外国人採用で使える助成金制度を徹底解説!企業向け活用ガイド

外国人採用 助成金

人手不足が深刻化する日本企業にとって、外国人採用は経営課題の解決策として急速に注目を集めています。しかし、外国人労働者の採用から受け入れまでには、言語研修、就労環境の整備、管理体制の構築など、多くのコストがかかります。こうした採用・受け入れ費用の負担を軽減するために、国や自治体が提供する助成金制度が活用できることをご存じでしょうか。適切な助成金を活用することで、外国人採用にかかる経済的負担を大幅に減らし、より積極的な採用戦略が実現するのです。

本記事では、外国人採用に利用できる主要な助成金制度、申請方法、活用のポイントについて詳しく説明いたします。人手不足対策として外国人採用を検討している経営者の皆様にとって、実践的で即座に役立つ情報となるでしょう。

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目次

外国人採用が注目される理由と課題

外国人採用やグローバル人材活用をイメージした地球と多文化の人々を示すイラスト

外国人採用が企業の経営戦略として重要性を増している背景には、日本国内の深刻な人手不足があります。少子高齢化による労働人口の減少に加え、特定の産業や地域では人材確保が極めて困難な状況が続いています。こうした状況下で、外国人労働者の受け入れは企業の事業継続と成長を支える重要な選択肢です。しかし、外国人採用には国内採用にはない特有のコストが発生します。

日本企業が直面する人手不足の実態

日本の労働市場は急速に変わっています。厚生労働省のデータによると、有効求人倍率は高い水準で推移し、特に製造業、建設業、介護業などの産業では人材確保が深刻な課題となっています。このような状況の中で、外国人労働者の雇用が企業にとって重要な選択肢となってきました。人手不足を理由に事業縮小や撤退を余儀なくされる企業も増えており、外国人採用への関心が急速に高まっているのです。

日本の生産年齢人口は2025年5月時点で7,352万人となっており、今後さらなる減少が予想されているため、多くの企業が人材確保の課題に直面することになるでしょう。こうした背景の下、2025年以降、特定技能などの在留資格制度の拡充により、外国人労働者の受け入れがさらに推進されることが見込まれています。多くの企業にとって、外国人労働者の採用は経営戦略として検討する必要が出てきているのです。

参考:総務省統計局 人口推計(2025年(令和7年)4月確定値、2025年(令和7年)9月概算値) (2025年9月19日公表)

外国人採用にかかるコストの内訳

外国人採用には、国内採用にはない多くの経費が必要です。以下の表は、外国人労働者の採用から定着までにかかる主な経費をまとめたものです。

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経費項目概要概算額
募集・採用費海外での採用活動
ビザ申請支援
10~30万円
日本語研修費入社前後の言語教育20~50万円
就労環境整備費宿泊施設
生活用品の準備
15~40万円
管理体制構築費通訳配置
相談体制の整備
月5~15万円
社会保険手続き費在留資格確認
雇用契約書作成
5~10万円

これらのコストは企業規模によって異なりますが、1人の外国人労働者を採用・受け入れるには総額で50万円から150万円程度の経費がかかることが一般的です。複数人の採用を検討する場合、この負担は経営に大きな影響を与えます。

助成金活用による経営メリット

外国人採用に関連する助成金を活用することで、企業は採用・受け入れにかかる経済的負担を大幅に軽減できます。助成金の支給対象となれば、採用から受け入れまでの経費の30%から50%が補助される場合も多く、実質的な負担を大幅に減らすことが可能です。さらに、助成金を活用することで、外国人労働者を受け入れる余裕が生まれ、人手不足対策としての効果を高めることができるのです。助成金の案内を事前に確認し、自社に適用される制度を理解することが、外国人採用戦略を成功させる第一歩となります。

外国人採用の助成金と補助金の違いを理解する

AとBの選択肢を示す矢印サインのイラスト。制度の比較や意思決定を表すシンプルなビジュアル

外国人採用の支援制度を検討する際、「助成金」と「補助金」という2つの言葉をよく耳にします。これらは似ているようですが、申請条件、受給のしやすさ、支給額の決まり方など、重要な相違点があるのです。自社に適用される制度を正確に理解することで、より確実に支援を受けられるようになります。

