フィリピン人材×制度徹底比較。技能実習・特定技能・育成就労の違いと送り出し機関の新しい役割とは

特定技能 技能実習 違い

日本は現在、急速な少子高齢化とそれに伴う生産年齢人口の減少により、深刻な人手不足に直面しています。この状況において、外国人材の受け入れは、多くの企業にとって事業継続と成長のための不可欠な経営戦略となっています。ただ、制度が複雑すぎて、どれを活用すれば良いのか分からないとお困りの企業も多いのではないでしょうか?この記事では、外国人を受け入れるための制度の詳細と、外国人材の中でもフィリピン人材に焦点を当て、深掘りしていきます

この記事を通して、制度の違いを正しく理解し、自社のニーズに合った外国人材受け入れを探ってみてください。

目次

特定技能と技能実習の目的・要件・違いを徹底比較

比較と書かれた木のブロックを持っている男性

日本で外国人が働くための主要な在留資格として、「技能実習」と「特定技能」があります。これら二つの制度は、その目的、在留要件、対象職種、転職の可否などが大きく異なり、受け入れを検討する企業にとっては複雑に感じられるかもしれません。まず、二つの制度がそれぞれどのような理由で創設され、どのような位置づけにあるのか、前提となる基本的な概要から確認していきましょう。

技能実習制度の目的と概要

技能実習制度は1993年に創設され、日本の企業において技能・技術・知識を学び、それを母国の経済発展に活かしてもらうことを目的としています。制度の法的な位置づけとしては、労働力の確保ではなく「国際貢献」や「国際協力」にあります。

そのため、技能実習生は「労働者」というよりも「実習生」としての立場が重視されます。日本企業と雇用契約を結び、労働基準法などの適用は受けますが、制度の枠組みとしては、あくまで日本人や企業の持つ技術や知識を学ぶために来日しているという位置づけです。

技能実習は、習熟度に応じて「技能実習1号」から「2号」、さらに条件を満たした場合は「3号」へと段階的に移行していく制度設計となっており、実習内容の進展に伴って滞在期間が延長される仕組みです。

原則として転職は認められず、家族帯同も不可とされています。対象職種は漁業、農業、建設、食品製造、繊維・衣服、機械・金属など、約90職種165作業と多岐にわたりますが、来日時点で専門的な技能は求められません。 

参考:厚生労働省 外国人技能実習制度について 

特定技能制度の目的と概要

一方で、2019年4月創設の特定技能制度は、外国人人材の就労を目的とした在留資格です。国内の人手不足が深刻な産業分野や業種において、一定の専門性や技能を持つ外国人を即戦力として就労させることを目的としています。

この制度の最大の目的は、特定の産業や業種における労働力不足の解消です。そのため、来日する外国人には即戦力としての実務能力が求められています。そのためこの在留資格を取得するためには、日本語能力ならびに対象となる分野の技能証明の試験への合格が必要です。

特定技能には、基礎的な技能を持つ人を対象とした「特定技能1号」、さらに熟練した技能を持つ人材が対象となる「特定技能2号」の2種類があり、いずれも日本経済を支える労働力として期待されています。特定技能1号は通算で最長5年まで就労が可能で、同一業務区分内であれば転職が認められています。さらに、特定技能2号へ移行すれば在留期間に上限がなく、要件を満たし続ける限り永続的に日本国内で働くことが可能となり、永住権取得の可能性も出てきます。特定技能2号では、要件を満たせば家族帯同も認められます。特定技能1号の対象分野は、介護、ビルクリーニング、建設、造船・舶用工業、工業製品製造業、自動車整備、航空、宿泊、自動車運送業、鉄道、漁業、農業、飲食料品製造業、外食業、林業、木材産業の16分野(2024年4月時点)に拡大しています。

