造の5つの区分で構成されます。特定技能外国人が従事する業務は、各区分に定められた主たる業務に限られますが、その主たる業務に付随する関連業務を行うことは差し支えありません。

車両整備区分

概要鉄道車両の安全かつ安定的な運行を支えるための検査、修繕等を行う業務区分です。
主な業務列車検査、定期検査、臨時検査といった各種検査
車両の修繕、空気装置検修・解ぎ装、改造工事、構内入換作業
駅派出対応、工場設備取扱い
関連業務在庫・予備品の管理
定期・臨時清掃業務等

軌道整備区分

概要 線路等の軌道施設に関する保守・点検業務を通じて、安全な運行基盤を確保する業務区分です。
主な業務軌道検測作業、レール交換作業、まくらぎ交換作業
バラストを取り扱う作業、保安設備を取り扱う作業等
軌道等の新設、改良、修繕に係る作業・検査業務
関連業務主たる業務に関連する事務作業
作業場所の整理整頓や清掃等

電気設備整備区分

概要鉄道運行に必要な信号、通信、変電施設等の電気設備全般の保守・修繕業務を担う業務区分です。
主な業務電路設備、変電所等設備、電気機器等設備の保守・修繕
信号保安設備、保安通信設備、踏切保安設備等の新設、改良、修繕に係る作業・検査業務
関連業務主たる業務に関連する事務作業
作業場所の整理整頓や清掃等

運輸係員区分

概要駅構内や運行管理に関する接客・運輸関連業務を担う業務区分です。安全に直結するため、高度な日本語能力と規律遵守が求められます。
主な業務ポイント操作、入換合図
駅設備管理・取扱業務、旅客案内・貨物取扱業務
運行管理業務、車掌業務、運転士業務等
留意事項列車の運転には動力車操縦者運転免許が必要です。
関連業務主たる業務に関連する事務作業
作業場所の整理整頓や清掃等

車両製造区分

概要鉄道車両本体や部品の製造、加工、組立て等に携わる業務区分です。機械加工や電気電子系の技能と関連性が高いです。
主な業務素材加工(金属プレス、鉄工等)、部品組立て、構体組立て
塗装、溶接、ぎ装、台車枠製造、台車組立て
電子機器組立て、電気機器組立て、試験・検査、部品検収・配膳業務等
関連業務主たる業務に関連する事務作業
作業場所の整理整頓や清掃等

特定技能「鉄道」分野は、業務区分が明確であり、即戦力となる外国人材を受け入れる有効な制度です

ただし、制度の細部や運用要領は更新される可能性があり、受入れ企業は最新の公的資料に基づいて採用・支援計画を整備する必要があります。

特に運転業務の除外や在留期間の上限といった制約を踏まえ、短期的な戦力化と長期的な人材育成を並行して考えることが実務上のポイントとなるでしょう。

参考:鉄道分野 | 出入国在留管理庁

特定技能「鉄道」分野の評価試験と技能水準

線路沿いで点検作業を行う鉄道技術者。特定技能「鉄道」分野の安全確認とインフラ保守の現場を示す。

外国人材が特定技能の在留資格を取得するには、関連する技能試験への合格と日本語能力の証明が求められます。

技能水準の要件

特定技能1号の技能水準は、概ね技能検定3級程度に相当すると位置付けられています。試験は区分ごとに定められ、一般に「学科+実技」の構成が基本です。

技能試験は、上で説明した区分ごとに分かれています。

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区分想定される技能水準試験形式備考
車両整備技能検定3級相当学科+実技(部品整備、検査手順等)技能実習2号良好修了者は免除対象となる場合あり。
証明書類の提出が必要。
軌道整備技能検定3級相当学科+実技(軌道点検・交換作業等)区分別の実施主体が試験を運営します。
電気設備整備技能検定3級相当学科+実技(電路・変電設備の保守等)電気系の実務知識が問われる。
運輸係員実務に応じた技能水準学科(業務知識)+実技・適性評価運転業務は除く。
接客や運行補助に関する評価が中心。
車両製造技能検定3級相当学科+実技(加工・組立等)製造系の既存技能検定と関連する場合あり。

※上表は受入れ実務での確認用に簡潔化したものです。正確な試験内容や運営団体は区分ごとの試験実施要領で確認してください。

技能実習2号からの移行(試験免除)について

技能実習2号を良好に修了した者は、区分と条件が合致する場合に特定技能の技能評価試験が免除される場合があります。免除を受けるためには以下のような書類が必要とされます。

