ビザ取得から日本入国まで|フィリピン人採用に必要な手続き

フィリピン人 日本入国 ビザ

少子高齢化が進み、深刻な労働力不足への対策が急務な日本において注目されているのが、外国人材の活用です。その中でも高い英語力と勤勉さを持つフィリピン人が多くの企業・現場で活躍しています。

しかし彼らを受け入れるには、出入国在留管理制度(ビザ・在留資格)を理解し、正しい手順で手続きを行うことが不可欠です。とりわけフィリピン人を雇用する際には、フィリピン政府が定める海外渡航労働者関連の手続きも遵守しなければなりません。日本とフィリピン両国の制度を押さえておかないと、渡航や就労の過程で思わぬ遅延やリスクが発生し得うるからです。

本記事は、フィリピン人の採用を検討している企業の担当者向けに、ビザ申請から入国、在留期間の延長に至るまで、実務で必要となる手続きや注意点を法令と実務の視点からわかりやすく整理しました。即戦力となるフィリピン人材の採用を成功させるために、ぜひ参考になさってください。

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目次

フィリピン人材採用の現状と日本の在留資格概要

木製スタンプを使ってパスポートに押印する様子。ビザ取得や日本入国手続きをイメージした行政手続きの場面。

厚生労働省「外国人雇用状況」によると、2024年10月末時点でフィリピン人労働者は245,565人で、外国人労働者総数の約10.7%を占めています。国籍別ではベトナム、中国に次いで3位で、特にサービス業や介護分野を中心に、深刻な人手不足が続く業界で不可欠な存在となっています

フィリピン人材が日本での就労を希望する背景には、より高い所得水準と安定した雇用環境への期待が挙げられます。特に、海外で働き得た収入を家族に送金することは、経済面で大きな役割を果たしており、日本企業が提供できる待遇やキャリア形成の機会は高い動機付けとなります。このため、採用時には給与条件、職種内容、勤務地など、求職者の希望と企業側の条件を初期段階で明確化することが重要です。

主な就労ビザの種類と在留期間

フィリピン人を日本で雇用する際、会社側が利用する代表的なビザには「技術・人文知識・国際業務(技人国)ビザ」と「特定技能ビザ」があります。

技人国ビザ

機械工学など専門技術者、通訳、デザイナー、マーケティング担当者などが該当します。滞在期間は5年、3年、1年、または3か月と幅があります。期間の長短は、入国管理局が会社の経営状況や招へいの目的、申請者の専門性を審査した結果に基づきます。初回が短期間の場合は、次回延長申請に向けて書類の質と証明能力を向上させる必要があります。

特定技能ビザ

特定技能ビザは、特定産業分野における即戦力となる外国人を受け入れるための在留資格です。このビザには「特定技能1号」と「特定技能2号」があります。

特定技能1号
  • 在留期間は、1年、6か月、または4か月ごとに更新され、通算で最長5年まで滞在可能です。
  • 更新の際には、雇用契約の継続性や技能水準の維持が求められます。
特定技能2号
  • 在留期間は、3年、1年、または6か月ごとに更新され、更新の上限はありません。
  • この資格では、家族の帯同が条件を満たせば可能となり、永住権の取得要件を満たす可能性もあります。

なお、特定技能1号から2号への移行には、一定の技能水準を証明する必要があります。この移行により、長期的な雇用が可能となり、企業にとっても安定した人材確保が期待できます。

短期滞在ビザ

商談や会議、研修などの短期間のビジネス渡航目的で申請されるのが短期滞在ビザです。このビザでは、日本国内で給与や報酬を伴う活動は認められていません。

短期滞在ビザを利用して就労活動を行うことは、目的外利用として厳しく制限されています。企業担当者は、採用予定者に正しい情報を事前に提供し、適切なビザでの入国を確実にすることが重要です。

参考:在留資格一覧表 | 出入国在留管理庁

在留資格認定証明書(COE)申請の手続きと必要書類

分厚い書類ファイルとカラフルなフォルダが並ぶ事務所の資料棚。ビザ申請や雇用手続きの書類管理をイメージ。

フィリピン人材を日本に招き入れるための重要なステップの一つが、在留資格認定証明書(COE:Certificate of Eligibility)の申請です。

COEは、対象者が申請するビザ(例:技人国ビザ、特定技能ビザなど)に該当し、上陸条件を満たすことを事前に示す証明書であり、在外公館でのビザ発給や入国手続きの迅速化に寄与します

