グローバル人材とは?スキルと育成方法・採用のポイントまで徹底解説

グローバル人材

急速に進むグローバル化や国内の労働力人口の変動を受け、多くの日本企業が新たな成長戦略を模索しています。特に、海外市場への展開や、国内におけるビジネス環境の多様化に対応するため、「グローバル人材」の確保と育成が、企業にとって喫緊の課題となっているのではないでしょうか。

とはいえ、採用の現場においては

・自社に本当に必要なグローバル人材とは何か?
・グローバル人材を採用するにはどうしたら良いのか?
・グローバル人材の育成方法は?

といった疑問をお持ちかもしれません。

グローバル人材を単に「英語ができる人材」と捉えると、採用や育成のステップでミスマッチが発生する可能性があります。

そこで当記事では、グローバル人材の正確な定義、なぜ今多くの企業で必要とされているのか、そして具体的にどのようなスキルやマインドセットが求められるのかを深く掘り下げます。さらに、採用後の育成方法や、彼らが最大限に活躍できる環境づくりについても、具体的なポイントを解説します。

グローバル人材の活用を成功させ、企業の持続的な成長を実現するための参考になさってください。

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目次

グローバル人材とは?その定義と企業にとっての必要性

グローバル人材を象徴する多様な人々が地球の上に並ぶイメージ。国際的な人材育成や多文化共生を表す図。

「グローバル人材」と一口に言っても、その定義は様々です。多くの場合、単に「語学力が高い人」「海外経験が豊富な人」といったイメージで語られがちですが、それだけではビジネスの現場で求められる人材像を正確に捉えているとは言えません。

例えば、文部科学省の「グローバル人材育成推進会議」の中間まとめでは、グローバル人材の要素として以下の3つが挙げられています。

要素Ⅰ語学力・コミュニケーション能力
要素Ⅱ主体性・積極性、チャレンジ精神、協調性・柔軟性、責任感・使命感
要素Ⅲ異文化に対する理解と日本人としてのアイデンティティー

ここで重要なのは、語学力が要素の一つに過ぎない点です。むしろ、要素ⅡやⅢで示されるようなマインドセットや、異文化を理解したうえで自分自身の立場(アイデンティティ)を明確にできる能力が、同じくらい、あるいはそれ以上に重要視されていることがわかります。

ビジネスの現場で活躍するグローバル人材とは、「異なる文化や価値観を持つ人々と協働しながら新しい価値を生み出すことができる人材」、と言い換えることができるでしょう。

なぜ今、日本企業にグローバル人材が必要なのか?

では、なぜこれほどまでに多くの企業がグローバル人材を必要としているのでしょうか。その背景には、日本企業を取り巻く深刻な課題と、新たな成長機会への期待があります。

理由① 国内市場の成熟化や縮小傾向

事業を継続的に成長させるため、多くの企業が海外展開を加速させています。海外市場のニーズを的確に把握し、現地(海外)の顧客やパートナーと円滑な関係を構築するためには、グローバルな視点と実務能力を持つ人材が不可欠です。

理由② 国内における労働力不足

日本国内の人手不足は、どの業界でも深刻な問題になっています。そのため優秀な人材の確保は、国籍を問わない「グローバル採用」へとシフトしています。多様なバックグラウンドを持つ人材を採用することは、単なる人手不足の解消にとどまりません。

理由③ イノベーションの創出

組織内に日本人とは異なる視点や価値観、経験を持つ人材が入ることで、従来の延長線上にはなかった新しいアイディアや解決策が生まれやすくなります。この「ダイバーシティ(多様性)」こそが、企業の競争力を強化する大きな要因となるのです。

フィリピンをはじめとする海外の優秀な人材を採用することは、これらの課題を解決し、企業がグローバル化の波に対応していくための重要な戦略と言えます。

グローバル人材が企業にもたらす具体的な価値

グローバル人材が組織にもたらす価値は、具体的にどのようなものでしょうか。

まず、海外事業の推進力が格段に向上します。現地の文化や商習慣を理解した人材がいることで、ビジネスの交渉やプロジェクトの進行がスムーズになります。

また、社内の「当たり前」を見直すきっかけにもなります。日本国内の常識にとらわれない彼らの視点や意見は、業務プロセスの非効率な点や、潜在的な課題を発見するのに役立ちます。