  • 技能実習2号の修了を示す公式な記録(実習評価調書等)
  • 必要に応じて関連する技能検定合格証の写し(区分により要件が異なる)
  • 実習実施者または送り出し機関が作成した実績資料

これらが整わない場合、当該者は特定技能の技能試験および日本語試験を受験する必要があります。したがって、受入れ側は募集段階で書類の有無を確認し、必要書類の整備支援を計画しておくべきです。

日本語能力水準の必要性

日本の職場での生活や業務運用における指示伝達の安全性を確保するため、日本語能力水準の合格が必要です。特定技能1号には、国際交流基金日本語基礎テスト、または日本語能力試験(N4以上)の合格が求められています。

N4程度は、基本的な日常会話や生活に必要な情報の理解が可能な水準とされます。しかしながら、安全を重視する鉄道業務においては、業務上、詳細な指示や予期せぬ問題への対応が求められる際、N4の日本語能力では不十分となるケースが想定されます。したがって、企業は、安全運用を徹底するため、N3程度、またはそれ以上の日本語能力を目標とする追加支援を計画的に提供することを推奨します

参考:特定の分野に係る特定技能外国人受入れに関する運用要領-鉄道分野の基準について- |法務省

受入れ企業の要件

認定マークを拡大する虫眼鏡のイメージ。特定技能「鉄道」分野における資格認定や制度審査の象徴。

企業が特定技能「鉄道」分野で外国人を受け入れるためには、以下の要件を満たしていなければなりません。

  1. 業種・事業内容の適合性
    • 受入れ事業者は、鉄道事業法や軌道法に基づく鉄道事業者・軌道経営者、もしくは「鉄道事業・軌道事業に使用する施設・車両の整備、または車両の製造に係る事業」を営む者である必要があります。つまり、業務区分(車両整備、軌道整備、電気設備整備、運輸係員、車両製造)のいずれかを実際に担う事業であることが前提です。
  2. 鉄道分野特定技能協議会への加入
    • 鉄道分野で特定技能外国人を受け入れるには、国土交通省が主宰する「鉄道分野特定技能協議会」の構成員(=加入)が必要です。協議会への加入は在留申請手続きの前提となるため、COE申請等を行う前に加入手続きを済ませることが求められます。
  3. 協議会・行政への協力義務
    • 所属機関は協議会および国土交通省(または委託を受けた者)が行う調査・指導、報告徴収、資料提出、現地調査等に協力する義務があります。これに応じるための体制(窓口担当者の設置、報告書作成のルール等)を事前に整備しておく必要があります。
  4. 支援実施能力(義務的支援の履行)
    • 所属機関は、特定技能1号に対して定められた10項目の義務的支援を確実に実施できる能力を有していることが求められます。自社で実施が困難な場合は登録支援機関へ委託できますが、委託しても最終的な責任は所属機関にあります。委託する場合、その登録支援機関も協議会への加入が必要となる点に注意してください。
  5. 法令順守・雇用条件の適正性
    • 労働基準法や社会保険、賃金支払のルール等、関係法令を遵守していることが条件です。賃金や労働条件が国内労働者と比べて著しく劣後していないか、雇用契約が適正に作成されているか、就業環境が安全に配慮されているかを確認する必要があります。
  6. 事務的な対応能力(書類管理・申請対応)
    • COEや在留資格変更申請に必要な各種書類を整備し、提出期限や電子届出を含めた申請フローを運用できること。具体的には、雇用契約書や賃金根拠書類、支援計画書、技能・日本語の証明書類等を管理・提出できる体制が求められます。

以上の要件は、受け入れの可否に直結します。実務上は、早い段階で社内の担当部署(人事・総務・法務等)と協議し、協議会加入、支援計画の整備、登録支援機関の選定(必要時)を並行して進めることが推奨されます。

参考:鉄道分野における外国人材の受入れ(在留資格「特定技能」) – 国土交通省

特定技能1号外国人材の採用フローと必要書類

会議室の机に積まれた大量の書類。鉄道業界の特定技能制度に関する申請・手続き資料のイメージ。

特定技能外国人の受入れの際、所属機関には複雑な行政手続きと膨大な書類対応が必要となります。コンプライアンスを遵守し、スムーズに在留資格を変更・取得するための要点を詳述します。

