特定技能外国人材受け入れのための送り出し機関と雇用契約書の全知識

送り出し機関 特定技能 契約書

近年、労働力不足が深刻化する日本において、特定技能制度を活用した外国人材の採用は、企業の持続的な成長を可能にする重要な選択肢となっています。

特に、人手不足が顕著な分野では、外国人労働者の受け入れが不可欠です。

本記事では、特定技能の外国人材を受け入れる際に必要となる送り出し機関の役割や雇用契約書に焦点を当て、その概要から締結の際の注意点、関係する書類や手続きまでを網羅的に解説します

目次

特定技能外国人材受け入れの基礎知識と送り出し機関の役割

送り出し機関に提出する書類のチェック

特定技能制度は、日本国内の労働力不足を補うために創設された在留資格であり、特定の産業分野において即戦力となる外国人材を受け入れることが可能です

この制度を活用する際、多くの企業が直面するのが、送り出し機関との連携です。

特定技能制度とは何か?その概要を理解する

特定技能制度は、2019年4月に施行された新しい在留資格です。

日本国内で人材確保が困難な12分野(2024年6月現在)において、一定の専門性・技能を持つ外国人を雇用する際に利用されます

この制度は、単なる労働力不足の解消だけでなく、外国人材が日本で安心して就労し、生活できるよう、支援体制の整備も義務付けています。

特定技能には、技能レベルに応じて「特定技能1号」と「特定技能2号」があります。

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項目特定技能1号特定技能2号
在留期間最長5年上限なし(在留期間の更新が可能)
従事可能な業務相当程度の知識または経験を必要とする業務熟練した技能を要する業務
家族の帯同原則として不可可能
試験各分野の技能試験及び日本語能力試験に合格する必要がある。特定技能2号評価試験に合格する必要がある。

