日本の「ものづくり」を支える製造現場は、深刻な人手不足という大きな課題に直面しています。技術の継承や現場の生産性維持は、多くの企業にとって喫緊の経営課題と言えるでしょう。 このような状況下で、高い技能を持つ外国人材の確保・育成は、企業の競争力を維持・向上させる上で極めて重要な戦略となっています。
その解決策となるのが、外国人材の活用です。 すでに多くの企業が「特定技能1号」や「技能実習」の制度を利用し、外国人材の受入れを行っています。しかし、特定技能1号には通算5年という在留期間の上限があるため、将来的に現場の中核を担う人材として期待していたとしても、5年で帰国せざるを得ないのは、企業にとって大きな損失です。
そこで注目されているのが、「特定技能2号」の在留資格です。
特定技能2号は、熟練した技能を持つ外国人材が、家族帯同の上で、在留期間の更新に上限なく日本で活躍できる道を開くものです。
しかし、2024年に制度変更があったばかりで、

・1号と2号は何が違うのか?
・製造業分野で2号人材を受入れるには、具体的に何をすれば良いのか?
といった疑問をお持ちの企業担当者の方も多いのではないでしょうか。
この記事では、工業製品製造業分野における特定技能2号に焦点を当て、その概要、対象となる業務区分、外国人材が満たすべき要件、そして企業側が準備すべきことについて、最新の情報を基に網羅的かつ具体的に解説します。 優秀な外国人材確保のために、ぜひ参考になさってください。
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特定技能制度の概要と2号の重要性


特定技能制度は、国内での人材確保が困難な状況にある産業分野において、一定の専門性・技能を有する外国人材の受入れを目的として創設された在留資格です。
1号と2号の違い
特定技能制度は「1号」と「2号」の2つの在留資格があり、それぞれ受入れ分野や要件が異なります。
| 特定技能1号 | |
|---|---|
| 概要 | 「特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人」向けの在留資格 |
| 受入れ対象分野 | 介護、ビルクリーニング、工業製品製造業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業、自動車運送業、鉄道、林業、木材産業の16分野 |
| 在留期間 | 通算で上限5年まで |
| 家族帯同 | 不可 |
| 要件 | 対象分野ごとに定められた「特定技能1号評価試験」の合格と、日本語能力の証明(日本語能力試験(JLPT)N4以上)が必要。 同一分野における技能実習2号を良好に修了していれば、これらの試験が免除されることがある。 |
| 特定技能2号 | |
|---|---|
| 概要 | 「特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人」向けの在留資格 |
| 受入れ対象分野 | ビルクリーニング、工業製品製造業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業の11分野 |
| 在留期間 | 上限無し |
| 家族帯同 | 条件を満たせば、家族(配偶者と子)の帯同が認められる |
| 要件 | 対象分野ごとに定められた「特定技能2号評価試験」の合格と、一定期間の実務経験など(分野ごとに異なる) |
このように、特定技能2号は1号よりも高い技能水準を証明することで移行できる上位資格と位置づけられています。
最大の違いは、在留期間の更新に上限がない点です。これにより、外国人は長期的なキャリア形成が可能となり、企業側も熟練した人材を永続的に雇用できます。 さらに、要件を満たせば配偶者や子の帯同(家族呼び寄せ)も可能となります。
つまり1号が「即戦力」としての労働力を期待されるのに対し、2号は「現場のリーダー」や「高度技能者」としての活躍が期待される形となります。