助成金の特徴と申請条件

助成金は、厚生労働省が雇用に関連する政策目標を達成するために支給する制度です。これには外国人労働者の雇用促進のほか、若年者や障害者の雇用安定など、様々な目的が含まれています。要件を満たしていれば、原則として受給が認められることが大きな特徴といえます。

助成金の主な特徴
  • 要件を満たせば原則受給可能
  • 申請手続きがシンプル
  • 中小企業から大企業まで対象
  • 支給額は制度ごとに定額

外国人採用に関連する助成金の多くは、雇用保険に加入している企業であれば対象となります。支給額は対象経費に対して一定の補助率で計算されることが一般的であり、事前に支給額の概算を把握することが可能です。各種の助成金制度について、無料で案内を受けることができます。

補助金の特徴と申請条件

補助金は、経済産業省や自治体が産業振興や地域活性化を目的に支給する制度です。助成金との最大の違いは、予算の範囲内で配分されるため、申請しても採択されない可能性があることです。

補助金の主な特徴
  • 予算範囲内での配分
  • 採択されない場合がある
  • 競争的な審査プロセス
  • 支給額は企業ごとに異なる
  • 手続きが複雑

補助金は助成金よりも支給額が大きい傾向にありますが、受給までの手続きが煩雑であり、採択から支給までに半年以上かかるケースも珍しくありません。地域や産業によって対象が限定される場合も多いため、事前の確認が重要です。

助成金と補助金の選択基準

外国人採用の支援を検討する際、どちらの制度を活用すべきかの判断基準を以下の表にまとめました。

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選択基準助成金が適している補助金が適している
確実性要件を満たせば受給可能性が高い審査があり採択されない可能性がある
支給額の確定申請前に支給額がほぼ確定採択時に支給額が決定される
手続きの簡潔性比較的シンプルな手続き事業計画書など詳細な書類が必要
対象経費雇用関連経費が中心設備投資など広範な経費が対象
受給までの期間数ヶ月程度半年~1年以上かかる場合も
企業規模中小企業から大企業まで対象地域や産業に限定される場合が多い

外国人採用の初期段階では、確実性と手続きの簡潔性から、まず助成金の活用を検討することが一般的です。その後、事業拡大に伴い、補助金による大規模な設備投資を検討するという段階的なアプローチが有効といえるでしょう。

外国人採用助成金の申請手順と注意点

ステップ1から4までの流れを示す円形アイコンと手の写真。助成金申請手順やプロセス解説を表すイメージ

助成金の申請は、制度ごとに異なる手続きを経る必要がありますが、基本的な流れは共通する部分があります。申請前の要件確認から支給決定までの各段階において、重要なポイントと注意点を理解することで、スムーズな申請と確実な支給が実現するのです。ここでは、外国人採用助成金の申請プロセスを詳しく説明いたします。

申請前に確認すべき要件チェックリスト

助成金の申請に進む前に、自社が制度の対象となるかどうかを正確に確認することが重要です。要件を満たしていない場合、申請しても採択されないばかりか、手間と時間を無駄にすることになります。以下のチェックリストを活用して、申請前の準備を整えましょう。

助成金申請前の確認項目
雇用保険に加入している
外国人労働者の在留資格が有効である
6ヶ月以上の雇用実績または雇用予定がある
労働条件が明示されている
就業規則が整備されている
過去3年以内に不正受給がない
労働基準法等の違反がない

これらの要件を満たしていることを確認した上で、申請先のハローワークや労働局に相談することが望ましいでしょう。事前相談により、自社の状況に最適な制度を提案してもらえるほか、申請に必要な書類や手続きについて詳しい説明を受けることが可能です。各機関では、オンラインでの相談も開始されており、より簡単にサポートを受けられるようになっています。求職者向けの窓口も設置するなど、参加を促進するための取り組みを行っています。

申請に必要な書類と準備手順

助成金の申請には、複数の書類を準備する必要があります。制度ごとに異なる書類が必要となるため、事前に確認して計画的に準備することが大切です。以下は、一般的な申請に必要な書類をまとめたものです。

申請に必要な主な書類
  • 助成金申請書(制度ごとの様式)
  • 雇用契約書
  • 給与台帳
  • 出勤簿
  • 在留資格認定証明書
  • 事業計画書(制度によって異なる)
  • 社会保険加入証明書
  • 労働条件明示書

