送り出し機関とは?国が定める外国人送り出し機関について徹底解説

送り出し機関 とは

企業の人材戦略において、外国人材の採用は重要な選択肢の一つとなっています。特に、グローバル化が進む現代において、多様な能力を持つ外国人材の雇用は、企業の成長と競争力強化に不可欠です。

その際、海外にいる外国人材を日本へ送り出す役割を担う「送り出し機関」の存在は、人材採用の成否を左右する重要な要素となります。

しかし、「送り出し機関とは具体的に何を指すのか?」「国が関わる送り出し機関は、どのような役割を担っているのか?」「外国人材の採用において、どのような点に注意すべきなのか?」といった疑問をお持ちの人事担当者の方も少なくないでしょう。

本記事では、人事担当者の皆様が外国人材の採用をスムーズに進めるために、「送り出し機関とは何か」という基本的な概念から、国がどのように送り出し機関を認定し、管理しているのか、そして外国人材の送出における具体的な業務内容、さらには信頼できる送り出し機関を選ぶためのポイントまでを徹底的に解説いたします

この記事を通じて、送り出し機関に関する深い理解を得ていただき、今後の外国人材採用戦略の一助となれば幸いです。

目次

「送り出し機関」とは?外国人材採用における定義と種類

機関で働く職員

「送り出し機関」とは、外国人採用においてはどんな定義があるか説明します。

また、国の機関や民間の機関それぞれの特徴についても解説します。

一般的な「機関」の意味

まず、「機関」という言葉は、特定の目的や機能を持つ組織や団体のことを指します。

行政機関、研究機関、教育機関など、社会には様々な種類の機関が存在し、それぞれの専門分野で特定の業務を行っています。

外国人材採用における「送り出し機関」の定義

外国人材の採用における「送り出し機関」とは、海外に在住する外国人を日本の企業へ紹介し、雇用を支援する事業者を指します

これらの機関は、単に人材を紹介するだけでなく、技能実習生や特定技能外国人の募集、選考、事前教育、入国手続きの支援、入国後のフォローアップまで、多岐にわたるサービスを提供します。

送り出し機関の分類:国の機関と民間の機関

外国人材の送出に関わる機関は、大きく分けて国の政府が直接管理・運営する公的機関と、国の法令に基づいて許可を得て事業を行う民間の機関があります。

スクロールできます
分類役割
国の機関
(公的機関)
二国間の協力覚書(MOC)に基づいて設立されることが多く、技能実習制度の適正な運営において重要な役割を担っています。これらの機関は、送出国の政府の監督の下、手数料の上限が定められている場合や、情報が公表されている点が特徴です。
民間の機関国の許可を得て事業を行う民間の送り出し機関は、より多様なサービスを提供し、企業のニーズに合わせた人材紹介を行うことが期待されます。ただし、費用やサービス内容は機関によって異なるため、慎重な選定が必要です。

国が定める送り出し機関:二国間取決め(MOC)の意義と現状

国同士の取り決めをイメージした握手

二国間協定(MOC)の概要や特徴、締結国についてなどを解説します。

二国間協定(MOC)とは?

外国人技能実習制度の適正な実施と、技能実習生の保護を目的として、日本の政府は、技能実習生の主要な送出国である外国の政府と二国間取決め(Memorandum of Cooperation:覚書、以下MOC)を締結しています。

このMOCは、技能実習生の募集、送出、受入れ、帰国に至るまでの各段階における両国政府の役割、責任、協力体制などを明確に定めるものです

参考:出入国在留管理庁公式サイト:特定技能に関する二国間の協力覚書

MOC締結の背景と目的

MOCを締結する主な背景には、一部の悪質な送り出し機関や受入れ企業による技能実習生への不当な扱いが過去に発生したことがあります。

MOCの目的は、トラブルを未然に防ぎ、技能実習制度が国際協力と人材育成という本来の趣旨に沿って適切に実施されるようにすることです

MOCにおける送り出し機関の認定プロセス

MOCを締結した国では、送出国の政府が、日本へ技能実習生を送り出す送り出し機関を一定の基準に基づいて認定します。

この認定プロセスでは、送り出し機関の財務状況、業務実績、法令遵守体制、技能実習生に対する保護体制などが厳格に審査されます

認定を受けた機関のみが、日本への送出業務を行うことが可能となります。

主要なMOC締結国と特徴

現在、日本は、ベトナム、フィリピン、インドネシア、中国、ミャンマー、ネパール、タイ、バングラデシュ、カンボジア、スリランカ、ウズベキスタン、モンゴル、ラオス、パキスタン、インド等、多くの国とMOCを締結しています。