特定技能外国人採用の全体フロー

STEP
受入れ要件の確認

まず、自社が特定技能で認められる業務区分(鉄道分野の5区分など)に該当するか、事業所の要件を満たしているかを確認します。事業所の適格性は申請の可否に直結します。

STEP
人材募集・面接

試験合格者や技能実習修了者の中から、特定技能の要件(技能・日本語能力)を満たす人材を選定し、雇用契約に向けた内定を出します。

STEP
雇用契約の締結

外国人本人と雇用契約を結びます。

STEP
支援計画の策定

 後述する10項目の義務的支援計画を策定します(自社または登録支援機関に委託)。

STEP
在留資格申請を行う

在留資格認定証明書交付申請(海外からの新規招聘時)または在留資格変更許可申請(国内在留者採用時)を行います。

STEP
就業開始

在留資格の取得後、外国人材の受入れを開始します。

在留資格認定証明書交付申請とは

在留資格認定証明書(COE:Certificate of Eligibility)交付申請とは、外国にいる人材を日本国内の企業が雇用する際、その外国人が日本での活動内容が法的に定められた在留資格(この場合は特定技能1号)に合致していることを、上陸前に法務省(出入国在留管理庁)から証明してもらうための手続きです

在留資格申請には、「申請人に関する書類」「所属機関に関する書類」「分野に関する書類」の3つの柱に関する書類を準備する必要があります。これらの書類の数と複雑さから、所属機関は高い程度の行政対応能力が求められます。

特に重要な書類としては、以下のようなものが挙げられます。

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必要書類備考
申請人に関する書類在留資格認定証明書交付申請書(所定様式)
パスポートの写し・写真(規格に注意)
履歴書・職務経歴書(翻訳が必要な場合は日本語翻訳を添付)
健康診断書(必要に応じ)
個人情報や資格情報の正確性が申請可否に直結
所属機関に関する書類雇用契約書の写し(日本語)
賃金の根拠となる書類(賃金台帳、就業規則等)
会社概要・登記事項証明書の写し
特定技能外国人支援計画書(義務的支援10項目を明記)
協議会加入証明書(鉄道分野の所属証明)
支援計画書は義務的支援10項目を具体的に記載し、協議会加入は受入れ要件の必須
分野に関する書類特定技能評価試験合格証明書の写し
技能実習2号の良好な修了を示す評価調書等
(免除を主張する場合)技能検定合格証の写し・実習実施状況資料
技能確認ができない場合、在留資格交付は不可。
技能実習経由の場合は免除条件を満たす証明が必要

在留資格申請における書類の不備や虚偽の情報提供は、在留資格の不交付や変更不許可に直結し、事業計画に甚大な影響を及ぼします。そのため、登録支援機関や行政書士等の専門機関へ委託し、正確な書類を準備する方法が、コンプライアンスリスクの観点からも賢明な対応となります。

参考:「鉄道分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」に係る運用要領|法務省

定着を促進するための義務的支援

青とオレンジの紙人形が手をつなぐ輪。鉄道業界における外国人材と日本人の協働・多文化共生を象徴。

特定技能1号外国人を受け入れる企業には、入管法に基づき「支援計画」を作成し、計画に沿った支援を実施する義務があります。これは単に手続き上の要件ではなく、職業生活・日常生活・社会生活を支えることで外国人の定着を高め、事業の継続性を確保するための実務的な戦略と言えるでしょう。

支援は「義務的支援」と呼ばれ、10項目で構成されています。企業が自社で対応できない場合は、国の登録を受けた登録支援機関に全部または一部を委託できます。委託にあたっては、支援の質(外国人が理解できる言語で対応できるか等)を厳しく確認することが重要です。

義務的支援10項目一覧
1. 事前ガイダンス労働条件や活動内容、入国手続き等を理解できる言語で説明します。
雇用契約締結後から在留資格申請前に実施するのが実務上の流れです。
2. 出入国時の送迎入国時および帰国時に空港等から事業所または住居までの送り迎えを行います。
3. 住居確保・生活契約支援住居の手配、銀行口座開設やライフライン契約の補助等を行います。
居室の基準は運用上の原則があり、原則として居室は1人当たり7.5㎡以上を基準とします(技能実習から移行する等の例外規定が関係する場合があります)。
なお、社宅や住居に関して企業が不当に利益を得ることや、過度に高い家賃を設定することは避ける必要があります。
4. 生活オリエンテーションゴミ分別や公共マナー、交通ルールなど、日本での生活に必要な基礎情報を提供します。
5. 公的手続き等への同行住民票登録、健康保険・年金等の手続きへの同行や書類作成の支援を行います。
6. 日本語学習の機会提供日本語教室の案内や教材情報の提供など、日本語能力向上の支援を実施します。
7. 相談・苦情対応職場や生活上の相談・苦情を外国人が理解できる言語で受け、解決に向けて対応します。
8. 地域交流の促進地域行事や自治会参加の支援等を通じ、孤立防止と地域社会への定着を図ります。
9. 転職支援(解雇等の場合)受入側の事情で雇用契約を解除する際は、求職活動のための有給休暇付与や必要な行政手続きの案内を行います。
10. 定期面談と通報支援責任者等が原則3か月に1回以上、外国人本人や上司と面談を行い、問題があれば適切に対応・必要時は関係行政機関へ通報します。
これらの面談や支援の実施記録は保存・届出の対象となります。