参考:出入国在留管理庁 特定技能制度 

受け入れる企業側の義務も異なります。特定技能では、外国人労働者が安定して業務や生活を送れるよう「支援計画」を作成・実施する義務があり、これを国が認定した「登録支援機関」に委託することも可能です。技能実習では、「監理団体」と呼ばれる非営利法人の監督・指導のもとで実習を実施し、企業は「技能実習計画」を作成し、外国人技能実習機構(OTIT)から認定を受ける必要があります。

特定技能・技能実習制度の今後の動向

人権尊重をイメージしたハートと人型が描かれた木のブロック

外国人労働者受け入れのための制度は、日本の社会状況の変化に合わせて、現在大きな変革期を迎えています。特に技能実習制度は、今後の動向を注意深く見ていく必要があります。

技能実習制度の廃止と新制度「育成就労制度」の創設

従来の技能実習制度は「国際貢献」を目的としながらも、その運用において多くの人権問題が報告されてきました。具体的には、パスポートの取り上げ、強制貯金、長時間の時間外労働、保証金・違約金による身柄拘束、ハラスメント、負傷や妊娠した場合の強制帰国といった違法行為が多発していました。これらの問題は、国際社会からの厳しい批判を招き、2022年には国連の人種差別撤廃委員会から「劣悪かつ虐待的、搾取的な慣行」と指摘され、米国務省の報告書では「強制労働」と表現されるなど、制度の抜本的な見直しが強く求められる状況となりました。このような背景が、新たな制度への移行を促す主要な動機となりました。 

これらの国際的な批判と国内の課題を受け、2024年6月14日に成立した改正入管法により、現行の技能実習制度は2027年4月を目途に廃止され、新たに「育成就労制度」が創設される予定です。この新制度は、従来の技能移転重視の目的から一歩進み、「人材育成」と「人材確保」の両立を明確に打ち出し、外国人労働者としての「人権保護」を制度の中核に据えています。

この制度変革は、「国際貢献」という名目から、より実質的な「人材育成」と「人材確保」へと目的が大きく転換したことを意味し、同時に外国人材の人権尊重がこれまで以上に重視されるということを示しています。日本が外国人材を単なる一時的な労働力としてではなく、長期的なパートナーとして受け入れ、その人権を尊重する方向に大きく舵を切ったことは、送り出し機関にとっても重要な意味を持ちます。送り出し機関は、この変化を深く理解し、倫理的な募集・教育・支援体制をこれまで以上に強化し、日本企業に対しても人権を尊重した受け入れ環境の整備を積極的に促す責任を負うことになります。

新しい育成就労制度の主な変更点は以下の通りです。

転職の一定容認

就労開始から1年以上経過し、かつ支援計画の要件を満たせば、同一の分野への転職が可能となる見込みです。これは、労働者の選択の自由と人権を尊重する大きな一歩であり、受け入れ企業にとっては、人材の定着のために、より魅力的な労働環境や公正な評価制度を整備する必要性が高まることを意味します。  

特定技能への移行支援

最長3年間の就労を通じて特定技能1号の水準到達を目指し、移行手続きを円滑化する枠組みが盛り込まれています。これにより、外国人材は日本での長期的なキャリア形成が可能となり、企業は育成した人材を継続して雇用できる機会が広がります。

日本語教育の義務化

100時間以上の日本語教育が義務付けられ、よりスムーズな日本での生活・就労を支援します。これは、外国人材の日本社会への適応を促進し、職場でのコミュニケーションを円滑にする上で非常に重要な変更点です。

監理支援機関の要件強化

監理団体は「監理支援機関」へ名称変更し、外部監査人の設置が義務付けられるなど、中立性や専門性の担保が求められます。これにより、不正行為の防止と適正な制度運用が強化されることが期待されます。  

大都市圏厳格化と地方優遇政策

賃金が高い都市部に外国人材が集中することを防ぐため、地方企業の受け入れ人数枠を大都市圏より拡大する案も検討されています。これは、地方の人手不足解消に貢献し、地域経済の活性化を促すことを目指しています。