さらに重要なのは、彼らの存在そのものが、日本人社員への刺激となる点です。異なる文化背景を持つ者と働くことを通じて、日本人社員自身の異文化対応能力やコミュニケーション能力が向上し、組織全体のグローバル対応力が底上げされます。結果として、組織が活性化し、より大きな成果を生み出す土壌が育まれるのです。

参考:グローバル人材育成推進会議中間まとめ|文部科学省

グローバル人材に求められる必須スキル

タブレットを持つ手の上にスキル要素のアイコンが表示された図。ビジネススキルを示すイメージ。

グローバル人材の採用や育成を考えるうえで、具体的にどのようなスキルや能力を求めるべきか、その「要件定義」は非常に重要です。

ここでは、ビジネスの現場で真に活躍できる人材が持つべきスキルとマインドセットを解説します。

スキルセット1:語学力(英語力)の誤解と実態

「グローバル人材=英語ができる人」という認識は、最も陥りやすい誤解の一つです。もちろん、語学力、特にグローバルなビジネスシーンで共通言語として使われることの多い英語力は、重要なスキルの一つです。

しかし、求められるのは単なる流暢さやTOEICの高いスコアではありません。ビジネスの目的を達成するための「コミュニケーションの手段」として、相手の意図を正確に把握し、自分の考えや情報を明確に伝え、交渉や議論ができる実践的な語学力こそが必要です

その点、フィリピン人材の英語力と、高いコミュニケーション能力は企業にとって大きな魅力となります。採用の段階ではその英語力を「実務でどう活用してきたか」「どのようにコミュニケーションを構築してきたか」という点を見極めてください。

スキルセット2:異文化理解とコミュニケーション能力

グローバルな環境では、育ってきた文化、価値観、宗教、仕事への考え方など、あらゆるバックグラウンドが異なる人々とチームを組むことになります。

そこで必須となるのが、異文化に対する深い理解と受容力です。自分の「当たり前」が相手の「当たり前」ではないことを認識し、相手の文化や考え方を尊重する姿勢が求められます。

さらに、単に「理解」するだけでなく、その「違い」を乗り越えて円滑に業務を進めるコミュニケーション能力が重要です。日本では「空気を読む」「察する」といったハイコンテクストなコミュニケーションが好まれる傾向にありますが、グローバルな現場では通用しません。

なぜこの業務が必要なのか、何をいつまでに、どのような品質で期待しているのかを、言葉(言語)にして明確に伝える能力。そして、相手の主張や疑問を丁寧に引き出す傾聴力。この双方向のコミュニケーション能力こそが、グローバル人材の核となるスキルです。

スキルセット3:主体性とチャレンジ精神

グローバルビジネスの現場は、変化が激しく、前例のない課題に直面することの連続です。そのような環境で求められるのは、指示を待つのではなく、自ら課題を発見し、解決のために何をすべきかを考え、行動に移せる「主体性」です

また、新しいことや困難な状況に対しても、臆することなく挑戦する「チャレンジ精神」も欠かせません。失敗を恐れて行動しないのではなく、失敗から学び、次の成果につなげていく柔軟性(柔軟)とタフネスが、グローバルに活躍する人材の特性と言えます。

スキルセット4:専門性とリーダーシップ

語学力や主体性があっても、それを支える専門的な知識やスキルがなければ、ビジネスで具体的な成果を出すことはできません。自らの担当分野における深い専門性(専門知識)は、国籍を問わず信頼を得るための基礎となります

さらに、将来的にはチームやプロジェクトを牽引するリーダーシップも期待されます。グローバル人材におけるリーダーシップとは、多様なメンバーの意見をまとめ上げ、一つの目的に向かって組織を動かしていく力です。これは、必ずしも役職(ポジション)を指すものではなく、周囲に良い影響を与え、チーム全体の成果を最大化しようとする姿勢そのものです。

