深刻化する日本の労働力不足。多くの企業が事業の維持・拡大のため、外国人材の活用に注目しています。その中でも、在留資格「特定技能」を利用したフィリピン人労働者の受け入れは、年々増加傾向にあります。
明るいキャラクターで高い英語力を備えるフィリピン人は、さまざまな特定の産業分野での活躍が期待される人材です。しかし、他の国籍の外国人労働者とは異なり、フィリピン人を採用する際には、フィリピン政府が定める独自のルールや手続きが存在します。
そのため、
「採用までの流れが複雑でよくわからない」
「具体的にどのくらいの費用がかかるのか」
「採用するうえで注意すべき点はあるか」
といった疑問や不安を抱える企業担当者の方も多いのではないでしょうか。
本記事では、特定技能制度を活用してフィリピン人を採用する際の流れや必要な費用、採用によるメリット、把握しておくべき注意点まで、最新情報に基づいて分かりやすく解説します。ぜひ最後までご覧ください。
なぜ今、特定技能でフィリピン人採用が注目されるのか?

数ある国籍の中でも、特定技能人材としてフィリピン人が注目されるのには理由があります。その背景と、彼らが持つ特徴について見ていきましょう。
特定技能制度におけるフィリピン人の受入状況
出入国在留管理庁の発表によると、特定技能制度を利用する外国人労働者の中で、フィリピン人はベトナム、インドネシアに次いで第3位の在留人数となっています。
2024年12月末時点で、フィリピン人の特定技能1号保持者は約28,000人であり、2023年よりも7,000人近く増加しています。
参考:出入国在留管理庁 特定技能在留外国人数
特定技能でフィリピン人を採用する5つのメリット
多くのフィリピン人が特定技能分野で活躍しているのには、理由(メリット)があります。送り出しカフェでも、長年フィリピンからの人材送り出しに携わってきましたが、実際に多くの企業様から、採用して良かったという喜びの声を頂戴しています。
フィリピンでは英語を公用語の一つとし、多くの人が英語を流暢に話します。宿泊業や外食業など、インバウンド需要が高まっている日本において、即戦力となる人材です。また幼いときから複数言語の中で育つためか、新たな言語の習得も早い傾向にあります。
実際に日本で働く多くのフィリピン人が早い段階で日本語を話せるようになっているため、英語が苦手な人が多い職場でも円滑なコミュニケーションが期待できます。弊社が送り出した人材の中にも、入社前の日本語研修を0からたった2ヶ月で日本語能力検定 N4レベルにまで到達し、入社後即戦力として、お客様対応に当たっている事例が多数あります。
フィリピン人は明るく陽気で、人とのコミュニケーションを大切にする国民性を持っています。またフィリピン文化に根付いた「おもてなし」の心は、特に介護分野や飲食料品製造、宿泊業などで大きな強みとなります。彼らが提供する質の高いサービスは、利用者からも高い評価を受け、企業の評判向上にも繋がるでしょう。
以前介護施設に紹介したフィリピン人スタッフが、入居者様の方々から「家族のように接してくれている」と慕われている話を聞き、大変嬉しく思ったことを覚えています。
フィリピンでは日本のポップカルチャーが広く浸透しており、日本に対して良いイメージを持つ人が多いです。そのため、日本の文化や生活習慣への適応が比較的スムーズに進む傾向があります。これは、職場での人間関係構築や定着率の向上において重要な要素です。
実際に、日本の漫画やアニメがきっかけで日本に興味を持ち、日本語を勉強して特定技能に挑戦する若者も増えています。
フィリピン国外で働くことを選択するフィリピン人は、家族を支えたいという強い目的意識と向上心を持っています。新しい技術や知識、日本語の習得に対しても意欲的であり、企業の成長に貢献する優秀な人材となるポテンシャルを秘めています。
ある企業の人事担当者様からは、「うちの会社に来たフィリピン人スタッフは、誰よりも速く仕事を覚えようと努力している。周りの日本人スタッフも刺激を受けているようだ」とおっしゃって頂きました。
特定技能制度は、熟練した技能を要する業務に従事する「特定技能2号」への移行が可能です。2023年に対象分野が拡大され、介護を除くほとんどの分野で1号から2号への道が開かれました。
特定技能2号を取得すれば、在留期間の更新に上限がなくなり、家族の帯同も可能になるため、企業にとって長期的に安定した労働力を確保できるという大きなメリットがあります。2号への移行を視野に入れることで、より計画的な人材育成が可能になります。
採用の際に必ず押さえるべき5つの注意点
メリットの多いフィリピン人採用ですが、成功させるためには事前に知っておくべき注意点もあります。
フィリピン人労働者を雇用するためには、フィリピンでOEC(海外雇用証明書)の申請など、独自の手続きが必要になります。提出書類も多く、英文での作成が求められるため、自社のみで対応するのは困難な場合があります。手続きに不備があると、採用プロセス全体が大幅に遅延するリスクがあります。また、日本人の感覚とは異なり、スケジュールが予定通りに進まないケースも多いため、注意が必要です。
実際に、必要書類の準備に手間取り、採用予定が大きく遅れてしまったという企業様からの相談はよくあります。
フィリピン人を採用するためには独自の手続きが必要であるため、候補者の面接から日本に入国して就労を開始するまで、他の国籍(例:ベトナム、インドネシア等)に比べて長くかかるのが一般的です。就労のためにフィリピンで発行が必要な書類もあるため、余裕を持った採用計画を立てる必要があります。
送り出しカフェでは、書類の準備から入国までの期間を考慮し、余裕を持ったスケジュールで企業様にご提案しています。また、スケジュール通りに準備が進むよう、優良な送り出し機関のみと契約しています。
フィリピンは国民の多くが敬虔なキリスト教徒です。クリスマスやイースターといった宗教的な祝祭を大切にする文化があります。また、ミンダナオ島を中心に、イスラム教徒も存在します。食事面など彼らの文化や宗教を尊重し、理解を示す姿勢が、良好な関係を築く上で不可欠です。
ある企業では、従業員のための礼拝スペースを設けたところ、外国人従事者の満足度が上がったという事例もあります。
フィリピン人は家族との繋がりを非常に大切にします。定期的に連絡を取ったり、送金したりすることは、彼らの仕事へのモチベーション維持に直結します。企業側も、こうした国民性を理解し、例えば休暇の取得などに柔軟に対応することで、従業員の満足度を高めることができます。
複雑な手続きを円滑に進め、採用後の定着を成功させるためには、信頼できるパートナー選びが最も重要です。フィリピン政府から認定を受けた現地の送り出し機関と、日本での支援実績が豊富な申請代行業者を慎重に選定することが、採用の成否を分けると言っても過言ではありません。残念ながら、悪質な送り出し機関も存在します。
送り出しカフェでは、フィリピン政府公認の送り出し機関の中から、実際に現地で面談し、何度もやり取りした中で本当に信頼できる送り出し機関のみと契約しています。