COEによる審査管理とビザ発給への影響

COEの取得によって、その後の在外公館でのビザ発給を大幅に短縮します。逆にCOEがない場合、査証発給に時間がかかり、採用・渡航予定が遅延する要因となります。外務省と入管の役割分担により、COEを用いた事前審査が実務上の効率化につながっています。だからこそ、企業はCOE申請の工程管理を最優先で行ってください。

この書類は、外国人が日本で行おうとする活動が、申請した在留資格に該当し、かつ上陸条件に適合していることを事前に証明する書類であり、後の査証発給を円滑化する鍵となります

COEは、受入企業が日本国内の地方出入国在留管理局に申請しますが、COEの交付によって入国許可を自動的に認められるわけではありません。状況次第で上陸時の審査により入国が認められない場合もあり得ます。

申請の窓口と代理申請

申請先受入企業の所在地を所管する地方出入国在留管理局
申請者(代理人)受入企業の社員が代理申請を行うことができます。
加えて、弁護士や行政書士等の専門家が代理することも可能です。
申請方法オンライン申請が利用可能であり、電子交付(メール受領)を選択できる場合があります。
オンライン利用には事前登録や利用環境の確認が必要です。

参考:在留申請のオンライン手続 | 出入国在留管理庁

COE申請の主な流れ

企業が代理人となってCOEを申請する際の主な流れは、以下の通りです。

STEP
申請準備

必要書類(下表参照)を収集し、PDF等の電子ファイルを準備します。

STEP
オンライン入力・添付

在留申請オンラインシステムにログインし、申請者情報を入力。添付資料をPDFで提出します。

STEP
申請送信

申請を送信して審査が開始されます。

STEP
審査・追加照会

入国管理局が書類精査を行い、必要に応じて追加資料の提出を求めます。

STEP
結果受領

審査に合格するとCOEが交付されます。電子交付を選択している場合はメールで受領でき、本人へ転送することも可能です。

審査期間の目安と留意点

審査期間は在留資格の種類や申請先の混雑状況により変動します。目安としては概ね1〜3か月程度が多いものの、繁忙期や追加照会の有無により長期化することがあります。月次で公表される処理実績を参照して、余裕を持ったスケジュールで申請してください。

オンライン申請時の実務ポイント
  • 添付ファイルはPDFで、原則10MB以下にまとめる必要があります。複数資料がある場合は一つのPDFに統合するのが基本です。
  • ファイルサイズ超過時は分割や圧縮、あるいは事後提出(郵送等)の運用となる場合があります。オンラインシステムの仕様は更新されるため、申請前に最新の案内を確認してください。
  • オンライン申請では「受領方法(メール/窓口等)」を選べるケースがあり、電子的にCOEを受け取ると本人への転送が容易です。

申請時に企業が用意すべき主な書類

下表は代表的な企業側提出資料です。ビザの種類や申請者の個別事情により追加資料が求められることがあります。

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招へい理由書外国人を招へいする目的と予定される業務内容を明確に示す資料
会社・団体概要説明書受入企業の事業内容、組織体制、安定性を示す資料
雇用契約書の写し労働条件、賃金、就業場所など滞在期間中の業務内容を明確に示す資料
身元保証書滞在中の生活支援、帰国費用、法令遵守について企業が保証する資料
納税証明書・決算書等会社の財務状況や安定性を証明する資料
会社登記事項証明書
(登記簿謄本)
企業の実態を確認する資料
業務に関する証拠資料
(業務マニュアル等)
職務の正当性や必要性を示す資料

(注)ビザの種類によっては、学位証明書や資格証明書など、追加の資料が必要になる場合があります。申請前に必ず該当ビザの要件を確認してください。

身元保証書の位置づけ

身元保証書はCOE申請で企業が提出する重要書類で、滞在中の生活支援や帰国費用の確保、法令順守の意思を示す役割があります。入管では、この書類を通じて企業の受入体制や信用力が評価されます。なお、身元保証書の提出がすべてのケースで民事上の連帯保証義務を意味するわけではありません。内容は正確かつ丁寧に作成することが重要です。