参考:「グローバル人材の育成・活用に向けて求められる 取り組みに関するアンケート」主要結果|日本経済団体連合会

グローバル人材の採用を成功させるためのステップ

パズルの一片として赤い人物アイコンを選ぶ手の画像。採用活動や適材適所を象徴するイメージ。

グローバル人材の必要性やスキルを理解したところで、次は「採用」のステップです。ここでは、一般的な外国人材の採用を成功させるための重要なポイントを3つのステップで紹介します。

STEP

採用目的と求める人物像の明確化

採用活動で最も重要なステップは、自社が求めているグローバル人材の明確化、つまり「要件定義」です。ここが曖昧なまま進めてしまうと、採用のミスマッチや、入社後の活躍につながらないといった失敗につながりやすくなります。

まず、「なぜ自社はグローバル人材を採用するのか?」という目的を、経営層や現場の責任者とすり合わせ、明確にすることが必要です。

  • 「海外展開のプロジェクトリーダーを任せたいのか?」
  • 「国内事業において、社内の多様性を促進する起爆剤となってほしいのか?」
  • 「特定の専門分野(例:IT)での高いスキルを求めているのか?」

目的が明確になれば、自社が求める「グローバル人材」の具体的な人物像(ペルソナ)が見えてきます。前述したスキルセットを参考に、自社の事業戦略やチームの状況に合わせ、どのような能力や経験、マインドを「必須(Must)」とし、何を「歓迎(Want)」とするかを具体的に定義します。

STEP

採用チャネルの選定とアプローチ

求める人物像が明確になったら、次は「どこでその候補者にアプローチするか」という採用チャネルの選定です。

外国人材の採用には、国内外の人材紹介サービス、海外の大学との連携、ダイレクトリクルーティング、リファラル(社員紹介)など、多様な方法があります。

自社が求める人材層(新卒採用か、即戦力の中途採用か)や、ポジション、専門性(専門知識)によって、最適なチャネルは異なります。例えば、高い専門性を持つ人材を求める場合は、その分野に特化したエージェントやプラットフォームを活用するのが効果的でしょう。

特にフィリピン人を採用するには、フィリピン独自の法律やシステムにも応じたアプローチが必要です。この点については、後述します。

STEP

選考プロセスにおける「見極め」のポイント

候補者との面接段階では、スキルや経験(実務能力)を確認することはもちろんですが、それ以上に「自社の文化や価値観とフィットするか」「日本で働くことへの意欲や覚悟があるか」を見極めることが重要です。

特に、グローバル人材の選考で注意すべき点は、面接官側の異文化理解です。例えば、自己主張をはっきり行うことを良しとする文化で育った候補者に対し、面接官が「協調性に欠ける」とマイナス評価をしてしまうかもしれません。

選考では、過去の具体的な行動事例(STAR面接など)を聞き出し、「困難な状況に直面した時、どう考え、どう行動し、その結果どうなったか」を確認することで、その人の持つ主体性や柔軟性、責任感といった本質的なコンピテンシーを見極めることができるでしょう。

参考:グローバル社会の実現|経済産業省

グローバル人材の育成と活躍を促す企業側の環境整備

講師が前に立ち、受講者が話を聞いている研修風景の写真。人材育成や社内教育を示すイメージ。

グローバル人材の採用は、ゴールではなくスタートです。むしろ、採用した人材が定着し、活躍してくれるかどうかが、企業のグローバル化戦略の成否を分けます。そのためには、継続的な「人材育成」と「環境整備」が不可欠です。

育成の重要性

優秀な人材を採用できたとしても、日本企業特有の商習慣や社内ルール、コミュニケーションの「暗黙知」に戸惑い、本来の力を発揮できないケースは少なくありません。

彼らが持つスキルやポテンシャルを最大限に引き出し、企業の成長につなげるためには、採用後の「オンボーディング(定着支援)」と「人材育成」が極めて重要です

これは、外国人社員だけに向けたものではありません。彼らと共に働く日本人社員が、多様な価値観を受け入れ、円滑に協働できるスキルを身につけること。すなわち、組織全体のグローバル化対応力を向上させる取り組み(教育)でもあります。

グローバル人材育成の具体的な方法

育成の方法は、大きく分けてOff-JT(研修)とOJT(現場での実務を通じた育成)があります。

Off-JT(研修)