登録支援機関を活用するポイント

企業が自社で10項目すべての支援を行うことが困難な場合、国の登録を受けた登録支援機関に支援業務の全部または一部を委託できます

10項目の義務的支援は、所属機関にとって言語対応や時間的なリソース確保という点で大きな問題となり得ます。登録支援機関に委託することで企業は本業に集中しつつ、コンプライアンスを遵守しながら採用計画を効率的に進めることが可能となります。これは費用対効果の高い戦略的な方法といえるでしょう。

委託先を選ぶ際は、以下の点を重視してください。

  • 外国人が理解できる言語で対応できる能力があること
  • 公的手続きへの同行や医療機関との連携実績があること
  • 林業現場は地方が多いため、診療所や役所のサポートを現地で提供できること
  • 委託契約で業務範囲・成果指標・報告頻度を明確に定めること
  • 定期的に業務の実施状況をモニタリングすること

なお、支援を委託したとしても、外国人本人に対する適切な支援を確保する最終責任は所属機関に帰属します。そのため、所属機関は、委託機関からの資料等を基に、支援実施状況を定期的に確認しなければなりません。

参考:登録支援機関について 在留資格 特定技能 | 外務省

鉄道分野でフィリピン人を選ぶべき理由

食卓を囲んで笑顔で過ごす家族。特定技能で働くフィリピン人材の特徴。

特定技能分野におけるフィリピン人材の採用は、彼らが持つ文化的・言語的特性に加え、日本が主導する事業との連携という点で、他の外国人材とは一線を画す戦略的なメリットがあります。

勤勉な労働観とキャリア志向

出稼ぎで家族を養うという一般的な労働観から、多くのフィリピン人が海外での就労に高いモチベーションと責任感を持ち、真面目に仕事に取り組む傾向があります。これは、安全確認が何よりも求められる鉄道分野において、高い安全意識と業務遂行能力を維持するために不可欠な要素と言えるでしょう。

また、フィリピン人はキャリア志向が非常に強く、自己啓発やスキル向上に対して積極的な姿勢を示します。企業が提供する教育やトレーニングプログラムに高い関心を示し、自らの価値を高めるための努力を惜しみません。

高い協調性と日本文化への順応性の高さ

フィリピンでは大家族が普通であるため、自然と目上の人への敬意や組織に対する従順性が育つと言われています。これは日本の職場や地域社会への早期適応を可能にする大きな強みです。

また、フィリピンは親日的な国として知られており、日本文化への理解や順応性が高いため、受入れ企業側が多文化共生の環境調整を行う上での負担の軽減が期待できます。

高い英語力と言語習得能力

フィリピンでは英語が公用語の一つであるため、多くのフィリピン人が流暢な英語を話します。そのため受け入れの初期段階において、英語資料や研修内容を利用することで、専門技術の習得を加速させることが可能です

また英語に加えて公用語のタガログ語と英語、そして現地語(セブアノ語やイロカノ語など)というふうに、フィリピンでは複数言語を操るのが普通です。そのため多言語の習得も早い傾向が見られ、実際に日本で働く多くのフィリピン人も日本語を上手に操ります。この点は、安全確認が必須となる鉄道分野においても、非常に重要なポイントとなるでしょう。

現場の声から学ぶ!フィリピン人材のメリットと企業が行うべき取り組みとは

線路上で作業車を操作する鉄道作業員。特定技能「鉄道」分野における保守・点検作業の現場を表す。

ではここからはより具体的に、鉄道分野でフィリピン人を受け入れることのメリットを制度面を含めた現場の声から拾い上げ、彼らを活用するために企業が取るべき施策などについて考えてみましょう。