【比較】技能実習と特定技能の違いとは?フィリピン人雇用における選択

外国人材を受け入れる際は、「特定技能制度」のほかにも「技能実習制度」があります。これらの制度設計の目的や運用上の違いを正確に把握し、自社のニーズに応じて選ぶ必要があります。
制度の目的と背景の違い
技能実習 | 日本の技術や知識を発展途上国へ移転し、その国の発展を支援する「国際協力」を目的として創設された制度。 |
特定技能 | 人手不足が深刻な産業分野に即戦力となる外国人を受け入れることを目的としており、国内の労働力補填を重視している。 |
業務範囲と転職の可否
技能実習 | 実習計画に基づく業務のみ従事でき、原則として転職は認められていない。 |
特定技能 | 受け入れ分野内(同一業種・区分)であれば転職が可能。 |
受け入れ可能な分野の比較
技能実習 | 農業、建設、食品加工など91職種(約168作業)で受け入れ可能。詳しくは、厚生労働省の「技能実習制度 移行対象職種・作業一覧」を参照してください。 |
特定技能 (1号) | 介護、ビルクリーニング、建設、造船・舶用工業、工業製品製造業、自動車整備、航空、宿泊、自動車運送業、鉄道、漁業、農業、飲食料品製造業、外食業、林業、木材産業の16分野 |
参考:
厚生労働省 外国人技能実習制度について
出入国在留管理庁 特定技能制度
特定技能フィリピン人採用の全体の流れを徹底解説