特定技能と技能実習の違いだけでも複雑ですが、育成就労制度の導入と、その2027年4月までの移行期間が同時に進行していることで、制度全体はさらに複雑化しています。これにより、企業も労働者も、どの制度が自分たちに適しているのか、どのような要件があるのかを正確に理解することが極めて困難な状況になっています。送り出し機関は、これらの複雑な制度変更を常に最新の状態で把握し、誤解やトラブルを防ぐために、企業と労働者の双方に対して、正確で分かりやすい情報を提供し続けることが、これまで以上に重要な役割となっています。  

育成就労制度は、2025年以降制度案の詳細や運用要領、Q&A等が順次公表される時期に入ります。そのため外国人の人材の受け入れを検討されている企業は、早い段階から法務省出入国在留管理庁の公式ウェブサイトで最新情報をこまめに確認してください。

参考:出入国管理庁HP 

特定技能制度の最新拡大状況

特定技能1号の受入れ分野として、2024年4月19日の省令改正により、「自動車運送業」「鉄道」「林業」「木材産業」の4分野が正式に追加されました。これにより、従来の12分野から16分野へ拡大し、多様な業界で即戦力となる人材が受け入れられるようになっています

外国人材の支援体制も強化されており、登録支援機関には、日本語教育の質の向上、精神的サポート体制の明示、転職支援体制の整備など、「より手厚い支援体制」が義務化されました。また、受け入れ企業側の書類作成負担軽減のため、「受入れ状況の届出」と「支援状況の届出」が統合される動きもあり、手続きの簡素化が進められています。

参考:出入国在留管理庁 改正法の概要(育成就労制度の創設等)ならびに育成就労制度・特定技能制度Q&A

日本の未来を支えるフィリピン人材と送り出し機関の役割

マクタン・シュラインのフィリピン国旗

近年フィリピンは日本への主要な労働力供給国の一つとしてその存在感を増しています。外国人労働者の国籍別の内訳を見ると、フィリピン人の割合はベトナム人、中国人に次いで3番目に多く、全体の11.3%(20.6万人)を占めています。直近3年間では、上位3カ国の中で最も高い増加率を示しており、日本の労働市場におけるフィリピン人材の重要性は一層高まっています。  

フィリピンが日本の労働力不足解消において戦略的なパートナーであることは、これらの具体的なデータから明らかです。日本の人手不足が深刻化し、外国人材の受け入れが企業の経営戦略の要となっている現状において、フィリピン人労働者はその規模と増加率において、日本の長期的な労働力安定と経済成長を支える上で欠かせない存在となっています。送り出し機関は、この相互利益の関係を円滑に進め、両国の発展に貢献する重要な役割を担っています。

フィリピン人材が選ばれる理由

フィリピン人労働者が日本での就労を選ぶ背景には、経済的な動機が大きく影響しています。フィリピンの平均月収が約11万円であるのに対し、日本の平均月収は36.9万円と約3分の1程度の水準であり、この顕著な賃金格差は日本が魅力的な就労先である主要な要因となっています。  

しかし、フィリピン人労働者が日本を選ぶ理由は経済的な側面だけにとどまりません。日本の「住みやすさ」(生活の便利さ、安全性、公共交通機関の正確さなど)や、「日本人の礼儀正しさ、規則を守る姿勢、外国人を歓迎する態度」も大きな魅力として挙げられています。さらに、若い世代においては、日本のアニメや漫画、アイドルといったサブカルチャーが日本への興味の大きなきっかけとなっていることもあげられます。  

これらの要因は、フィリピン人労働者が単に高い賃金を求めているだけでなく、質の高い生活環境、文化的な親和性、そして安心して働ける場所を重視していることを示しています。この事実は、送り出し機関が単なる求職者と求人のマッチングに留まらず、日本での生活全般にわたる包括的なサポートを提供し、彼らが安心して長期的に働ける環境を整えることが重要であることを意味します。また、日本企業側にも、単なる労働力としてではなく、一人の人間として尊重し、文化的な理解を深める努力が求められることを示唆しており、これが外国人材の定着率向上に繋がる基盤となります。