各国とのMOCには、それぞれの国情に応じた特徴があり、送り出し機関の数や管理体制、技能実習生の募集・選考方法などに違いが見られます。

例えば、ベトナムは送り出し機関の数が比較的多く、フィリピンは政府による管理が比較的厳しいといった特徴があります。

特定技能における二国間協力の進展

特定技能制度においても、外国人材の円滑かつ適正な送出・受入れのため、日本の政府は送出国との間で二国間の協力を進めています。

技能実習制度におけるMOCの経験を踏まえ、特定技能においても同様の枠組みを構築することで、悪質な機関の排除や労働者の保護、円滑な手続きの実現を目指しています

2024年現在、フィリピン、ベトナム、インドネシア等、複数の国との間で協力覚書が締結されています。

これらの覚書には、送り出し機関の認定や情報共有、不当な手数料の徴収の禁止等が盛り込まれています。

外国人送り出し機関の具体的な業務内容

人材募集と書かれた黒板

日本で働く外国人が安心して仕事ができるよう、サポートする送り出し機関の具体的な業務内容を説明します。

人材の募集と選考

送り出し機関の最も基本的な業務は、日本での就労を希望する外国人材の募集と選考です

現地の求職者に対して、求人情報を公表し、応募を受け付けます。選考方法は、書類審査、筆記試験(日本語、技能)、面接等、多岐にわたります。

送り出し機関は、日本の企業の雇用要件を十分に理解した上で、適切な候補者を選抜する必要があります。

事前教育と日本語教育

選考に合格した候補者に対して、日本での生活や業務に必要な事前教育を行うことは、送り出し機関の重要な役割です

これには、日本語教育、日本の文化や習慣、労働関連法令、安全衛生に関する知識などが含まれます。

特に日本語教育は、日本でのスムーズなコミュニケーションと業務遂行のために不可欠であり、送り出し機関の日本語教育の質は、技能実習生や特定技能外国人の日本での適応に大きな影響を与えます。

日本の受入れ企業とのマッチング

送り出し機関は、募集・選考し、事前教育を行った候補者の情報を、日本の受入れ企業に紹介します。

各企業の事業内容、求める技能レベル、日本語能力等の要件を考慮し、最適なマッチングを実現することで、外国人材と日本の企業双方にとって有益な雇用関係を構築します

入国手続きの支援

外国人材が日本へ入国するためには、在留資格の申請をはじめとする様々な手続きが必要です。

送り出し機関は、これらの手続きに関する情報を提供し、必要な書類の作成支援、申請代行等を行うことで、外国人材がスムーズに入国できるようサポートします

出入国在留管理庁との連絡調整も、送り出し機関の重要な業務の一つです。

入国後のサポートと監理団体・企業との連携

技能実習制度においては、送り出し機関は、技能実習生が日本へ入国した後も、生活や業務に関する相談に乗ったり、必要な情報を提供したりするなど、支援を継続する場合があります。

また、監理団体や受入れ企業と密に連携し、技能実習生の実習状況を確認したり、トラブル発生時の対応を協議したりするなど、協力体制を構築します

特定技能においても、入国後のフォローアップや相談支援を行う機関が増えています。

帰国支援

技能実習生や特定技能外国人が契約期間を修了し、帰国する際の手続きや、必要な情報提供、航空券の手配等の支援を行うことも、送り出し機関の業務に含まれる場合があります。

信頼できる送り出し機関を選ぶための重要なポイント

送り出し機関の選出ポイント

安心と信頼がおける、送り出し機関を選ぶために、おさえておきたい重要ポイントを解説します。

政府の認定・登録状況の確認

技能実習生を受け入れる場合、送り出し機関が送出国の政府によって正式に認定・登録されているかを確認することが最も重要です

認定を受けていない機関は、悪質な業務を行う可能性があり、技能実習生や受入れ企業に不利益をもたらすことがあります。

日本の外国人技能実習機構(JITCO)のウェブサイトや、駐在の各国大使館等に問い合わせることで、登録されている機関の一覧や情報を確認できます。

特定技能においても、二国間の協力覚書に基づいて国が認定した機関を選ぶことが推奨されます。

契約内容の透明性と詳細な確認

送り出し機関との間で契約を結ぶ際は、手数料の金額や内訳、提供されるサービスの内容(事前教育、入国手続き、入国後のサポート等)、契約期間、トラブル発生時の対応などを詳細に確認し、不明な点があれば徹底的に質問することが必要です。