参考:在留資格認定証明書交付申請 | 出入国在留管理庁

在留資格変更許可申請

日本国内に留学や技能実習、家族滞在などの在留資格で既に滞在しているフィリピン人を採用し、就労活動を開始させる場合、新規のCOE申請ではなく「在留資格変更許可申請」の手続きが必要となります。

この手続きは、外国人本人が現在持つ在留資格から、新しく従事する予定の活動内容に対応する在留資格(例:技能実習生から特定技能ビザ)へと切り替えるためのものです

この変更申請は、地方出入国在留管理局に対して行われます。なお、在留資格の変更には所定の要件(実習の修了状況、技能や経験、必要に応じた試験合格など)があり、変更許可が下りるまで就労開始が制限される場合があるため注意してください。

参考:在留資格変更許可申請 | 出入国在留管理庁

COE取得後のビザ申請手続き

ビザ申請書に「APPROVED」スタンプを押す担当者の手元。パスポートと証明写真が並ぶ審査・承認手続きの場面。

COEが交付されたら、申請者本人が在フィリピン日本国大使館または領事館(または在外公館が指定するVisa Center/代理窓口)でビザを申請します。

COEはビザ申請を円滑にする重要書類ですが、COEの交付が必ずしもビザ発給を保証するものではありません。

申請時に必要な基本書類(申請者本人が用意するもの)

  • COE(電子版または原本・コピー。各在外公館の指示に従うこと)
  • 有効なパスポート(在外公館が求める残存期間やページ数を事前確認してください)
  • 査証申請書(大使館・領事館所定様式)および顔写真
  • その他(過去の渡航歴・退去強制歴がある場合は正確に申告すること。必要に応じて追加書類が求められます)
申請の窓口と提出形態の注意点

フィリピンでは、在外公館がVisa Center(例:VFS/JVAC)を指定して受付を行う運用が導入されています。提出先や手数料、受付手順は各在外公館の案内に従ってください。

またCOEの提出は「原本が必須」とするか否かは在外公館によって異なります。電子COEやコピーで足りるケースもあるため、事前に在外公館(またはVisa Center)の最新案内を必ず確認してください。

審査期間の目安と実務スケジュール管理

在外公館(およびVisa Center)による一次的な処理・プレチェックは、問題がなければ概ね5営業日程度が目安とされています。ところが、追加照会が入ると数週間から数か月を要する場合があります。時間幅を見越したスケジュール設定が必須です。

フィリピン国内のVisa Center(VFS等)案内では、地域によって最低処理日数が異なる旨の案内が出ています。繁忙期や地域差を考慮し、余裕を持って申請してください。

実務上の目安:出発予定日の少なくとも2か月前を目安に、企業側はCOE交付と査証申請のスケジュールを逆算して動くことが推奨されています。

ビザ申請時の注意点

ビザを申請する際には、企業または本人側双方で、以下の点に注意なさってください。

注意点
書類の整合性(企業側の役割)

企業担当者は、在外公館へ提出される申請書類(本人が出す申請書の記載内容を含む)と、会社が作成した招へい書類(招へい理由書・雇用契約書等)との整合性を確実に保ってください。不整合や虚偽は査証拒否の原因となります。申請前にチェックリストでダブルチェックする手順を必ず設けてください。

注意点
同時申請・短期滞在に関する注意

就労目的でCOE申請中の者が、短期滞在ビザ(商談・研修など)を使って入国し、就労を始めることは認められない扱いになります。短期滞在での入国を就労手段に使わせない旨を、採用候補者へ明確に指導してください。なお、短期滞在の取り扱いや同時申請の可否は在外公館の運用差があるため、個別に確認することを推奨します。

トラブル回避のチェックポイント
パスポートの残存期間(在外公館の要件を確認)を確認
COEの「指定日」からの入国期限(COEに記載のルール)に注意し、出国日程を調整
申請者の写真サイズ・申請書の記載漏れ・氏名のローマ字表記などの細部を事前にチェック
在外公館・Visa Centerの案内は頻繁に更新されます。
申請直前に必ず公式案内を再確認してください。
COEはビザを確実に早める有効な資料ですが、最終判断は在外公館が行います。
過信せず、複数のスケジュールを用意してください。
申請書類の整合性確保(会社の招へい書類と本人申請書の一致)は、発給を早める最も効果的なポイントです。