フィリピン政府の厳格な保護体制と送り出し機関の責任

送り出し機関で働く人々

フィリピン政府は、海外で働く自国民(OFW: Overseas Filipino Workers)の権利保護と福祉向上を最優先課題としています。それぞれの組織の役割を見ていきましょう。

DMW(旧POEA)とMWOの役割:フィリピン人労働者の権利保護

フィリピン人労働者の保護体制の中核を担うのが、フィリピン移住労働者省(DMW: Department of Migrant Workers)です。DMWは2021年12月30日に署名されたDMW法(共和国法第11641号)に基づき2022年2月3日に設立され、旧POEAを含む7つの機関の権限と機能を統合し、海外雇用を一元的に管理・監督しています。  

DMWの海外出先機関であるMWO(Migrant Workers Office、旧POLO)は、日本国内では東京と大阪に設置されており、フィリピン人労働者の雇用契約の認証、労働条件の審査、トラブル時の相談対応などを担っています。MWOの役割には、外国人雇用主の認定・登録、人材要請の承認、雇用契約の評価・処理、出国労働者の支援、市場調査などが含まれます。  

日本企業がフィリピン人を採用する際には、MWOへの申請と認証が義務付けられており、これはフィリピン人労働者の不当な搾取や違法な就労から保護するための重要な措置です。DMWは、外国企業によるフィリピン人の直接雇用を原則禁止しており、DMW認定の送り出し機関を介した採用が必須となります。これは、労働者が海外雇用許可証(OEC)を取得するためにも不可欠です。一部の高度人材を除き、このルールは厳格に適用されます。  

MWO申請手続きの重要性と複雑性

MWOへの申請手続きは非常に複雑であり、専門的な知識と経験が求められます。雇用契約の内容がフィリピン政府の基準を満たしているか厳しく審査され、承認が得られなければ募集活動に進むことはできません。  

フィリピン政府がOFWの権利保護と福祉向上を最優先課題とし、DMW/MWOを通じて厳格な保護体制を構築していることは、倫理的な送り出し機関の不可欠性を高めています。直接雇用を原則禁止し、海外雇用許可証(OEC)の取得を義務付けている点、DMWが募集規則違反の行政事件を管轄し、MWOが苦情対応を行う点は、フィリピン政府が自国民の保護に極めて積極的であることを示しています。この厳格な保護体制は、日本企業がフィリピン人材を受け入れる際に、単なる手続き上の要件としてではなく、倫理的な採用と法的リスク回避のために、DMW認定の送り出し機関との連携が不可欠であることを意味します。送り出し機関としては、この政府の保護政策と連携し、透明性と説明責任を果たすことで、信頼性を確立する機会となります。  

信頼できる送り出し機関の選定基準

残念ながら、一部には悪質な送り出し機関も存在します。彼らは、技能実習生に高額な入校料金や手数料を請求し、多額の借金を負わせたり、本人の署名が必要な申請書類を偽造したり、過剰な接待やキックバックを行うことがあります。これらの行為は、労働者の失踪や不法就労、日本でのトラブルの温床となり、結果として受け入れ企業にも大きな負担とリスクをもたらします。また、日本語教育が短期間で行われ質が低い、送り出し後の支援が不十分といった問題も、悪質機関に共通する特徴です。MWOが不適切な企業をブラックリストに載せる可能性も指摘されており、企業側の信用や企業価値が下がるリスクも無視できません。  

悪質な送り出し機関の存在は、日本企業に適性評価手続きの重要性を強く示唆します。これらの問題行為は、フィリピン人労働者に多大な苦痛を与えるだけでなく、受け入れ企業側にも「実習生が借金を背負い、失踪や不法就労に追い込まれる」「職場内でトラブルを引き起こす」「受け入れ企業も困難な状況に直面し、実習生との間でトラブルが発生する可能性が高まる」といった直接的な悪影響を及ぼします。これは、日本企業が送り出し機関を選ぶ際に、単に「人材を送り出す」能力だけでなく、その機関が倫理的かつ法令を遵守した運営を行っているかを徹底的に見極める適切な見極めが不可欠であることを意味します。送り出し機関としては、自社の透明性と倫理観を前面に出し、悪質業者との差別化を図ることが求められます。  