これらの書類は、事業所の所在地を管轄するハローワークや労働局で入手できます。また、厚生労働省のウェブサイトからダウンロードすることができます。書類作成時には、記入漏れや誤記がないよう注意が必要です。特に、雇用契約書や給与台帳などの実績書類は、正確性が厳しく審査されるため、丁寧に作成することが重要です。個人情報保護に配慮しながら、必要な情報を正確に記載することが求められます。事業者が用意する書類には、休業に関する記録も含まれる場合があります。

申請後の手続きと受給までの流れ

申請書類を提出した後、支給決定までの流れを理解しておくことで、支給時期の予測や追加書類の準備に役立ちます。一般的な流れを以下に示しましょう。なお、各助成金制度ごとの具体的な手続きの流れについては、次のセクションで詳しく説明いたします。

申請後の手続きと受給までの流れ
  1. 申請書類の提出
  2. 書類審査(2~4週間)
  3. 追加書類の提出依頼(必要に応じて)
  4. 実績確認(現地調査を含む場合もある)
  5. 支給適格性の判定
  6. 支給決定通知書の発行
  7. 指定口座への振込

申請から支給決定まで、通常は2ヶ月から3ヶ月程度の期間が必要です。ただし、書類不備や追加情報の提出が必要な場合、期間が延長される傾向にあります。支給決定後は、支給決定通知書が送付され、指定した銀行口座に助成金が入金されます。入金時期は、支給決定後1週間から2週間程度が一般的です。以降、受給後の義務について、十分に理解しておくことが重要です。

外国人採用で利用できる主要助成金制度

助成金や支援金をイメージした箱と紙幣・硬貨の写真。企業の資金支援や補助金を表すビジュアル

前のセクションで、助成金申請の一般的な流れと注意点を理解しました。ここでは、外国人採用に直結する5つの主要な助成金制度を詳しく説明いたします。各制度の特徴、支給額、対象要件、および各制度ごとの具体的な手続きの流れを理解することで、自社に最適な制度を選択できるようになります。

人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)

外国人労働者を受け入れる際、最も大きな課題となるのが就労環境の整備です。言語の違い、文化的背景、生活習慣の相違など、外国人労働者が安心して働くための環境づくりには相応のコストがかかります。人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)は、こうした就労環境整備に直結した経費を支援する制度であり、外国人材の定着率向上に極めて有効です

項目内容
助成金の目的外国人労働者の就労環境整備に要した経費を支援し、定着率向上を実現
対象となる経費日本語研修費
生活相談員配置費
宿泊施設研修費
職場環境改善工事
就労ルール説明資料作成費
通訳配置費
受給要件外国人労働者を雇用していること
就労環境整備に係る経費を支出していること
雇用保険に加入していること
事前計画の認定を得ていること
支給額対象経費の3分の2(最大72万円)
対象企業中小企業から大企業まで、業種制限なし
申請先事業所所在地を管轄するハローワーク

この制度の特徴は、事前計画の認定を受けることで、その後の経費支出に対して確実に助成が受けられる点です

例えば、外国人労働者向けの日本語研修に100万円を支出した場合、約67万円が支給されることになります。複数の外国人労働者を受け入れる場合、この制度を活用することで、受け入れ体制の整備に要する経費を大幅に削減できるのです。就労環境の整備により、従業員の離職率を低下させることができ、安定した人材確保が実現します。

手続きの流れ
  1. 事前計画の認定申請
  2. 認定取得
  3. 経費支出
  4. 支給申請書提出
  5. 支給決定

申請時には、実施予定の就労環境整備内容を詳細に記載した計画書を提出する必要があり、ハローワークの審査を経て認定が決定されます。認定後は、計画に基づいて経費を支出し、実績報告書類を提出することで支給が確定されます。

参考:厚生労働省 人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)

キャリアアップ助成金(正社員化コース)

外国人採用を成功させるためには、単なる短期的な人員確保ではなく、長期的な人材育成と定着が不可欠です。キャリアアップ助成金(正社員化コース)は、有期契約労働者を正社員に転換した場合に支給される制度で、外国人労働者も対象となります。この制度を活用することで、外国人材を企業の中核人材として育成する際の経済的負担を軽減できます。