特定技能外国人を受け入れる企業は、出入国在留管理庁への申請に加え、外国人の支援計画を策定し、適切に実施する必要があります。

この支援は、人材の日本での生活や業務への適応を円滑にする上で非常に重要です。

参考:出入国在留管理庁|特定技能制度

特定技能における送り出し機関の役割と選び方

送り出し機関とは、特定技能外国人材が日本で働くために必要な手続きや準備を、本国側で実施する機関です

具体的には、人材の募集、選考、日本語教育、技能講習、そして日本への送り出しに関する手続きを行います。

人事担当者として、送り出し機関を選定する際には、以下のポイントを確認することが重要です。

ポイント
認可・登録の有無

各国の政府から正式に認可されているか確認しましょう。

実績と評判

過去の送り出し実績や、日本の受け入れ企業からの評判を確認します。

信頼性の高い機関は、人材の質も高い傾向にあります。

教育体制

日本語教育や、特定技能分野に特化した技能教育がどの程度充実しているかを確認します。

これにより、外国人材が日本での業務にスムーズに移行できるかが左右されます。

透明性のある費用体系

送り出し機関によっては、不透明な費用を請求する場合があります。

事前に詳細な見積もりを確認し、納得のいく費用体系であるかを確認する必要があります。

情報共有とサポート体制

受け入れ企業との密な情報共有や、外国人材への継続的なサポート体制が整っているかどうかも重要です。

信頼できる送り出し機関との連携は、特定技能外国人の採用成功の鍵となります。

雇用契約書の締結

特定技能外国人材を雇用する際、雇用契約書の締結は極めて重要なステップです。

適切な契約書を締結することで、労使間のトラブルを未然に防ぎ、外国人材が安心して就労できる環境を整備できます。

特定技能の雇用契約書に必ず記載すべき項目

チェックリストの作成をしている社員

特定技能外国人材との雇用契約書には、労働基準法で定められた記載事項に加え、特定技能制度特有の記載事項を盛り込む必要があります

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労働条件
業務内容特定技能の在留資格で認められている業務内容と一致しているかを確認します。
雇用契約期間特定技能1号の場合、在留資格の期限を超えないように設定します。
就業の場所実際に業務を行う場所を明確に記載します。
始業及び終業の時刻、休憩時間明確に記載し、残業の有無やその際の賃金も記載します。
休日、休暇法定休日や年次有給休暇について記載します。
賃金(給与)
基本給、諸手当の額と計算方法日本人と同等以上の賃金であることを確認します。
賃金の締結日と支払日明確に記載します。
昇給、賞与の有無ある場合は、その定めを記載します。
退職に関する事項解雇の事由を含め、明確に記載します。
特定技能制度に特有の記載事項
支援の内容と費用負担外国人材への支援計画の概要と、その費用を企業が負担する旨を記載します。
報酬額が日本人と同等以上であることの明記これは特定技能制度の要件の一つです。
一時帰国を希望する際の対応休暇の取得や、その際の対応について記載します。
外国人材が日本で行う活動の内容在留資格で認められている業務以外の活動を禁止する旨など、明確に記載します。
住居の確保に関する情報企業が住居を提供する場合や、住居探しを支援する場合、その内容を記載します。

これらの項目を漏れなく記載し、外国人材が理解できるよう、日本語と外国人材の母国語を併記することが望ましいです。

労働基準法との整合性:必ず遵守すべき点

特定技能外国人材の雇用は、日本の労働基準法が適用されます

人事担当者は、以下のポイントを遵守する必要があります。

ポイント
日本人と同等以上の待遇

外国人材だからといって、賃金や労働条件を日本人より低く設定することはできません。

これは特定技能制度の根幹をなす原則です。

残業代の支払い

法定労働時間を超える業務や、法定休日の業務には、適切な割増賃金を支払う必要があります。

年次有給休暇の付与

勤続年数に応じて、法定通り有給休暇を付与する必要があります。

社会保険の加入

要件を満たす外国人材は、社会保険(健康保険、厚生年金保険)や労働保険(雇用保険、労災保険)に加入させる必要があります。

労働安全衛生

労働安全衛生法に基づき、安全な労働環境を提供し、必要な安全教育を実施する必要があります。

これらの法令遵守は、外国人材との信頼関係を築くだけでなく、企業の法令遵守体制を示す上でも非常に重要です。

トラブルを防ぐための契約書作成の注意点

雇用契約書の作成にあたっては、以下の注意点を考慮することで、将来的なトラブルを大幅に軽減できます。

注意点
  • 明確かつ具体的な記述
    • 抽象的な表現は避け、具体的かつ明確な言葉で記載します。
  • 母国語での説明と合意
    • 契約内容を外国人材の母国語で丁寧に説明し、完全に理解した上で合意を得ることが不可欠です。
    • 必要であれば、通訳を介して説明を行いましょう。
  • ひな形や専門家の活用
    • 出入国在留管理庁が提供するひな形を参考にしたり、行政書士や社会保険労務士などの専門家に相談したりすることで、不備のない契約書を作成できます。
  • 署名・捺印の確認
    • 外国人材本人の署名・捺印(またはサイン)を必ずもらい、契約書の控えを双方で保管します。

これらの注意点を守ることで、特定技能外国人材との円滑な雇用関係を構築し、安心して業務に集中してもらうことが可能になります。

特定技能外国人材受け入れに関する手続きと提出書類

書類を保存するフォルダ

特定技能外国人材を受け入れるためには、出入国在留管理庁への申請手続きが必要です。

これらの手続きをスムーズに行い、必要な書類を正確に提出することが、人材の早期受け入れに繋がります。

在留資格認定証明書交付申請のポイント

特定技能外国人材を雇用する際、まず必要となるのが「在留資格認定証明書交付申請」です

この証明書は、外国人材が日本に入国し、特定技能の在留資格を取得するために不可欠な書類です。

申請の際のポイントは以下の通りです。

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項目内容
提出書類の網羅性出入国在留管理庁のウェブサイトや窓口で確認し、必要な書類を漏れなく収集します。
雇用契約書、支援計画書、企業の登記事項証明書、直近の決算書類、外国人材の技能・日本語能力を証明する書類などが含まれます。
書類の正確性記載内容に誤りや不備がないよう、細心の注意を払って作成します。
特に、外国人材の氏名や生年月日、パスポート情報などは正確に記載する必要があります。
整合性の確認提出する複数の書類間で、情報に齟齬がないか確認します。
例えば、雇用契約書と支援計画書の内容が矛盾しないようにします。
企業側の準備外国人材を受け入れる企業の体制が適切であること(法令遵守、支援体制など)を証明書類で示す必要があります。
審査期間の考慮申請から交付までには一定の審査期間を要します。
人材の入国希望時期から逆算し、余裕を持って申請を行いましょう。