特定技能2号が工業製品製造業分野で注目される理由
工業製品製造業分野の現場では、単なる労働力の確保に留まらず、高度な技術の継承や品質管理、工程改善といった中核業務を担える人材が不可欠です。 しかし、ご存知の通り、国内の若年層人口の減少に伴い、こうした中核人材の確保は年々難しさを増しています。
ここで特定技能2号が持つ意味が大きくなります。 特定技能1号や技能実習制度を通じて日本の製造現場で経験を積み、技能を磨いた外国人が、2号を取得することで、在留期間の制約なく、その能力を最大限に発揮し続けることが可能になるからです。
企業にとって、時間とコストをかけて育成した優秀な人材が、「在留期間の上限(5年)」という理由だけで帰国してしまう事態は、大きな損失にほかなりません。 特定技能2号は、この「5年の壁」を取り払い、企業が戦略的に外国人材を育成し、現場の核となる人材として長期的に雇用し続けるための、いわば「切り札」となる制度なのです。
製造業分野における特定技能制度の変遷
特定技能の工業製品製造業分野に関する制度は、近年大きく変動してきました。その流れを簡単にまとめておきます。
従来、経済産業省の管轄分野は「素形材産業分野」「産業機械製造業分野」「電気・電子情報関連産業分野」の3つに分かれていました。これらの分野は業務内容が重複する部分も多く、現場の実態と乖離があるとの指摘がありました。経済産業省は令和4年5月25日付の公表をもって運用上これらを整理し、「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野」という統合した扱いにしました。
2023年6月9日の閣議決定により、これまで特定技能2号の対象が限定されていた分野(例:建設、造船等)から範囲を拡大し、統合された製造業分野を含む複数分野が新たに2号の対象に加えられることが決定されました。これにより、製造現場における外国人材の長期的なキャリアパスの整備が進められました。
2024年3月、制度のさらなる実態反映のため、分野の名称が「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野」から、より分かりやすい「工業製品製造業分野」へと正式に変更されました。 同時に、特定技能1号の対象業務区分として、新たに「紙器・段ボール箱製造」「コンクリート製品製造」「縫製」など7区分が追加され、受入れ可能な業種の範囲が大きく拡大しました。
これらの変更は、日本の製造業がより広範な業種で、かつ長期的に外国人材を活用できるようにするための重要なステップです。企業は制度の内容を理解したうえで、外国人材の活用を検討することが求められています。


工業製品製造業分野における特定技能2号の対象業務区分


特定技能制度においては、外国人材がどの業務に就けるかが明確に定められています。
| 特定技能1号の対象区分 | 機械金属加工 電気電子機器組立て 金属表面処理 紙器・段ボール箱製造 コンクリート製品製造 RPF製造 陶磁器製品製造 印刷・製本 紡織製品製造 縫製 の全10区分 |
| 特定技能2号の対象区分 | 機械金属加工 電気電子機器組立て 金属表面処理 |
特定技能1号の業務区分は上記10区分ありますが、2025年11月現在、特定技能2号へ移行できる業務区分は、上で示した3区分に限定されています。
そのため企業が2号人材の受入れ・育成を検討する際は、自社で雇用している(または雇用しようとしている)1号人材が、この2号移行可能な3区分のいずれかに従事しているかを確認する必要があります。
工業製品製造業分野における特定技能2号の対象職種
特定技能2号の対象区分である機械金属加工、電気電子機器組立て、金属表面処理のそれぞれにおいても、対象となる職種が定められています。
機械金属加工区分
複数の技能者を指導しながら、素形材製品や産業機械等の製造工程の作業に従事し、工程を管理する。
| 主な業務 | 鋳造 鍛造 ダイカスト 機械加工 金属プレス加工 鉄工 工場板金 仕上げ プラスチック成形 機械検査 機械保全 電気機器組立て 塗装 溶接 工業包装 強化プラスチック成形 金属熱処理業 |
| 関連業務 | 原材料・部品の調達・搬送作業 各職種の前後工程作業 クレーン・フォークリフト等運転作業 清掃・保守管理作業 |
電気電子機器組立て区分
複数の技能者を指導しながら、電気電子機器等の製造工程、組立工程の作業に従事し、工程を管理する。
| 主な業務 | 機械加工 仕上げ プラスチック成形 プリント配線板製造 電子機器組立て 電気機器組立て 機械検査 機械保全 工業包装 強化プラスチック成形 |
| 関連業務 | 原材料・部品の調達・搬送作業 各職種の前後工程作業 クレーン・フォークリフト等運転作業 清掃・保守管理作業 |
金属表面処理区分
複数の技能者を指導しながら、表面処理等の作業に従事し、工程を管理する。
| 主な業務 | めっき アルミニウム陽極酸化処理 |
| 関連業務 | 原材料・部品の調達・搬送作業 各職種の前後工程作業 クレーン・フォークリフト等運転作業 清掃・保守管理作業 |
このように、特定技能2号人材は複数の技能者の指導、工程の管理を行いながら業務にあたります。つまり、2号人材は単なる作業者ではなく、現場のリーダー、管理者としての役割を担うことが期待されているのです。現場全体のマネジメントを担う人材として、また企業の成長を支える貴重な存在と見なすことが重要です。
参考:特定技能2号の各分野の仕事内容(Job Description) | 出入国在留管理庁