項目内容
助成金の目的有期契約労働者から正社員への転換を促進し、労働者の処遇改善を実現
対象者6ヶ月以上の有期雇用実績がある外国人労働者
雇用保険被保険者
受給要件正社員への転換
転換前後での賃金増加(3%以上)
転換後6ヶ月以上の継続雇用
労働条件の明示
支給額1人あたり42万円(大企業は30万円)
対象企業中小企業から大企業まで
申請先事業所所在地を管轄する労働局

この制度の活用方法として、外国人労働者をまず有期契約で採用し、6ヶ月間の実績を通じて適性を確認した上で、正社員に転換するというアプローチが考えられます。

例えば、月給25万円の有期契約社員を月給26万円の正社員に転換した場合、この条件を満たすことで42万円が支給されます。支給要件として重要なのは、転換前後で賃金が3%以上増加していることです。これにより、単なる雇用形態の変更ではなく、実質的な処遇改善が実現していることが求められます。無期雇用への転換により、従業員の主体性が高まり、職務遂行能力の向上が期待できます。

手続きの流れ
  1. 有期雇用契約6ヶ月以上
  2. 正社員転換実施
  3. 6ヶ月以上継続雇用
  4. 支給申請
  5. 支給決定

申請には、転換前の有期雇用契約書、転換後の正社員契約書、給与台帳などの書類が必要となり、労働局の審査を経て支給が決定されます。

参考:厚生労働省 キャリアアップ助成金のご案内(令和7年度版)

トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)

外国人労働者の採用には、言語能力、文化的適応、業務遂行能力など、多くの不確定要素が存在します。トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)は、ハローワークの紹介により試験的に労働者を雇用した場合に支給される制度で、採用リスクを低減させるために極めて有効です

項目内容
助成金の目的トライアル雇用期間中の人件費の一部を支援し、採用リスクを軽減
対象者ハローワーク紹介による外国人労働者
就職困難者
新卒者等
受給要件ハローワークからの紹介
3ヶ月間のトライアル雇用契約
雇用保険加入
就業規則適用
支給額月額4万円(最大12万円、3ヶ月間)
対象企業中小企業から大企業まで
申請先ハローワーク

この制度の活用方法として、採用に不安がある外国人労働者をまず3ヶ月間のトライアル期間で雇用し、実際の業務遂行能力、職場への適応度、言語コミュニケーション能力を評価するというアプローチが有効です。

例えば、月給20万円で3ヶ月間のトライアル雇用を実施した場合、月額4万円×3ヶ月=12万円が支給されるため、実質的な人件費負担は月給16万円相当となります。トライアル期間を通じて、外国人労働者の適性を十分に評価した上で、本採用を判断することで、採用後のミスマッチを防ぐことができるのです。求職者としての経験やスキルを一定期間で対応できるかを判断し、正規雇用への転換を検討することが重要です。

手続きの流れ
  1. ハローワークへの求人申し込み
  2. 外国人紹介
  3. トライアル雇用契約締結
  4. 3ヶ月間の雇用
  5. 支給申請
  6. 支給決定

申請手続きはハローワークが中心となるため、企業の事務負担が比較的軽いことが特徴です。ただし、この制度を利用するためには、必ずハローワークを通じて外国人労働者を紹介してもらう必要があり、自社で直接採用した外国人は対象外となる点に注意が必要です。

参考:厚生労働省 トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)

地域雇用開発助成金(地域雇用開発コース)

地方の人手不足は深刻であり、多くの地域で雇用情勢が厳しい状況が続いています。地域雇用開発助成金(地域雇用開発コース)は、こうした雇用情勢が厳しい指定地域での新規雇用を支援する制度で、外国人材の受け入れを通じて地域経済の活性化に貢献できます

項目内容
助成金の目的指定地域での新規雇用を促進し、地域経済の活性化と雇用創出を実現
対象地域厚生労働省により指定された雇用情勢が厳しい地域
受給要件指定地域内での事業所での新規雇用
1年以上の継続雇用見込み
雇用保険加入
支給額1人あたり
最大150万円(中小企業)
最大100万円(大企業)
対象企業中小企業、大企業
申請先事業所所在地を管轄するハローワーク

この制度の最大の特徴は、支給額が他の助成金制度と比較して極めて大きい点です

例えば、地方の指定地域で外国人労働者5人を採用した場合、最大750万円(150万円×5人)の助成が受けられる可能性があります。ただし、この制度を利用するためには、対象地域が厚生労働省により指定されていることが前提条件となります。指定地域の確認は、事業所所在地を管轄するハローワークで行うことが可能です。事業主は、方針として地域への配慮を示し、推進することが求められます。別途、雇用調整助成金や休業手当に関する制度も知っておくことで、より包括的な人材確保戦略が実現するのです。