参考:出入国在留管理庁|在留資格認定証明書交付申請

支援計画の策定と実施に関する重要事項

特定技能外国人材を受け入れる企業には、外国人材に対する適切な支援の実施が義務付けられています。

この支援は、「特定技能外国人に対する支援に関する運用要領」に基づいて策定され、実施される必要があります

支援計画には、以下の内容を盛り込む必要があります。

項目名内容
事前ガイダンス外国人材の入国前に、日本での生活や業務に関する情報提供を行います。
出入国時送迎入国時と出国時に、空港などへの送迎を行います。
住居の確保に係る支援住居の提供や、住居探しのサポートを行います。
生活オリエンテーション日本での生活ルール、行政手続き、災害情報などについて説明します。
公的手続き等への同行支援住民登録や銀行口座開設など、必要な行政手続きへの同行支援を行います。
日本語学習の機会提供日本語能力向上のための学習機会を提供します。
相談・苦情への対応外国人材からの相談や苦情に対し、適切に対応します。
日本人との交流促進日本人との交流を深めるための機会を提供します。
転職支援特定技能1号外国人が契約解除等により受入機関との契約を解除された場合に、転職先を探す支援を行います。

これらの支援は、外国人材が日本での生活にスムーズに慣れ、業務に集中できる環境を整える上で非常に重要です。

支援の一部または全部を登録支援機関に委託することも可能です。

技能実習生からの特定技能への移行手続き

現在、技能実習生として日本に在留している外国人材が、特定技能の在留資格へ移行する場合もあります。

この移行手続きは、新たに外国人材を招へいする場合とは異なる点があります。

技能実習2号を良好に修了している場合、技能試験及び日本語能力試験が免除される場合があります。

在留資格変更申請の手続きを出入国在留管理庁へ行います。

必要な書類は、雇用契約書、支援計画書、技能実習の実施状況に関する書類、外国人材の旅券等です。

技能実習生として日本に在留している際の情報や、これまでの実習内容が、特定技能の業務と関連しているかどうかが審査のポイントとなります

技能実習生からの移行は、既に日本での生活経験があり、ある程度の日本語能力や技能を身につけている場合が多いため、企業にとっては比較的スムーズな採用方法となる可能性があります。

特定技能外国人材受け入れに関する費用と注意点

COSTと書かれたスマホのスクリーン

特定技能外国人材を受け入れる企業にとって、費用面と、受け入れ後の注意点は、事前に確認し、理解しておく必要がある重要な情報です。

受け入れにかかる主な費用とその内訳

特定技能外国人材の受け入れには、様々な費用が発生します。

主な費用とその内訳は以下の通りです。

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費用項目内容
送り出し機関への費用人材の募集、選考、日本語教育、技能講習の費用が含まれます。
国や送り出し機関によって費用体系は異なりますが、数万円から数十万円程度が一般的です。
不透明な費用がないか、事前にしっかりと確認する必要があります。
渡航費用外国人材の日本までの航空券代。企業が負担する場合と、外国人材が自己負担する場合があります。
在留資格申請費用出入国在留管理庁への申請手数料(印紙代)がかかります。
登録支援機関への委託費用
(登録支援機関に支援を委託する場合)
支援計画の策定や支援の実施を登録支援機関に委託する場合、月額数万円程度の委託費用が発生します。
具体的なサービス内容と費用を事前に確認し、自社で実施する場合との比較検討を行いましょう。
住居関連費用外国人材の住居を企業が提供する場合、敷金、礼金、家賃、家具家電の購入費用などが発生します。
その他健康診断費用、日本語教育費用(自社で提供する場合)、生活支援費用などが考えられます。