参考:Visa Processing Time | Ministry of Foreign Affairs of Japan

在留期間(ビザ)延長手続きと企業に課せられる義務

契約書の上に置かれたボールペン。雇用契約や在留手続きなど、外国人採用に関する書類署名のイメージ。

フィリピン人材が日本へ入国し、就労を開始した後も、会社側のコンプライアンス義務は継続します。在留期間の管理と、特に特定技能における外国人への義務的支援の履行は、継続的な雇用とビザの延長(更新)に直結します。

ビザ更新の概要:在留期間更新許可申請

技人国ビザや特定技能ビザにはそれぞれ、有効な在留期間が定められています。その在留期間を更新するのに必要な手続きが、在留期間更新許可申請です。在留期間を更新せずに雇用を継続すると、本人はもちろん、受入企業にも刑事罰や行政処分の対象となります。

在留期間の更新手続きは、入国管理局(地方出入国在留管理局)で行います。原則として、在留期間が満了するおおむね3か月前から申請が可能であり、期限ぎりぎりでの申請は審査遅延などのリスクを伴うため避けるべきです。

  • 更新に必要な期間
    • 処理期間は案件により異なりますが、目安として概ね2週間から1か月程度で許可が下りる場合が多いとされています。ただし、追加照会や書類補足の依頼が入る場合には、審査が数週間から数か月かかることもありますので注意が必要です。
  • 手数料
    • 窓口での納付が6,000円、オンライン申請の場合は5,500円が目安となります。申請方法によって手続きの流れや提出書類が異なる場合があるため、事前に確認して準備することが重要です。

在留期間の更新手続きは、会社が過去の雇用管理や義務的支援を適切に履行しているかを自身でチェックするための重要な機会でもあります。

申請に必要な主な書類

在留期間更新許可申請に必要な主な書類は、以下の通りです。ただしビザの種類や個別事情で追加書類が必要になる場合もあります。

  • 申請書(所定様式)
  • パスポートおよび在留カードの写し
  • 在職証明(在職期間・職務内容の確認)
  • 雇用契約書の写し(賃金・就業条件の確認)
  • 源泉徴収票・給与明細(直近1年分など、所得実証用)
  • 納税証明書・決算書等(会社の財務的安定性を示す資料)
  • 社会保険加入証明(健康保険・厚生年金等の加入状況)
  • 勤怠記録や雇用実態を示す業務報告書(必要に応じ)

書類不備や整合性の欠如は審査遅延や不許可の原因ですから、事前チェックを必ず行ってください。

企業に課せられる義務

外国人労働者を受け入れる企業には、在留資格の種類を問わず、法令上の義務が課されます。主なものは以下の通りです。

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適正な雇用契約の履行外国人であることを理由に不利益を与えず、日本人と同等の条件で契約内容を履行すること。
業務内容や就労条件を契約どおり守り、労働者の権利を保障する基本的義務です。
労働条件通知や給与支払いの遵守労働契約で定めた給与や労働時間などを正確に通知・履行し、遅延なく給与を支払うこと。
社会保険・労働保険等への加入健康保険や年金、労災保険などの加入義務を遵守し、外国人労働者も適切に保護すること。
在留期間満了時の適切な更新手続き在留資格の種類に応じて、期限内に更新申請を行い、違法滞在を防ぐこと。