信頼できる送り出し機関を見極めるために、以下の点を確認しましょう。

信頼できる送り出し機関を見極めるポイント

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確認ポイント信頼できる機関の特徴避けるべき機関の特徴
DMW/POEA認定の有無DMWによる正式な認定・登録を受けている  無認定または登録抹消された機関
費用体系の透明性募集から支援までの費用が明確で、不当な請求がない  高額な入校料金や手数料を不透明な形で請求する  
事前教育の質と期間日本語や生活習慣に関する質の高い事前研修を十分な期間実施  日本語教育が短期間で質が低い  
日本での支援体制入国後の生活・就労支援が明確で、責任ある対応が期待できる  送り出し後の支援が不十分、または無責任な対応  
不正行為の有無申請書類の偽造、過剰な接待、キックバックがない  偽の筆跡の申請書類、不正なキックバックの勧誘がある  
実績と評判過去の受け入れ企業や労働者からの評価が高い  トラブルの報告が多い、評判が悪い

実際の体験談 

帰国した技能実習生への調査では、「修得した技能」(69.1%)、「日本での生活経験」(62.2%)、「日本語能力の修得」(60.8%)、「日本で貯めたお金」(59.4%)が、日本での経験を通じて特に役立ったと回答されています。フィリピンでは祖父母と同居し介護する文化があるため、介護の仕事は「みんなファミリーだと思っています」と馴染みやすいと感じる人もいます。実際に、フィリピンで看護師や医薬品セールスの経験を持つ人材が、その専門知識を活かして日本の介護現場で服薬介助などに貢献する事例も報告されています。また、タガログ語での接客やフィリピン現地での仕入れ業務、SNS運用など、多様なスキルで企業の業務改善や新規顧客獲得に貢献する事例もあります。  

一方で、日本での生活には挑戦も伴います。多くのフィリピン人労働者が「家族と離れて寂しかった」と回答しており、これが最大の困難の一つであることが示されています。また、来日当初は日本語能力が不十分で、職場のスタッフの早口な日本語を理解することや、自分の伝えたいことを言葉にすることに苦労したという体験談もあります。生活費の高さや、長時間労働によって家族と過ごす時間が減少することへの懸念も指摘されています。残念ながら、日本語が話せないことでスタッフから心ない言葉をかけられたり、劣悪な住環境や不当な扱いを受けたり、違法な労働を強いられたりといった人権侵害の事例も報告されており、これは制度の改善が急務であることを示しています。  

経済的誘因だけでなく、日本の生活環境や文化への適応が、フィリピン人材の定着と活躍の鍵を握っています。フィリピン人労働者が日本の「住みやすさ」や「文化的な親和性」を高く評価していることは、彼らが単に経済的利益だけでなく、生活の質や安心感を求めていることを示しています。このため、送り出し機関は、日本での生活や文化に関する事前教育を充実させ、入国後の生活サポート(住居、役所手続き、医療機関の情報提供など)を徹底することで、彼らが日本にスムーズに適応し、長期的に安心して働ける環境を整えることが極めて重要です。  

異文化理解とコミュニケーションの重要性は、受け入れ企業と送り出し機関双方に求められます。フィリピン人労働者が直面する言語の壁や文化の違いは、職場でのコミュニケーションや生活全般に影響を及ぼします。企業側は、日本語教育の機会提供や多言語対応の支援、異文化理解を深めるための社内研修などを積極的に行うことで、外国人材が安心して働ける環境を構築する必要があります。送り出し機関は、候補者の日本語能力を正確に評価し、必要に応じて来日前から集中的な日本語教育を提供することで、日本でのコミュニケーションギャップを最小限に抑える役割を果たすべきです。  