フィリピン鉄道訓練センターの存在

フィリピン鉄道訓練センター(Philippine Railways Institute:PRI)は、JICAや日本の鉄道会社等の支援を受け、フィリピン国内で鉄道技術者の育成を目的に設立された訓練機関です。

PRIでは、日本の安全ガイドラインと行動規範に基づいた「日本式」の訓練が実施されており、実物大の運転シミュレーター等を利用して、日本の技術と安全意識が徹底されています。

この訓練は、日本での安全運用にとって絶対的な必要条件である「規律と安全意識」に関する定性的な安心感を高めるものでもあり、鉄道分野で外国人材の受け入れを検討している企業にとって、フィリピン人を選択する非常に大きなモチベーションとなるでしょう

現在のところ、鉄道分野における特定技能フィリピン人の採用は地方鉄道での整備士の受け入れなどに限られています。しかし、JR東日本でも外国人特定技能労働者の育成プログラムを実施しており、PRIでの訓練をベースにしたフィリピン人材の採用が広まっていくと考えられています。

企業が取り組むべき教育と環境整備とは

外国人材の受入れ事業を成功させるためには、しっかりとした教育と、彼らが安心して働ける環境整備という両輪が重要になります。

初期研修の徹底

PRIで日本式安全ガイドラインを学んでいるとはいえ、日本の鉄道運用現場で求められる「秒単位の正確さ」や厳格な報告体制は、追加的なOJT計画で徹底する必要があります。業務における問題の早期発見、早期対応方法を研修の核とすべきでしょう。

明確なキャリアパスの明示

フィリピン人材はキャリア志向が強く、技能向上に積極的です。追加技能の習得計画を具体的に明示し、彼らのモチベーションを維持することが、長期定着の鍵となります。育成に時間と技術を要する人材を外部から獲得する際、初期の支援や研修計画はコストではなく、長期的な事業運用を支える「技術投資」と見なすべきです。

言語対応と技術指導

N4以上の日本語能力は最低ラインですが、専門的な整備業務の際、安全に関わる指示の誤解を避けるため、英語等も活用した多言語対応の資料や指導方法を準備すべきです。車両の部品等の専門用語対応が、特に安全性を高める上で重要となります。

多文化理解と交流促進

義務的支援の一つである日本人との交流促進は、異文化間の摩擦を減らすために不可欠です。地域行事への参加支援等を通じ、外国人本人だけでなく、現場の日本人係員の多文化理解も深める必要があります。現場での相互理解が進むことで、より円滑な業務運用が可能となります。

生活基盤の安定のための支援

住居の確保、金融機関等の契約支援を丁寧に行い、生活基盤の問題を解消することで、外国人本人が業務に集中できる環境を整えます。特に、所属機関のメール対応窓口等を多言語化し、緊急時の対応を明確化することも有効な方法です。企業が提供する支援の質は、外国人労働者間での評価(口コミ情報)を通じて、今後の人材獲得力に直接影響を及ぼすため、採用計画の一部として捉える必要があります。

参考:
フィリピン鉄道訓練センター設立・運営 能力強化支援プロジェクト|JICA
フィリピン「鉄道員育成施設」日本が支援する背景 地下鉄の基地に設置「日本式」で安全意識浸透 | 海外 | 東洋経済オンライン

特定技能フィリピン人受入れに必要なDMWと送り出し機関

地図上で赤いピンが刺さったフィリピン。特定技能「鉄道」分野で注目されるフィリピン人材の出身地を示す。

特定技能フィリピン人材の採用には、日本側の要件・手続きだけではなく、フィリピン政府側の組織(DMW/旧POEA)と、現地の送り出し機関についての理解が不可欠です。

DMWと送り出しルールの要点

フィリピンは国民の多くが海外で働いているという現状があり、労働者を保護するため、DMW(海外労働者省)という行政機関が海外への送出を厳格に管理・監督しています。そのDMWの窓口として各国に設置されているのが、MWO(移住労働者事務所)です。MWOは企業が作成した雇用契約や求人票がフィリピンの労働基準に合致しているかを認証(Verification)します。MWOの認証を経ることで、フィリピン政府から正式に採用計画が承認されます。

フィリピンではエージェントを介さない企業による直接雇用は原則禁止されており、DMW認定の送り出し機関を通じた手続きが必要となります。

そのため日本の企業がフィリピンから特定技能人材を直接雇用しようとする場合、まずはDMW認定の送り出し機関と人材募集・雇用に関する取り決めを締結し、その上でMWOへの申請手続きを行い、認証を得る必要があります