特定技能の在留資格を取得する手順は、申請するフィリピン人が現在日本に在留しているか、それともフィリピンにいるかによって大きく異なります。ここでは、それぞれのケースに分けて、一般的な手順を解説します。
フィリピン在住フィリピン人の特定技能資格取得手順(在留資格認定証明書交付申請)
フィリピン在住のフィリピン人が特定技能の資格を取得して、日本入国・就労を開始するまでの大まかな流れは以下の通りです。
特定技能1号の資格取得には、各分野で固有の技能試験ならびに日本語能力試験(JLPT N4以上、またはJFT-Basicの合格)の合格が必須です。
日本の雇用主(受入れ機関)が募集する求人に応募し、選考を経て雇用契約を結びます。雇用契約は日本の労働関係法令を遵守し、特定技能雇用契約の基準を満たすことが求められます。
企業や登録支援機関が対象者に対して、採用前のオリエンテーションを通じて業務内容や報酬、入国手続き、日本での生活情報などを本人が理解できる言語で説明します。これは、日本での生活や就労に必要な基礎的な教育としての側面も持ちます。同時に健康診断も受診してもらいます。
対象のフィリピン人を受け入れる際、企業は生活支援計画を策定し、日本で安定した生活が送れるよう支援を行う義務があります。この支援は自社で実施することも可能ですが、専門の登録支援機関に委託することもできます。
フィリピン人本人に代わって企業もしくは登録支援機関が、地方出入国在留管理局に「在留資格認定証明書(COE)」の交付を申請します。申請には雇用契約書、支援計画書、合格証明書、健康診断書など多くの書類が必要です。
申請が認められると、在留資格認定の許可証が交付されます。本人はこれを受け取り、フィリピンの日本大使館や総領事館で査証(ビザ)を申請します。査証が発給された後、日本に入国し、入国審査を経て在留資格と在留カードが交付されます。
在留カードが交付された後、受入れ機関での就労を開始できます。入国時や住居地までの送迎、入居後の生活サポートなど、継続的な支援も重要なポイントです。
参考:法務省 出入国在留管理庁 在留資格認定証明書交付申請
日本在留中のフィリピン人が特定技能を取得する手順(在留資格変更許可申請)
日本に在留している外国籍の人(留学生、技能実習生など)が、特定技能へと在留資格を変更する場合の主な流れは以下の通りです。
海外からの場合と同様に、技能に関する試験と日本語試験の合格が求められます。しかし技能実習2号を良好に修了した場合は、これらの試験が免除される可能性があります。
企業と雇用契約を締結します。
受入れ機関または登録支援機関が事前ガイダンスを実施し、健康診断を受診してもらいます。
特定技能1号のフィリピン人を受け入れる場合、企業は生活支援計画を策定します。
フィリピン人本人(または申請取次の資格を持った行政書士等)が在留資格への変更を、地方出入国在留管理局に申請します。提出書類は、雇用契約書、支援計画書、技能試験・日本語試験の合格証明書、現在の在留カード、パスポート、住民票の写しなど多岐にわたります。
申請が審査に通ると、在留資格の変更が許可されます。新しい在留カードが交付されるか、現在の在留カードに新たな在留資格が記載されます。
在留資格変更許可後、受入れ機関での就労を開始できます。
参考:法務省 出入国在留管理庁 在留資格変更許可申請

特定技能フィリピン人の採用に必要な書類一覧

在留資格認定や在留資格変更許可申請の手続きには、多くの書類が必要です。ここでは、代表的なものを一覧で紹介します。ただし、具体的な要件は変更される可能性があるため、常に最新情報を確認してください。
日本の受け入れ企業側で準備する書類
- 登記事項全部証明書(会社の登記簿謄本)
- 決算報告書(直近2期分)
- 労働保険関係成立届の写し
- 特定技能所属機関概要書(参考様式第1-11-1号)
- 特定技能雇用契約書(英文・和文)
- 支援計画書
フィリピン人労働者本人が用意する書類
- パスポートの写し(写真面・署名欄)
- 証明写真(縦4cm×横3cm)
- 特定技能の試験合格証明書
- 日本語能力試験の合格証明書
- 履歴書(日本語または英語)
- 最終学歴証明書
- 健康診断書
- 在留資格認定証明書(COE)申請書類一式
これらの書類を不備なく準備し、認証プロセスを完了させる必要があります。
参考:出入国在留管理庁 特定技能関係の申請・届出様式一覧
特定技能フィリピン人を受け入れるためのMWO申請