これらを守ることは本人のためになるのはもちろんのこと、企業にとっても法的リスク回避につながります。

参考:在留期間の更新(入管法第21条) | 出入国在留管理庁

特定技能外国人(1号)への支援義務

特定技能1号外国人を受け入れる企業には、上記の一般的義務に加え、法務省が定める10項目の義務的支援の実施が求められます

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義務的支援10項目一覧
1. 事前ガイダンス労働条件や活動内容、入国手続き等を理解できる言語で説明します。
雇用契約締結後から在留資格申請前に実施するのが実務上の流れです。
2. 出入国時の送迎入国時および帰国時に空港等から事業所または住居までの送り迎えを行います。
3. 住居確保・生活契約支援住居の手配、銀行口座開設やライフライン契約の補助等を行います。
居室の基準は運用上の原則があり、原則として居室は1人当たり7.5㎡以上を基準とします(技能実習から移行する等の例外規定が関係する場合があります)。
なお、社宅や住居に関して企業が不当に利益を得ることや、過度に高い家賃を設定することは避ける必要があります。
4. 生活オリエンテーションゴミ分別や公共マナー、交通ルールなど、日本での生活に必要な基礎情報を提供します。
5. 公的手続き等への同行住民票登録、健康保険・年金等の手続きへの同行や書類作成の支援を行います。
6. 日本語学習の機会提供日本語教室の案内や教材情報の提供など、日本語能力向上の支援を実施します。
7. 相談・苦情対応職場や生活上の相談・苦情を外国人が理解できる言語で受け、解決に向けて対応します。
8. 地域交流の促進地域行事や自治会参加の支援等を通じ、孤立防止と地域社会への定着を図ります。
9. 転職支援(解雇等の場合)受入側の事情で雇用契約を解除する際は、求職活動のための有給休暇付与や必要な行政手続きの案内を行います。
10. 定期面談と通報支援責任者等が原則3か月に1回以上、外国人本人や上司と面談を行い、問題があれば適切に対応・必要時は関係行政機関へ通報します。
これらの面談や支援の実施記録は保存・届出の対象となります。

企業が自社で10項目すべての支援を行うことが困難な場合、国の登録を受けた登録支援機関に支援業務の全部または一部を委託できます。ただしその場合でも、受入れ企業には監督責任があることに変わりはありません。

参考:1号特定技能外国人支援・登録支援機関について | 出入国在留管理庁

現場の声から学ぶ!ビザ取得でフィリピン人材を活用している企業の事例

赤い文字で「Case Study」と書かれた本が机の上に置かれ、表紙には電球のイラストが描かれている。企業の事例紹介や成功事例、特定技能制度に関するケーススタディ記事を象徴するイメージ。

フィリピン人材の採用が、企業にもたらす具体的な効果や、彼らの定着に繋がる成功要因を、実際の企業の事例から考察してみましょう。

株式会社日本エー・エム・シーの事例

福井県に本社を置き、建設機械向けの高圧配管用継手を主な製造品とする株式会社日本エー・エム・シーは、従8人の特定技能フィリピン人を受け入れています。自社で技能実習を修了した者を特定技能1号のビザに変更して雇用を継続しています。これは、コロナ禍において技能実習生が入国・帰国が困難になった状況下、自社の稼働状況と技能実習生本人のニーズを踏まえて開始された戦略とのこと。

ビザを切り替えてフィリピン人材の雇用を続ける背景には、単に人手不足の解消だけではなく、社風を理解して懸命に働いてくれる人を高く評価しているからでもあります。実際に彼らは数値制御旋盤やフライス盤などによる高圧配管用継手の機械加工など、会社にとって重要な業務を任されています。

給与体系についても1年目から3年目までテーブルを決めて徐々に昇給させ、日本人社員と同様に、定期賞与や決算賞与も支給されています。住まいについても、以前の2人部屋から、1人部屋を借り上げ寮として提供し、プライベートな滞在空間を確保しています。毎年実施される社員旅行やレクリエーション大会にも外国人が積極的に参加しており、多様な国籍の社員間の交流も深まっています。

フィリピン人材受け入れの効果として、新卒採用の応募が少ない状況で、特定技能への移行組が即戦力となっている点を挙げています。また、外国人材の受け入れ体制を整備したことが、日本人社員の対応力向上と、多様性による社内環境の活性化にも繋がっていると報告されています。

フィリピン人社員からは、「当社でNC旋盤加工で多くのことを学びました。今は特定技能で同僚や上司に仕事を教えてもらっています。私は日本AMCで働くことを楽しんでおり、機械の操作についてもっと学びたいと思っています」という声や、「3年間の技能実習生の時は日本語があまり分からなくて大変でしたが、いつも上司と同僚が分かりやすく説明してくれたので、だんだんと分かるようになりました。特定技能になりましたが、仕事と日本語の勉強を一生懸命続けてがんばっていきます」という、継続的な学習と努力への意欲を示す情報が寄せられています。

フィリピン人を受け入れる企業が学べる教訓

この事例から、フィリピン人材のビザ取得後の定着と活躍に向け、会社が取り組むべき重要な教訓を導き出すことができます。

  • 自社で技能実習を経験した人材を特定技能へ移行させることは、社風や業務内容を理解した即戦力の確保に繋がり、採用の安定化に有効である
  • 給与テーブルを明確に設定し、定期賞与や決算賞与といった日本人社員と同等の待遇を提供することが、外国人社員の定着率を向上させる重要な理由となる
  • 1個室寮の提供など、プライベートな生活空間を確保することで、異国での滞在におけるストレスを軽減し、働きやすい環境を整備できる
  • 社員旅行やレクリエーションへの積極的な参加を促し、多様な国籍の社員間の国際的な交流を深めることは、社内環境の活性化に繋がる