導入研修企業理念、コンプライアンス、日本のビジネスマナーの基礎など。
語学研修日本人社員向けの英語研修、外国人社員向けのビジネス日本語研修。
異文化理解研修双方の文化の違いを理解し、尊重し合うための研修(ダイバーシティ教育)。
スキル研修業務に必要な専門知識や、リーダーシップ、マネジメントなどの研修プログラム。
オンライン研修サービスなどを活用するのも一つの方法です。

OJT(実務を通じた育成)

育成の核となるのは、日々の業務を通じたOJTです。

メンター制度の導入年齢や社歴の近い日本人社員がメンターとなり、業務の進め方や社内での人間関係構築をサポートします。
責任ある業務の付与簡単な仕事ばかりではなく、本人のスキルや意欲(チャレンジ精神)に合わせ、裁量権のある仕事や責任あるポジションを任せることで、主体性や成長を促します。
定期的なフィードバック上司や人事担当者が定期的に1on1ミーティングを行い、業務の進捗確認だけでなく、困っていることやキャリアプランについて話し合う機会(フィードバック)を設けることが重要です。

受け入れ体制の構築とサポート

研修やOJTと同時に、グローバル人材が働きやすい「環境」を企業側が整備することも不可欠です。

社内資料や情報の多言語化

全てを一度に行うのは難しくても、就業規則や重要な社内マニュアルなど、最低限必要な資料の多言語化(英語併記など)を進める姿勢が大切です。

人事評価制度の見直し

日本人とは異なる成果の出し方やキャリア観を持つ人材を、公平に評価できる仕組みが必要です。成果に至るプロセスだけでなく、出した結果(成果)そのものを正当に評価する基準の明確化が求められます。

コミュニケーションの円滑化

社内SNSの活用や、部署を超えた交流会(社内イベント)などを実施し、日本人社員と外国人社員が自然とコミュニケーションを取れる機会を構築します。

生活面でのサポート

住居の確保、ビザの更新手続き、行政手続きのサポートなど、日本での生活基盤を安定させるためのサポート体制も、彼らの安心感と定着につながります。

育成における課題と失敗しないためのポイント

グローバル人材の育成は、時間とコストがかかるものであり、短期的な成果を求めすぎないことがポイントです。「育成計画」を明確に立て、経営層自身がその重要性を理解し、コミットメントする姿勢を見せることが、現場の取り組みを推進する大きな力となります。

また、育成担当者や現場の上司に丸投げするのではなく、人事部がハブとなり、全社的な施策としてサポートし続けることが、育成の失敗を防ぐ鍵となります。

参考:中小企業のグローバル人材の確保と育成|日本政策金融公庫 総合研究所

グローバル人材と日本人社員が協働する組織づくり

両手に守られるように円形に並んだカラフルな人型フィギュアの画像。多様性や人材支援を表すイメージ。

グローバル人材を採用し、育成プログラムを実施したとしても、受け入れる側の日本人社員や組織全体が変わらなければ、化学反応は起きません。

真のグローバル化とは、多様な人材が「ただ存在する(ダイバーシティ)」だけでなく、それぞれが持つ能力を最大限に発揮し、組織に貢献できる状態「インクルージョン」を実現することです

ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の推進

ダイバーシティ&インクルージョンの推進は、企業の持続的な成長戦略そのものです。多様な視点や価値観がぶつかり合うことで、イノベーションが生まれやすくなり、組織の柔軟性や課題解決能力が向上します。

これを実現するためには、まず「心理的安全性」の確保が重要です。心理的安全性とは、組織の中で、自分の意見やアイデンティティを、拒絶されたり罰せられたりする不安なく発言できる状態を指します

国籍や文化、バックグラウンドが異なることを理由に不利益を被ることなく、誰もが「自分らしく」働ける環境を構築することが、D&I推進の第一歩です。

異文化摩擦を乗り越える方法

異なる背景を持つ人々が協働すれば、当然ながら「異文化摩擦」や「コンフリクト(衝突)」が発生します。これは避けて通れないものであり、むしろ、それを恐れてはいけません。