工業製品製造業分野における特定技能2号の取得要件


特定技能2号は「熟練した技能」を持つ人材のための在留資格です。したがって、希望すれば誰でも取得できるわけではなく、外国人材本人が満たすべき厳格な要件が定められています。
必要な実務経験と技能評価
工業製品製造業分野で特定技能2号の在留資格を取得するためには、外国人材は以下の要件を満たさなければなりません。
| 1. 実務経験 | 「複数の作業者を指導しながら作業を遂行し、工程を管理する者(管理者・監督者レベル)」としての実務経験が必要です。 多くの運用では、特定技能1号の業務区分(前述の3区分のいずれか)で、通算3年以上の実務経験が目安とされています。 |
| 2. 技能試験 | 後述する「製造分野特定技能2号評価試験」および「ビジネス・キャリア検定3級(生産管理分野)」の両方に合格する必要があります。 |
重要なのは、単に一作業員として長年従事しただけではなく、例えば工程の一部を任され、他の1号外国人や技能実習生、あるいは日本人の若手作業員に対して、指導や安全管理を行った経験が評価の対象となる点です。
企業側は、1号で雇用している段階から、将来の2号移行を見据え、こうした「実務経験」を積ませるようなキャリアパスを整備することが望ましいでしょう。
評価試験の概要
特定技能2号の取得には、2つの試験に合格しなければなりません。
製造分野特定技能2号評価試験
この試験は、特定技能1号で求められる「相当程度の技能」を大きく上回る、「熟練した技能」を証明するために行われます。
| 試験区分 | 前述の通り、2号移行が可能な 「機械金属加工区分」 「電気電子機器組立て区分」 「金属表面処理区分」 の3区分で実施されます。 |
| 試験内容 | 学科試験と実技試験で構成されます。 学科試験では、専門知識、工程管理、品質管理、安全衛生管理、作業指導など、管理者・監督者として必要な知識が問われます。 実技試験では、高度な技能(例:複雑な図面に基づく組立て、難易度の高い溶接、高度な機械保全作業)や、他者への指導能力が評価されます。 |
| 実施主体 | 業務区分ごとに関連する業界団体や指定試験機関が試験を実施します。 |
ビジネス・キャリア検定3級
工業製品製造業分野の2号取得において、見落としてはならないのが、技能試験に加えて「ビジネス・キャリア検定(3級)」の合格も必要である点です。
| 対象 | 中央職業能力開発協会(JAVADA)が実施する公的職業資格試験です。 |
| 必要な区分 | 「生産管理分野」における「生産管理プランニング」または「生産管理オペレーション」のいずれかの区分(3級)に合格する必要があります。 |
| 目的 | 現場の技能だけでなく、生産計画、工程管理、品質管理、原価管理といった、管理者・監督者(フォアマン)に求められる「管理」の知識を有していることを証明するために課されます。 |
参考:ビジキャリ – 特定技能2号の在留資格取得のための受験に関するQ&A|JAVADA
企業担当者としては、これらの試験情報を正確に把握し、受験者の受験手続の支援や、必要に応じて試験対策の資料提供、学習支援(特に日本語での管理用語の学習)を行うことが、人材育成の鍵となります。
日本語能力要件
特定技能1号の取得には、原則として日本語試験(JLPT N4等)の合格が必要である一方で、特定技能2号の取得要件においては、原則として日本語能力試験(JLPT N4など)の合格証明書の提出は不要とされています。
これは、2号に求められる技能試験自体が日本語で行われ、現場での指示・指導に必要な日本語能力もすでに有していることが前提されているためです。
しかしこのことは、2号の対象人材が必要な日本語を有していることと同義でないことはもちろんです。試験の合格のためには漢字の読み書きや専門用語の理解も含めた、相当程度の日本語能力が求められます。
また2号人材には「複数の作業員への指示・指導」や「安全管理」といった、管理者・監督者としての役割が期待されます。これらの業務を遂行するためには、現場の日本人スタッフや他の外国人作業員と、口頭及び(作業指示書や報告書などの)書面で、正確なコミュニケーションが取れる日本語能力が不可欠です。
そのため制度上は日本語試験が免除されるとしても、企業には対象人材に対して継続的な日本語学習の機会を提供し、現場の管理職やリーダーとしてふさわしい日本語コミュニケーション能力を持てるようなサポートが求められています。
技能実習からの移行ルート
技能実習を良好に修了した者は、特定技能1号の取得に必要な技能試験と日本語試験が免除されるため、スムーズな移行が可能です(※ただし、従事しようとする業務が技能実習の職種・作業と関連していることが前提)。
そして、この特定技能1号を経由して、さらに特定技能2号を目指す道筋が確立されています。 特に、技能実習で「機械加工」「溶接」「電気機器組立て」といった工業製品製造業分野に関連する職種を経験した人材は、そのまま特定技能1号(工業製品製造業分野)の「機械金属加工」や「電気電子機器組立て」区分に移行しやすいと言えます。
育成就労制度への移行
現行の「技能実習制度」は廃止され、新たに創設された「育成就労制度」に移行されることになります(2027年頃までを予定)。
この新制度は、従来の技能実習が抱えていた課題を解消し、「人材育成」と「人材確保」を両立させることを目的としています。 主なポイントは以下の通りです。
- 育成と確保の明確化
育成就労の期間(原則3年)で、外国人材を特定技能1号のレベルまで育成することが制度の目的となります。
- 特定技能へのスムーズな移行
育成就労を修了した者は、特定技能1号へスムーズに移行することが前提の設計となります。
- 転籍の緩和
技能実習では原則不可能だった転籍(転職)が、同一業務区分内であれば、一定の要件(例:1年以上の就労、日本語能力、技能試験の合格状況など)を満たせば可能になります。
工業製品製造業分野も、この育成就労制度の対象分野となる見込みです。 将来的には、「育成就労(3年)→ 特定技能1号(最長5年)→ 特定技能2号(無期限)」という流れが、外国人材のキャリアパスの主流となることが期待されています。
自社で技能実習生を受入れている企業は、現行制度での1号移行を進めつつ、今後は育成就労制度へどのように対応し、育成した人材を確実に特定技能1号、そして2号へとステップアップさせていくか、長期的な人事戦略を練ることが、優秀な人材の長期確保に直結すると言えるでしょう。