手続きの流れ
  1. 指定地域での事業計画申告
  2. 事前認定申請
  3. 認定取得
  4. 新規雇用実施
  5. 支給申請
  6. 支給決定

申請時には、事業計画書を提出し、事前の認定を得た上で採用を進める必要があります。認定後、新規雇用を実施し、1年以上の継続雇用実績を積み重ねた上で、支給申請を行う流れになります。地方での人材確保に課題を抱える企業にとって、この制度は極めて有効な支援制度といえるでしょう。

参考:厚生労働省 地域雇用開発助成金(地域雇用開発コース)

人材開発支援助成金(人材育成支援コース)

外国人労働者の受け入れに際して、言語能力の向上や職業技能の習得は、生産性向上と定着率向上に直結する重要な投資です。人材開発支援助成金(人材育成支援コース)は、労働者の職業訓練に要した経費を支援する制度で、外国人労働者に対する訓練も対象となります。この制度を活用することで、外国人材の育成に要する経費負担を軽減できます。

項目内容
助成金の目的職業訓練に要した経費と訓練期間中の賃金を支援し、労働者のスキル向上を実現
対象訓練職業訓練校での訓練
企業内訓練
通信訓練
教育訓練給付対象講座
受給要件訓練計画の事前認定
訓練の実施
雇用保険加入
訓練修了後の1年以上雇用継続
支給額訓練時間に応じて決定
訓練経費の一部+訓練期間中の賃金(最大数百万円)
対象企業中小企業から大企業まで
申請先事業所所在地を管轄する労働局

この制度の活用方法として、外国人労働者の採用直後に日本語研修を実施したり、職業訓練校での技能習得訓練を実施したりすることが考えられるでしょう。

例えば、6ヶ月間の日本語研修プログラム(訓練時間600時間)を実施した場合、訓練経費と訓練期間中の賃金の一部が支給されることになるのです。支給額は訓練時間と訓練内容により異なり、総額で数十万円から数百万円に達する場合も考えられます。技術習得のための訓練を登録し、サービス提供機関と委託契約を結ぶことで、より効果的な人材育成が可能となります。短時間の訓練から一定期間にわたる訓練まで、種類が豊富であり、企業のニーズに対応できるのです。

手続きの流れ
  1. 訓練計画書作成
  2. 認定申請
  3. 認定取得
  4. 訓練実施
  5. 訓練修了
  6. 支給申請
  7. 支給決定

この制度の重要なポイントは、訓練実施前に訓練計画の認定を得る必要があることです。訓練計画書には、訓練の目的、対象者、訓練内容、訓練期間、訓練経費などを詳細に記載する必要があり、労働局の審査を経て認定が決定されます。認定後、計画に基づいて訓練を実施し、訓練修了後に支給申請を行う流れになります。外国人労働者のスキル向上と生産性向上を目指す企業にとって、この制度は極めて有効な投資手段といえるのです。

参考:厚生労働省 人材開発支援助成金

外国人採用助成金を活用する際の重要ポイント

カラフルな付箋を掲示板に並べて貼った写真。メモやタスク整理、情報まとめを表すイメージ

助成金の申請と受給は、単なる手続きではなく、企業の採用戦略全体に大きな影響を与えます。助成金を効果的に活用するためには、申請時の注意点、受給後の義務、そしてトラブルを防ぐための対策を事前に理解しておくことが不可欠です。ここでは、外国人採用助成金を活用する際に押さえておくべき重要なポイントを詳しく説明いたします。

不正受給を防ぐための重要な確認事項

助成金の不正受給は、企業に対して深刻な法的責任をもたらします。故意であるかないかを問わず、不正受給が発覚した場合、全額返納に加えて延滞金が発生し、会社の信用が大きく損なわれるのです。不正受給を防ぐためには、申請段階から細心の注意が必要です。

不正受給を防ぐための確認事項
虚偽の書類提出がない
給与台帳と実際の支払いが一致している
雇用契約書と実際の雇用形態が一致している
在留資格の有効期限内である
労働基準法等の違反がない
社会保険加入が適切である
出勤簿と給与支払いが整合している
訓練実績が適切に記録されている