重要なのは、その摩擦を「問題」として蓋をするのではなく、お互いの「違い」を理解し合うための「機会」と捉えることです

例えば、時間に対する感覚や上司への報告の仕方など、具体的な違いに直面した時こそ、なぜ相手がそう考えるのか、自分たちの当たり前は何なのかを話し合うチャンスです。

そのためには、明確なコミュニケーションルール(例:議事録は必ず英語と日本語で残す、結論だけでなく背景も説明する)を設定したり、間に入るマネジメント層が双方の意見を調整したりする役割が求められます。

企業のグローバル化に向けた社内戦略

グローバル人材の採用と育成を、単なる「人事施策」で終わらせてはいけません。これを、企業全体の「経営戦略」「事業戦略」として位置づけることが必要です。

経営トップが、なぜ今グローバル化が必要なのか、なぜ多様な人材の活用を推進するのか、そのビジョンを社内に向けて明確に発信し続けることが何よりも重要です

そして、小さな成功事例を積み重ね、それを社内で積極的に共有していくこと。例えば、「外国人社員のアイディアから新しいサービスが生まれた」「海外拠点との連携がスムーズになった」といった具体的な成果や事例を「見える化」することで、日本人社員の意識変革を促し、組織全体のグローバル化が加速していきます。

グローバル人材の活用は、もはや「やってもやらなくてもよい」選択肢ではなく、変化の激しい現代社会で企業が生き残るための「必須戦略」と言えるでしょう。

参考:ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)とは? | 公益財団法人 日本生産性本部

グローバル人材としてのフィリピン人の強み

フィリピン国旗を持つ若者たちが笑顔で集まっている写真。外国人コミュニティや多文化交流を示すイメージ。

日本の様々な業界や業種で、多くのフィリピン人材が活躍しています。それは彼らがまさに、グローバル人材としての強みを発揮しているからにほかなりません。

ここでは、彼らの国民性や特長から、グローバル人材としてのフィリピン人の強み、企業が彼らを採用するメリットなどについて考察します。

強み1:即戦力となる高い「英語力」と「コミュニケーション能力」

グローバル人材の必須スキルである「語学力・コミュニケーション能力」において、フィリピン人材は圧倒的な強みを持っています。

フィリピンでは、歴史的背景から英語が公用語の一つとして広く使われており、幼少期から英語での教育が実践されています。そのため、多くの人が流暢なビジネス英語を習得しています。

彼らの英語は、アメリカ英語を基盤としており、文法的に正しく、単語をはっきりと発音する傾向があるため、日本人にとっても聞き取りやすいとされています

さらに単なる語学力だけでなく、明るくフレンドリーな国民性と相まって、相手に寄り添ったコミュニケーションが取れる点 も、グローバルなチームで働くうえで大きなメリットとなります。

強み2:異文化と協働する「協調性」と「ホスピタリティ」

グローバル人材には、異なる文化背景を持つ人々と協働するための「協調性」や「異文化理解」が求められます。

フィリピン文化には「バヤニハン」と呼ばれる相互扶助(助け合い)の精神が根付いており、チームワークを重視し、競争よりも協力を優先する傾向があります。これは、和を重んじる日本企業の文化とも高い親和性を示します。

また、「フィリピーノ・ホスピタリティ」と呼ばれる世界的に有名な「おもてなしの精神」も彼らの大きな特長です。

非常にフレンドリーで親しみやすく、相手の立場に配慮した行動が自然にできるため、日本人社員や他の外国人社員とも円滑な人間関係を構築し、多様性のあるチームの中で「ハブ」のような潤滑油の役割を果たすことが期待できます。

強み3:環境に適応する「柔軟性」と「ポジティブな責任感」

グローバル人材の定義には「主体性・柔軟性・責任感・使命感」といったマインドセットも含まれます。

フィリピンは海外就労者が非常に多く、世界中に多くの労働者を排出しています。そのため、異なる文化や環境に飛び込むことへの抵抗が少なく、新しい環境への適応力や柔軟性が非常に高いと言えます