企業側の受入れ要件


外国人材側が試験合格などの要件を満たすと同時に、受入れ機関である企業側にも、整えるべき体制や遵守すべき基準が定められています。
企業の受入れ体制
特定技能外国人を雇用する企業(特定技能所属機関)は、外国人が日本で安定的かつ円滑に活動できるよう、職業生活上、日常生活上、または社会生活上の支援を行うことが義務付けられています。
この支援を実施するために作成するのが「支援計画」です。 特定技能1号の場合、この支援計画の策定・実施は必須です。
一方、特定技能2号の外国人材については、受入れ企業(または登録支援機関)による支援計画の策定・実施は、法律上「任意」とされています。 これは、2号人材は既に日本での生活や業務に十分慣れており、1号のような手厚い支援は不要である、という考え方に基づいています。
とはいえ、これはあくまで「法律上の義務がない」という話です。 例えば、2号になって初めて家族(配偶者や子)を呼び寄せる場合、その家族は日本の生活に慣れていません。住居の確保、行政手続き(住民登録、国民健康保険)、子どもの学校探しなど、1号の時とは異なる形の支援が必要となる場面が想定されます。
また、在留資格の更新手続き自体は、1号であろうと2号であろうと定期的に発生します。 企業としては、法律上の義務はなくても、こうした生活上・手続き上のサポートを必要に応じて提供する体制を整えておくことが、優秀な人材に長く活躍してもらうための「信頼関係」の構築に繋がります。
雇用契約のポイント
特定技能外国人を雇用する際は、当然ながら日本の労働基準法、最低賃金法、社会保険、労働安全衛生法などの法令が全て適用されます。 これらに加え、特定技能制度特有の要件として、「報酬額」に関する規定があります。
特定技能外国人(1号・2号共通)の報酬額は、「日本人が同一の業務に従事する場合の報酬の額と同等以上」でなければならない、と定められています。 「日本人と同等以上」とは、単に最低賃金をクリアしていれば良いという意味ではありません。 自社に、特定技能外国人と同じ業務(例:NC旋盤の管理者、溶接の指導員)に従事している日本人の従業員がいる場合、その日本人の賃金台帳や給与規程と比較し、同等以上の水準であることを客観的に説明できなければなりません。
もし比較対象となる日本人がいない場合でも、近隣の同業他社で同様の業務に従事する日本人の一般的な賃金水準(例:ハローワークの求人情報など)を参考に、不当に低い金額設定になっていないことを示す必要があります。
特定技能2号は「熟練した技能(管理者レベル)」を持つ人材です。 したがって、その報酬は、1号人材や若手の日本人従業員よりも高く設定されるのが自然です。企業は、2号人材の技能レベルや、現場で担う「指導・監督」といった役割に見合った、公正な賃金テーブルを整備しなければなりません。 この報酬額は、在留資格の申請時や更新時に、出入国在留管理庁(入管)から厳しくチェックされる項目の一つです。
協議会への加入
工業製品製造業分野で特定技能外国人(1号・2号)を受け入れる企業は、「製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会」への加入が必要でした。
しかしこれからは新設された「一般社団法人工業製品製造技能人材機構(JAIM)」への加入が求められます。
つまりすでに特定技能1号人材受入れのために協議会に加入済みであっても、さらに2号人材などを受入れるためには、JAIMへ加入しなければなりません。未加入のまま在留資格申請を進めると、書類不備や手続き遅延のリスクがあるため、担当者は忘れずに加入手続きを行ってください。
登録支援機関の利用と役割
特定技能1号の受入れにおいて、自社で「支援計画」の全てを適切に実施するのが難しい企業は、出入国在留管理庁長官の登録を受けた「登録支援機関」に支援業務の全部または一部を委託することができます。
前述の通り、特定技能2号では支援計画の実施が任意となるため、登録支援機関の利用も必須ではありません。
しかし、多くの企業(特に中小企業)にとって、外国人の在留資格に関する複雑な申請書類の作成・管理や、法改正のキャッチアップ、あるいは前述したような家族帯同時の生活サポートなどを全て自社で担うのは、依然として大きな負担です。
登録支援機関は、こうした入管への申請取次や、2号移行のための試験情報の提供、あるいは家族の生活サポートなど、企業の実情に応じた多様なサービスを提供しています。
法令遵守と適切なサポートの実施のためにも、支援機関の活用をおすすめします。
参考:登録支援機関(Registered Support Organization) | 出入国在留管理庁