これらの項目は、助成金の審査で厳しくチェックされます。特に、給与台帳と実際の給与支払いの整合性、出勤簿の記載内容は、不正受給の判定において最も重視される項目です。申請前に、これらの書類が完全に整備されているか、複数回にわたって確認することが重要です。法律に基づいた措置を講じ、解雇などの事情が発生しないよう維持することが求められます。

助成金申請時の書類作成のポイント

助成金の申請書類は、正確性と完全性が求められます。記入漏れや誤記があると、審査が遅延したり、追加書類の提出を求められたりする可能性があります。書類作成時に押さえておくべきポイントを以下にまとめました。

書類作成時の重要ポイント
  • 指定された様式をきちんと使うこと
  • 記入漏れや誤記がないか、何度も確認すること
  • 日付は正確に記入すること
  • 代表者の印や署名は必ず押印すること
  • 添付書類がすべて揃っているか確認すること
  • 金額計算に誤りがないかチェックすること
  • 書類の有効期限を確認すること
  • 複写書類が鮮明に写っているかを確認すること

特に申請書の記入欄は、各項目の意味を理解のうえ、正しく記入することが重要です。不明な点があれば、ハローワークや労働局に事前に相談しましょう。また、社会保険労務士や弁護士など専門家に書類を見てもらうことで、申請の精度を高めることができます。

なお、助成金には1号から最大で57万円までの上限がありますが、条件によっては加算される場合もあるため、請求内容を正確に把握して申請することが重要です

受給後の報告義務と継続要件

助成金を受給した後も、企業には複数の報告義務と継続要件が課せられます。いずれの助成金であっても、これらの義務を果たさない場合、返納を求められる可能性があります。受給後の対応を適切に行うことが、助成金活用の成功を左右するのです。

受給後の主な報告義務と継続要件
  • 支給対象者の継続雇用(支給対象者により異なる)
  • 定期的な実績報告書の提出
  • 労働条件変更時の届け出
  • 離職者発生時の報告
  • 訓練修了後の雇用継続(人材開発支援助成金の場合)
  • 就労環境整備の継続(人材確保等支援助成金の場合)

これらの要件は、支給決定通知書に記載されています。支給決定後は、必ず通知書の内容を確認し、企業全体で義務事項を把握しておくことが重要です。特に、継続雇用要件がある場合、支給対象者の離職は返納につながる可能性があるため、労務管理を厳格に行わなければなりません。

本記事で紹介した内容以外にも、定期的な実績報告書の提出期限については、極めて重要といえます。期限を過ぎての提出は、返納を求められる理由となるため、スケジュール管理を徹底することが不可欠です。経過を定期的に設定し、社内で共有することで、終了までの一覧を管理することが有効といえるでしょう。非正規雇用から正規雇用への転換時には、職種や型が変わる場合があるため、改定された内容を確認することが重要です。

まとめ|外国人採用助成金を活用した採用戦略

多国籍の人々がネットワークでつながり、中央に握手が映るビジネス連携と国際人材活用のイメージ

人手不足が深刻化する日本企業にとって、外国人採用は経営課題の解決策として急速に重要性を増しています。本記事では、外国人採用に関連する複数の助成金制度、申請プロセス、活用のポイントについて詳しく解説してきました。外国人採用にかかるコストは相応のものがありますが、適切な助成金を活用することで、その負担を大幅に軽減することが可能です。

助成金を活用する際の最も重要なポイントは、事前準備と正確な書類作成です。要件確認、書類整備、ハローワークや労働局への事前相談を十分に行うことで、申請の成功率を大幅に高めることができます。本記事で紹介した制度や活用方法を参考に、自社に最適な助成金制度を選択し、効果的な外国人採用戦略を実現してください。

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この記事を書いた人

三木 雅史(Masafumi Miki) 株式会社E-MAN会長
1973年兵庫県生まれ / 慶応義塾大学法学部法学科卒
・25歳で起業 / デジタルガレージ / 電通の孫請でシステム開発
・web通販事業を手掛ける
・2006年にオンライン英会話を日本で初めて事業化
・2019年外国人の日本語教育を簡単、安価にするため
 日本語eラーニングシステムを開発、1万人超の外国人が日々学習中

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