また、彼らの仕事へのモチベーションは「家族を支えるため」という強い責任感と深く結びついています。この家族を大切にする文化こそが、困難な仕事にも粘り強く取り組む 勤勉さや、任された業務を遂行しようとする強い責任感の源泉となっています。

こうしたポジティブで真摯な労働観は、企業の成長に大きく貢献するに違いありません。

グローバル人材としてのフィリピン人を活用している企業の事例

検索窓に「CASE」と書き込むビジネスパーソンの写真。事例検索やケーススタディを示すイメージ。

ここでは、フィリピン人材をグローバル人材として育成・活用している日本郵船グループの事例から、彼らを採用するメリットや企業が行うべき取り組みなどについて学んでみましょう。

日本郵船グループの取り組み

日本郵船グループは、世界中の多様な人材が活躍できる基盤づくりを進めています。とりわけ、グローバルな海運業を支える海技者(船員)の育成において、フィリピンは極めて重要な戦略的パートナーです。

フィリピン人材が持つグローバル人材としての高いポテンシャルを背景に、同グループはこれらの人材を自社の価値観を共有する真のグローバル人材へと育てるため、長期的な投資を行っています。

そのための重要な取り組みが、フィリピンのパートナー企業「Transnational Diversified Group」と共同で運営している海事大学「NYK-TDG MARITIME ACADEMY(NTMA)」にほかなりません。専門性の高い海技者を戦略的に育成し、その活躍を促進することを目的としています。

同校では、単に船舶運航のための知識や技術を教えるだけでなく、日本郵船グループが長年培ってきた安全運航の文化や「誠意・創意・熱意」といったグループの価値観を深く共有する教育を実践しています。これにより、卒業生は高い技術力と倫理観を兼ね備え、日本郵船グループの未来を担うグローバル人材として育成されます。

同校の卒業生であるGonzales氏は、船長として運航マネジメントの経験を積んだ後、現在は本社で勤務しています。海技者としての専門性に加え、海技者になる前に学んだ会計学の知識を融合させ、本社のコスト関連業務や船員の生活改善・健康管理といった全く異なる分野のプロジェクトで価値を発揮しています。

彼は「現場の船長経験があるからこそ、乗組員の立場や課題を深く理解できる」と述べ、自身の立場を「本社と船員の架け橋」と表現しています。本社と現場の間で良好なコミュニケーションを築き、現場のモチベーションを支えるという、グローバル人材に求められる異文化・異職種間の協働を体現しています。

同グループは、船長経験の先にも活躍できるキャリアパスがあることを示すことで、社員の士気向上に努めています。Gonzales氏はまた、本社の日本語環境という課題を指摘しつつ、資料の英語化などが進めば「外国人社員が支援なしで活動でき、グローバル企業としての多様性がさらに進む」と期待を寄せています。

教訓

この日本郵船の事例から、企業がフィリピン人を始めとしたグローバル人材の活用を成功させるために学べる教訓は、以下の通りです。

長期的な育成投資

グローバル人材は一朝一夕には育ちません。日本郵船のNTMAのように、現地パートナーと連携しながら、長期的な視点での人材育成に投資することが重要です。

多様なキャリアパスの提示

採用して終わりではなく、キャリアや経験を活かせるさらなるキャリアパスを提示することは、優秀な人材の定着と意欲向上に直結します。

「越境スキル」の活用

本人の専門性だけでなく、その人が持つ多様なスキルやバックグラウンドを認識し、それらを活かせる適材適所の配置を行うことが、個人の価値を最大化させます。

「架け橋」としての役割

グローバル人材が持つ高いコミュニケーション能力や異文化理解力を活かし、現場と本社、あるいは異なる部門間をつなぐ「架け橋」としての役割が期待できます。

インクルーシブな環境整備

現場の声に耳を傾け、言語の壁といった現実的な課題を認識し、グローバル企業として多様な人材が真に活躍できるよう、資料の英語化など、インクルーシブな環境整備を継続的に進めることが不可欠です。