技能実習から特定技能へビザを切り替えたフィリピン人材は、企業にとって貴重な戦力となります。企業にはビザ切り替えの支援や、彼らがその力を発揮できるような環境を整えることが求められています。

参考: 製造業における特定技能外国人材受入れ事例|経済産業省

フィリピン人受入れに必要なDMWと送り出し機関

フィリピンと日本の国旗

フィリピン人材を採用するには、日本側の手続きだけではなく、フィリピン政府側の組織(DMW/旧POEA)と、現地の送り出し機関についての理解が不可欠です。

DMWと送り出しルールの要点

フィリピンは国民の多くが海外で働いているという現状があり、労働者を保護するため、DMW(海外労働者省)という行政機関が海外への送出を厳格に管理・監督しています。そのDMWの窓口として各国に設置されているのが、MWO(移住労働者事務所)です。

MWOは企業が作成した雇用契約や求人票がフィリピンの労働基準に合致しているかを認証(Verification)します。MWOの認証を経ることで、フィリピン政府から正式に採用計画が承認されます。

フィリピンではエージェントを介さない企業による直接雇用は原則禁止されており、DMW認定の送り出し機関を通じた手続きが必要となります。

そのため日本の企業がフィリピンから人材を雇用する場合、まずはDMW認定の送り出し機関と人材募集・雇用に関する取り決めを締結し、その上でMWOへの申請手続きを行い、認証を得なければなりません

また送り出し機関に関してDMWは不当な手数料徴収を禁じる通達を出しており、紹介料や手数料の取り扱いには法的なルールが適用されます。とはいえ、実務上は運用に差が出ており、企業側が想定外の費用負担や説明不足に直面するケースが散見されます。企業側は送り出し機関との契約時に費用負担の明細を契約書で明確化してください。

海外雇用許可証の取得

海外雇用許可証(OEC :Overseas Employment Certificate)は、フィリピン人が就労目的で日本へ渡航するために必須の証明書であり、フィリピンを出国する際の空港で提出が求められます。

このOECの申請には、日本側で取得した在留資格認定証明書(COE)や、正式な雇用契約書、技能証明書等の書類が必要となり、DMW/MWOによる厳格な審査を経て発行されます。

ここで重要な点は、日本のビザが発行された後であっても、フィリピン側でOECが取得されていなければ、フィリピン人は出国できないということです。これは、日本側の手続きが完了した後に、渡航直前で採用予定が頓挫する最大のリスク要因となり得ます。企業担当者は、日本の入国管理手続きに注力する中で、送り出し機関やフィリピン人本人に対してOEC取得の進捗情報を常に確認し、管理名簿を作成しておく必要があります。

送り出し機関選定の重要性

フィリピン人採用における最大の実務リスクの一つは、送り出し機関の選択です。なぜなら、一部には不当な費用請求や書類偽造、質の低い日本語教育といった悪質な運営を行う機関が存在するからです

そうした事案は、労働者本人に深刻な被害をもたらすだけでなく、受け入れ企業にも失踪・不法就労・労務トラブルといった重大な負担を引き起こします。

したがって、送り出し機関の選定は「人が来るかどうか」だけで判断してはいけません。倫理性・透明性・法令順守を含めた総合的な適性評価が不可欠です。

採用ステップ

STEP
送り出し機関と契約

DMWに認定された現地の送り出し機関を通じて契約を締結します。

STEP
MWO による認証(Verification)

送り出し機関を通じて、求人票(Job Order)および雇用契約案をMWOに提出し、フィリピン側の基準に沿うか確認を受けます。必要があれば契約内容の修正や追加書類の提出を求められます。

STEP
候補者との雇用契約締結

MWOの認証で必要条件が満たされたことを確認したうえで、候補者と正式な雇用契約を最終確定(署名)します。実務上はこの確定をもって日本側の在留手続きを進めるのが安全です。

STEP
COE(在留資格認定証明書)の申請

日本側での在留資格申請に必要な書類を揃え、出入国在留管理庁に申請します。COE の有効期限に注意し、フィリピン側手続きを完了させた上で申請することが望ましいです。