不当な金銭を請求したり、曖昧な説明しかしない機関との契約は避けるべきです

過去の裁判事例などを参考に、不当な違約金の条項が含まれていないかどうかも確認しましょう。

実績と評判の確認

過去に技能実習生や特定技能外国人の送出実績があるか、受入れ企業からの評判はどうかなどを事前に調査することも重要です。

信頼できる機関は、過去の事例や受入れ企業からの推薦状などを積極的に開示するはずです

インターネット上の口コミ情報も参考になりますが、複数の情報源から総合的に判断することが大切です。

可能であれば、過去にその機関を利用した企業の担当者に直接相談してみるのも良いでしょう。

法令遵守の意識と体制

送り出し機関が、日本と送出国双方の関連法令を遵守しているかを確認することも重要です

違法な手数料の徴収、技能実習生や特定技能外国人の人権侵害、労働条件に関する不当な行為等を行っていないか、過去の違反事例などを確認しましょう。

送り出し機関の事務所の所在地や連絡先が明確であること、担当者が専門的な知識を有することも、信頼できる機関であるかの判断材料となります。

事前教育・日本語教育の質

技能実習生や特定技能外国人の日本での業務遂行能力は、事前に行われる日本語教育や技能教育の質に大きく左右されます。

送り出し機関がどのような教育体制を整えているか、教育内容、時間数、講師の質、教材などを確認することが重要です

可能であれば、教育施設の視察や、過去の修了生からの情報収集なども有効です。

日本語能力試験の合格率や、技能検定の合格率なども、教育の質を測る上での参考になります。

緊急時のサポート体制と連絡体制

技能実習生や特定技能外国人が日本で生活する上で、病気や事故、労働に関するトラブルなど、予期せぬ問題が発生する可能性があります。

そのような際に、送り出し機関が迅速かつ適切に対応できるサポート体制を整えているかを確認することが重要です

24時間連絡が取れる体制、母国語での相談サービスの有無、日本に駐在の担当者がいるか等を確認しておきましょう。

監理団体との連携体制も重要です。

特定技能人材の送出し機関:技能実習との違いと注意点

技能実習制度

特定技能制度においての送り出し機関の役割を解説します。

技能実習制度と特定技能制度の違いを送り出し機関は十分に理解し、日本で働く外国人をサポートする必要があります。

特定技能制度における送り出し機関の役割

特定技能制度における送り出し機関の役割は、技能実習制度と共通する部分もありますが、いくつかの点で違いが見られます。

特定技能では、一定の技能と日本語能力を有する即戦力となる外国人材の雇用が目的となるため、送り出し機関は、より専門的な知識や経験を持つ人材を紹介することが求められます

また、在留資格の種類や手続きも技能実習とは異なるため、送り出し機関はこれらの違いを十分に理解し、適切な情報提供や申請支援を行う必要があります。

技能実習修了者の活用と送り出し機関

特定技能制度では、一定の技能を修得した技能実習2号を良好に修了した外国人は、試験が免除されるなど、優遇措置が設けられています。

送り出し機関は、過去に技能実習を修了した候補者の情報から、選抜や日本の受け入れ企業との調整や就業後のフォローなどを行う役割があります。

まとめ:送り出し機関との連携で外国人材採用を成功させる

採用面接をしている様子

本記事では、「送り出し機関とは何か」という基本的な問いから、国が定める送り出し機関の役割や業務内容、技能実習制度と特定技能制度における送り出し機関の違い、そして信頼できる送り出し機関を選ぶための注意点について詳しく解説しました。

外国人材の採用は、企業のグローバル戦略において重要な要素であり、送り出し機関は、その成功を左右するパートナーと言えます。

適切な送り出し機関との連携は、優秀な外国人材の確保だけでなく、入国後の生活や業務におけるサポート、そして企業と外国人材双方にとって良好な関係の構築に不可欠です

人事担当者の皆様におかれましては、本記事で得られた知識を活かし、慎重かつ適切に送り出し機関を選定し、外国人材の活用を成功に導いてください。

外国人材の能力を最大限に引き出し、企業のさらなる発展に繋げていきましょう。

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この記事を書いた人

三木 雅史(Masafumi Miki) 株式会社E-MAN会長
1973年兵庫県生まれ / 慶応義塾大学法学部法学科卒
・25歳で起業 / デジタルガレージ / 電通の孫請でシステム開発
・web通販事業を手掛ける
・2006年にオンライン英会話を日本で初めて事業化
・2019年外国人の日本語教育を簡単、安価にするため
 日本語eラーニングシステムを開発、1万人超の外国人が日々学習中

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