フィリピン人採用に必須のDMW申請と送り出し機関

国旗・フィリピンと日本

グローバル人材であるフィリピン人材を採用するには、フィリピン政府側の組織(DMW/旧POEA)と、現地の送り出し機関に関するルールに従わなければなりません。

DMWと送り出しルールの要点

フィリピン政府は海外で働いている自国民を保護するため、DMW(海外労働者省)という行政機関を設置、海外への送出を厳格に管理・監督しています。そのDMWの窓口として各国に設置されているのが、MWO(移住労働者事務所)です。

MWOは企業が作成した雇用契約や求人票がフィリピンの労働基準に合致しているかを認証(Verification)します。MWOの認証を経ることで、フィリピン政府から正式に採用計画が承認されます。この認証が得られなければ、採用を進めることはできません。

またフィリピンではエージェントを介さない企業による直接雇用は原則禁止されており、DMW認定の送り出し機関を通じた手続きが必要となります。

そのため日本の企業がフィリピンから人材を雇用する場合、まずはDMW認定の送り出し機関と人材募集・雇用に関する取り決めを締結し、その上でMWOへの申請手続きを行い、認証を得なければなりません

送り出し機関に関してDMWは不当な手数料徴収を禁じる通達を出しており、紹介料や手数料の取り扱いには法的なルールが適用されます。とはいえ、実務上は運用に差が出ており、企業側が想定外の費用負担や説明不足に直面するケースが散見されます。そのため、企業側は送り出し機関との契約時に費用負担の明細を契約書で明確化することが重要です。

海外雇用許可証の取得

海外雇用許可証(OEC :Overseas Employment Certificate)は、フィリピン人が就労目的で日本へ渡航するために必須の証明書であり、フィリピンを出国する際の空港で提出が求められます。

このOECの申請には、日本側で取得した在留資格認定証明書(COE)や、正式な雇用契約書、技能証明書等の書類が必要となり、DMW/MWOによる厳格な審査を経て発行されます。

ここで重要な点は、日本のビザが発行された後であっても、フィリピン側でOECが取得されていなければ、フィリピン人は出国できないということです。これは、日本側の手続きが完了した後に、渡航直前で採用予定が頓挫する最大のリスク要因となり得ます。

企業担当者は、日本の入国管理手続きに注力する中で、送り出し機関やフィリピン人本人に対してOEC取得の進捗情報を常に確認し、管理名簿を作成しておく必要があります。

送り出し機関選定の重要性

フィリピン人採用における最大の実務リスクの一つは、送り出し機関の選択です。なぜなら、一部には不当な費用請求や書類偽造、質の低い日本語教育といった悪質な運営を行う機関が存在するからです

そうした事案は、労働者本人に深刻な被害をもたらすだけでなく、受け入れ企業にも失踪・不法就労・労務トラブルといった重大な負担を引き起こします。

したがって、送り出し機関の選定は「人が来るかどうか」だけで判断してはいけません。倫理性・透明性・法令順守を含めた総合的な適性評価が不可欠です。

採用ステップ

STEP
送り出し機関と契約

DMWに認定された現地の送り出し機関を通じて契約を締結します。

STEP
MWO による認証(Verification)

送り出し機関を通じて、求人票(Job Order)および雇用契約案をMWOに提出し、フィリピン側の基準に沿うか確認を受けます。必要があれば契約内容の修正や追加書類の提出を求められます。

STEP
候補者との雇用契約締結

MWOの認証で必要条件が満たされたことを確認したうえで、候補者と正式な雇用契約を最終確定(署名)します。実務上はこの確定をもって日本側の在留手続きを進めるのが安全です。

STEP
COE(在留資格認定証明書)の申請

日本側での在留資格申請に必要な書類を揃え、出入国在留管理庁に申請します。COE の有効期限に注意し、フィリピン側手続きを完了させた上で申請することが望ましいです。

STEP
OEC(海外就労認定証)の取得

OECはフィリピン出国時に提示が求められる証明書です。これを取得することで、合法的に出国・入国が可能となります。日本在住者でも、場合によっては OEC 取得が必要になることがあります。

日本在住フィリピン人を雇用する場合

すでに日本国内に在留しているフィリピン人を雇用する場合でも、MWOによる認証手続きが必要となる場合があります。

例えば日本に留学しているフィリピン人を社員として採用する場合、在留資格を変更しなければなりません。その場合でも、フィリピン政府の視点からは「海外就労扱い」となるためです