これらの費用は、企業の受け入れ体制や送り出し機関との契約内容によって大きく異なります。

事前に詳細な見積もりを取り、予算計画を立てることが重要です。

受け入れ後のトラブル事例と対処法

特定技能外国人材の受け入れ後、予期せぬトラブルが発生する可能性もあります。

主なトラブル事例とその対処法を把握しておくことで、迅速かつ適切な対応が可能になります。

労働条件に関する誤解・不満

外国人材が雇用契約書の内容を十分に理解しておらず、賃金や業務内容に関して不満を抱いてしまう。

【対処法】

雇用契約書の締結時に、母国語で丁寧に説明し、外国人材が完全に理解したことを確認します。

定期的な面談で、不満がないかヒアリングを実施し、必要に応じて契約内容を再確認します。

生活環境への不適応

日本の生活習慣や文化に馴染めず、ストレスを抱えてしまう。

【対処法】

生活オリエンテーションを充実させ、日本の生活ルールやマナーを具体的に説明します。

孤立しないよう、日本人従業員との交流機会を設けたり、相談しやすい環境を整えたりします。

人間関係のトラブル

日本人従業員とのコミュニケーション不足や文化の違いから、人間関係の摩擦が生じてしまう。

【対処法】

異文化理解を促進するための社内研修を実施します。

相談窓口を設け、トラブルの早期発見・解決に努めます。

業務遂行能力に関する課題

期待した業務遂行能力に満たない、または指示が伝わりにくい。

【対処法】

事前の選考段階で、技能レベルや日本語能力を十分に確認します。

入社後もOJTやOJT以外の研修を実施し、継続的なスキルアップを支援します。

在留資格に関するトラブル

在留資格の更新を忘れてオーバーステイになってしまう、在留資格の取消し要件に該当する行為をしてしまう。

【対処法】

企業側で外国人材の在留カードの有効期限を管理し、適切な時期に更新手続きを促します。

特定技能外国人材には、在留資格に関する注意事項を十分に説明し、法令遵守の意識を高めてもらう必要があります。

これらのトラブルは、事前の準備と、受け入れ後の丁寧な支援によって多くを回避できます。

まとめ:国、特定技能、契約書を理解し、外国人材と共生する未来へ

契約書への署名

本記事では、特定技能の外国人材の採用を検討されている人事担当者様向けに、雇用契約書、在留資格申請、受け入れ後の支援について詳しく解説しました。

特定技能制度は、日本の労働力不足を解消し、外国人材が活躍できる場を広げる上で非常に重要な制度です。

送り出し機関との適切な契約、日本の法令に則った雇用契約の締結、そして受け入れ後の手厚い支援を行っていくことで、企業は優秀な外国人材を安定的に確保し、持続的な成長を実現することが可能になります

特定技能外国人材の採用は、企業の成長だけでなく、日本社会の多様性を推進し、国際社会との共生を深める上でも大きな意義を持ちます。

ぜひ、この機会に特定技能の外国人材採用をご検討いただき、企業の未来を切り開いていきましょう。

ご不明な点や相談したいことがあれば、いつでも専門家や登録支援機関に問い合わせを行いましょう。

送り出しカフェでは、貴重な外国人財をお探しの人事担当者様、日本に働きに来られた外国人が、安心できる環境で末永く働けるよう、下記3点をお約束します。

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送り出しカフェをぜひ、ご活用ください。

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この記事を書いた人

三木 雅史(Masafumi Miki) 株式会社E-MAN会長
1973年兵庫県生まれ / 慶応義塾大学法学部法学科卒
・25歳で起業 / デジタルガレージ / 電通の孫請でシステム開発
・web通販事業を手掛ける
・2006年にオンライン英会話を日本で初めて事業化
・2019年外国人の日本語教育を簡単、安価にするため
 日本語eラーニングシステムを開発、1万人超の外国人が日々学習中

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