申請に必要な書類と手続きの流れ
特定技能1号から2号へ在留資格を変更する場合、外国人本人が地方出入国在留管理局に対し、「在留資格変更許可申請」を行う必要があります。
企業側が準備・作成する主な書類の一覧は以下の通りです。
| 1. 特定技能所属機関(企業)に関する書類 | 登記事項証明書、直近の決算書類(貸借対照表・損益計算書)の写し 労働保険、社会保険、税の納付に関する証明書 工業製品製造業分野の協議会(JAIM等)の構成員であることの証明書 |
| 2. 雇用に関する書類 | 特定技能雇用契約書の写し 雇用条件書の写し(賃金規定など) 日本人と同等以上の報酬であることを説明する資料(比較対象の日本人の賃金台帳など) |
| 3. 外国人材の技能を証明する書類 | ① 製造分野特定技能2号評価試験(該当区分)の合格証明書 ② ビジネス・キャリア検定3級(生産管理分野)の合格証明書 (該当する場合)実務経験を証明する書類(※企業が発行する職務経歴書や推薦状など) |
| 4. その他 | 申請人(外国人)の住民票 パスポート 在留カード 等 |
特に重要なのが「3. 技能を証明する書類」です。企業は、外国人本人が2つの異なる試験を確実に受験し、合格証明書を取得できるよう、情報提供や日程調整の面で支援する必要があります。
また、「2. 雇用に関する書類」では、2号人材にふさわしい賃金額(1号の時よりも昇給していることが通常)と、職務内容(管理者・監督者としての業務)が明記された雇用契約書を、適切に整備し直す必要があります。
これらの書類を揃え、管轄の入管に申請します。審査期間は数週間から数ヶ月かかる場合があるため、在留期限(1号の期限)が切れる前に、余裕を持って申請準備を進めることが重要です。
製造業分野で特定技能フィリピン人を採用するメリット


特定技能人材の中でも、フィリピン人はその国民性や文化的背景から、日本の製造業と非常に高い親和性を持つと考えられています。その理由について、考察します。
1. 高いホスピタリティと協調性
フィリピン人は「おもてなし」の精神(ホスピタリティ)が非常に豊かな国民性で知られています。明るく、人懐こく、他人を助けることに喜びを感じる文化があります。 この特性は、製造現場におけるチームワークにおいて強力な潤滑油となります。現場の雰囲気を明るくするだけでなく、他の従業員(日本人・外国人問わず)と積極的にコミュニケーションを取り、協力して作業を進める協調性が期待できます。
2. 優れた適応力と学習意欲
フィリピン人は、歴史的・地理的背景から多様な文化を受け入れてきたため、新しい環境への適応力が非常に高いとされています。 また、家族を支えるために海外で働くことへの意識が高く、仕事に対する真面目さと、技能を習得しようとする学習意欲は非常に旺盛です。製造業の現場で求められる新しい技術や、複雑な作業手順、そして安全ルールに対しても、真摯に学ぶ姿勢が期待できるでしょう。
3. 高い英語能力とコミュニケーションの円滑さ
フィリピンの公用語の一つは英語です。幼少期から英語教育を受けているため、非英語圏の外国人材と比較して、極めて高い英語能力を持つ人が多いのが最大の特徴です。 製造現場の作業指示書やマニュアル、安全標識などに英語表記を併記することで、コミュニケーションの齟齬を劇的に減らすことが可能です。また、現場の管理者や指導者が日本語での指導に困難を感じる場合でも、英語を通じて正確な指示や教育を行える可能性が広がることは、企業にとって大きなメリットとなります。
4. ポジティブなメンタリティと定着率
フィリピン人は、困難な状況でも笑顔を絶やさないポジティブなメンタリティ(「なんとかなるさ」という楽観主義)を持っていると言われます。 もちろん、仕事に対する責任感は別ですが、現場での小さなトラブルや人間関係のストレスに対し、過度に思い詰めることなく柔軟に対応できる傾向があります。こうした精神的なタフさは、異国の地で長期的に就労する上で非常に重要であり、企業の定着率向上にも寄与する可能性があります。
もちろん個人差はありますが、これらの特性は、製造業の分野で長期的に日本で活躍する人材としても、非常に重要な素養と言えるでしょう。