MWOを通じた認証手続きを取得を怠ると、彼らが一時的にフィリピンへ帰国した場合、出国時にOECの提示ができず、日本への再入国が不可能になるという深刻な事態が発生する可能性があります

受入れ企業は、この重大なリスクを理解し、日本在住者であっても、DMW認定の人材紹介会社を経由した認証手続きを確実に行う必要があります。

参考:DMW

送り出しカフェの活用

送り出しカフェ公式サイトトップ画面

DMWへの申請、送り出し機関の選定などの手続きが必要なフィリピン人材の採用を成功させるには、専門のサポート機関を利用するのが最も効率的かつ効果的です。

送り出しカフェは、フィリピン人労働者の採用を検討している日本企業を対象に、フィリピン現地の送り出し機関の紹介・仲介を行っています。

フィリピン政府のライセンスを持つ正規の送り出し機関と提携しており、年間2,000人を海外に送り出す実績を有するパートナーなど、実績豊富な機関と連携しているのが大きな特徴です

送り出しカフェ活用のメリット一覧

メリット
信頼性のある送り出し機関の紹介

フィリピン政府公認のライセンスを持つ送り出し機関と提携しているため、違法・不透明な業者を避けられる。

人材の母集団が大きい

提携大学・職業訓練校から約7,000人規模の候補者がいるため、必要な職種に合った人材を探しやすい。

特定技能16分野に対応

介護・外食・建設など幅広い業種の求人に対応できる。

安心の日本語対応

日本人スタッフが窓口となるため、言語や文化の違いによる誤解・トラブルを減らせる。

採用から入国後までワンストップ支援

求人票作成、面接調整、ビザ・MWO申請、入国後の定着支援までトータルサポート。

手続きの負担軽減

フィリピン側で必要な複雑な申請書類や手続きを代行・支援してくれる。

日本語教育サポート

採用前から就労後まで継続的に日本語教育を行う体制があり、現場でのミスや離職リスクを軽減できる。

費用や採用リスクの低減

信頼性の低い送り出し機関を選んで失敗するリスクを減らし、スムーズな採用につながる。

送り出しカフェを活用することによって、DMWのルール確認、信頼できる送り出し機関の選定、明確な契約とスケジュール管理などを円滑に行うことができるでしょう。

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まとめ

世界地図の前でビジネスパーソンが握手する写真。国際ビジネスやグローバルな提携を表すイメージ。

グローバル人材とは、単に語学ができる人材ではなく、高い主体性と異文化理解力を持ち、多様な人々と協働しながらビジネスの成果を出せる人材のことです。

彼らの採用と育成は、企業の海外展開やイノベーション創出を加速させるだけでなく、日本人社員の成長を促し、組織全体の活性化とグローバル化にもつながる、未来への重要な「投資」と言えます。

特にフィリピン人はその英語力やコミュニケーション力、異文化の中でその力を発揮できる協調性やホスピタリティなどから、グローバル人材として日本企業にとっても大きな戦力となり得ます。

とはいえ、フィリピン人を雇用するには日本側の手続きに加えて、フィリピン側のDMW・MWO申請が必要となります。自社だけでフィリピン独自のルールに精通し、そのルールに従った採用活動を進めることは簡単なことではありません。専門機関などの適切なサポートを得ることが、一番の近道と言えます。

私たち「送り出しカフェ」は、フィリピン人材採用のために、信頼できる送り出し機関との連携体制を構築し、採用・在留資格手続き、日本語教育、生活支援までを一貫してサポートしています

フィリピン人材の採用を具体的に検討されている企業様は、ぜひお気軽にご相談ください。

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この記事を書いた人

三木 雅史(Masafumi Miki) 株式会社E-MAN会長
1973年兵庫県生まれ / 慶応義塾大学法学部法学科卒
・25歳で起業 / デジタルガレージ / 電通の孫請でシステム開発
・web通販事業を手掛ける
・2006年にオンライン英会話を日本で初めて事業化
・2019年外国人の日本語教育を簡単、安価にするため
 日本語eラーニングシステムを開発、1万人超の外国人が日々学習中

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