送り出し機関の役割の再定義

変化する制度と現場のニーズに応えるため、送り出し機関は「人材育成」と「定着支援」を強化する必要があります。技能実習制度の廃止と育成就労制度の創設、特定技能制度の拡大は、送り出し機関に新たな役割と責任を課しています。もはや単なる人材の仲介者ではなく、日本企業とフィリピン人労働者の双方にとっての「成功のパートナー」として、その役割を再定義することが求められます

具体的には、候補者の選定段階から、日本での就労に必要な技能と日本語能力を確実に身につけさせる質の高い事前教育を提供すること、日本企業が外国人材を長期的に育成し、定着させるための具体的な支援策(生活サポート、相談体制、キャリアパス形成支援など)を提案・実施すること、そして、フィリピン政府の厳格な保護体制と連携し、常に法令を遵守した透明性の高い運営を行うことが不可欠です。これにより、送り出し機関は日本企業からの信頼を確立し、持続可能で倫理的な外国人材受け入れの実現に貢献することができます。  

まとめ

送り出し機関を通じて採用した外国人との握手

外国人材の受け入れは、単なる人材不足の解消にとどまらず、事業の活性化、さらには将来的な海外展開の足がかりとしても大きな可能性を秘めた経営戦略です。しかし、各制度の特性を正しく理解し、自社のビジョンや事業計画に合ったものを選択・運用しなければ、期待する効果を得ることは困難です。  

日本の外国人材受け入れ制度は、従来の「国際貢献」という名目から、より実質的な「人材育成」と「人材確保」へと明確に目的を転換し、外国人労働者の「人権保護」を制度の中核に据える方向へと大きく舵を切っています。育成就労制度の創設と特定技能制度の拡大は、外国人材が日本で長期的に活躍し、キャリアを形成できる機会を増やす一方で、受け入れ企業にはより質の高い労働環境と手厚い支援体制の整備を求めるものです。

このような変革期において、送り出し機関は、以下の役割を強化していく必要があります。

正確かつ最新の制度情報提供

複雑化する日本の在留資格制度(特定技能、育成就労制度など)について、常に最新かつ正確な情報を受け入れ企業と候補者に提供し、誤解やトラブルを未然に防ぐこと。

質の高い人材育成と事前教育

日本語能力だけでなく、日本の生活習慣、ビジネスマナー、専門技能に関する質の高い事前教育を徹底し、日本でのスムーズな適応と即戦力化を支援すること。

包括的な定着支援

入国後の生活サポート(住居、行政手続き、医療など)はもちろん、精神的なケアやキャリア形成支援まで、外国人材が日本で安心して長期的に活躍できるための包括的なサポート体制を構築すること。

倫理的かつ透明性の高い運営

フィリピン政府(DMW/MWO)の厳格な保護体制と連携し、高額な手数料の請求や書類偽造といった不正行為を排除し、常に法令を遵守した透明性の高い運営を行うこと。

外国人材の受け入れは、手続きが複雑で、準備すべき書類・資料も相当な数になります。特にフィリピン人人材を受け入れる際には、フィリピン政府の厳格なMWOへの申請も必要となります。そのため、専門知識を持つ機関へ相談し、プロのサポートを受けながら徹底した対応を行うことが成功への近道です

私たちは、日本企業が外国人材を単なる労働力としてではなく、共に未来を築くパートナーとして迎え入れ、その能力を最大限に引き出すための環境整備に投資することが、持続可能な事業成長に繋がると確信しています。信頼できる送り出し機関を選び、外国人材が日本で安心して働き、成長できる環境を共に創り出すことで、貴社の事業はさらに活性化し、日本の未来を拓く力となるでしょう。

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この記事を書いた人

三木 雅史(Masafumi Miki) 株式会社E-MAN会長
1973年兵庫県生まれ / 慶応義塾大学法学部法学科卒
・25歳で起業 / デジタルガレージ / 電通の孫請でシステム開発
・web通販事業を手掛ける
・2006年にオンライン英会話を日本で初めて事業化
・2019年外国人の日本語教育を簡単、安価にするため
 日本語eラーニングシステムを開発、1万人超の外国人が日々学習中

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