特定技能でフィリピン人を採用するためには、上で説明した特定技能の在留資格申請以外にも必要な手続きがあります。
それが、フィリピンの政府機関であるDMW(フィリピン移住労働者省/旧POEA)と、その海外出先機関であるMWO(Migrant Workers Office)への申請です。
過去にはPOLOという名称で知られていたMWOの事務所は、各国に設置されています。
日本では東京と大阪にMWOが設置されています(駐日フィリピン共和国大使館・総領事館内)。
DMWとMWOは高度専門職を含めたフィリピン人労働者の権利保護、福祉の向上、海外雇用の促進と管理を一元的に行うことを目的としています。そのため、特定技能でフィリピン人を採用する際にも、MWOへの申請が義務付けられています。
申請手続の全体の流れ
MWOへの申請手続きは、一般的に以下の流れで進みます。
- 申請書類の提出:まず必要な申請書類を準備し、MWO(東京または大阪の事務所)に提出(送付)します。
- MWOによる審査と承認:次に、MWOによって提出された書類に基づいて審査が行われ、雇用契約の内容などが適切であると認められれば、認証が得られます。この承認によって、フィリピン人人材の募集活動が行えるようになります。
- フィリピン人人材の採用:フィリピン人人材の募集を行い、採用・雇用契約を結びます。
送り出し機関の必要性
フィリピン人を現地のフィリピンから採用する場合、原則としてフィリピン政府が公認して登録された送り出し機関を介することが求められます。送り出し機関が企業のニーズに合った候補者を推薦する場合もあります。これは、フィリピン人労働者を悪質なブローカーから保護し、適切な労働条件を確保するための重要な措置です。
DMWによって登録された送り出し機関の一覧は、次のページで確認できます。
信頼性のある送出機関を選ぶ際には、その実績や評判、フィリピン政府からの認定を受けているかなどを確認することが重要です。また、送出機関との間で締結する契約内容を十分に確認し、手数料やサポート内容等を明確にしておく必要があります。
MWOへの申請はフィリピン人労働者の権利を守るためにも大切ですが、手続きが非常に複雑で面倒であることも事実です。
そのため、特定技能でフィリピン人を採用したい企業は、ぜひ送り出しカフェへご相談ください。
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参考:法務省 フィリピン国籍の方々を特定技能外国人として受け入れるまでの手続の流れ
MWO申請に必要な書類
在留資格認定もしくは在留資格変更許可申請の手続き以外にも、MWO申請に必要な書類を揃えなければなりません。
必要書類は在留資格の種類によっても異なるため、必ず上記MWO東京またはMWO大阪のウェブサイトで必要書類を確認して下さい。

採用にかかる費用を徹底解説!内訳と相場

フィリピン人を採用するには、人材の紹介から入社後の支援まで、様々な場面で費用が発生します。事前に全体のコスト感を把握しておくことが、計画的な採用活動の鍵となります。
受け入れ企業が負担する必要がある費用一覧
特定技能外国人の受け入れに係る費用は、原則として受け入れ企業側が負担することが求められます。以下は、主な費用項目とその目安です。
人材紹介手数料 | 日本の人材紹介会社や、フィリピンの送り出し機関に支払う費用です。 契約内容によって異なりますが、一般的には一人あたり約30万〜60万円程度、または年収の20〜30%とされることが多くなっています。 |
登録支援機関への支援委託費用 | 義務的支援を外部の登録支援機関に委託する場合、月額2〜4万円/人程度が相場です。 委託する支援内容や地域によって変動します。 |
渡航費・健康診断費用 | 航空券代や、フィリピン国内で実施される健康診断の費用です。 これらはILO条約やフィリピン政府の規定により、企業側の全額負担が原則とされています。 |
在留資格申請に係る費用 | 在留資格認定証明書(COE)の申請など、出入国在留管理局関連の手続きに係る費用です。 行政書士に依頼する場合は10〜20万円前後が相場で、収入印紙代が別途必要です。 |
住居確保の初期費用 | 日本で生活を開始する際の住居確保に必要な費用(敷金・礼金・仲介手数料・保証料など)も、企業が負担することが望ましいとされています。 費用は地域や物件によって大きく異なりますが、10万円〜30万円程度が目安です。 |
費用を計画的に管理するためのポイント
これらの費用は、委託する機関や契約内容によって大きく異なるため、複数の業者から見積もりを取り、費用とサービス内容を比較検討することが重要です。また、企業が負担すべき費用と、本人負担が認められる生活費(例:家賃の一部など)については、雇用契約書や支援計画に明示しておく必要があります。これにより、労使間の誤解やトラブルを防ぐことができます。
まとめ:特定技能フィリピン人採用を成功させ、事業の成長を加速させる

特定技能の分野で活躍するフィリピン人労働者は、貴社の労働力不足を解消するだけでなく、職場に新たな風を吹き込み、事業の成長を加速させる大きな力となるはずです。
フィリピン人の採用は、フィリピン側のDMWや日本のMWO事務所が関与する独自の手続きがあり、他の国籍の採用と比べて時間と手間がかかるのは事実です。しかし、その問題を乗り越えれば、高い英語力とホスピタリティ精神を持つ、優秀で勤勉な人材を確保できるという大きなメリットがあります。
一方で、日本在住の企業がフィリピンの送り出し機関を探し出すのは、非常に困難です。送り出しカフェに相談し、二人三脚で採用活動を進めることが、結果的に時間とコストの削減に繋がり、確実な人材確保を実現します。ぜひお気軽にご相談ください。
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