現場の声から学ぶ!製造業で特定技能フィリピン人を受入れるメリットと企業が取るべき対策とは


では実際に、製造業で特定技能フィリピン人を受け入れている企業の事例から、彼らを採用するメリットと、企業として行うべき取り組みなどについて考えてみましょう。
有限会社光成工業の事例
岩手県の光成工業では、技能実習を修了したフィリピン人材を特定技能として継続雇用しています。彼らは主に溶接や塗装などの工程を担当。長年の経験を積んだ日本人職人に並ぶ技術を発揮しています。
同社では日本語教室を週3回開催し、語学面での成長を支援。検定合格者には報奨金も支給しています。さらに、生活面では銀行口座の開設や自治体手続きに社員が同行し、手厚い支援体制を築いています。
注目すべきは、外国人従業員の存在が日本人従業員にも好影響を与えている点です。従来は「資格がなくても腕があればよい」と考える社員が多かったものの、外国人従業員の試験対策をきっかけに、自ら資格試験を受ける社員が増加。双方が切磋琢磨し、新たな知識や技術を習得する好循環が生まれています。
現場では、外国人材を「会社の大事な一員」として扱い、模範職人に授与する”職人半纏”も日本人と同様に提供。職場における対等な関係づくりが、信頼と高い定着率を生んでいます。
株式会社シラカワの事例
岐阜県のシラカワでは、従業員140人中60人以上が外国人。その多くがフィリピン出身の特定技能人材です。彼らはアルミダイカストや板金加工などに従事し、一定の技能を持った人材は「班長」や「リーダー」に登用されています。
同社の特長は、技能実習から特定技能への円滑な移行が可能なことです。実習期間中に日本の作業基準や職場文化を理解しているため、即戦力として活躍できる点が大きな強みです。また、特定技能者を監督者ポジションに配置することで、次世代リーダーの育成にもつながっています。
同社は月2~3回の日本語教室を実施。さらに作業手順書や安全掲示物の多言語化を進め、言葉の壁を下げています。役所の手続きや住まい探しにも職員が同行するなど、生活面でも支援を徹底しています。中には日本で家庭を築き、地域に根付いて暮らす社員も増えています。
美濃工業株式会社の事例
中津川市の美濃工業では、759人の従業員のうち179人が外国籍。その中核を成すのがフィリピンやタイから来た特定技能1号の人材です。
特定技能外国人材は、生産要員レベルでは正社員に次ぐ技能水準を持ち、技能実習生時代に比べ格段に生産性が向上しています。彼らはダイカスト工程に加え、前後工程や検査業務まで担う多能工として活躍。さらに、技能実習生への指導や生活面でのフォローも行っており、後輩の定着・活躍に大きく貢献しています。
また、作業効率向上や改善提案にも積極的です。常に問題意識を持って業務に取り組み、改善提案書を提出する社員も多いとのことです。こうした主体的な姿勢が、現場全体の活性化につながっています。
社内イベントや懇親会など交流の機会も多く、外国人社員自身が改善提案を行うなど、組織への主体的な関与が進んでいます。「日本に来る前は不安だったが、今では頼りにされている」「家族のような存在に囲まれて働けている」といった声もあり、会社との信頼関係の深さがうかがえます。
教訓
これらの事例から学べる教訓は、以下の通りです。
- 「人財」として受け入れる姿勢
-
単なる労働力ではなく、企業の一員として尊重する文化が、定着と信頼につながります。
- 明確なキャリアステップの提示
-
技能実習から特定技能1号、将来的には2号への移行まで見据えたプランを示すことが重要です。
- 語学・生活支援の一体化
-
日本語教室の開催や生活インフラ支援を通じて、安心して働ける環境を整えること。
- 現場の信頼醸成と役割付与
-
班長などの役職を任せることで、やりがいと責任感を引き出します。
- 経営者・管理職の関与
-
現場との距離を縮め、経営陣自らが受け入れ方針を示すことで、組織全体の理解と協力が進みます。
フィリピン人労働者の多くは、「家族への仕送り」や「技術の習得」といった強い目的意識を持っています。この意欲を真正面から尊重することが重要です。
経営者や現場監督者が「最近どうだ?」と積極的に声をかける。あるいは、定期的な面談の場を設けるなどして密なコミュニケーションを図る。さらにWi-Fi完備の寮の整備や日本の生活ルールのサポートなど、仕事以外の不安を解消するきめ細やかなケアが、定着率向上と彼らのポテンシャルを引き出すためには欠かせません。
そして何よりも彼らを「大切な仲間」として向かい入れる姿勢こそが、特定技能人材とともに企業が成長を続ける鍵と言えるのではないでしょうか。
フィリピン人受入れに必須のDMW申請と送り出し機関