またDMWは不当な手数料徴収を禁じる通達を出しており、紹介料や手数料の取り扱いには法的なルールが適用されます。とはいえ、実務上は運用に差が出ており、企業側が想定外の費用負担や説明不足に直面するケースが散見されます。企業側は契約時に費用負担の明細を契約書で明確化してください。

送り出し機関選定の重要性

フィリピン人採用における最大の実務リスクの一つは、送り出し機関の選択です。なぜなら、一部には不当な費用請求や書類偽造、質の低い日本語教育といった悪質な運営を行う機関が存在するからです

そうした事案は、労働者本人に深刻な被害をもたらすだけでなく、受け入れ企業にも失踪・不法就労・労務トラブルといった重大な負担を引き起こします。

したがって、送り出し機関の選定は「人が来るかどうか」だけで判断してはいけません。倫理性・透明性・法令順守を含めた総合的な適性評価が不可欠です。

採用ステップ

STEP
送り出し機関と契約

DMWに認定された現地の送り出し機関を通じて契約を締結します。

STEP
MWO による認証(Verification)

送り出し機関を通じて、求人票(Job Order)および雇用契約案をMWOに提出し、フィリピン側の基準に沿うか確認を受けます。必要があれば契約内容の修正や追加書類の提出を求められます。

STEP
候補者との雇用契約締結

MWOの認証で必要条件が満たされたことを確認したうえで、候補者と正式な雇用契約を最終確定(署名)します。実務上はこの確定をもって日本側の在留手続きを進めるのが安全です。

STEP
COE(在留資格認定証明書)の申請

日本側での在留資格申請に必要な書類を揃え、出入国在留管理庁に申請します。COE の有効期限に注意し、フィリピン側手続きを完了させた上で申請することが望ましいです。

STEP
OEC(海外就労認定証)の取得

OECはフィリピン出国時に提示が求められる証明書です。これを取得することで、合法的に出国・入国が可能となります。日本在住者でも、場合によっては OEC 取得が必要になることがあります。

日本在住のフィリピン人材を雇用する場合の注意点

すでに日本国内に在留しているフィリピン人材を特定技能として雇用する場合でも、フィリピン政府の規定に基づき、MWOによる認証手続きが原則として必要となります

これは、たとえ日本国内で在留資格の変更を行うケースでも、フィリピン政府の視点からは「海外就労扱い」となるためです。MWOを通じた認証手続きとOECの取得を怠り、外国人が一時的にフィリピンへ帰国した場合、出国時にOECの提示を求められて提示できなければ、日本への再入国が不可能になるという深刻な事態が発生する可能性があります。

受入れ企業は、この重大なリスクを理解し、日本在住者であっても、DMW認定の人材紹介会社を経由した認証手続きを確実に行う必要があります。

参考:DMW

送り出しカフェの活用

送り出しカフェ公式サイトトップ画面

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まとめ:鉄道分野でのと特定技能フィリピン人材採用を成功させるために

緩やかにカーブする鉄道の線路。鉄道保守や特定技能「鉄道」分野におけるインフラ整備の象徴的イメージ。

特定技能制度は、人手不足に直面する日本の鉄道産業にとって、非常に重要な人材受入れの手段です。特にフィリピン人材は、高い職業倫理、協調性、そしてPRI等による日本式技術・安全教育の基盤により、鉄道分野における理想的な特定技能外国人となり得る可能性が高いと言えるでしょう。

一方で、採用からビザ申請、教育、定着支援に至るまでの各プロセスは複雑であり、特に中小事業者が単独で対応するのは容易ではありません。さらにフィリピン人を受け入れるためのMWO関連の手続き、信頼できる送り出し機関の選定などにも、専門家の支援を受けることは必須と言えるでしょう。

私たち「送り出しカフェ」は、フィリピン人材採用のために、信頼できる送り出し機関との連携体制を構築し、採用・在留資格手続き、日本語教育、生活支援までを一貫してサポートしています

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この記事を書いた人

三木 雅史(Masafumi Miki) 株式会社E-MAN会長
1973年兵庫県生まれ / 慶応義塾大学法学部法学科卒
・25歳で起業 / デジタルガレージ / 電通の孫請でシステム開発
・web通販事業を手掛ける
・2006年にオンライン英会話を日本で初めて事業化
・2019年外国人の日本語教育を簡単、安価にするため
 日本語eラーニングシステムを開発、1万人超の外国人が日々学習中

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