STEP
OEC(海外就労認定証)の取得

OECはフィリピン出国時に提示が求められる証明書です。これを取得することで、合法的に出国・入国が可能となります。日本在住者でも、場合によっては OEC 取得が必要になることがあります。

日本在住のフィリピン人材を雇用する場合の注意点

すでに日本国内に在留しているフィリピン人材を雇用する場合でも、フィリピン政府の規定に基づき、MWOによる認証手続きが原則として必要となります

これは、たとえ日本国内で在留資格の変更を行うケースでも、フィリピン政府の視点からは「海外就労扱い」となるためです。MWOを通じた認証手続きとOECの取得を怠り、外国人が一時的にフィリピンへ帰国した場合、出国時にOECの提示を求められて提示できなければ、日本への再入国が不可能になるという深刻な事態が発生する可能性があります。

受入れ企業は、この重大なリスクを理解し、日本在住者であっても、DMW認定の人材紹介会社を経由した認証手続きを確実に行う必要があります。

参考:DMW

送り出しカフェの活用

送り出しカフェ公式サイトトップ画面

DMWへの申請、送り出し機関の選定などの手続きが必要なフィリピン人材の採用を成功させるには、専門のサポート機関を利用するのが最も効率的かつ効果的です。

送り出しカフェは、フィリピン人労働者の採用を検討している日本企業を対象に、フィリピン現地の送り出し機関の紹介・仲介を行っています。

フィリピン政府のライセンスを持つ正規の送り出し機関と提携しており、年間2,000人を海外に送り出す実績を有するパートナーなど、実績豊富な機関と連携しているのが大きな特徴です

送り出しカフェ活用のメリット

メリット
信頼性のある送り出し機関の紹介

フィリピン政府公認のライセンスを持つ送り出し機関と提携しているため、違法・不透明な業者を避けられる。

人材の母集団が大きい

提携大学・職業訓練校から約7,000人規模の候補者がいるため、必要な職種に合った人材を探しやすい。

特定技能16分野に対応

介護・外食・建設など幅広い業種の求人に対応できる。

安心の日本語対応

日本人スタッフが窓口となるため、言語や文化の違いによる誤解・トラブルを減らせる。

採用から入国後までワンストップ支援

求人票作成、面接調整、ビザ・MWO申請、入国後の定着支援までトータルサポート。

手続きの負担軽減

フィリピン側で必要な複雑な申請書類や手続きを代行・支援してくれる。

日本語教育サポート

採用前から就労後まで継続的に日本語教育を行う体制があり、現場でのミスや離職リスクを軽減できる。

費用や採用リスクの低減

信頼性の低い送り出し機関を選んで失敗するリスクを減らし、スムーズな採用につながる。

送り出しカフェを活用することによって、DMWのルール確認、信頼できる送り出し機関の選定、明確な契約とスケジュール管理などを円滑に行うことができるでしょう。

\ これまでの実績はこちら /

まとめ:フィリピン人材と日本企業の未来のために

空港でパスポートと搭乗券を手渡す様子。ビザ取得後の日本入国や出国審査の手続きをイメージした場面。

フィリピン人材の日本への入国とビザ申請手続きには、日本側の手続きに加えて、フィリピン側のMWOへの申請や送り出し機関の活用など、独特の手順を踏まなければなりません。

これは特に中小企業にとっては、大きなハードルと言えます。そのため、専門家の支援を得ることが採用を成功させるための一番の近道と言えるでしょう。

私たち「送り出しカフェ」は、フィリピン人材採用のために、信頼できる送り出し機関との連携体制を構築し、採用・在留資格手続き、日本語教育、生活支援までを一貫してサポートしています

フィリピン人材の採用を具体的に検討されている企業様は、まずはお気軽にご相談ください。

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この記事を書いた人

三木 雅史(Masafumi Miki) 株式会社E-MAN会長
1973年兵庫県生まれ / 慶応義塾大学法学部法学科卒
・25歳で起業 / デジタルガレージ / 電通の孫請でシステム開発
・web通販事業を手掛ける
・2006年にオンライン英会話を日本で初めて事業化
・2019年外国人の日本語教育を簡単、安価にするため
 日本語eラーニングシステムを開発、1万人超の外国人が日々学習中

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