フィリピン人材を採用するには、日本側の法律だけではなく、フィリピン政府側の組織(DMW/旧POEA)と、現地の送り出し機関についての理解が不可欠です。
DMWと送り出しルールの要点
フィリピンは国民の多くが海外で働いているという現状があり、労働者を保護するため、DMW(海外労働者省)という行政機関が海外への送出を厳格に管理・監督しています。そのDMWの窓口として各国に設置されているのが、MWO(移住労働者事務所)です。
MWOは企業が作成した雇用契約や求人票がフィリピンの労働基準に合致しているかを認証(Verification)します。MWOの認証を経ることで、フィリピン政府から正式に採用計画が承認されます。
フィリピンではエージェントを介さない企業による直接雇用は原則禁止されており、DMW認定の送り出し機関を通じた手続きが必要となります。
そのため日本の企業がフィリピンから人材を雇用する場合、まずはDMW認定の送り出し機関と人材募集・雇用に関する取り決めを締結し、その上でMWOへの申請手続きを行い、認証を得なければなりません。
また送り出し機関に関してDMWは不当な手数料徴収を禁じる通達を出しており、紹介料や手数料の取り扱いには法的なルールが適用されます。とはいえ、実務上は運用に差が出ており、企業側が想定外の費用負担や説明不足に直面するケースが散見されます。企業側は送り出し機関との契約時に費用負担の明細を契約書で明確化してください。
海外雇用許可証の取得
海外雇用許可証(OEC :Overseas Employment Certificate)は、フィリピン人が就労目的で日本へ渡航するために必須の証明書であり、フィリピンを出国する際の空港で提出が求められます。
このOECの申請には、日本側で取得した在留資格認定証明書(COE)や、正式な雇用契約書、技能証明書等の書類が必要となり、DMW/MWOによる厳格な審査を経て発行されます。
ここで重要な点は、日本のビザが発行された後であっても、フィリピン側でOECが取得されていなければ、フィリピン人は出国できないということです。これは、日本側の手続きが完了した後に、渡航直前で採用予定が頓挫する最大のリスク要因となり得ます。企業担当者は、日本の入国管理手続きに注力する中で、送り出し機関やフィリピン人本人に対してOEC取得の進捗情報を常に確認し、管理名簿を作成しておく必要があります。
送り出し機関選定の重要性
フィリピン人採用における最大の実務リスクの一つは、送り出し機関の選択です。なぜなら、一部には不当な費用請求や書類偽造、質の低い日本語教育といった悪質な運営を行う機関が存在するからです。
そうした事案は、労働者本人に深刻な被害をもたらすだけでなく、受け入れ企業にも失踪・不法就労・労務トラブルといった重大な負担を引き起こします。
したがって、送り出し機関の選定は「人が来るかどうか」だけで判断してはいけません。倫理性・透明性・法令順守を含めた総合的な適性評価が不可欠です。
採用ステップ
DMWに認定された現地の送り出し機関を通じて契約を締結します。
送り出し機関を通じて、求人票(Job Order)および雇用契約案をMWOに提出し、フィリピン側の基準に沿うか確認を受けます。必要があれば契約内容の修正や追加書類の提出を求められます。
MWOの認証で必要条件が満たされたことを確認したうえで、候補者と正式な雇用契約を最終確定(署名)します。実務上はこの確定をもって日本側の在留手続きを進めるのが安全です。
日本側での在留資格申請に必要な書類を揃え、出入国在留管理庁に申請します。COE の有効期限に注意し、フィリピン側手続きを完了させた上で申請することが望ましいです。
OECはフィリピン出国時に提示が求められる証明書です。これを取得することで、合法的に出国・入国が可能となります。日本在住者でも、場合によっては OEC 取得が必要になることがあります。
日本在住フィリピン人を雇用する場合:1号から2号移行時の注意点
すでに日本国内に在留している特定技能1号のフィリピン人材を2号に移行して継続雇用する場合でも、MWOによる認証手続きが原則として必要となります。
これは、たとえ日本国内で在留資格の変更(1号→2号)を行うケースでも、フィリピン政府の視点からは「海外就労扱い」となるためです。MWOを通じた認証手続きを取得を怠り、外国人が一時的にフィリピンへ帰国した場合、出国時にOECの提示を求められて提示できなければ、日本への再入国が不可能になるという深刻な事態が発生する可能性があります。
受入れ企業は、この重大なリスクを理解し、日本在住者であっても、DMW認定の人材紹介会社を経由した認証手続きを確実に行う必要があります。
参考:DMW




送り出しカフェの活用


DMWへの申請、送り出し機関の選定などの手続きが必要なフィリピン人材の採用を成功させるには、専門のサポート機関を利用するのが最も効率的かつ効果的です。
送り出しカフェは、フィリピン人労働者の採用を検討している日本企業を対象に、フィリピン現地の送り出し機関の紹介・仲介を行っています。
フィリピン政府のライセンスを持つ正規の送り出し機関と提携しており、年間2,000人を海外に送り出す実績を有するパートナーなど、実績豊富な機関と連携しているのが大きな特徴です。
送り出しカフェ活用のメリット一覧
- 信頼性のある送り出し機関の紹介
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フィリピン政府公認のライセンスを持つ送り出し機関と提携しているため、違法・不透明な業者を避けられる。
- 人材の母集団が大きい
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提携大学・職業訓練校から約7,000人規模の候補者がいるため、必要な職種に合った人材を探しやすい。
- 特定技能16分野に対応
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介護・外食・建設など幅広い業種の求人に対応できる。
- 安心の日本語対応
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日本人スタッフが窓口となるため、言語や文化の違いによる誤解・トラブルを減らせる。
- 採用から入国後までワンストップ支援
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求人票作成、面接調整、ビザ・MWO申請、入国後の定着支援までトータルサポート。
- 手続きの負担軽減
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フィリピン側で必要な複雑な申請書類や手続きを代行・支援してくれる。
- 日本語教育サポート
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採用前から就労後まで継続的に日本語教育を行う体制があり、現場でのミスや離職リスクを軽減できる。
- 費用や採用リスクの低減
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信頼性の低い送り出し機関を選んで失敗するリスクを減らし、スムーズな採用につながる。
送り出しカフェを活用することによって、DMWのルール確認、信頼できる送り出し機関の選定、明確な契約とスケジュール管理などを円滑に行うことができるでしょう。
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まとめ


特定技能2号は、日本の工業製品製造業分野が直面する人手不足と技術継承という二重の課題に対し、非常に有効な解決策となり得る制度です。彼らは熟練した作業員として業務に携わるだけではなく、他従業員への指導・工程管理までを行う、中核となる人材だからです。
特定技能1号から2号へのステップアップは、外国人材本人にとっても、日本でのキャリアアップと生活の安定(長期在留、家族帯同)を実現するという、非常に大きな意味を持ちます。
特定技能2号人材を、企業の継続的な成長に欠かせない重要なピースと捉え、自社の特定技能1号あるいは技能実習生の将来的なキャリアとして、特定技能2号への移行を計画的に支援・設計することは、これからの時代を勝ち抜くための極めて重要な人事戦略となるでしょう。
とはいえ、自社だけでそうした支援の枠組みを作り、実行するのは簡単なことではありません。登録支援機関などの適切なサポートを得ることが、一番の近道と言えます。
さらに特定技能1号のフィリピン人材の採用、また1号から2号への移行の際には、日本側の手続きに加えてフィリピン側のDMW・MWO申請が必要となります。
私たち「送り出しカフェ」は、フィリピン人材採用のために、信頼できる送り出し機関との連携体制を構築し、採用・在留資格手続き、日本語教育、生活支援までを一貫してサポートしています。
フィリピン人材の採用を具体的に検討されている企業様は、ぜひお気軽にご相談ください。
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